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良くある転生物語 聖と魔  作者: Seisei
第六章 青春期 天空編

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第四十五 救出

いつも読んで頂きありがとうございます。


第四十五話 救出


です。

第四十五 救出


 サーリは、目を覚ました。見上げると兄のツウラが彼女を見おろしていた。


「いくら起こしても起きませんでしたね」


 ツウラの目が冷たい。


「お兄様。ごめんなさい。寝てました」


 サーリが言い訳のように言った。


「サーリ。大丈夫ですか? もうすぐ出してあげますからね」


 ツウラの顔に優しい笑みがたたえられる。


 サーリは、その笑顔に釣られて笑顔を返す。


「はい。お兄様。よろしくお願いします」


 サーリは、弱々しく呟くように言った。


 ツウラがニッコリ笑いかける。


「サーリ。また来るよ」


 ツウラがサーリをそっと抱きしめた。


 サーリも心の底から愛する兄を真心を込めて強く抱きしめた。


 『慧眼』は、彼女が明日処刑される事になったと告げている。何もかも『慧眼』は、正しいのだろう。


 今回の一連の出来事で、サーリは『慧眼』を全く無視し続けた。


 ツウラ兄様が長年の計画を実行に移し、天帝サーラをしいして彼が天帝に即位するつもなのは『慧眼』により分かっていた。


 サーリは、天帝サーラを弑したとして処刑される。妹のメーサも殺されるだろう。


 『慧眼』は、予言能力ではない。必然的な要素を見抜き、可能性を分析する能力だ。


 その分析力が桁外れに優れていると予言に等しくなる。『慧眼』はそれ程まで優れた能力ではない。だから、サーリは、『慧眼』よりも愛する兄を信じた。


 ただ、ツウラの行動は、あまりにも異常だ。『慧眼』は、その事に対して大きな警鐘を鳴らしているのだ。


 ツウラは、天才だが、母親を惑わしてその心を意のままに操るなどと言う拙速な人間では無かったはず。


 この数年の兄の変化は精神疾患の可能性が有ると『慧眼』は警鐘を鳴らしている。最悪の場合、何者かに操られていると言うものだが。


 兄様は、普通の天神種ではない。恩恵を授けられた聖神だ。位は、正一位大歳たいさい、神々の位だ。魔法の才能がサーリよりも低いと言っても決して侮れるような能力ではない。魔法の超天才のサーリでも、全く太刀打ちできないだろう。


 何しろ年齢が何百歳も違うのだ。経験が全く違う。サーリなどはツウラからしたらただの赤ん坊だろう。


 母のサーラが何百年もの間、子供を作らなかったのは、この兄に位を譲るつもりだったからだと思われる。前大公神(たいこうしん:天帝の夫)が早くに亡くなったという事もその理由の一つだろう。


 その後、サーリやメーサの父であるスバイト大公神が天帝サーラの二人目の夫となり、サーリ、メーサが生まれた。そして天帝サーラの寵愛が二人の娘に向かうようになった。


 天帝サーラの娘への寵愛ぶりは、大変なもので、それもツウラ兄様を変える原因となったのかもしれない。


 考えれば、サーリとメーサの最も頼もしい後ろ盾のはずのスバイト大公神は物心つくまでには亡くなっているが、これも陰謀が原因であると言うのが『慧眼』の読みである。


 全てがツウラの邪悪な陰謀であると考えれば辻褄が合うのだ。


 大公神スバイトの死はサーラの心を不安定にした最大の要因となった。ツウラの巧みな心理操作の賜物だ。


 さらに追い討ちをかけるようにサーリが謀反を起こしたなどとの情報でサーラの乱心を誘っているのだ。


 全てが、尊敬し愛してやまない兄様が、画策している事だとこの期に及んでも信じ切れないサーリだった。


 アールティンカーへの救出の要請が届いている事を最後の望みにして彼女は、母親が兄に手をかけられる前に止めるられる事を心の底から祈っていた。





 アールは、仲間にサーリの窮状を説明し、緊急事態だと知らせた。夜中に救助に向かう事を知らせる。


 サーリの女官マナミが小鳥を仕掛けたのは、処刑が近い事を知らせようとの情報だと小鳥サーリは、アールの妹アリスに伝えた。


 明日未明にサーリの母親の天帝サーラ、妹のメーサが殺され、その責任をサーリに押し付け、明日の午後には処刑される事になるとサーリの小鳥は、アリスに伝えたのである。


 事態は切迫している。あまりの緊急事態なので、アリス自らがアールに伝えに来たのだ。


 アリスには、彼女に乗り移ったサーリから様々な情報が伝えられている。


 たとへば、天空の宮殿への道程などもそうだ。


 アールの想い人であるという、天の女神の皇女が窮地にあり、それも緊急を要すると聞いた、仲間達は、当然、協力を申し出た事は、言うまでもない。


 ちなみに、メイア、マリアージュ、アルテミシアの三人は、シーナ先生などから噂だけは聞いていたサーリの詳しい出自などの話を初めて聞いた。


 自分の尊敬し憧れる、ずっと雲の上の存在であるアールが他の女性を好いているというのは寂しい事だが、恋敵が天界の女神皇女だと聞いて返って清々しい敗北感で納得する気分だった。


 サーリの具体的救出方法であるが、天界はとても遠くて閉鎖されている。


 しかしアールには、転移魔法がある。逸失した空間魔法であり、『敵』の存在を知ってからは目立たないように使ってきたが今回は使うべきだろう。


 ただ、転移魔法には、重大な欠陥がある。それは、見た事がない場所には転移出来ない事だ。


 この対応策として有効なのが『ビジョン』魔法だ。好きな所まで画像を見るように意識だけで飛んで行ける非常に便利な魔法だ。この魔法で飛んで行って、その見た光景の場所に転移する事が出来る。


 アールは、プライバシーを侵害するので殆ど禁忌にしてしまっている、空間系魔法の『ビジョン』を発動した。この魔法でサーリの寝所まで行こうと言うのだ。


 しかしながら、困った事にアールは、大変逡巡していた。


 サーリと出会った頃に、彼女を色んな所に転移魔法で案内した。その時に『ビジョン』も見せたから、緊急時にアールが『ビジョン』を使う可能性がある事に彼女が気付いていない筈は無い。


 しかし、アールは、サーリの着替え中に寝所に入ってしまうなどのアクシデントが頭に浮かび、臆病風に吹かれて『ビジョン』を途中で中止しそうになる。彼らしくない優柔不断ぶりだ。


 アールは、何度目かでようやく、天界の宮殿にまで意識を飛ばした。落ち着いた歴史を思わせる建物群だ。


 アールは、皆を連れて、ひとまずその『ビジョン』の場所に、『転移』する事にした。


 アールと仲間達は、天界の宮殿を物珍しく見回した。


「意外と質素なんですね」


 メイアが呟くように言った。


「歴史が違うよ」


 ヨランダードがメイアに言い返している。


 メイアは、ヨランダードの顔を覗き込んで鋭い視線を投げかけた。余計な注釈を垂れるなと言わんばかりだ。


 ヨランダードは、途端に要らない発言をしてしまったと首をすくめて黙っている。


 アールは、そんないつもの二人のやりとりを横目で見ながら少し羨ましく感じた。サーリとは会って少し一緒にいただけでヨランダードとメイアのような気安さは無い。


「サーリ皇女は、この近くにおられるのですか?」


 アルテミシアが訪ねた。


「近くのはずです。直ぐに探知してみましょう」


 アールは、そう言って、『探知』魔法を発動した。


 直ぐに懐かしいサーリの感触が伝わってきた。


 アールは、『探知』魔法で感じたサーリの居所に向けて、『ビジョン』を放った。


 アールは、非常に恐る恐るビジョンを展開して行った。


 年月が、サーリとの敷居を高く隔てている。アールは、自分の臆病さに呆れつつサーリの所に近づいて行く。信じられないほどの勇気が必要だった。


 『ビジョン』で意識になったアールがサーリの寝所に入る込むと、驚いた事に、サーリがアールの方を見て嬉しそうな笑顔を向けてきた。


 アールは、他人に『ビジョン』を使われた事が無いから、『ビジョン』で飛んできた者を知らないが、どうやら魔力や聖力の見える者には、姿が見えるようだ。


 二年ぶりのサーリは、本当に可愛かった。輝くようにアールに笑顔を向けて上品にベッドの淵にちょこんと座っている。


 サーリとは、一歳と八ヶ月の歳の差がある。お姉さんだ。アールは、ようやく十六歳になったところだから、サーリは、十七歳とたぶん九ヶ月ぐらいだろうか。


 サーリは、そろそろ大人の女性の美しさを示し始めている。


 当時、少女っぽさが残っていた顔は、今は女性らしさが増して、可愛いよりも美しい容姿となっていた。


 体つきも、ずいぶん大人の女性になった。


 大人しめの上品なドレスを纏っているから分かり難いが、サーリは抜群のスタイルである事が一目で分かった。


 たぶん。彼女を抱きしめれば、彼女の全身の柔らかさとしなやかさと女性らしい華奢さが一つの芸術作品のようにアールの心に感銘を与えるだろう。


 サーリが立ってアールに正式な挨拶のお辞儀をした。


 何か話し始めようするサーリを手で制しアールは、思念を送る。


『仲間を連れてきています。皆と一緒にこの部屋に転移してもよろしいですか?』


 サーリも思念を返してくる。


『はい。大変ご迷惑をおかけします。よろしくお願いします』


 『転移』魔法でサーリの部屋に。もちろん、幽閉されているとはいえ、皇女の寝室は、大きなものだ。


 仲間達を引き合わせる。サーリは、皆の力量を見て目を大きくしていた。


「皆様。大変ご迷惑をおかけします。早速ですが、この近くに妹のメーサがおりますので彼女も助けに参りたいと思います」


「いきなり寝所に転移しても大丈夫でしょうか?」


 アールが怖気付く。


「大丈夫です。妹には思念で伝えました。思念を使うと、見張りに気付かれます。早くお願いします」


「確かに」


 アールがうなずく。


「サーリ姫。メーサ姫の部屋のイメージを頭に描いて貰ってもいいですか? そのイメージを送ってください」


 サーリがアールの指示に従う。直ぐにサーリの思念がアールの脳に入ってくる。メーサ姫のイメージと部屋のイメージがアールの頭に浮かびあがる。


 しかしサーリの思念にはアールに対する可愛らしい女性らしい思いまでが一緒になって入ってきた。確かに久々の再会直後なのでサーリも少し興奮気味なんだろう。


 アールはこの指示が明らかに失敗だったと後悔した。


 アールは隠せないほどに狼狽して、顔が赤くなる。


 アールの狼狽した顔に、怪訝そうなサーリ姫の顔がまた可愛い。


 アールは、狼狽を隠すため、直ぐに『転移』魔法を発動。


「皆。転移する」


 と、必要以上にきりりとした声で言った。


次回は、天界の四神との死闘を描きます。

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