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良くある転生物語 聖と魔  作者: Seisei
第四章 青春期 魔法学院編

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第三十五 フリンツ・ホップル

いつも読んで頂きありがとうございます。


アーマードを着た重装武装兵団の軍団が見渡す限り平原を埋めつく時、フリンツ・ホップルはどの様な地位にいるのでしょうか。


アーマード軍団の将来の○○○であるフリンツ・ホップルの若かりし無名の日の物語を楽しんで頂けると嬉しいです。

第三十五 フリンツ・ホップル



 フリンツ・ホップルは、ノーマルの貧困層に生まれた。赤ん坊の時に逆立ちが出来たとかいうことで有名になるが。本人は、記憶にない。


 赤ん坊があんな短い腕で逆立ちなんて、物理的に無理に決まっている。


 しかし、自分が飛び抜けて運動能力が高い事はよく分かっていた。そもそも、喧嘩で負けた事はない。


 彼は、同い年ぐらいの子らなら、魔法師の見習いみたいな奴らと喧嘩しても大抵負け知らずだった。


 フリンツは、昔から誰にも見えないとされている魔法が見えるのだ。


 たがら、魔法の攻撃もパンチや蹴りも同じように避ければしまいだった。


 しかし、フリンツは、決して乱暴者ってわけではない。


 彼がアーマード使いになったのは父親の影響だ。冒険者だった父親は、迷宮でアーマードを見つけそれを使って少しは名のある冒険者となった。


 冒険者は、それほど割の良い仕事ではなく、父親は、やりくり下手だったから、アーマードの整備に金を使いすぎた。


 その挙句、アーマードに入ったまま戦死してしまう。アーマードだけは戻ってきたが、それからのポップル家の家計は火の車だった。


 身体能力の強いフリンツは、十二歳で、アーマードに乗り込み瞬く間に、冒険者の上位にまでなり、家計を支えてきた。


 母親も去年亡くなって、今は天涯孤独。自由な身だ。そのために、最近は、冒険者から足を洗い、アーマード闘技者として生活していた。


 危険度は、冒険者よりも跳ね上がるが、稼ぎはまぁまぁだ。


 少しは蓄えもできたので、アーマード選手権大会に出場して、名声とアーマードレベル認証を手に入れる予定だったのだ。


 しかし、この白いやつは、素敵だった。何だかフォルムが柔らかい。塗装の白も上品でいい。


 一目で惚れ込んでしまった。おそらくフリンツの勘がそのアーマードの性能の良さを直感したのと、フリンツは、野生派だが、芸術肌なのだ。綺麗なもの、斬新なものが大好きだった。


 アーマードでの戦闘は、搭乗者の力量半分、アーマードの性能半分という感じ。


 性能のいいアーマードには勝ち目はない。まぁそれほどアーマードは個々の性能差がある。しかし、フリンツは、その常識を覆しつつある。


 フリンツの乗る三式は、アーマードの中では軽量級だ。あと少し軽かったらクラフトになる。


 つまり、軽量級の軽快さがなく、重量級の豊富な武装もない、いわゆる中途半端なアーマードだ。


 しかし、フリンツの身体能力の高さで、その欠点を補ってきたのだ。


 フリンツの戦績は、十二勝七敗三引き分けで、まぁまぁだ。アーマードさえ良ければもう少し戦績を上げることができる。


 アーマードを買い換えるなどは夢の夢だが。


 そして、昨夜フリンツは、大きなバクチをしてしまう。白い素敵なフォルムのアーマードを見てしまうのだ。


 大きさからして、超重量級。メガ・カタクラフト。なんて素敵なフォルムなんだろうか。


 フリンツは、我を忘れ理性が吹き飛び狂気に走る。彼の全財産と白いカタクラフトを掛けて戦ってくれと頼み込んで、その結果がこの状況と言うわけだ。


 うーむ。頭抱えて寝込みたいよ。それに、今日は、整備士のマレク氏とアーマード魔法師のガランティを呼んでいたのだ。


 まぁ。怒るよな。ホント申し訳ないって謝るっきゃない。


 で? この見るからにお坊ちゃんみたいないけ好かない奴は何だ? まぁ、こいつのおかげで助かったけどね。


 私の提案だとか、諸君だとか、張っ倒したろかい。と思って、一瞬目が鋭くなる。


 もちろん、こんなお坊ちゃんからネギカモで近づいてきたら、愛想笑いしかないでしょ。


 見ると、マレクもガランティも、何だよ。そのニヤけズラは? 揉み手までしてヤラシイ。


 おっ。俺もしてるじゃねぇか。貧乏やだね。


 フリンツは、揉み手をしながら、アールの方をみた。


「はぁぁ。何でございましょうか? お坊っちゃま方。

 私らにご用で?」


 フリンツの薄ら笑いが気持ち悪くて少し引き気味のアール。


「僕は、クラフトだとか、ホプロマスクだとか、カタクラフトだとかよくわりませんが、うちの蔵にそんなのがたくさんあるので良ければそのどれかを進呈させて頂いても良いのですが」


 こいつ。ふざけてるのか? カタクラフトなんか普通の家の蔵に入るかよ。


 しかし、待てよ。こいつの雰囲気は、普通じゃないよ。


 フリンツは、愛想笑いを止めて、アール達一行をよく見る。次第に顔が険しく、戦士の顔になってゆく。


 思わず、揉み手を止めて、少し身構えている。


 この、綺麗なお顔のいかにもお坊っちゃまだが、まぁ、こいつは後だ。この、こいつもなんて綺麗な顔だ? こいつは明らかに異常だ、この魔力なんだ? 


 それに、この上玉の女は? まだ、ほんのヒヨコだが、こいつも異常だ。なんなんだ。


 しかも、こいつって竜? 小せぇが。しかも、この禍々しい闘気は、なんだ? なんだ? こいつらは?


「あんた達は、どこの組織の方で? そこいらのお坊ちゃんってことではなさそうですが?」


 フリンツが訪ねた。口調は、柔らかいが、既に腹が据わっている。


「突然で、申し訳ない。私達は、レベロ教授の紹介できたのだ。私達は、学院の生徒なんだけど」


 フリンツが手をあげ制する。


「レベロ教授だとか。魔法学院の生徒だとか、しかして、別の実態があるんじゃ?」


 フリンツは、妙に鋭いツッコミをいれている。


「その辺の事は、貴方が信頼に能う人と分かるまで、伏せさせて頂きたい。

 フリンツ・ホップル殿とお見受けする。貴方に折り入ってお願いしたい事があって来ました。

 アーマードの件は、私のご先祖にそう言うものを集める趣味の人がいて。蔵に長い事大切に納められていたので、良ければお好みの物を進呈しても良い。

 お話でも聞いて頂ければありがたいです。

 そちらのお二人には、取り込み中、申し訳ないがフリンツ殿を少々お借りしたい。

 もし、損失の補填を希望するなら、我が家の執事を君たちの商会に向かわせるか、そこの彼がドートマルキ商会の関係者なので商会から弁償させる様に手筈をととのえるが」


 マレクとガランティは、ドートマルキ商会と聞いてビックリした顔をする。


「私らは、後でも構いません。そのホップルさんの気性は承知していますから。弁償の件は、内輪の事なんで気にしないでくだい。

 ホップルさん。後でまた」


 マリクは、そう言うと、ガランティを伴って去って行った。


 もめているように見えたが、友達を心配して、強く言っていたという事なのだろう。


「悪い」


 フリンツも、申し訳なさそうに頭を下げる。



✳︎



 皆は、人が来ない所を探して、大会会場の近くにあったティーサロン(喫茶店の高級版)に入った。アールが一先ず、レイライトと自己紹介する。


「ヨランダード・ドートマルキです。こんにちは」


 ヨッ君は、可愛く挨拶する。


 ドートマルキ商会関係者と先程言っていた。このドートマルキって子はドートマルキ商会のどういう関係者なんだ? しかし、身だしなみの良さは抜群だ。とフリンツは、何が何だか分からなくなる。


「メイア・スライサイドです」


 何とも美しいお嬢さんだ。少し気が強そうで、ツンツンしている所もなかなかよろしい。着ている服も高そうだ。いいね。フリンツの顔が少し緩む。


「ラーサイオン・フュラスと申す。炎龍種だ」


 炎龍種? そんなもん聞い事ないぞ。確かにこいつは何だか美しいホォルムを持ってるし、高そうな甲冑を着ている。魔力も強よそうだが、なかなか強そうな覇気を纏っている。


 フリンツ・ホップルのアール達に対する感想は、貴族様達って感じだ。しかし、竜種が混じっている事や三人の不穏当な程の魔力についても何だか剣呑さがかんじられるのだ。


 そして、特にそんな三人からは明らかな上者に感じるこのレイライトという男。


 まぁ、かっこいい。そいつは認めてやる。多分同じぐらいの年恰好だが、妙に大人びている。間違いなくお坊ちゃんだが、甘ちゃんじゃない。それに、何よりもこの微動だにしない魔力は何だ? ずっと気にしていた。こんな妙な魔力は初めて見る。


 真円。まん丸だ。しかも魔力とは別の何かが体を覆っている。こいつは、闘気か? しかしこんなのは見た事がない。コイツァ恐ろしく出来る奴に違いない。喧嘩でも勝てるか分からない。こんな奴は初めて見る。


 フリンツは、格闘家の血が騒いで仕方がない。フリンツは、魔法は習った事はない。初めから自分がそんな物と縁がないと思っていた。


 しかし、見よう見まねで魔法は使える。彼はそう思っているが、独学で、穴だらけの魔法だった。魔法レベルでいえば、百レベルそこそこ。上級第三等程度に過ぎない。


 しかし、剣術はムラサキ流の奥伝を持っている。奥伝と言う位は、皆伝の一つ前の位で剣術の師範が出来る。年齢を重視する剣術の世界に於いて破格の位だ。


「レイライトさん。貴方は、剣術が相当できるでしょう。もしかしてどこかの流派の皆伝者では?」


「いえ。もう少し上です」


 って! 極伝しかねぇじゃんか!! フリンツはぶっ飛んでいる。皆伝の上は最高位の極伝。それ以上は自分の流派の創始者になるしかない。何じゃこいつは。極伝になるとこんな闘気の塊みたいになるのかい? この不思議なまん丸魔力になるのか? 頭が?マークで埋めつくされている。


「で? 頼みというのは?」


 アールは、魔物が大量発生したり、誘拐が急増している事実を説明し、これらの現象が何らかの人為的な陰謀の可能性がないかを突き止めるため、調査中である事を説明した。


「そんで、水晶の迷宮か、金剛の迷宮のどちらかに探検には入りたいって訳だな?」


 フリンツがアールの話を受けて締めくくった。アールがうなずく。


「報酬はアーマードって事か?」


 フリンツが聞く。


「報酬については、執事と話して貰いたい。アーマードは気に入ったのを、何なら二、三台進呈するよ」


「二、三台? そんなの信じられん。アーマードがいくらぐらいするか知っているのか?」


 フリンツは、頭がフラフラする。目の前の男が頭がいかれているのじゃかいかと思う。


「今すぐ、持ってこようか?」


 そう、レイライトと名乗った男の子が行った。


「あぁ。そうしてくれ。どれくらいかかるんだ?」


 フリンツは、重量カタクラフトにでも載せてくるのかと想像しつつ言った。


「すぐにだ」


 そう。レイライトが言った瞬間だった。彼の目の前には何台かのアーマードが出現した。


 嫌に広い部屋をとろうとしていた。しかも、テーブルをどかせたりと何を考えてるのかとフリンツは思っていたが、こいつの魔法か? 『物体転移』何だろう。そんな魔法がある事すら知らなかったが。


 驚いて飛び上がったじゃねぇか。


 その瞬間、フリンツは、我を忘れてしまった。


 その部屋に魔法の様に現れたアーマード達はなんと、フリンツの想像を億万超京倍にメチャメチャぶっ飛んでいた代物だった。


 フリンツは、それらのアーマードを見た瞬間に魂でもなんでも持ってけ! と心で叫んでいた。


「おお〜〜っ」と声を上げながら、魅惑のアーマード達に近づいて行く。夢遊病者のような動きだ。


 アール達は、フリンツのあまりの変わりように呆れて見ている。


 アーマードは、六台あった。自立式のアーマードは、高さ2メートル少々で六台も入るとティーサロンの部屋は、いっぱいになった。


 フリンツは、アーマードの一つ一つの周りをゆっくり見て回っている。


 どれも見た事がないアーマードだった。まず、フリンツが思ったのは、宝石のようなという感想だった。


 これらのアーマードは、たぶん量産型のアーマードではなく、貴族用の高級アーマードだ。


 このような物は、古くからの名家の秘蔵のアーマードとして大切に保管されているような逸品ばかりだ。


「このうちのどれを選んでもいいのか?」


 フリンツが聞いた。声が怖い。


「いや」


 レイライトの否定に、フリンツは、やっぱりかと落胆のため肩を落とす。が、それは早とちりだった。


「もっと種類が有るので、入れ替える」


「何?」とフリンツは天を仰いで叫びたいぐらいになっている。「一体、何台ぐらいあるんだ?」


「何台とは、全部って意味で? それとも何種類って意味で?」


 フリンツが呆気にとられる。


「おいおい。何台って、こいつらそれぞれが複数存在するってのかい?」


「そうだよ。数は数えていないが相当数あるはずだ。種類は、たぶん百から二百ぐらいあると思う。少しまってくれるかい……ああ、もう少し多かったね、今数えたら、三百二十三種類だね。

 今、出している六台は、蔵の前の方の奴だから、どちらかというと数の多い性能の劣る奴みたいだね。

 すまない。確かに、台数の少ない奴はより豪華だね。こちらの方が特別製みたいだ。入れ替えるよ」


 レイライトという男の子は、フリンツが制止する前に、夢の六台のアーマード達は、消えた。フリンツは、心の中で悲鳴を上げようとした時、別の六台が現れた。


 そう。フリンツは完全に落ちた。彼はその宝石達に心が奪われた。なんて代物だろう。


 彼が、声も出ないで唖然と立ち尽くしていると、竜種が声を上げる。


「おお。レイライト様。これは立派なアーマードですな。これ程のは俺も初めてお目にかかる」


「そうなのか? 似たような物がまだ二十種類ほどあるぞ。しかし、派手な奴は大きすぎてここには入りきれないようだ。

 どうする?」


 フリンツはあまりにも非現実的な光景に声がでない。


「これを俺にくれると?」


「この六台でいいのか?」


 そう。アールは聞いた。


 フリンツは、三百種全部を是非見せてくれといった。その欲求を満たすためにアールはいい事を思い付いた。


「ホップル殿。私は魔法結界で別次元空間を作るこができます。そこに、全ての種類のアーマードを運び込みましょう。良かったら気に入ったのを進呈します。

 アーマードは、どこにでもすぐに運ばせます。ただし、物質転移魔法は、非公開なので、出来たら人目のないところに私を案内してください」


 フリンツは、うんうんした。


 その一瞬後、五百メートル四方の巨大な空間に、皆は来ていた。ティーサロンの家具ごと転移されている。


 そして、彼らの周りには三百を超えるアーマードがずらりと並んでいた。


 その壮観さにアールを除く全員が歓声を上げる。


 フリンツは、あまりの出来事にもはや思考能力が飛んでしまっている。


 これらのアーマードの全てを見るのはさぞ時間がかかるだろう。


「フリンツ・ホップル殿。いくらでも見てくれたらいい。私達は、一旦学院に戻る。

 もし、我々と同道して、迷宮探索に協力してくれるなら、ここのアーマードは、全て君に進呈しよう。

 しかし、同道しなくても、約束だから二、三台進呈しよう。

 この空間に出入りすることが出来る護符をあげよう。ここれを持って『入室』と唱えたら入り、『退室』と唱えたら入った時の元の場所に戻る。

 この空間は、千年ぐらいはもつだろう。もし、同道してくれるなら、その護符をあげよう。

 もし、同道を断るなら、欲しいアーマードに分かるような印をつけて、その護符を返してくれればいいよ。

 ゆっくり、アーマードを見て楽しんでくれ」


「待ってくれ。こんなにアーマードをもらうなんてとんでもない。幾つかくれるだけでも充分だ。それこそ、国家予算クラスの富じゃないか。

 一生、レイライト様に着いて行きますから、何でも申し付けてください」


 フリンツ・ホップルは、畏敬のこもる目指しでアールを見た。


「では、フリンツ・ホップル。今後、私の配下として働いてくれるという事か?」


「はっ! あなた様がいかに凄い方かはよくよく分かりました。そのような方の下で働けるのでしたら何も必要がありません」


 フリンツは、もう何が何か分からなくなった、目の前にいる男は、理不尽にまで富と力を掌中にしている稀代の英雄だとの確信があった。


「では、フリンツ・ホップル。余アールティンカー・マキシミリアン・ミクリア公にして、次期国王の直属の配下として、身命を賭して働くと誓うか?」


 フリンツ・ホップルは、飛び上がると、その場にうずくまるようにして平身低頭した。


「はっ! 王子様でらっしゃいましたとは。存じませず、無礼をいたしました。この菲才でお役に立てる事がございましたら」


 フリンツ・ホップルは、こうして幸運な立身出世の伝説の中に一歩を踏み出しのだった。



いかがでしたでしょうか。庶民出身のフリンツ・ホップルは、精悍な美青年です。


今回は、脇役ですみません。次の次の第三十七話 アーマード選手権大会では大活躍ですからご期待ください。


カッコ良く精悍で野性味のあるフリンツをこれからも可愛がってやってください。


すみません。同じ内容がダブってました。

ご指摘を頂きありがとうございました。

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