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良くある転生物語 聖と魔  作者: Seisei
第六章 青春期 天空編

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第四十六 天界の神々

いつも読んで頂きありがとうございます。


今日から、火曜日までできるだけたくさん投稿したいと思っています。

第四十六 天界の神々



 難しい顔をして、ツウラは、サーリの部屋から出てきた。


 サーリが何やら画策している事は彼には直ぐに分かった。


 しかし所詮大した事もできないだろう。サーリが本気でかかってきて少しでも抵抗して欲しいものだ。


 彼にとって、サーリは最も忌避すべき女神だ。偽善の塊のような女神。ツウラはそのようにサーリを評価している。


 しかし、サーリの純白のような清らかさや子犬のうな人懐っこい性格。明るい太陽のような健康的な笑顔が見たかった。


 ツウラは、天帝の座など本当はどうでも良かった。


 ツウラが見ている世界感とは、オモチャを散らかし放題に散らかした子供部屋を見ている親のような感覚だった。


 何もかもが、無責任で無分別で無秩序に感じてしまう。今にも全てのオモチャを処分してしまいたいそんな強い衝動が湧いてくるそんな感覚だ。


 そんな世界は、存在価値があるだろうか? ツウラは自問する。


 存在価値などあるはずがない。存在価値がないなら、強行手段に出るしかないではないか。そう、ツウラは自問に対して自答する。


 では? 何か選択肢があるのか?


 全世界がツウラの思い通りに整然と規則正しく秩序立った世界になるか、全世界が滅び去ってしまうのかそれとも彼自身が滅びるか。


 選択肢は、三つもあるじゃないか。とツウラは独り言を言ってみて、その自分の発言のあまりの空々しさに薄っすらと笑うのだっだ。


 ツウラにはこの命題の結論の先が自滅しかない事は、自明でしかない。


 世界は、決して無にはできない。たとえツウラの恐ろしい破壊の力を振るっても世界は今よりも無秩序になるだけで滅びる事は無いだろう。


 世界が秩序だつとか、正義で統一されることはありえない。なぜなら真の正義も真の秩序も存在しないからだ。


 そんな物があると考えるのは、おめでたいサーリのような子供だけだ。


 結局、彼が何をしても何も変わらない。それが彼が許せない世界の真実だった。





太歳様ツウラ。皆、持ち場につきました。天帝様サーラ天照様サーリ大白様メーサ、全ての御寝所をとり囲みました」


 ツウラは、配下の報告に鷹揚に頷いて見せる。


「三人いずれも手強いので用心せよ」


 ツウラは、冷たく言った。彼の意のままになる神々で最も優秀な者を大勢つけたので、よもやしくじる事はあるまい。


 特に、天帝には、四天聖神をつけた。


 四天聖神は、雷帝神、辰星君しんせいくん蛍惑君けいこくくん昴星君こうせいくんの四神を言う。


 雷帝神は、雷神の王であり、神格は四神の中でも最高だ。


 彼らには、部下の雷神、水神、火神、風神などからなる約五百もの軍勢を配下につけてやり、天帝の寝所である上玉宮を取り囲ませた。


 天帝サーラの神格もとても高い。沢山の神々に寝所を取り囲まれるまで、事態に気付かぬはずがなかった。


 しかし、天帝サーラの寝所に入った瞬間、雷神帝が見たのは別の複数の者達だった。


 雷神帝は、先回りするものがいるなど想像もしていなかったので驚いてその侵入者達を眺めてしまった。


 天帝の寝所に一人で来たのは、天帝に自害を進めるためだった。楽に死ねる毒も用意していた。


 天帝の寝所に入った途端。


「誰です。天帝様のご寝所に無断で入るなど許されると思っているのですか!」


 と、誰何(すいか:問いただされる)された。


 誰かと思いきや、正二位天照サーリだ。見ると従二位大白メーサもいる。しかし、天帝の姿は無い。


「慌てている様ですね。雷帝神殿」


 雷帝神は、混乱していた思考を、立て直し直ぐに考えを纏めた。


「皆さんは、反乱の疑いで拘束します。投降される事を勧奨します」


 静かな物言いだ。


『突入!』


 同時に全方位思念で叫んでいる。


「天界の四神とも崇められているあなた達全てがどうして?」


 入ってきた、四神と部下達を見てサーリは、悲しそうに言った。


「皇女殿下。太歳様は、偉大な聖神様でらっしゃる。我々は神々以外の者が我が物顔で世界を蹂躙するのをただ手をこまねいて見ているわけにはいかないのです」


 雷帝神は自分達の意見を主張した。


 それを聞いたサーリは、暗澹あんたんとした表情で雷帝神達を見た。


「雷帝神殿。あなたは、兄様の性格を勘違いされています。兄様は、あなたが考えているよりもずっと複雑な方です。兄様は、世界征服などに興味はありません。


 兄様が考えている事は、もっとずっと容赦の無い世界への制裁みたいな事のはずです。


 決してあなた達が望むような明るい未来なんて来ませんよ」


 サーリは、冷たく言い放った。


 雷帝神は、鼻で笑った。


「天照様。貴方は幼い。何も分かっていないのです。太歳様は、物事を正しく判断される方。


 少々辛い時代があるかも知れません。しかし今のように生温い時代など必要無いのです。


 生温い、文人どもが能力も無いのに高い地位に着き、我々本来神々として高い神格を持つ者が憂き目を見なければなら無い。


 そんな時代には終止符を打つべきなのです」


 雷帝神の意見は、相当偏っている。


「天照様、大白様。お覚悟を」


 雷帝神は自分の身分が気に入らないだけのようであった。


 神々の世界では、美しい詩歌の愛でられる文芸が華やかな世界だ。神々の階位で言えば正四位上級以上の神々は全てが美しく優雅でハイセンスである事が要求されている。


 雷帝神は、神格は高いが、位は低いと言う典型的な武神タイプ。彼が怒るのも無理はない。


 しかし、ツウラが本気で雷帝神を重用しているとは思えないのだ。なぜならツウラは雷帝神のような武神が好きなわけではないからだ。ツウラが好きなのは、スハークのような文武の両方に才能を示す優秀な若者だけだ。

 

 雷帝神は、ツウラに煽られて使われている事に気付いてい無いのだろう。


 しかし、この雷帝神が高い神格を持っている事は、天眼通で見れば誰にでも分かる。


 人の世界に、人レベルがあるように、神々の世界には神格がある。神格は、神のレベルのようなものだ。


 最上級の神格は、元始天尊といい、玉皇上帝、聖玉帝神、聖玉王神などと難しい名前の位が全部で十五段階もある。分かりにくいので、第一元始天尊、第二皇玉上帝と神格の階位を呼び名に当てる。


 ちなみに、ツウラは第五聖玉白神せいぎょくはくしんの神格をもつ聖神で、雷帝神は、第八御大柱神(みかみちゅうしん、または、おんおおはしらしん)の神格をもつ大神だ。


 人レベルでは、雷帝神ですら、皇帝級に匹敵する。ツウラのレベルは人レベルでは測りきれない。


 しかし、神々には、聖力しか使えないと言う弱点がある。だから人レベルと単純比較はできない。


 ヨランダードなどは、魔法師レベルでは、天皇級だが、闘気魔法や無詠唱の能力。魔力・聖力の多さでは、雷帝神をすら凌駕する。


 魔力・聖力の両方を使えるヨランダードを天眼通で見ると、それほど大きな聖力の持ち主には見えないだろうが、単純に神々本位のレベルだけでヨランダード達を推し量る事はできないだろう。


 雷帝神も、アール達の実力を推しはかり兼ねている。


 ハッキリ分かるのは、このもの達は、聖力を完全制御しているため、天眼通だけでは、ハッキリした実力を推し量れ無いということだ。


 特に、真ん中にいる者は聖力を真円に制御している。その聖力が雷帝神には不気味に映る。あれ程完璧に聖力を操るのは難しいだろう。


 神々は、聖力を美しい羽の形に作る。大きさも神格に伴って大きな物にするのが常識だ。


 雷帝神は、ここにいるもの達が唯の曲者とは思わなかった。どのように侵入したのかも不明だし、実力は、自分よりも上かもしれないと油断なく構えた。


「雷帝神様。私はレイライトと言う人族の者。サーリ皇女の救援者です。天帝サーラ様は、私達が救出いたしました。


 しかし、天界の秩序を乱すもの達を許せないと、サーリ皇女が申されるのです。


 ここで待てば、襲撃してくる者は簡単に明らかになるとの判断でしたが、しかし、天帝様の寝所には大変貴重な宝物が置かれている様子。


 広い場所で決着を付けませんか?」


 真円の聖力の者が不敵な申し出をしてきた。


「望むところだが、外には雷神、火神、水神、風神などの御上之神(第十三の普通の神々。みかみししん)が大勢取り囲んでいる。


 我々は、一対一などで対応せんぞ」


 雷帝神は、自ら墓穴を掘るような発言をする。


「私達も、そうでなければ戦えませぬ」


 アールがニヤリと笑いながら言った。


 彼らは、連れ立って天帝の上玉宮から表に出た。


 神々の軍団が彼らを取り囲む。


 さすがに、五百の神々の兵士に取り囲まれると、威圧感は凄いものだ。


 神々は、不思議な生き物を使役している。聖獣だ。奇跡の一つ、奇跡レベル百八十五『聖霊召喚』水晶級の奇跡で呼び出したものだ。各自、白い虎みたいな聖獣に乗ったり、黄金の亀に乗ったりとなかなか見ていて楽しい。


 また、神々の武装も、今まで見ていた物とはレベルが違う。これらの武具には明らかに高い奇跡がかけられている。


 さすがに、神々の軍勢だ。見るからに神々しい。


「もういいかい?」


 緊張感の無い、隠れん坊で遊んでいる時のように問うたのは、アールである。


 雷帝神も呆れてしまう。少々この人間は、狂っているのかもしれない。


「天照様、大白様は、生けどりにせよ! 後は片鱗すら残さずに滅せよ。かかれ!!」


 雷帝神が叫んだ。


早速、次の第四十七を書きます。


少々お待ちくださいね。

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