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良くある転生物語 聖と魔  作者: Seisei
第四章 青春期 魔法学院編

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第三十六 剣姫と剣鬼

いつも読んで頂いてありがとうございます。


サクサク更新しますのでよろしくお願いします。

第三十六 剣姫と剣鬼



 水晶の迷宮探索に入る為には、重武装剣士が必要だという。アーマードの故障などを考慮して必要なのだという。アーマード無しでも良いが必須とされるのはアーマードが高価だからだろう。


 剣士のアテだが、アールは、皆を連れて、剣の聖地に行く事にしたのだ。


 一度は行って見たかったし、さらに相当使える剣士も見つかると思ったのだ。さらに、ラーサイオンは、まだマシだかヨランダードもメイアも剣術は全くの素人。少しは剣の練習をしつつ迷宮探索ができる程度の体力強化の必要もあったのだ。


 幾ら魔法専科のメイアとヨランダードだが今の体力では迷宮探索は無理だろうとの判断だ。


 ちなみにフリンツ・ホップルもアーマード選手権大会に出るまでの最低の準備期間を除き仲間との懇親を深めるために参加する事になった。


 剣の聖地、マランダンは、高地に建つお寺のような場所だった。


 マランダンの案内人は、アールの剣の鑑札を見てギョッとした。


 それは、ロンハードから貰ったものだ。このマランダンでロンハードの権力は絶大だ。


 アールの鑑札がどのような意味なのか、一行には不明だったがアールが剣の腕前でも大変なのは薄々知っている。さぞ驚きの内容なのだろうとしか思えない。


 因みに、ムラサキ流の奥伝の鑑札を見せたフリンツにも案内人は、恭しく先生と呼んできたから、あの驚きようは相当なものだとだけわかる。


 ラーサイオンは、アールから印可(いんか:技の殆どが使える位)の鑑札が与えられていた。ラーサイオンの腕前からアールがロンハードにもらっておいた物だ。印可は、上から四番目の位だ。


 あまり、剣術の発達がしなかった魔界では、人間界の様に剣技が多彩ではないのだ。


 ラーサイオンは、魔界では剣術は一流だと思っていたが才能に偏った独学の剣術に過ぎない。今回の逗留とうりゅうで最も多くを学べるのはラーサイオンだろうと思われた。


 アールは、逗留のための費用に充ててもらうためお礼を案内役に支払っておく。


 相当な額なのだ。これは日頃からのロンハードへのお礼の意味も含まれている。


 同じ様に、ヨランダードもドートマルキ商会としての多額の寄付をしている。


 一々、この集団は、桁違いの行動を取る。


 多額の寄付を受けて案内人は、目を白黒させている。


「大変、忙しいと思いますが、ロンハード卿が、おられたらお話したいのでお伝え頂けませんか」


 アールは、頼んでおく。





 ロンハードは、直ぐにやって来た。


「どなたかと思いましたぞ。突然のお忍びですか?」


 ロンハードが屈託無く言った。


「中々、良いことろですね。師匠」


「師匠は、やめてください。今日の私があるのは貴方様のおかげ。私にとっては貴方様が師匠です」


 二人は、固く握手を交わす。子供の時から八年間、剣の先生として毎日、稽古をつけてくれた。恩師だ。


 ロンハードは、闘気魔法の基礎を作るのにいろいろな面から強力してもらった。それだけで無く世間常識の師匠でもある。


 その後も、機会が有ったら、王宮に尋ねて来てくれていた。


 今回もラーサイオンの印可の鑑札を手配してくれた。


「レイライト様でよろしいのですな」


 ロンハードが尋ねる。


 アールがうなずく。


「お倒れになったと聞きていたので心配いたしました。お元気なお姿を見れて嬉しゅうございます」


 皇太子御不興の報の事を言っているだろう。これは、敵を油断させるためとアールが公式の場に出なくても良いようにするために取った手立てだ。


 アールの代わりは彼の兄弟達がやってくれているだろう。


「師もお元気そうでなによりです」


「この度は過分のご援助もして頂きましたそうで、この道楽でやり始めた道場が少しでも長くやっていけます。ありがとうございます。

 こちらがドートマルキ商会の? 過分なご支援ありがとうございます。

 本日からしばらく逗留されると聞いております」


 ロンハードは、本当に嬉しそうだ。


「しばらく厄介になります。それと今回は、少々厄介ごとのお願いがあるのですが」と、アール。


「と申しますと?」


「腕の立つ者を二人ほど探しているのです」


「腕の立つ。しかし、レイライト様のお眼鏡に叶う者などおりましょうか」


「当山で一番使えるのは?」


「そうですな。どの様な用向きで必要なのでしょう?」


 アールが説明をするとロンハードは、首を傾げてしまった。


「腕は立つのですが、重武装剣士としては」


 ロンハードが言い淀む。





 ロンハードは、一見は百聞にしかずとばかりに本人を紹介すると言う。


 アールが、道場に行くと、なるほど、ロンハードが言い淀む意味が初めて分かった。


 案内されて、アールは、ロンハードがどの弟子の事を言っていたのか一目でわかった。


 しかし、よく見ると同じ様なレベルの者がもう一人いる。二人は、どこか似ているので血縁なのだろう。


 なるほど、ロンハードの言っていた二人がこの子達の事だと分かった。


 確かに、剣技が凄いことは一目で分かった。


 身に纏う闘気だけでも他の剣士とは比べ物にならない。


「なるほど。よくこんな二人が揃いましたね」


 アールがロンハードに感想を漏らした。


「何だか、この二人は無性に、引き込みたくなりますね」


 アールが、そう言うと、ロンハードが笑って答えた。


「殿下。無責任な事を仰いますな。剣の聖地に二人。しかもあれですぞ。周りの者はやりきれんと思います。

 何とか、少しでもあれらに対抗できる者が現れんとあいつらは、とことん歪んでしまうと思うのです」


 アールは、二人の姿を交互に眺めて、なかなかそんな都合の良いことにはならないだろうと思った。


 それ程、この二人は、ずば抜けた剣技を示していた。


「最近は、私でも二手に一度はヒヤリとさせられる瞬間があります。

 あの左側の者はどちらかと言えば自信過剰家。このままではつけ上がりどこまでも自己肥大してしまいかねません。

 有望な若者がそんな事で自分を失い将来を棒に振るかもしれないと思いながら、剣の真の恐ろしさを教えられぬ不甲斐ない老骨が悔しくてなりません。

 殿下なら、あの二人の鼻柱をへし折られることはたやすいでしょうが」


 ロンハードはそんな二人の高弟が可愛くて仕方がない様であった。老骨だとか教えられ無いとか、その言葉は、本当の意味では無いだろう。


 師匠にそこまでいわれては、手合わせしないわけに行かない。


「手合わせしましょう」


 アールは、そう言った。





 マリアージュは、美しい金髪の後ろ髪を大きく揺らして、脱兎のような素早さで、相対していた大男に飛び込んだ。


 あまりの素早さに大男は、身動きも取れないまま、マリアージュの剣戟が闘気で守られた胴に情け容赦なく叩き込まれた。


 ドカン! と大きな音が炸裂すると、大男が吹き飛んだ。


「それまで! 整列!」


 いつの間にやって来たのか気づかなかったが大師範のロンハードが闘気の乗った下腹に響く声で命じた。


 マリアージュの剣を受けた大男が咳をしながら立ち上がり高弟達の座るところに這うようにして行くのを見送り、マリアージュは、額の汗を稽古着の袖で拭いて、師範席の方に向かう。


 同じように、彼女の双子の妹アルテミシアも美しい額に汗を光らせながら師範席に歩いてきた。


 しかし、今日はロンハードが二人に、待ての合図を送った。師範席ではなく、高弟側の席に回れと言う合図だ。


 道場では、役席の有るものが上席に座る。それ以外は、師範席に対面する弟子達の席に座る。


 弟子でも高弟達は、別の一角に並んで座る。


 普通マリアージュとアルテミシアは、師範代として師範席に座る。それが高弟側に座れと言う事は、稽古を受ける側に回れと言う意味だと解して、マリアージュは顔がほころびるのを隠せない。


 もう少しで大師範から一本が取れそうだとの予感があったからだ。


 しかし、大師範の横に、見知らぬ少年が座っているのを見て、マリアージュは怪訝な表情をして隣の妹に目配せする。妹のアルテミシアも美しい顔を傾けた。知らないようだ。


 その男の子は、歳は、マリアージュよりも一つ二つ下と思う。小さいし華奢なので彼女のタイプでないはずの男の子だ。


 しかし、タイプでないはずの男の子なのに何故かとても素敵に見えるのを否定できない。


 無理に難しい顔をして、そんな意識を飛ばそうとするがともすれば男の子の顔に意識が行ってしまう。


 見ると、素直なアルテミシアは、あからさまな色目で男の子を見ている。恥を知りなさい。目で合図を送るもののアルテミシアは全く気付かず目は虚ろだ。


 マリアージュは、わざと視線を外して弟子達の方に視線を移すと、入り口の辺りに客らしき四人の姿が見えた。


 その中に竜種がいるのをみてドキリとする。彼女の故国サースラン大公国は、竜種の国、キンデンブルドラゴンハイツ国と交戦してきた歴史があるからだ。


 ロンハードの声がしたので視線を戻した。


「稽古中だが、本日は、特別大師範のレイライト様がお見えになられたので皆に紹介する。師は、幼少から剣技を磨かれ、当代随一の方だ。

 本来なら一派を率いて奥義の伝播に勤められたいところ、見てのとおり、師は大変若くまた隔絶した実力を持たれているため、大会などにも参加されておられない。

 今後もそのような機会を考えておられないとの事なので、師から教えを受ける事ができるのは本当に貴重な事だ。この機会に己の道を少しでも深めるよう精進しなさい。

 では、師範代マリアージュ稽古をつけて頂きなさい」


 いきなりの指名だった。

 レイライトが高名な師匠の高弟である場合、こんな紹介になるのかなと解していたマリアージュは 大師範の薫陶が自分に向けられていたと知って少し驚いた。


 大師範は、五大陸最強の異名持つ特別な存在であり、真明流の始祖である。それほどの存在に肉薄している自分にこの程度の男の子から教えを受けろとは考えてもいなかったのだ。


 彼女は、ロンハードの薫陶が本気でされたとは思っていない。


 一番強い者からぶつけるなんで聞いた事ない。


「はっ!」


 ロンハードの真意は不明だが、精一杯やるだけだ。まさか負けるなどとは思ってはいないが。


 蹲踞(そんきょ:剣を正眼に構えお尻を下まで下ろす剣道の構え)から相正眼(二人とも中段の構えをとる事)に構える。


 その瞬間から、マリアージュの記憶が飛んだ。


 後で思い出そうとするが良く思い出せない。レイライトの立ち姿は、巨大な巌に見えた事だけが記憶にある。


 達人の域に達したマリアージュは、レイライトの誘いの隙に急流が流れ込む様に全身の闘気を叩き込むしかなかった。マリアージュは、そのまま、レイライトの恐ろしい斬撃に投げ飛ばされて意識が消し飛んだのだった。


 続いて、アルテミシアが全く同じ形で吹き飛ばされる。


 その後、皆伝以上の高弟が全く同じ形で吹き飛ばされて皆が伸び上がってしまうまでそれ程の時間はかからなかった。


 本当に実力差がある場合、相手の思うがままにしか動けない。これが闘気剣技の奥義なのだと見ている者に知らしめているのだと何人の者が気づいただろうか。





 マリアージュが気づいたのは誰かに活を入れられたからだ。何が起こったかは、周りを見ていて直ぐに分かった。


 高弟達が、その実力の順番に活を入れられて意識を取り戻して行くところが見えたからだ。


 マリアージュが真っ先に気を失い。高弟達が実力の順番に同じように、稽古を付けて貰って気を失って行ったのだ。


 マリアージュは、そこで己の愚かさを肌身で感じて顔が赤くなる。馬鹿な勘違いだった。


 桁違いの達人と手合わせした。体が痺れていて、心地よい。恐ろしい気迫に意識が飛んだのだ。


 あまりの剣の達人の前に立つと意識が飛びそのまま昏倒すると言う。しかし、正しく修業すると昏倒する前に体が自然と全精力で反撃するとロンハードに教えらていた。


 それが起こったのだ。ロンハードの皆伝位以上の高弟達が皆そうして倒れたと聞いてマリアージュは誇りに顔がほころびる。


 今は、そんな思いに変わっている。あまりにも恐ろしい気迫と実力差だった。傲慢の鼻柱は、見事に叩き潰されていた。レイライトには自分の実力は紙屑程度の価値も無いだろうと分かったのだ。


 こんな達人に少しでも対抗できると思っていた自分がバカバカしいほど滑稽だった。


 見ると、大師範ロンハードとレイライトとが相対峙するところだった。


 その戦いを見せるために、活が入れられたのだと、気がついた。


 マリアージュはその対決を固唾を飲んで見入った。





 ロンハードが上段。レイライトが下段、地の構えだった。


 この形は、上段が捨て身に飛び込む一手となる。レイライトが誘っているのだ。


 最初にこの形になると言うことは、上手がレイライトで下手がロンハードである事を示していた。道場で見ている者達からため息のような驚きの声がした。


 最初に攻撃を仕掛けたのはロンハードだった。この二人の構えでは、それがセオリーだ。


 ロンハードが上段から気迫を込めた斬撃をレイライトの頭に向けて叩き下される。ロンハードの前足が床を恐ろしい勢いで踏み込んでいる。


 ドスッ! と鈍い音ともに床が振動した。次の瞬間、ロンハードの剣戟が作り出した衝撃波が道場で見学してる全ての者の下腹を激しく打った、


 すなわち、たとえロンハードと言えど、レイライト相手ではマリアージュ達と似た経緯で試合が進んでいる。


 しかし、レイライトはロンハードの斬撃を跳ね上げていた。


 その衝撃波だったのだ。


 二人の位置が入れ替わっている。レイライトが八相の構え(はっそうのかまえ:野球のバッターのような構え)でロンハードが下段、地の構えだ。


 ロンハードが気迫のこもる声を上げる。


 レイライトがそれを無言で跳ね返す。


 レイライトが取った八相の構えは、肉を切らせて骨を断つ構えだ。


 左肩を相手に見せて、胴を隠す。剣戟の速度は上段より遅く正眼の構えのような広がりもない。


 右からの袈裟懸けの一太刀に全精力を掛けて剣戟を叩き込む構えである。


 対するロンハードの地の構えは、正眼よりやや下に剣尖を置いて、袈裟懸けを払い上げるための助走距離を作っている。剣戟が払われた後、ロンハードの自在の技が繰り出されるための構えである。


 二人の立ち姿がブレたと思ったら、レイライトが剣戟を叩き込んだ。ロンハードがレイライトの剣を跳ね上げる。あまりの早さに二人の位置が入れ替わったとしか見えない。


 ドドーン!


 衝撃波がまた道場を震わせた。


 二人の位置が入れ替わったと思った瞬間、レイライトが第二撃を正眼からロンハードの左籠手(こて:手首)に叩き込まれた。


 ロンハードは、籠手をずらし、そのままレイライトの頭に斬撃をたたみ込む。斬撃を避けつつレイライトが左胴目掛けて、強撃を叩き込む。ロンハードが剣の柄(つか:剣の手で持つところ)の部分でその強撃を受ける。


 「「「ドカン!!!」」」


 恐ろしい衝撃波が道場を揺るがした。ロンハードの巨体が五メートル程飛ばされる。


 ロンハードが闘気を体いっぱいに満たして、体を地面に押し付けて体勢を立て直そうとする。


 バランスを崩す、ロンハードにレイライトの情け容赦のない上段からの恐ろしい強斬撃が叩き込まれた。


 ロンハードは、体制の崩れたそのまま姿から剣を渾身の闘気を込めて跳ね上げた。


 「「「「「「「「「!!!!ドドドン!!!!」」」」」」」」」


 恐ろしい衝撃波が道場を大きく揺さぶる。


 ロンハードがその衝撃波に思わず、剣を頭の上にかざしたまま、床にうずくまった。


「それまで!」


 レイライトの口から初めて気合いのこもった声が聞こえた。


 爽やかな声であった。





 マリアージュとアルテミシアは、凄まじいロンハード師とレイライトの戦いを見ていて、全身から冷や汗を流している。


 見ると、この上段者用の道場で見学していた者は殆ど気を失い突っ伏している。激しい闘気と闘気のぶつかり合いの衝撃に耐えられ無かったのだ。


 彼女達と同様に試合を最後まで見ていたのは、客として来ていた四人と、高弟達だけだった。高弟達のうちでも第五位の口伝くでん以上の者に限られていた。


 それ程の戦いだった。こんな戦いは、五大陸最強を決める剣の大会ですら見た事は無かった。


 この戦いは、本当の意味での最強クラスの戦いの有り様がどんなものかを見ることのできる稀に見る試合だったのだ。


 しかし、二人が頭を下げ、師範席に戻り大師範が皆に話した話がさらに驚きの話だった。


「レイライト様の、稽古は私も久しぶりだったので緊張した。私が真明流を極められたのはレイライト様とこのような稽古を積んだおかげだ。

 レイライト様が十歳を超えられてからは私はもう勝てなくなっていた。その後は、私が逆にレイライト様に稽古を付けて頂く側になった。

 今日、真明流が有るのはレイライト様のおかげだ。

 ここにいる者は、魔法とは無縁の者が多いと思うが、今の剣技が有るのは闘気剣技を考案された、レイライト様の功績なのだ。

 私が常に皆に言っている『剣鬼』様とはレイライト様の事だ。このような機会ができた事は、皆に取っても本当に幸いな事であったと思う。

 なお、レイライト様は、お忍びだ。今日の事で、レイライト様のお名前が世間に広がるような事が有ったらレイライト様の本意では無い。レイライト様のお名前は他言である。もし、漏らしたものは破門だ。良いな」


 頭が痺れてロンハードが何を言ってるのか理解できなかったが、要するにレイライトは、ロンハードの剣の師匠であると言う事なのだろうか?


 破門の言葉はロンハードから初めて聞いた。それ程、レイライトと言う人物は、秘匿を望むのだろう。


 しかし、爽やかで笑顔の絶えないこの少年が、信じられなかった。先程まで目の前にいた、あの巌のような巨人は誰だったのだろうと思った。


 マリアージュの全身が汗で酷く濡れていた。





 レイライト達御一行が、剣の聖地マラダンに逗留している間、レイライトの弟子である竜種のラーサイオンは、闘気剣技の詳細を学んだ。


 フリンツもムラサキ流を返上して、真明流に入門する事とした。


 マリアージュとアルテミシアも彼らの稽古に参加させてもらい、闘気の練り方、その応用などという本当に貴重な教えを受けた。


 フリンツが先にアーマードの大会の準備のためにマラダン道場を去り、しばらくしたある日、マリアージュとアルテミシアがロンハードに呼び出された。


 レイライトが是非二人を連れて帰りたいと言っているとの説明だった。


 ロンハードの話は、彼女達の想像の範囲を遙かに超えていた。


「レイライト様と言うのは仮の姿だ。本当は、マキシミリアン王国の皇太子アールティンカー様なのだ。

 皇太子殿下は、正体不明の敵を追っておられ、その手掛かりを求めて、地下迷宮に探索に行かれる。

 それには、物理攻撃の出来る剣の使い手が必要なのだそうだ。なんでも冒険者ギルドでは、二人以上の剣士が入っている事が条件なのだそうだ。

 その剣士を探して当山に参られたがそなた達二人を見てどうしても仲間にしたいそうだ」


 ロンハードの説明を受けたマリアージュとアルテミシアは、二つ返事で参加すると返事をしていた。





 フリンツ・ホップルは、剣の聖地でアールの手ほどきを受けて、自身の考えが根底から間違っていた事を痛感した。


 アールの教えは、驚きの連続だった。闘気が魔力・聖力からできているなどは、中々信じられ無かったが、アールの指導で次第に練り上げられる闘気に感動を禁じえなかった。


 それに、このメンバーにどうやら二人の仲間が増えるだろうとフリンツ・ホップルは、嬉しそうに考えた。


 マリアージュとアルテミシアは、サースラン大公国のお姫様だそうだが、本当に恐ろしく美しいのだ。


 マリアージュとアルテミシアはそれ程似ていないが双子の姉妹。サースラン族は、とても小柄で華奢な感じがなんとも言えず上品な感じがして可愛い。


 種族の特徴は、色素が少なく髪は白銀か薄いピンクのようになる事が多い。マリアージュは、黄金の髪に透き通るような青い目をしており、それはアール達のハイエンドみたいだか、妹のアルテミシアは、白銀の髪と薄い紫色の目をしている。


 双子だけに体型は、そっくりで、本当に可愛い。


 フリンツ・ホップルは、皇太子からアーマードを貰い、有頂天になったが、実はアールの部下になれた事の方が大きな幸運であったのだと今回は、それに気づかされた。


 アールとロンハードの剣技の試合は、本当に痺れた。あんなのを見せられちゃ、男として身も心も、皇太子に捧げちゃいます。って気持ちにならざるを得なかった。


 フリンツ・ホップルがラマンダの道場を去る時、マリアージュとアルテミシアの二人がそれなりに悲しそうしてくれた事に少し感動した。


 ほんと。可愛いじゃん。殿下。お願いだから連れて帰ってね。とフリンツ・ホップルは、何度も彼女達のいないところでお願いしたのだった。





 ラーサイオン・フュラスは、ロンハードとアールとの戦いで自分の剣技の未熟な事が心底分かった。


 それから進んで、マリアージュやアルテミシアに願って稽古を付けてもらった。


 彼女達は、小さいが本当に強かった。目にも留まらぬ素早さと言い、剣戟の強靱さと言い、身に纏う強固な闘気といい。凄い。


 彼女達の剣の腕に心底惚れてしまう。ラーサイオンは、彼女達の一挙手一投足に鋭い視線を常に投げかけ学んだ。


 できる事なら彼女達を仲間にしてくれないかとアールにお願いしたのだった。





 メイア・スライサイドは、ハイエンド特有の身体能力を発揮し直ぐに剣の切紙(きりがみ:紙にかかれた剣の技を覚えた位)を習得した。


 可笑しいのは、マリアージュやアルテミシアよりも分厚い闘気を纏う魔法の天才、ヨランダードが剣の才能を一ミリも持っていない事だった。


 外見は、アールと似ているがどこか精彩を欠いている。


 しかし、話しやすいヨランダードとマリアージュやアルテミシアは直ぐに仲良くなっている。


 マリアージュやアルテミシアは、ヨランダードの魔法の凄い事に心服した。


 この世界は、魔法ができる方が重要視されるのだ。


 マリアージュは、美しい金髪を煌めかせて透き通る様な青い瞳をキラキラさせたお姫様。自分とは違うとメイアは、彼女達には一歩引いて付き合うつもりだったが、マリアージュはとても気さくな女の子。アルテミシアは、とても繊細で細やかな女の子。それがメイアの人嫌いの性格をそれぞれの良さで包み込んで、直ぐに打ち解けた。


 彼女達は、それどころかメイアが才能豊かなハイエンドで美しいと手放しの賞賛なのだ。


 メイアは、二人がとても気に入っていた。


次回は、フリンツ・ホップルの活躍です。アーマード選手権大会の予定です。


今後ともよろしくお願いします。

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