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良くある転生物語 聖と魔  作者: Seisei
第五章 青春期 迷宮探検編

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第三十八 冒険前夜

いつも読んで頂きありがとうございます。


第五章 青春期 迷宮探検編


第三十八話 冒険前夜


新章にはいりました。さっさと迷宮へ行きたいところですが、少し閑話とさせてください。


第三十八 冒険前夜


 フリンツ・ホップルは、アーマード大会で優勝したおかげで、アーマード使いとしてのランクが上昇した。もともとS級操機士だったフリンツは、一挙にランクSSS級操機士となった。


 決勝戦でフリンツ達の活躍はアーマード界の伝説になっていた。


 彼が闘気剣技をアーマードの戦闘に取り入れた事が特に評価された。


 これまで、アーマードは魔法の使えない戦士用の装置ぐらいにしか捉えられていなかった。


 ところが、マリアージュやアルテミシアのように、生身の人間の方がアーマードを着た歴戦の勇士よりも強い事が証明されるとアーマードには存在価値が無くなる恐れがあった。


 しかし、フリンツは、闘気剣技を取り入れるとともにアーマードが持つ可動性に着目して、アーマードの攻撃力を最大限に活用する方法を示した。


 事実、フリンツは、彼より上級のはずの美少女剣士達よりも多くのアーマードを仕留めた。


 フリンツは、これまでのアーマードの在り方にアンチテーゼ(反対意見)を投げ込むと同時に解決策まで提示すると言う離れ業をやってのけたのだ。


 今後アーマード使いは、真明流の闘気剣技を修得する者が増えるだろう。


 フリンツ・ホップルは、一躍有名人となったが、マリアージュとアルテミシアもフリンツに負けない位の人気が出た事は、言うまでもない。


 ちなみに、フリンツには、もう一つ嬉しい出来事があった。ドートマルキ商会から宣伝料として、破格の報酬が支払われた事だ。


 無一文だった彼の口座には、賭けですってしまった金額と比較すると桁の違う金額が振り込まれていた。


 また、アーマード選手権大会の優勝賞金もいずれ入金されるであろう。


 フリンツは、当座の生活には、困らなくなったと、ヨランダードにとても感謝した。ヨランダードは、ドートマルキ商会はこの取引で大きな利益を得たのだと、フリンツに理解できない説明をしてフリンツを困らせた。


 この時、フリンツは知らなかったが、彼は正式に聖級騎士として、叙勲爵位を授けられていた。叙勲爵位は、名誉爵位で領地を持たない貴族階級で年に一回程度の手当てが支給される。彼が今まで見た事も無い桁の手当てが振り込まれるのは少し先の事だ。


 フリンツ自身は、もう忘れてしまっているが、アールは報酬の事を執事にきっちり話していて、執事が当然取るべき処置をしたのである。


 アールはフリンツの様な庶民代表のような者でも、人生を通じて一度も差別する事なく積極的に登用した。前王ギルの思惑どおり、ハイエンドの独裁体制がアールを中心に変わり始めたのかも知れなかった。



✳︎



 冒険者ギルドの実地試験の結果は、概ねアールが予想していた通りとなった。冒険者ギルドは、優秀な人材を常に渇望していたから、アール達の加入にギルドの本部までもが興味を持って魔法学院支部に照会してきたほどである。


 魔法学院支部では、時々とんでもないレベルの加入者が来る事がある。


 世間知らずのお坊ちゃんが初めて世間との繋がりを見つけて飛び込んで来るのだ。冒険者ギルドは、ギルドの存在意義に共感する者万人に門戸を常に開いている。


 魔法学院からギルドに入会するような冒険者は、例外なく優秀で勤勉だった。


 ちなみに、迷宮クエストの条件だった重武装剣士を二人以上パーティーに参加させる事については、アールは正攻法で行く事にした。


 美少女剣士二人を重武装剣士として受験させたのだ。もっとも、ギルドの試験官は、最初外見だけで失格にしてしまいそうになった。


 しかし、彼女達が五十キロの重りを体に括りつけて剣技を披露するのを見て試験官は、開いた口が塞がらなかった。


 五十キロもの重りをつけて、軽々と十メートル以上を跳躍するような受験者は初めてみた。彼は、彼女達の演武の途中で早々に手書きで「試験官レベルが足りず計測不能。S級以上。帝級ないし大帝級レベル剣士か」と書き込んだ。


 アーマードについてはスリーエス級との選手権大会で出された鑑札のみで無受験パス。


 アール、ヨランダード、メイア、ラーサイオンは魔法学院が発行した、帝級レベル魔法師の資格認証により無受験パス。これはシーナ教授から貰ったものだった。


 こうして彼らは、水晶迷宮のクエストを受諾する資格があると承認された。



✳︎



 冒険者となって、迷宮に入る前に、アールはマリアージュとアルテミシアに身分と、現況の説明をした。改めて同道の意識を確認すると、二人はもとよりアールを師匠と思っていて、剣の修業のために、もちろん同道するつもりだと表明した。


 冒険者の事は経験者のフリンツから皆にレクチャーしてもらう。


「いゃ〜。俺なんかがねぇ」とかなんとか言いながら、フリンツは、饒舌に面白おかしく冒険者のイロハをレクチャーしてくれた。


「冒険者は、プライドが高いからね。彼らの一番の欲は名声欲だと思う。

 有名なパーティーなんぞ、王様よりも。アッと。その教皇様なんぞよりも威張ってるね」


 フリンツはそこでせきばらいをしてコッソリとアールを覗き見る。


 アールは、いつもの明るく優しそうな笑顔だ。あのロンハードとの剣の試合の時に見せた険しく鋭い顔を思い出してフリンツはゾッとした。


「とにかくだ。冒険者野郎ってのは鼻っ柱が強くて独善的で自慢話が大好きな粗野な奴らだ。


 しかし、一方奴らは、実力主義現実主義で、気のいい奴らである。しばらくすれば我々を受け入れてくれるだろう。


 注意して欲しいのは、ヨランダードとレイライト様。それ以上にメイアちゃんだ。


 君たちは、とっても貴族過ぎる。少し庶民風というものを学んで欲しい。庶民は、君たちみたいに優雅で上品にはしていない。マリアージュ様やアルテミシア様を見習って対応して欲しい」


 フリンツの勝手な意見だ。


「なぜ、私だけ『ちゃん』なの?」


 すかさずメイアが突っ込む。そこはアールも聞いてみたかった。メイアの性格からすると、ちゃんよりも様の方が似合うと思う。


「いい質問」


 フリンツが嬉しそうに返したから、メイアが嫌そうに顔をしかめた。


「何だか、嫌な予感がするからどうでもいいわ」


 メイアが冷たく言った。


「メイアちゃんは、内心は優しいお姉さんだと思ってね。だから、期待値を込めて、メイアちゃんって呼ばせてください」


 もう、メイアは、そっぽを向いて答える素振りもない。だいたい期待値って意味不明。


「ああ。続きです」フリンツが誤魔化すように続ける。「冒険者野郎との付き合い方。

 彼らとの喧嘩は厳禁だからね。変な嫌がらせがあるとかだけでなく、彼らから情報をもらえなくなるからね。


 現場での生死は、情報の過不足とその情報の活用方法の良否が重要ってこと。


 それと、冒険者野郎は、皆さんと比べるとてんで大した事がない。まぁ大した事ないのに口だけは達者な奴らだから、そこんとこあまり刺激しないでやって欲しい」


 アルテミシアがクスっと笑う。何だか、自分の言い訳をしているように聞こえたからだ。


 フリンツは、アルテミシアに笑われると弱い。えへへと頭をかいている。


「とにかく。冒険者達に混じるので、皆さんも冒険者らしくね。


 水晶迷宮についてですね。うーむ。こいつの説明、難しいね。迷宮って何だか迷路って感じに思うよね。でも、水晶迷宮にしろ金剛迷宮にしろ、別の世界をイメージして欲しいんだ。


 中は、暗いとこも真昼のように明るい所もある。水晶迷宮なんかは、中央に巨大な水晶があって、真昼のように明るいのに驚くと思うよ。


 迷宮の中は、広いところじゃ空みたいなところもあれば、狭いところじゃ這って進まなけりゃならないところまでいろいろさ。


 まぁ、でも思ったよりも広々してると思ってくれていい。


 水晶迷宮は、コアに宝石がたくさんあると言う噂があって昔から、大勢の冒険者に探索されている迷宮だが、全容は分かっていない。


 だいたい三十層ぐらいまでは探索し尽くされてマッピングされてるはず。


 魔物が、大量発生しているって事だから、迷宮内の様子も違う物になってるのかも知れない。俺は、迷宮には八階層までしか入った事は無い。そこの魔物は、大した事は無かった。


 迷宮には、要所要所にキャンプが有ってキャンプからキャンプへ移動しつつ階層を下り、キャンプが無くなってからは自分達でベースを作りながら降りてゆく感じだ。


 魔物は、下に行けば強くなるって言われてるが分からない。


 俺の知識じゃ知れてるな。冒険者の装備は、だいたい書いておいた。レイライト様は、必要最小限持てば、移動魔術もあるし、結界空間もあるから心配無用だそうだ。


 我々は、レイライト様の魔法のおかげでかなりの時間を制約できると思う。


 しかし、迷宮には忘れてはならない特性がある。魔法無効化空間があるって事。レイライト様は、その対応を考えて下さっているようだが、とにかくあらゆる魔法がキャンセルされてしまう」


 ここで、マリアージュが手を挙げた。質問だろう。フリンツがどうぞと手で合図を送る。


「レイライト様は、闘気も魔法の一種と仰られているけど、闘気も使えなくなるの?」


「その事は、私から話そう」と、アールが話を引き取る。「いろいろ試した結果、闘気や闘気魔法には、魔法無効化の効果は無い。ただし、魔力を食べるなどの魔物の場合、魔力が枯渇して使えなくる理屈は覆し得ない。ただそんな魔物も『闘気鎧』を破ることはできないだろう。


 なので、皆には『インビジブル』の魔法を覚えてもらう。『インビジブル』は、『闘気鎧』の中に魔力・聖力をしまい込む魔法と言うか、技だ。


 これを使えるようになると、敵からの『探知』の魔法や『識別』の魔法が無効化される。私は常に使っている」


 『闘気鎧』と『インビジブル』は、ある程度、能力が高くなると、敵から身を隠せ無くなる。


 探知計の魔法は、魔力・聖力の元を探知するからだ。魔王級や聖王級以上の魔力・聖力は、とても強くどこにいても爛々と輝く太陽のように目立つ。


 ヨランダードは、その顕著な例だ。彼は太陽を通り越して、ノブァのように光り輝いている。ラーサイオンも、メイアもなっちゃいない。


 そろそろ、魔力・聖力の総量が限界を超えてきた。あまりにも強い魔力・聖力がだだ漏れになっている事にも耐えられ無い。


 魔力・聖力がそれ程大きく無い、フリンツ、マリアージュ、アルテミシアの三人も、この際、この魔法を覚えてもらうと同時に、魔力・聖力の総量を強くする修行をさせようとアールは考えていた。



✳︎



 その修行と並行して、冒険者としての装備の強化をする事にした。日頃、アールは、目立たないように良い武器や防具などはつけないようにしていたが、迷宮に入る前に万全の態勢を整えたかったのだ。


 装備と言えば、アルフレッドの大宝物庫だ。伝説の武器や防具を始め、何でもある。


 アールは、移動魔法を使って扉まで皆を連れて来て、扉を開く。さすがのアールでも、大宝物庫の結界は破れない。


 皆を招じ入れる。


 皆は、アレフレッドの大宝物庫を見てただ、畏怖の気持ちで倒れそうになった。


 想像してみて欲しい。大英博物館所蔵のような豪華な宝物が見渡す限り並べられている。


 それを目の前にして、好きなものを好きなだけ選べと言われたら? 彼らはただただ口を開けて広がる空間を呆然とみていた。



✳︎



 全ての準備が整った。アール達七人は、出発した。いざ、迷宮へ。


 そこで、どんな冒険が待っているのか。


次回から本格冒険活劇を目指しますので、よろしくお願いします。

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