第三十四 アーマード
いつも読んでくださりありがとうございます。
御感想頂きありがとうございます。
サーリ姫とのロマンスは、ある事件をきっかけにして大進展する予定ですが、しばらく待ってくださいね。
魔法学院編は、魔法学院での学生生活は、ほとんど入らない予定です。
では、第三十四 アーマード楽しんで頂けると嬉しいです。
第三十四 アーマード
アールは、アーマードについては、あまり知識が無かったので、シーナ先生に教えを乞うことにした。
シーナ先生は、相変わらず小さく、可愛い。
「アーマードの研究は一時的にしたことがありますがそれ程詳しいわけではありません。
アーマードは要するに魔法の武具の事です。
クラフト、ホプロマクス、カタクラフトの三種があります。
クラフトは、軽い軽装の魔法武具。ホプロマクスは、人間用の魔法重装武具、カタクラフトは、馬から大型の騎竜を覆う巨大な魔法重装武具のことを言います。
アーマードは、それを装着した人間の能力を何千倍にも上昇させます。
普通は、アーマードが、パーティの前衛を担当します。彼の役割は、その特性を活かし俊敏に攻撃し先制攻撃をするか、相手の初撃を防御することが期待されています。
遭遇戦では、初撃を制したものが断然有利になりますからね。
何と言っても、アーマードの最大の利点は魔力が不要な事です。アーマードを動かすエンマ機関は体力だけで使えるからです。
魔法の使えない結界などで、絶大な効果を発揮するわけです。
迷宮などには、魔力・聖力を封じる結界が至る所に施されていますから、迷宮攻略には欠かせない戦力です。
アーマードには、核に体力をエネルギーに変えるエンマ機関が組み込まれています。エンマ機関は、一種の魔法道具です。
アーマードを着て運動すると普通の運動の何十倍もの体力が必要なので体力がなくなると動けなくなるのが欠点です。
私のアーマードに関する知識はこんなものです」
さすがにシーナ先生は、よく知らないと言いながら詳しい。
「アーマード使いを探しているのですよね。残念ながら私は心当たりがありません。
でも、レベロ教授が専門に研究してらっしゃるはずなので、紹介状を書くので尋ねてらっしゃい」
という事で、シーナ先生の推薦を受けてレベロ教授という人物を尋ねることにした。同じ魔法学院の中なので直ぐだ。
アールは、大勢で押し掛けてもと考えてメイアに同行してもらう事にし、ヨランダードとラーサイオンには、待っていてもらう。
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レベロ教授は、在室していた。教授は、年齢はたぶん七十歳を超えているだろう。白髪の爺さんだった。挨拶を交わした後、本題に入る。
「アーマード使いを探しています。僕たちの様に若く、まだ有名ではないが、将来的にとても有望な者に心当たりがあればご紹介いただけませんか」
「レイライト君は、幾つかな? 歳を取ると若者の歳が分からんのだよ」
「十四ですが、もうすぐ十五歳になります」
アールが答える。
「そうかね。レイライト君は大したもんだね。君達程才能がある若者となると難しい」
そう、レベロ教授は冷たく言った。
アールが残念そうにそうですかって言おうとしたその寸前に。
「と、言いたいところだが、それがいい子がいるんだよ」
そう、レベロ教授が言って、笑った。面倒臭いじいさんだ。
適当に笑って合わせてやると、嬉しそうにしている。本当にたわいない爺さんだ。
「レイライト君は、なかなかお付き合いができる子だね。そちらのメイア君は、つまらないことを言うって顔に書いてあるのにね」
アールがメイアの顔を見ると本当に怖い顔をしている。アールが軽く睨みつける。
メイアは、慌てて愛想笑いを浮かべた。
その笑いが引きつってる。この子はこんな子だったのね。下手くそ〜。
アールは、頭を抱えたくなる。メイアは、ツンツンデレデレタイプでキャサリンと大分違うようだ。
教授は、二人の無言の漫才を面白そうに眺めてニヤニヤしている。なかなか隅に置けない爺さんだ。
「君たちが、お探しのその子は、君たちよりは一つ二つ上かもしれんが、生まれながらに特別な子でね。身体能力が桁違いなんじゃ。
なんと、一歳そこそこで逆立ちして歩いたそうだ」
アールは、その話を聞いて、大きくうなずいた。
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ちなみに、レベロ先生は、アーマードについてもいろいろ教えてくれた。
アーマードは、無魔法攻撃魔法具と言われ、魔法の使えないものでも使う事が可能だが、本来魔法道具である事に変わりはない。
アーマードが動く理屈は、少し難しかった。
レベロ教授の説明を要約するとこんな感じになるとアール理解した。
魔力は保存することができない。と言うか魔力は存在する事もあまり認知されていない。重力みたいなものだ。そんなものを保存するのは難しい。
ところがエネルギーに変えると保存できる。
例えで説明しよう。重力も保存なんてできない。ダムで電気に変換することは可能だ。電気エネルギーなら保存ができる様になる。
この理屈が、エンマ機関の原理だ。とにかく、魔力を供給してエンマ機関にエネルギーを溜め込んでおく。これを着たアーマード使いが動くとそのエネルギーが物理力に変換されてアーマードが動く仕組みとなっているらしい。
まぁ、そんなところらしい。分からなくても特に問題はない。
話をアーマード使いの少年に戻す。レベロ教授によると、その目的の子はアーマード選手権大会に参加予定なので会いたいなら会場で探せば良いとの事であった。
アーマード選手権大会は、三年に一回行われ、今年はその開催年にあたるらしい。しかも丁度今、開催準備中なのだと言う。
そこでアール達は大会会場に行く事にしたのだった。
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アーマードは、別名を『金食い』と言われるほど整備にお金がいる。
マレクは、自称成長株の若手アーマード整備士で、ガランティは、同じく自称成長株のアーマード魔法師だ。
マレクとガランティは、ほとほと困っていた。彼らの依頼主フリンツ・ホップルは、もはや一文無しなのだと言う。
しかも、整備するアーマードもボロボロだ。もともと、迷宮で見つかった一級品だったアーマードだが、依頼主フリンツ・ホップルが使い潰してしまい、ほとんど見る影もない。
よくもここまで使い潰したものだ。その整備を頼まれたのがマレクで、整備後にアーマードのエンマ機関のエネルギーの供給を頼まれたのがガランティだった。
「申し訳ない。こんな有様になるとは。この頃、すこぶる調子が良くて、ハッスルしすぎたみたいだ」
フリンツ・ホップルが申し訳なさそうに言った。
「しかし、ホップルさん。これは酷いね。どんな風に使えばこんな事になるんだい?」
尋ねたのは、マレク整備士だった。
「この三式は、迷宮で見つかった由緒あるアーマードなんだよ。
そもそもアーマードは、芸術品と言っても過言じゃない。今ではエンマ機関が作れないから再現ができない貴重品なんだよ。
もう少し、大切に扱えなかったのかい?」
アーマードは、頑丈なので古世代の遺物であっても利用が可能なのだがさすがに古いものだ。
数千年もの昔に、何千万個も製造された兵器で、この兵器のために地上界は、破滅の危機に瀕したと言われている。
頑丈なために、どの時代にでも大活躍だ。そして、戦争や紛争に利用されている。現在においても、各国に多くのアーマードが保存されているはず。
この様にたくさんあるから、値打ちがないって訳ではない。
高価なものなのだ。
アーマード一台は、豪邸と同じ値段と考えたら丁度いい。
「嫌ぁ。本当に申し訳ない。俺も、ちょいとヤバイと思ってたんだ。
あそこのあの白いの。あいつは新型のアーマードで、最近投入されたんだ。なんでも、どこだかの迷宮で魔物が大量発生してるんだとか。
その迷宮の探索中に数台見つかった新型らしい。
一目惚れさ。ちょいとどんなもんか試しに試合をやらせてもらったら、こいつが本当にいい具合にドンパチしやがんのよ。
つい、本気になったわ」
「本気になったわじゃないでしょう。
私らも、慈善事業でホップルさんの手伝いをしてるんじゃないんだよ。ホップルさんの腕を見込んで、有名になってくれるだろって思ったから投資のつもりで部材以外は一切代金は、もらわないこととしたんだよ。
ホップルさんに請求してるのは私らが整備で使った部品の私らの原価だけなんだよ。
いくらなんでも、無一文になったて言われてもねぇ」
「すまん。あの白いのとどうしてもやりたかったんで、ついバクチを売っちまった。
ああ、あっさりこの三式が凹むと思ってなかったんだ。
しかしあの白いのは、本気に驚異的な性能だね。あんなのが出る迷宮なんざ探索といってもなかなか難しいんだろうね」
「そんな事はどうでもいいですよ。せっかくの大会で、いい成績を残してもらって私らバックの名声の獲得も、ホップルさんのせいで台無しじゃないですか?
これまでかけてきた私らの費用や手間賃なんか入れるとすっごい赤字ですよ。どうしてくれるんです?」
そこまで聞いていたアールは、このフリンツ・ホップルと言う男を取り込むためのいい考えを思いつく。アレフレッドの宝物庫には、アーマードがたくさん保管されていた。その中には相当見た目が綺麗なのもあった。それをやろうと言えばフリンツ・ホップルは、こちらの誘いを断りはしないだろう。
アール、彼らの方に近づいた。
「お取り組み中恐縮する。諸君に良い提案があるんだか聞いてもらいたい」
突然に闖入してきた少年を、何だ? と三人が睨みつけに。
次回の予定です。
次回は、フリンツ・ホップルの話です。
フリンツ・ホップルは、庶民派・野生派の男の子代表です。汗も爽やかな笑いが彼の身上。
豪放な男の子、フリンツ・ホップルをよろしくお願いします。




