第三十一 ラーサイオン・フュラス
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ラーサイオン・フュラスの話になります。
第三十一 ラーサイオン・フュラス
「ラーサイオン殿。気が済まれましたか?」
シーナ教授が聞いた。
「この男は何者なんだ?」
ラーサイオンがアールの方を見ながら聞いた。竜種の表情は、分かりにくいが狼狽しているのは分かる。
「ラーサイオン将軍。こちらは、レイライト様。マキシミリアン王国の王族でらっしゃいます」
シーナが説明する。身分を隠しているため皇太子とは言えないが嘘を言うわけにもいかない。
「その説明では、納得できぬ」
ラーサイオンがシーナに食ってかかる。
シーナが答えようとしたのをアールが手で制した。
「シーナ先生。私から話ましょう。
ラーサイオン君。君は何を勘違いしてるんだ?
人に質問するのに、その態度はなんだ? なんなら叩き出してやろうか?」
ラーサイオンから威圧感がサッと立ち上がる。
アールは威圧感を受けると、直ぐに、その威圧感を圧倒するもっと大きな威圧をラーサイオンに投げつけた。
闘気魔法『気迫』だ。
『気迫』は人の精神に直接、威圧を感じさせる。
アールが作った闘気魔法の一種で、闘気に比べると少し聖力が多い。そのような闘気を作ると精神への透過率が増し、精神へ直接攻撃ができる恐ろしい魔法となるのだ。
『気迫』の本当の効果は、アールが本気で使うと一度に大勢の人を瞬殺する事が可能である。
気迫は武術の達人や生死をかけた厳しい仕事を続ける者なら素質次第で自然に身につけることがある。
ラーサイオンも、武術の才能により気迫を出す事が出来るのだが、アールのように完全な魔法として制御できる訳ではなく勝負にならない。
ラーサイオンは、椅子の上でうずくまってしまう。
アールは、少し気迫を緩めてやる。
「ラーサイオン。これ以上、我が師に無礼を働くのなら実力で排除する。
お前の性格では、このままお前を帰すと又同じ事を繰り返すのではないか? もし、そうならただではすまさない」
ラーサイオンは、しきりに首を振って否定の意思を表そうする。
アールは、闘気魔法『気迫』をキャンセルしてやる。
ラーサイオンが大きなため息をついた。
「ああ。お主には、二度と逆らわぬ」
本気で言っていた。
これ程、恐ろしい男だとは思わなかった。
「世の中には、凄い存在がいるのだな。旅の始めに貴方と出会ったのは、本当に幸いであった。
ディサイファ神龍王があのような片田舎の城を根城にして何百年間も縮こまっていたのは分をわきまえていたと言う事なのだな。
俺は、ディサイファ神龍王と戦い子供扱いされたが、本当に子供なのだから仕方がないと、たかをくくっておった。直ぐにあの高慢ちきな鼻をへし折りに行ってやると思っていたが、貴方と出会って、それが単なる徒労である事を知った。
俺は、本当になんて道化なんだ。あの、親父が気の毒そうにしていたのは、そういう事だったのだな」
ラーサイオンが哄笑した。その哄笑は、自分の過去の思い上がりへの訣別の宣言だった。
「どうであろう。俺はもはや自分自身で魔界の統一を成し遂げられるのとは思っていない。
できれば、貴方の側にいて、どのように時代が動くのか、見てみたい。側に置いてくれないだろうか?
少しは、役立てるようにこれからは精進もしよう」
ラーサイオンは、生まれて初めて頭を下げ真摯に頼んでいた。新生ラーサイオンの誕生だった。
どうやら、竜種の才能高い少年がアールの仲間になるようであった。
ラーサイオン・フュラス。竜種です。仲間になりましたね。
次回から新たなキャラが出てきます。そして青年期の各編につながって行く予定です。
これからもよろしくお願いします。




