第四十九 蛍惑君(けいこくくん)
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第四十九 蛍惑君
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第四十九 蛍惑君
蛍惑君は、火星の神だ。火の神でもある。火焔剣からは一振りするたびに大きな炎が受けた者に降りかかる。
対する、フリンツとヨランダードは、遠距離系の攻撃体系のチームだ。
フリンツは、『旋風剣』を発動。透明の剣が大剣から伸びている。奇襲をかけるとすると、武器の攻撃範囲を隠すべきだが、フリンツは、ワザと『旋風剣』を地面に突きつけて、その威力を相手に見せた。
それ程、『旋風剣』は、強力だ。自分でもその威力に眉をひそめている。
さすがにアールの考え出す魔法は桁が違う。本来、まだまだ弱い自分が剣の天才である美二姫と対等に近く扱われている事は、ひとえにこの『旋風剣』のおかげだ。
もう一つは、フリンツはやはり魔法の天才だったのだ。ヨランダードと同じく魔力・聖力の両方が見えるという事は、闘気魔法の上達に大きく寄与した。
フリンツは、他の魔法はからきし使えない。それが返って闘気魔法の上達を促したようだ。
彼の後ろから、本当の魔法の天才であるヨランダードが静かに戦いの始まりを待っている。これ程力強い味方はない。
蛍惑君は、フリンツが地面に『旋風剣』で半円を描いたのをどう捉えただろうかと、思っていたら、蛍惑君も、彼の剣を大きく一振りした。
すると、彼の剣からは巨大な炎が立ち上がる。炎の剣なのだ。
フリンツは、ニヤリと笑いを浮かべる。闘気をアーマード全体に満遍なく満たす。
後ろのヨランダードに向かって、やるぞと合図を送る。
『旋風剣』を横に薙ぎはらう。蛍惑君は、火焔剣でそれを受け止める。闘気の剣は、奇跡の剣で受け止める事ができるようだった。
蛍惑君は、朱雀別名は火焔鳥の背に乗り空を飛びまわり攻撃を仕掛けてくる。なかなか厄介な、敵である。
ヨランダードが、空間魔法『空間断絶』を発動し、蛍惑君の火焔剣の威力を相殺する。攻撃魔法で敵の攻撃を撃退するとは、やはり魔法の天才ならではだ。
明らかに、火神である蛍惑君には、効くだろうと魔法『絶対零度』をかけまくる。二十程も連続発動しただろうか。
しかし、蛍惑君は、空を自在に飛んで、ヨランダードの連続魔法をギリギリで躱してゆく。
躱しながら、火焔剣でヨランダードに向けて炎の剣を撃ち込んでくる。
徹底して、防御力、機動力の弱いと思われるヨランダードを狙う作戦だ。
機動力で上回るはずのフリンツは、『旋風剣』を蛍惑君に向けて放っている。
見ると、ヨランダードが立っていたところには、ヨランダードの姿は無く、ヨランダードは蛍惑君の背後に『転移』していた。しかも、闘気魔法『飛翔』で空中にとどまると、左手を前に突き出し、手から氷の巨大な柱を無数に打ち出している。
さらに、右手に持つ杖を振りかぶると、杖から『光の剣』が発動。そのまま振り下ろす。
物理攻撃魔法の究極魔法『光の剣』は、皇帝級魔法レベル三百六十の魔法だ。
魔法師でも、剣士のように攻撃ができる。
ただし、ヨランダードはお墨付きの剣術音痴だ。絶妙のタイミングだったが、自ら明後日の場所を切りつけて、バランスを崩しながら地上に落ちて行った。
それでもヨランダードの『転移』や『光の剣』に冷や汗を流させられた蛍惑君は、少し距離を取りつつ、火焔剣を振るってくる。
しかも、彼も、術名発動の短縮詠唱術をマスターしており、剣撃の合間に手強い奇跡攻撃を仕掛けてくる。
「『開闢』!」
恐ろしい、閃光で包み込み「「「ドドドド!!」」」と、爆発が起こる。全てを破壊する攻撃系の奇跡だ。
ヨランダードは、闘気で壁を作り、その魔法を遮断する。
ヨランダードは、衝撃波が全身を打ちめまいがした。かなりのダメージだ。
一方のフリンツは、より多くの闘気を纏う上にアーマードの防御力もあるからあまりダメージを受けていないようだ。
畳み込もうとする蛍惑君に、『旋風剣』を激突させている。
蛍惑君は、見事な旋回でフリンツの攻撃を避けた。
ヨランダードは、片膝をついて、痛みに喘いでいる。やはり、ヨランダードは、物理攻撃を受けるのも物理攻撃を行うのも下手だとつくづく思い知らされる。
ここに来て、肉体強化の必要性を改めて認識する。ヨランダードの攻撃パターンは、あまりにも魔法に偏重しすぎなのだ。
魔法は凄いが肉体がひ弱すぎて攻撃速度や反射などが全く足りていない。
ヨランダードが苦しんでいると、いきなり体が軽くなった。アールの支援だと気づく。アールが全回復魔法をかけてくれたようだ。魔力・聖力も完全復活している。戦う前より調子が良くなっな。噂に聞くアールのレベル上げ回復だろうか。アールの魔法は、とにかく桁外れだ。
一方、フリンツは、アーマードの機動力も、空飛ぶ火焔鳥相手には全く役に立っておらず、防戦一方だ。
そこで、彼は、ダメ元でいいので、機関砲を取り出すと、火焔鳥目掛け発射してみた。
「「「ガガガガガガガガガ!!」」」
と、砲弾が叩き込まれる。砲弾は、本来なら直ぐに無くなるはずだが、後方支援のアールが砲弾の補給をしてくれているようで、全然減らない。
すると、防御力の弱い火焔鳥の腹に、砲弾が叩き込まれる。見事に火焔鳥は墜落した。
火焔鳥が地面に激突する前に、蛍惑君は、鮮やかに飛び降りている。
ここで、フリンツは、アーマードの本来の攻撃力や機動力を軽視しつつあった事に気づく。考えてみれば、アーマードは、戦闘力の補助的な強化が目的だ。それを有効に使わなくてどうする。
アーマードには、魔法には無い良さがある。機関砲は、速射性が良く、砲弾さえ無くならなければかなりの威力になる。
フリンツは、機関砲を撃ちまくりながら、蛍惑君に『旋風剣』を同時に畳み込み始めた。
動きの速い、蛍惑君だが、機関砲には辟易して、距離を取って、奇跡で防御壁を築いてそこに閉じこもった。
その間に、アールの全回復で元気になったヨランダードが、攻撃魔法を叩き込みながら、剣技の修練の時には、あまり本気で聞いていなかった、肉体強化の闘気魔法の要領を思い出しつつ、自分の肉体を本気で最大強化しようと格闘していた。
本来、肉体強化であろうが、魔法であるのなら天才魔法師のヨランダードにできない道理がない。本気でやらなかっただけだ。
想像できないくらい念入りに闘気を練りに練り上げた。だいたい、本気になれば誰よりも闘気をたくさん作れるはずのヨランダードなのだ。もちろんアールは別格だが。
こうして、自身の身体に肉体強化を真剣に施した、ヨランダードが『光の剣』を片手に、蛍惑君に飛び込んで行った時、新たなヨランダードが誕生したのだった。
凄まじ速度で突進し、アーマードを通り過ぎる。アーマードからはひっきり無しに機関砲が打ち出されている。
機関砲の攻撃力も大したものだ。そして、『旋風剣』の威力も凄い。全く休まる事がない。
『旋風剣』にも、ますます磨きが、かかっているのが分かった。フリンツは、片手で機関砲、片手で『旋風剣』を叩き込んで蛍惑君は、防戦一方となっていた。
そこに、ヨランダードがマッハの速度で駆け抜け、肉薄し、恐ろしい一撃を蛍惑君に見舞ったのである。
「それまで!」
アールの鋭い制止の思念と触手によってヨランダードが絡め止め取られなかったら、蛍惑君は、存在を止めねばならなかっただろう。
後二人ですね。
でも最後に最も大物との戦いもありますからね。お楽しみに。




