第四十一 深層
いつも読んで頂きありがとうございます。
少し、投稿が遅くなり、すみませんでした。明日も投稿できる様頑張ります。
第四十一 深層
ヨランダードが魔法レベル二百八十の『メテオ』を発動。帝王級の魔法だ。
帝王級は、帝級とも言われる。魔法レベル二百四十から二百九十九までの超レベル魔法を使いこなすものを魔帝級、奇跡を使う聖唱師を聖帝級と言う。
いろんなレベルの中でこのレベルは、人の強さや職業上の熟練度を表す最も重要なレベルとなっている。職業レベルと言う場合もある。
もちろん、職業レベルと言う場合には、各職業で独特のレベル名がある。剣士の場合に、切り紙・目録・大目録・初口伝… などのレベルがあり、魔法師に、初級・初級シニア・中級第四等… などのレベルがある。
しかしどのような職業であれ、究極のレベルになると、もはや職業レベルでは王様や帝王や大帝などしかなくなってしまう。
ヨランダードは、現在ではこのレベルで言うなら大帝級である。魔法レベルでは、三百から三百三十九までの大帝級の魔法を無詠唱で使える。彼もアールに及ばないが魔法の天才だった。
現在では、闘気魔法のレベル上げと皇帝級魔法の修得をしている。
皇帝級魔法が使えると、空間系の魔法が使えるので、アールのように転移の魔法などが使えるようになる。
ヨランダードが発動した『メテオ』は、隕石を降らす魔法だ。高い上空に岩石を発生させて落とす事で隕石となる。と言ってもこんな洞窟でも使えるのだから本物の隕石では無いのだろう。
ヨランダードの『メテオ』は、だいたい八個ぐらいの隕石となって降ってくる。アールは、たぶん三倍ぐらいの差はあると思う。メイアでは、四つがせいぜいだろう。
ただ、普通は、『メテオ』は、一つの隕石が降る魔法だが、アールに教えてもらうとこうなってしまうのだ。
ヨランダードの魔法が派手に発動して、魔物の群れが消滅する。
次に現れた魔物の群れは、魔物レベル三十五のサイクロプスを筆頭とした一群だ。サイクロプスは、一つ目の巨人の親玉みたいなやつだ。これぐらいの奴になると、大勢の家来がいる。
巨人な骨の騎馬は、ギガンデスと巨人魔獣の死霊だ。何百いるんだ?
フリンツによると、これぐらいの魔物は、迷宮の奥底の大切な宝物を守って偉そうに冒険者の来るのを待っているラスボスという魔物なのだそうだ。
どうしてこんな奴らがなんてフリンツは騒いでいたが、ヨランダードにしてみると雑魚には変わらない。
魔法レベル二百六十の『極炎トルネード』を発動する。炎の巨大な竜巻だ。
雑魚のサイクロプスとその部下達五百程が焼けて消し飛んで行った。
次は? と見渡すと、青姫がヨランダードの横を走り抜けて行った。
「ヨッ君だけ、ズルい!」
そんなつもりは有りません。それにしても青姫は、素早い。あんな華奢なのにとヨランダードは思う。
このお姫様は、本当に強い。ヨランダードは、剣の才能は無い。と言うか、三代もかけて魔法レベルを上げるのが悲願のドートマルキ家にとって、剣技のレベルを上げている暇があったら少しでも魔法レベルを上げるのが当然だ。
決して、運動が苦手だというわけでは無い。断じてだ。ヨランダードは、何度もブツブツ言い訳のように言っている。
メイアが怪訝な顔でヨランダードの方をみた。ヨランダードは、メイアにはいつも愛想良くニコッと笑いかける事にしている。
そうすると、メイアが優しそうな顔をする様な気がするのだ。どうしてメイアは、いつもあんなに無愛想にしてるのかヨランダードは不思議で仕方がない。
メイアは、学校時代から、ノーマルのヨランダードにも公平にしてくれた良い人の一人だ。
考えてみると、女の子はだいたいそうだったけど。
ヨランダードは、アールと似ていると良く言われるが、ヨランダードはちっともそんな風に思っていない。
あんなにかっこ良くないし、強そうでもない。
とにかく、アールから三歩下がって影を踏まずだ。彼は、魔法やら闘気やらを教えてくれた恩人で、皇太子様で、かっこ良い憧れの主人だ。
ドートマルキ家を叙勲して、伯爵家にしてくれた。あまりのありがたみに、ヨランダードの父などは、死んでご奉公しろとか意味不明な言動を発している。まぁいつもだけど。
あれあれ。青姫は、アッと言う間に、魔物の群れをやっつけてしまった。
「レイライト様。そろそろ、この層もほぼ回りきりましたが、如何しますか?」
ヨランダードがアールに聞いた。
ヨランダードは、アールの参謀みたいな事をする様になった。彼にその役をさせる事についてアールに聞いてみると、ヨランダードには、軍略の才能があるらしい。
もともと、ヨランダードは商人の考え方を身につけているが、それが管理に向いていて、軍の管理ができるのだとか。
確かに、軍略は、金をどう儲けるかと似ている気がする。人間の集団の管理、効率化という事だと、なんとなくヨランダードには分かっていた。
結局、軍略とは最も勝つ様にしておいて自然と勝たせる事だとヨランダードは思う。
ヨランダードは、将来アールの作戦参謀になるのかもしれない。
「ヨッ君。どう思う?」
魔物の発現の異常さの事だとすぐに分かる。
「召喚系と転移魔法でしょう。まさか、空間系の魔法を使えるのではなく、迷宮にある転移システムを利用しているのだと思います」
ヨランダードが即答した。
「どうして、そんな発想ができるの?」
メイアが驚いて、ヨランダードを見ながら言った。何も考えていないようなヨランダードからは、いつも驚きの発想がでてくる。
だからこそ、アールがヨランダードを頼りに聞くのだ。
ヨランダードは、メイアには、たまたま見たいな感じで答えておく。
「理由は?」
アールが重ねて聞く。
「出現場所からは、あらゆるところから出てくるのに、出てこないところでは、全く出現しない。これは、転出場所が見えないところでだけ出現すると思われます。
もう一つの理由は、探知魔法が使えない場所でのみ出現するからです」
ヨランダードが答えた。
「そろそろ、深層に降りて行っても良いのでは?」
ヨランダードが意見を述べた。
✳
深層には、アールの転移魔法で行く事にした。
あまり、急に深層階に降りると、何が起こるか分からなので五層ずつ降りる事とした。
まず第四十層だ。
フリンツが迷宮の特色として言っていた、中央の大水晶が見える階層になった。
水晶は、地上火山湖まで通じているらしい。そこからの光が入ってきて確かに明るい。
水晶がキラキラと輝き、美しい。この大水晶があるから水晶迷宮という。
ただ、水晶は、言って見ればガラスにしか過ぎないのでそれほど価値のあるものではない。
金剛迷宮では、貴重な金剛が取れるかもしれないから、人気が高い。
四十層に入って出てきた魔物は、魔物レベル五十ぐらいの将軍クラスの魔物だった。
フリンツに言わせると、こんな奴らは、迷宮の一番奥でふんぞり返っているような魔物で、そんなにホイホイ出てはいけない奴らしい。
だいたい、体格が違う。体長六十メートル。あの怪獣ぐらいの大きさがある。
ツノとかキバとかゴツゴツの突起とかまぁそんなのがいっぱいついた奴だ。
魔法レベル八十五に『鑑定』と言う魔法がある。それを使うと、この魔物は、レベル五十三、クレス魔物将軍と言うらしい。
ついでに、一緒に出てきた、強そうな奴らも見てみると、だいたい魔物レベル四十の後半。魔物隊長と言うらしい。
『鑑定』によると、彼らの特徴は、魔物の正規軍なので特に強いとかなんとか解説されている。
なんだか、胡散臭い『鑑定』の解説だ。魔物の将軍だとか、魔物の隊長だとか、そもそも魔物に階級なんかあるのか。
「レイライト様。魔物の階級っておかしいと思われませんか?」
「迷宮の魔物は、作られた可能性が高い。問題は誰がなんの目的でどうやってだ」
アールが答えた。
「とにかく、戦ってみましょう」
ヨランダードは、魔法レベル二百七十『サイクロン』を発動する。
見ると、クレス魔物将軍が『魔法障壁』を唱えていた。
魔法の青白い障壁が魔物の軍団の回りを取り囲む。
魔法防御が発動された場合、差の三倍の威力と言う計算になる。分かりにくいが、二百七十の攻撃魔法と二百二十の防御魔法では、差し引きした五十レベルの三倍の百五十の攻撃魔法ぐらいの威力になると言う事だ。
ヨランダードは、サイクロンの効果を見るまで無く、今度は魔法レベル三百三十の『天地逆転』を発動した。この魔法レベルの差があれば魔法障壁ではほとんど防ぎきれない事になるのだ。大帝級の魔法だった。
やはり、サイクロンは、多少の効果があったが、完全には効かなかったようだ。
しかし、直ぐに『天地逆転』の魔法が発動され、妙な形に天地がひっくり返り、魔物達は、天と地面に押しつぶられる。
呆気ない。ヨランダードは、大帝級の魔法を多重に発動もできるし、ほとんど連続で何十と連射もできる。
しかも、闘気魔法と連携すれば、威力は、連携しない時の何百倍にもなる。
魔物将軍か何か知らないが弱っちいことこの上もない。
「レイライト様。まだまだですね。更に深層まで飛びましょう」
✳
ラーサイオン・フュラスは、最近自分の変化に戸惑いを感じていた。周りの人間達も大きな変化を示しているが、自分の変化も著しい。
この変化の原因は、もちろんアールの闘気魔法の修行のおかげが一番大きい事は明らかだ。
メイアやヨランダードも、もともと才能豊かだったのだろうが、それよりも、闘気魔法の鍛錬は、全ての基礎作りに大きな役割を果たしているように感じる。
しかも、ラーサイオンは、大帝級の剣士から、厳しい剣の稽古をつけて貰っている。これも大きい。闘気が充実しているから、上達が早いのだ。
竜種にとって、成長するという事は、別の意味があった。まだまだ幼竜だと思っていたが、どうやら成竜になり始めたようだ。
竜種には、たくさんの種族がいる。ラーサイオンは、炎龍と言う種族だ。魔界の奥地に住む、竜種でも最古の始祖神たる神龍に最も近い種族だと聞いている。四天赤王神龍號炎の末裔が炎龍だと言われている。
神龍種のように、理由も無く始祖神龍の末裔と名乗っている意味不明の種族とは違う。
彼はまだ若すぎて、幼竜に過ぎ無かったから、体型も小さくしていた。今ほど力がみなぎり強くなると成竜に自然に成長するのである。
自分が変化しそうだとは、皆に説明している。
成竜になるとどこが変わるかだが、強くなる。多分今の何十倍も一挙に強くなるだろう。
それと、大きくなる。普通成竜は、三十メートル以上だ。しかし、そんなに巨体になると、人間のメンバーとは一緒に居られない。
巨大竜種の場合、大抵は変身の魔法で、小さく化ける。彼も実は最近、大きくなった自分を抑えて小さく化けているのだ。
魔物が現れた。そいつは、とんでもなく大きく強かったがもちろんラーサイオンの一撃がずっと上回っていた。
深層です。
少し慌てて投稿したので校正ができていません。誤字脱字本当にすみません。先に謝っておきます。
校正済ませました。まだ誤りがあるかもしれません。分かりにくい表現なども訂正しました。2015.10.25.6:40




