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良くある転生物語 聖と魔  作者: Seisei
第五章 青春期 迷宮探検編

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第四十 七人の冒険者

いつも読んで頂きありがとうございます。


ついに、待ちに待った戦いのシーンです。我慢しました。


しかし、まだまだ序の口ですが……

第四十 七人の冒険者



 『鷹』リーダーのトマス・リュシュリューは、幅広のグレイモアを、横に殴り付ける。


 重武装戦士達の分厚い盾の隙間から入ろうとした、小ぶりの魔族の首が飛ぶ。


「聖唱師。重武装戦士の体力回復! 魔法師。近くの魔族を凍らせろ! 薬師。治療薬をあるだけ使いまくれ!

 皆。救援は、直ぐにくるぞ。頑張って持ち堪えろ」


 トマスは、声を限りに叫ぶ。


「生態学者。魔物のレベルは?」


「レベル十から十五。強獣クラスです」


「何? こんな迷宮如きにレベル十五だと?」


 トマスは、頭を抱えたくなる。レベル十五の魔物などは、三十人でギリギリ狩れるかどうかの立派なメインを張れる魔物だ。


 そんな奴が、この魔物の群れの中に混じっていると言うのだ。


 何ということか。数が多いだけでも、とんでも無いのに、その上、ハイレベルと言うのだ。


 もともと、時間の問題だとは思っていたが、猶予は、思いの外、短時間だ。


 カツン! ガツン! と重武装の戦士達の盾襖たてぶすまが、恐ろしい魔物の大群の圧力に、弱々しく、揺れている。


 今にも、盾が分かれて、魔物の大群が雪崩れ込んできそうだ。


 三十人程の戦士達が、全力で、魔物の侵入を阻んでいるが、今にも防壁を突破しそうな程の激しい激突が何度も何度も繰り返されている。


「トマス殿」


 と、生態学者殿の発言。


「なんです?」


 トマスは、いちいち上品な学者にイライラする。サッサと要件を言えよ。と思っている。


「魔物レベル十八のギガンデスが現れました」


 魔物レベル十八なんぞは、反則だ。そんな魔物は、普通大切な宝物の守護者だとか、さらに危険な魔物の付き人みたいな事をしているはずだ。何より厄介なのはこいつら級になると魔法使うのだ!


「魔法師! 『サイレント』を詠唱」


 トマスは、叫ぶ。その時、強烈な爆発音がした。


「  「「『『 ドカン!!! 』』」」  」


 かなり強い攻撃魔法だ。


 重量百キロを超える、鉄の塊のような重武装戦士達がトマスの足元まで飛ばされてきた。


「「「「突破されるぞ!」」」」


 トマスは、自らグレイモア(大剣)を大きく振りかぶりながら突進する。


「剣技 『スカッシュ』!」


 トマスは、疾風のように走りながら、巨大な一つ目の魔物に向かってグレイモアを叩きつけた。


 剣技『スカッシュ』が炸裂。ギガンデスを大きく仰け反らす。


 パーティ幹部のガント騎士が数人の部下と共に馬ごと突撃してきた。ランス(長い槍)をギガンデスにぶつける。


 ギガンデスの鉄のように硬い表皮にランスが激突し、派手な音が鳴り響く。激突したランスが弾け飛ぶ。


 のけ反っていたギガンデスが背後に吹き飛ぶ。そのままギガンデスの後ろから迫っていた魔物の群れに派手に倒れこんで行った。


 直ぐに、重武装戦士達が剣と盾で、魔物達の群れに激突してゆく。


「すまん。ガント騎士長」


「アイリスの愛馬が持って行かれた」


 ガントが苦々しく言った。


「魔物を見ても怖気付かない、いい馬だった」


 戦場では、馬を傷つけないのが騎士のたしなみとされていたが、そんな約束事や騎士道精神を言っても始まらない。


「魔法師。戦場に体力を! 錬金術師、バリケード強化!」


 トマスは、叫ぶ。声が枯れてきた。


 その時だ、魔法師が叫んだ。


「強い念波です。念波の通り言います『こちらは、七名のパーティ。救援に向かう。転移魔物を使うので、魔法師に転移位置を指示さて欲しい』


 リーダー。どうします?」


 トマスは、たった七人のパーティでは、焼け石に水かとも思ったが、何か閃きがあった。


「魔法師。転移魔物とはどれほどのレベルだ?」


「転移魔物が使える魔法師など聞いた事がありません。しかしこの強い念波にしても、私の想像出来ない遥かな高みの老師かと」


 そう答えた魔法師は、上級第一等白銀級の実力ある魔法師だ。魔法師達の指揮官だった。彼が想像も出来ないと言っているからには、相当期待できる。


 トマスの胸が高鳴る。最低でも王級の魔法師、あるいは想像を遥かに超えた高レベルの魔法師かもしれない。まさかとは思うが、伝説の賢者サロン師が迷宮探索に出張ってきたのかもしれない。


 高レベルの助っ人は、烏合のパーティーなどよりもありがたいかもしれない。ここで王級の魔法師が来てくれれば、相当助かる事は間違い無い。


 王級魔法には、大隊級を撃破する広範囲魔法があるはずだ。この魔物の大群を撃破できるかもしれない。しかし、トマスは、たとえ王級魔法師が来ても、この状況を打破できるとは本気で思っていない。


 目の前の、魔物の群れは、王国の中央のハイエンドの軍団でないと対応出来ないのでは無いかと思われた。


 しかし、少しでも、望みがあるなら藁をも掴む思いですがるだけだ。


「魔法師。位置マークの思念を送ってくれ。皆、転移魔法で救援がくるぞ! そこの場所を開けてくれ」


 直ぐに、場所が開かれる。


 皆が遠巻きにして、場所を作る。皆が期待のこもった目をして周りを囲んだ。こんな窮地に、訪れる魔法師だ。転移魔法などは、御伽話か、古い迷宮やダンジョン。魔法の塔に残された古代魔法でしか無いものだと思っていた。


 トマスも転移魔法がどのようなものか、興味があったが、なるほど。突然現れるのだ。


 何の知らせもなく、これをされたら飛び上がるだろう。


 トマスは、現れた七人を見て、体の緊張感が水のように流れ落ちてゆくのを感じた。


 誰とも無く、ため息のような、感嘆の声が、「「「おお〜〜」」」と響く。


 何とも、神秘的なパーティーだった。男が三人、女が三人、もう一人は人間ではなさそうだ。竜種だろうか。しかし赤い鱗の竜種なんて見た事が無い。


 まず、目が吸い寄せられたのが女三人にだった。何しろ美しい三人だ。しかも一目で個性の違うことがわかる。


 全身紫色の女性がトマスには一番好みに映った。柔らかい銀髪の巻毛が大きく広がって、キラキラ銀色に輝き、美しい顔には女神もかくやあらんとばかりに、優しい微笑みがたたえられている。美しく上品な薄紫色のマントと紫色に輝く胸プレートが少し艶やかさを加えて、女性としての魅力を大きくアップさせている。


 その隣の青色の女性は、また違う意味で美しい。黄金の髪が同じように広がり、青を基調としたマント、胸プレートは、紫の女性と同じ形だった。二人は、体型などがよく似ていて双子のようだ。しかし、きりりと引き締まった口元が強い意志を感じさせる。


 紫が癒し系、青がしっかり系だろうか? もう一人の女性は、魔法師だろうか? 聖唱師だろうか? 彼女も豊かな金髪で、長身でグラマラスだ。整った顔立ちは、少し冷たい感じの美人。彫像のような無表情な感じだ。こんな感じの美人が好みの男は多いだろう。いわゆる近づき難い感じの美人だ。


 それに、立派な見たことの無いアーマード。見たことのない竜種。この、センスの良さそうな魔法師が転移魔法師だろうか? しかしもう一人の黒ずくめの男。そう。この男だ。


 トマスは、勘のよい男だった。誰も彼も凄い七人だが、この黒ずくめの男は、他の六人とは違う。そう悟った。


 トマスが、アールに挨拶のため近寄ると、アールが手でトマスを制した。


「貴方がリーダーのトマスさんですね。私はレイライト。この七人のパーティーのリーダーです。挨拶は後で、外の魔物をどうにかしましょう」


 アールが皆に合図する。


 七人が、重武装戦士の後ろに一列になる。


 すると、不思議な事に、ガンガンとやかましく重武装戦士の盾に仕掛けられていた攻撃が止んだ。


 強い魔物の群れの圧力に力いっぱい対抗していた、重武装戦士達がたたらを踏んで前に進んだ。


 重武装戦士達に出来た、隙間を縫うように、七人はトマス達が作った横穴から、迷宮の洞窟の中に入ってゆく。


 次の瞬間。洞窟から眩しいほどの光が差し込んできた。トマスもつられるように、洞窟に入る。


 その光景は、トマスの生涯の鮮明な記憶となって孫子の代まで語り継がれる事になる。


 その洞窟は、と言うのも変なもんだ。この洞窟から横穴を作って逃げ込んだのだから。


 しかし、そこがどんなところか、トマスは初めて分かった。


 何しろ巨大な洞窟だった。そして、トマスが絶句したのは見渡す限り埋め尽くされた魔物の群れ。


 数なんて、数えられない。そのおぞましさと言ったら身の毛もよだつ。


 しかも、ギガンデス級の巨大な魔物が至る所にいるのだ。


 レイライト達が、半円になって広がって行くに連れて、魔物が遠ざかって行く。


 トマスにも、魔物の気持ちが分かる。七人からは、鬼気迫る闘気が感じられるのだ。


 彼らの闘気に恐れをなした魔物は、次第に後ろに下がり、次第に怒涛となって逃げ始める。


 蜘蛛の子を散らすとは、これだろうか? 後に残ったのは、大型の魔物だけとなった。


 その大物の中には、魔物レベル二十を超えるような魔物の巨体が一際目立っている。


 大物の魔物達がその巨大なボス達の周りに集まり始め、ざっと二十ぐらいの集団になる。


 こいつらもこの七人が強敵だと分かったのだ。


 彼らの出現で状況は一変してしまった。振り返ると、『鷹』のメンバー達も横穴から出てきて、目の前に広がる光景に見入っている。


 迷宮の薄暗いはずの洞窟が真昼のような光に照らされている。頭上にある光球が太陽のようだ。


 七人の誰かが作ったものか?


 しかし、この七人は普通のパーティーと違う。それぞれがばらばらになって魔物の集団にゆったりと歩いて近づくのだ。


 一匹一匹がギガンデス級の魔物が百体あまりさらに巨大なボス級魔物を取り巻いている。それが約二十。トマスは、その一つに向かう紫の美剣士の姿を追う。


 美しい剣を片手で軽く持つ小さな姿と巨大な魔物群れとがあまりにもミスマッチだ。


 次の瞬間、紫美剣士は、突然砲弾のような速度で跳躍した。


 空中の彼女は、片手持ちの剣を横に振るう。その一撃の恐ろしい威力に、トマスは、己が目を疑った。


 百体あまりの魔物の群れに斬撃が降りかかった。恐ろしい爆発が魔物の群れを襲う。一瞬で魔物の群れは、残骸になっていた。


 ボス級魔物も全く相手にならなかった。


 目を転じると、青色の美剣士が、さらにすざまじい戦い方をしていた。


 彼女も弾丸のような速度で飛び出すと、魔物の群れに飛び込むと、魔物は、爆発したかのように四散し、消し飛んで行く。


 そのままの速度で、次の集団に飛び込むと、魔物の群れの中程で剣を一閃。魔物達の身体は一瞬で上下に真っ二つになる。


 魔物達が断末魔の叫び声を上げる前に次の集団に飛び込む。瞬く間に三つの集団を殲滅していた。


 目を転じると、センスの良い感じの魔法師の男が魔法をかけているところだ。


 炎の巨大な竜巻が魔物の群れを取り囲んだ。魔物達は、ギャーギャー叫んでいる。


 炎の竜巻は、勢いを増し。恐ろしい爆炎となって魔物達を燃やしつつミキサーにかけて行った。いっそ魔物達が、 可哀想になるくらいだ。


 目を転じたトマスは、さらに恐ろしい光景を目の当たりにした。


 レイライトと名乗ったリーダーは、魔物の一番集団が多くある左手に向かった。そこには七つの魔物の集団があった。


 多分、全部で千程も魔物がいるはずだ。


 レイライトは、丁度その七つの集団の真ん中あたりに立っていた。


 それは、何の予備動作もなく起こった。


 七つの集団の魔物の群れ約一千体もの魔物が何者かに掴まれたかのように、宙に跳ね飛んだ。それから魔物達は、巨大な透明の巨人に掴まれたかように一点に向かって恐ろしい勢いで飛び込んでいった。


 物凄い物量の魔物が空中の一点に凝縮される。そんな物量が、ありえない大きさに、さらに圧縮されると、次の瞬間に魔物達は、一点に凝縮し、消えてしまった。それは、転移魔法で消し飛ばすなどとは違う。跡形も残らないほどに圧縮し押しつぶしたのだ。何と恐ろしい魔法だろうか。千匹もの魔物が消えて無くなるほどに押しつぶされたのだ。


 この強さは何だろう、想像を超えている。トマスが想像した伝説の賢者サロンに描いていたイメージすら遥かに凌駕しているように感じる。


 その光景を見たトマスは、惚けたように、ほとんど全滅してしまった魔物の群れや七人のうちの他の者達の活躍を見渡した。


 何て者達だ。彼らはパーティーどころか、たぶんたった一人であの魔物の大群を殲滅できるのだろう。


 トマスは、レベルの差を感じるどころか、神々の奇跡のスペクタクルを見物させられているカエルのような気分になった。


 振り返り、同じように惚けた顔の仲間達の姿を眺めやって、安堵の溜息を大きくつくと、ようやくトマスは、その場に座り込んだのだった。


この、土日は頑張って更新します。

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