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良くある転生物語 聖と魔  作者: Seisei
第五章 青春期 迷宮探検編

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第四十二 マスター級

いつも読んで頂きありがとうございます。


そろそろ、公の組織を巻き込みながら物語の反対側の主人公である『敵』の存在感を示してみたいと思います。



第四十二 マスター級


 クエストを発行する前には事前に調査が行われる。


 水晶迷宮に調査官として派遣されたのは帝級魔法師をリーダーとした王級魔法師、王級戦士などからなるベテラン調査官十人だった。


 彼らは、三十八層まで降りて、魔物の出現形態から、魔物の大量発生の原因は召喚魔法だと当たりをつけていた。


 地下迷宮のさらに深層に降りたら、召喚魔法陣なども見つかると考えられた。


 こうして、魔物の大量発生の原因の追及クエストが発令されたのである。


 クエストの参加条件は、Aランクパーティー以上とされた。


 このクエスト条件の設定は、やむを得ないと、パルナー・ファンは考えている。


 職業レベル上級第一等の魔法師、戦士などを多数抱える、総勢百二十名にもなる大所帯パーティーである『鷹』が全滅の危機に晒され、グレイハザードの勧告申請を出してきた。


 『鷹』の申請によると、クエスト条件には明らかな誤りがあるとギルドの落ち度を指摘し、即時の活動中止と、再調査の必要性が述べられていた。


 『鷹』の申請書を鵜呑みにすれば、調査官達が騙されたと考えるのが一番妥当だろう。


 ギルドマスターのパルナー・ファンは、そう考えている。


 トマスのグレイハザードの申請書の内容を確認すると、魔物のレベルも量も、調査官が調べた時とトマスが転送された後とは全く違う。


 さらに、グレイハザード申請が有ってすぐに冒険者の消息調査が実施されたのだがその結果、恐ろしい実態が明らかになったのだ。


 行方不明冒険者、男五百七十三名、さらに女の行方不明者は、三百十六名に上った。冒険者の男女比率からして、女性が特に狙われた事が分かり、結果を知ったパルナーの気分は最悪だった。


 犯罪組織メンバーが冒険者の行方不明事件に深く関与していた事が分かったが、この行方不明者の数は異常だ。


 捕らえられた犯罪者達は、指名手配中の凶悪犯だった。そんな奴らがどのようにしてクエスト承認を取ったのか徹底的に調査が必要だ。


 惜しいのは、こいつらのリーダーが斬首されていたことだ。どのような経緯で、リーダーが斬首されたかは不明だが。


 パルナー・ファンは、一連の事件の全容を知るにつけ、ギルドの情報収集能力の欠如を痛感していた。


「だからと言って、マスター級を調査官として派遣するなんて」


 そう抗議したのはギルドの調査部門責任者のカレン・モールドだ。


「マスター達が対処するような案件では……」


 彼女に最後まで言わせず。


「グレイハザード(危険につき進入禁止)は、今まで冒険者から発動された事は一度たりとも無い。


 冒険者とはそう言うもんだ。『鷹』のリーダーは、私の教え子でね。良い戦士だ。


 『鷹』のトマス君がグレイハザードの発動を勧告したのは余程の事だったにちがない」


 パルナー・ファンがそう言った。


「しかし、それだけの理由でマスター招集ですか?」


「魔法学院のシーナ・ジュライ。アトランデス魔法子爵にして学院の大教授を知っているか?」


「もちろんです。賢者サロン師の弟子でしたよね。当代一の大魔法師だったと」


「先月、あるパーティー冒険者登録の実地試験を受けている。


 その時の試験官によると、彼らの内、四人は魔法師については魔法学院の帝級魔法師の資格認定証を提出してきた。


 その認定推薦者欄にシーナ・ジュライ教授のサインがあったのだ。


 そのレイライトというのは、そのパーティのリーダーなんだよ。パーティ名もない、七人のパーティだが。


 トマスは、窮地のところを彼らに助けられた。その時の事をグレイハザードの申請書にも詳しく書いて寄こしているがね。


 その中に信じられない事ばかり書かれていたのだ。


 嘘をつくような子では無いのだ。そのトマス君の叫び声が聞こえてきそうな文章はね、大袈裟で稚拙な文章なのだが、その時の驚きや感動がよく伝わる味のある良い文章だった。


 トマス君は、何度も神の様な七人と書いている。この子にしても上級第一等の戦士なんだがね。


 何千何万もの魔物の群れを瞬く間に追い散らして自分達を救ってくれた神のような存在だとね。


 エス級の自分達が全滅させられそうな、高いレベルの魔物や無数の魔物の大群も何もかもを全く歯牙にもかけずに、無人の荒野を行くが如くだったそうだ。


 しかし、トマス君は、意識していないのだろうが、彼の話の中には、気になる事ばかり混じっていたのだよ。


 例えば、その七人は転移魔法を使って現れたと書かれている。そして、前後の文脈からそれが誇張とも作り話とも思えないのだ」


「転移? 空間系ですか? 失われた伝説の皇帝級魔法で使われたとされる空間を自由自在に操る魔法ですか?」


「そうさ。それが事実なら伝説級の魔法師。そんな魔法師が冒険者などになると思うかね?


 さらにだ。驚くのはその帝級魔法師達だけではない。その他の者も驚くべき存在感を示しているのだ。


 彼らに同道している剣士やアーマードも世界選手権大会で優勝するような有名人だ。フリンツ・ホップルと二美姫と言えば、君も映像魔法を見たはずだ。


 あの鮮烈な記憶に残る双子の美少女剣士の事も、試験官はレベルが高すぎて判定不可だとサジを投げてしまうほどのレベルだった。


 トマスは、この剣士達の活躍も書いているが、彼女達の実力は、あのアーマード大会での鮮烈なイメージすら遥かに超えた戦いっぷりを描いているよ」


「つまり、そんなレベルの者が、成功報酬欲しさにクエストに参加するとは思えないと?」


「当然そうだろう。彼らは何らかの意図が有って、クエストに参加したのだ。


 彼らの事は一応調べたが、不審なところは無かった。唯の学生だとか、フリーのアーマード乗りだとか、剣士の修練者だとか。まぁ、竜種のラーサイオンなどは、魔界で大将軍として戦争をしていと言う未確認の情報もあるがね。


 調査官が想像したように、迷宮で魔物を召喚している奴がいたとして、そいつが何を思って魔物を召喚しているかは不明だ。しかし、これ程の数の冒険者を誘拐するとなると、目的もない猟奇的な異常者の行為だとはとても思えんのだ。


 何か大きな陰謀が裏に有るのだと思う。そして、その陰謀に関する情報に一番近いのは、そのレイライトという青年なんじゃないかと思うのだよ。


 既に遅きに逸してはいるのだが、我々も最大の努力をする時だ」


「しかし、各ギルドのマスター級ともなると、戦時招集ではあるまいし」


「カレン君。今回のクエストで失った命は、八百八十九人にも昇る。これは第三十四次だったか五次だったか、とにかく昨年の東海戦役の戦死者よりも三百人以上も多いんだぞ。もはや、戦争と言っても過言ではあるまい。


 既に、何かが始まっている。そんな気がしてならんのだ」





 さすがに、冒険者ギルドのギルドマスター達は、なかなか頑固者揃いでパルナー・ファンの発言をまともに受け止めてはくれなかった。


 馬鹿馬鹿しい。と言うのが彼らの意見だ。そんな事で忙しいのに集めたのかとそんな顔だ。これが最長老のパルナー・ファンでなければ一悶着が確実に起こっていたのだろう。


「ファン老師。学生の戯れ事などに、我々が直々、参上せんでも良いのでは?」


「マスターカルガー。『鷹』は、実績を積んだ良いパーティーだ。そのリーダーは、私の教え子で、とても真面目な嘘をつく様な者ではなかった」


「老師。本人が信じている事がいつも正しいとは限らんでしょう。幻覚でも見せられたのでは?」


「もっともな意見ですね」


「ミスカリーナ。貴方まで。しかし、八百八十九人もの犠牲者が出ておるのですよ」


「老師。冒険者たるもの犠牲はつきものですわ」


 会議の帰趨は、遠征は取りやめに傾きそうだった。


 その時。ドアをノックする音がした。パルナー・ファンが顔を輝かせてドアーに飛びつき、外の女性から何かを受け取っていた。


「皆。すまぬ。待っておった手紙の返事が帰ってきた。この手紙は、先程から問題にしておった、トマスを救ったという学生達の恩師である、シーナ・ジュライ教授からの返信だ。


 大至急で返信する様にお願いしていたのだ。儂も何が書かれているか分からない。


 儂がシーナ・ジュライ教授に出した手紙には、レイライトが転送魔法を使っていた話があるがその真偽の如何と彼らが何者なのかを問うた。


 どの様な返事が返ってきたか分からぬがここで、その手紙を読むのでその内容を聞いて今回のマスターによる調査官の派遣についての儂からの議案を再考して欲しい」


『マスターパルナー・ファン殿。冒険者達の突然の悲報に、心から哀悼の意を送りたい。御老師の心痛をお察しする。


 さて、御老師よりお尋ねの件について、私より答えられる事は、レイライト・ハヌアス、ヨランダード・ドートマルキ、メイア・スライサイド、ラーサイオン・フュラスの四名は、当学院の正式な学生達であり、帝級魔法師の資格を正しく取得しています。


 ご参照の、転移魔法については、秘法門と御理解くださいますようにお願いします。


 レイライト以下七人が迷宮に入った目的は終末の種が芽を出さないか確認するためです。


 彼らは自分達の才能を世界の存亡に関わる不安材料を払拭するためにのみ活かすとの決意から、世界のあらゆる事象の分析を行い、研究をしているのです。


 迷宮の魔物の増加と、近年の誘拐事件の関連性を思索し、迷宮への探索を行うこととしたと聞いております。


 ギルドマスターの御老師に置かれては、レイライト以下七人の崇高なる目的達成のために何卒、ご助力賜りますようにお願いします』


「以上が、魔法学院のシーナ・ジュライ教授の返信です。


 お聞きの通り、彼らは誘拐事件という、別の事象に既に着目していて迷宮に入ったのです。これで迷宮以外においても、何者かの人為的な事件の存在が明らかになりました。


 さて、これからは、同列のマスターとしてではなく、お前らの先生として発言させてもらう。


 お前らは、冒険者の庇護者として、この様な暴挙を看過するのか?


 八百八十九人の我らの庇護下にあった尊い生命を奪った奴らにいかなる制裁を加えなくても良いと言うのか?


 シーナ・ジュライ教授からは、このレイライト達七人への助力要請があったが、彼らから助力を求めるのは我らの方ではないか?


 彼らは、無関係な犠牲者のために既に迷宮に入り、多くの我らの庇護下の冒険者を救護し、敵の一部である、犯罪者を絡め取り、今も迷宮深く入り込んでいる。


 お前達は、マスターと名乗り、冒険者を庇護すると誓っているのに、ここで座してただ無駄口を叩くだけの能無しか?


 私は一人でも行くぞ。四の五の言わずについて来い!」





 冒険者ギルドは、世界に十二支部がある。本部には、本部マスターのパルナー・ファンがいる。彼は、ギルドの創設者であり、冒険者全ての老師と言われている。事実、あらゆる現場に足を運び、あらゆる人に様々の技術を教えた。そして彼は全ての教え子の名前を諳んじたと言われる。


 そして、十二支部に支部マスターがいる。彼らはもちろん本部マスターの教え子達であった。





 ギルドマスター級の冒険者は、大体、王級〜帝級の魔法師や戦士が多い。そんなレベルの十二人に更に、王級以上の調査官や試験官などのマスター級の者全てが徴用され、総勢五十八名のギルドの伝説のパーティーができた。


 リーダーは、本部マスターパルナー・ファン。彼は、ギルドで最高の大帝級戦士だった。


 かれが剣を振ると、大地が揺れると言われる。


 この他、帝級魔法師が三人、帝級戦士二人人、帝級剣士一人、帝級聖唱師一人、王級魔法師七人、王級戦士七人、王級剣士三人、王級錬金術師が四人、王級鑑定師二人、王級情報師が一人、王級重装備戦士六人、王級アーマード六人、王級薬師四人、王級聖唱師三人、王級召喚師三人、王級魔道具師一人、王級鍛治士一人、王級武具士一人、王級料理士一人


 これが、冒険者ギルドのマスター級の冒険者達からなるパーティーだった。


 ギルドには、何人か帝級、王級の者が留守番として残ったが、冒険者ギルドの総力戦と言っても過言で無かった。


 この五十八人は、水晶迷宮に二十八名、金剛迷宮に三十人が割り振られて、再調査に向かう事となった。


 彼らには、錬金術師がいたので、縦穴を掘って進むと言う荒技が可能であった。


 途中、強大な魔物の軍団との遭遇もあり、苦戦しつつ迷宮を深層へ向かって降りて行った。


 もちろん、パルナー・ファンは、レイライト達を目指して水晶迷宮を下に下に降りて行った。


いかがでしたでしょうか?


冒険者ギルドのお歴々が出張って来ました。迷宮の深層には、『真相』が見つかるでしょうか?


ラーサイオンは、成竜になれるのか。


次回は、水曜日ぐらいまでに投稿したいと思っています。



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