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良くある転生物語 聖と魔  作者: Seisei
第四章 青春期 魔法学院編

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第三十 シーナ・ジュライ再び

いつも読んでくださりありがとうございます。


また、感想を最初に書いてくださった「すーさん」「よっさん」を始め、応援してくださる方に本当に感謝です。

そして、Doggyさん。レビューありがとうございます。


魔法学院編の第二 シーナ・ジュライ先生の再登場です。


シーナ先生は、御歳二十七歳です。あの魔法少女の面影を残す小柄な美人の可愛らし系美女です。


楽しんで読んで頂ければ幸いです。

第三十 シーナ・ジュライ再び


 アールは、その野太い声に振り向いた。ドアには、綺麗な武具に身を包んだ竜種が立っていた。


 見ると、その竜種は、明らかに闘気を纏っている。剣呑な雰囲気が明らかだ。


 振り返ると、シーナ先生も闘気を纏っている。


 アールは、咄嗟に部屋全体に結界を張った。これでこの部屋に核弾頭を放り込んでもなんとか持つだろう。


 それと、メイアとヨランダードの二人も闘気で保護してやる。


 密かにシーナ先生にうなずいて見せる。


 シーナ先生には、アールの一瞬の保護措置が理解できたのか、アールにニッコリ微笑みかけた。


 シーナがドアの方を向く。


「わたしが、シーナ・ジュライです。魔界の大将軍、ラーサイオン・フュラス様とか?

 どの様なご用でしょうか?」


「私は、生まれながらに特異な体質で、魔法・聖力が見える。闘気も操る事ができる。

 もともと、そんな者は俺一人と思っていたが、ある者に同じような者が世界では何人もおり、それぞれが敵味方になって戦っておるとか言うので、俺も参戦に来たのだ。

 いろいろ調べると人族では、お主が怪しいと思いやって参ったのだ。

 尋常に勝負をお願いしたい」


 ラーサイオン・フュラスは、そう言って魔剣の柄に手を揃えた。


「私は、確かに貴方のお探しの者のようですね。

 丁度、この部屋には貴方が探している者が他にもおります。

 貴方は誰との戦いをお望みですか?」


 シーナ先生は、少しも慌てていない。竜種は、確かに相当強そうだが纏っている魔力や聖力の制御の仕方でその実力は一目瞭然なのだ。


 もはや、それはアールの専売特許ではない。ここにいる三人は全てその能力がある。


 シーナ先生は、アールが連れてきた二人の実力もほぼ見抜いているのだ。


 もちろんアールの実力だけは全く想像もできないが。


「ふむ。それは幸先がいいな。では、一番強い奴が相手になってくれればありがたい」


 ラーサイオンは、豪放な声で笑いながら言った。


「貴方も、ここにいる者の魔力や聖力の状態は、わかるでしょう。

 貴方が選びなさい」


 シーナ先生がにべもなく言い放った。つまり、貴方ごときは誰でも相手ができると言っているのだ。


 ラーサイオンは、シーナ先生の挑発に直ぐに乗った。目にも留まらぬ早技で、剣に闘気を乗せると思いっきり力を入れて剣を横殴りに横一文字に斬りつけた。


 面倒なので部屋全員の首を刎ねるつもりの斬撃であった。


 ところが、ギョッとしたのは、ラーサイオンの方だった。


 彼の一撃が、一人の青年に受け止められていたからだ。


 恐ろしい闘気を乗せての一撃を生身の人間が止めるなど不可能なはずなのに。


 実際、彼の闘気は、部屋を吹き飛ばしかねない闘気だった。


 斬撃の衝撃だけでも相当な破壊力だったはずだ。


 それらが全部、全く嘘偽りみたいな、そんな非現実的な出来事みたいな感じだった。


 ラーサイオンの斬撃をアールことレイライトは、軽く素手で摘んで受け止めているのだ。


 ラーサイオンは、剣技では、自分の右に出る者はいないと密かに思っていたのだが、それが簡単に破られてしまった。


 レイライトの早技は、ラーサイオンには、全く見えなかったのだ。


 例えば、連続フィルムをスローモーションで写しているとして、あるコマでは普通に手を垂らしているのに、次の瞬間には、別のポーズになり、彼の魔剣サスナーを摘んでいる姿になっている。みたいな、とんでもない動きをしたのだ。


 魔剣は、彼が軽く持っているだけだがビクとも動かなくなってしまった。


 ラーサイオンが魔剣の柄を離すと魔剣は、緩やかに震えている。


 ラーサイオンは、闘気を腕に乗せると全力でそのレイライトに向かって抜手を突き出した。


 結果は、剣と同じくそのレイライトに、軽く受けられただけだ。


 カラン! と魔剣が床に転がる音が響いた。


 ラーサイオンは、無駄と知りつつ、交互に無数の打撃を様々な角度で叩き込んんだ。


 その全ては、ツツツツツツツツツツツツツツと機械のような音と風を斬る音が上がっているが、レイライトは、何でもないようは顔で全てを千手観音像のように跳ね上げていた。


 竜種の腕力に闘気が重なった必殺の打撃だ。その一振り一振りは、物凄い唸り音を鳴らし一秒間に数発の打撃がレイライト目掛けて繰り出される。その全てが受けられているのだ。


 次に、ラーサイオンが必殺の魔法を詠唱速度を圧縮して唱える『ギュキューンイーンッルラブットッ』と圧縮された詠唱がした。


 百八十レベル『爆砕』オリハルコン級の魔法だ。普通に詠唱すれば二分ぐらい掛かる魔法を数秒で発動した。


 しかし、レイライトは、その魔法の半分ぐらいのところで『リジェクト』と言った。静かな言葉だが魔法が発動される。短縮詠唱の中でも最高級の短縮詠唱術だった。


 魔法の詠唱には早口で唱える短縮詠唱があり、ラーサイオンのように何十倍にも詠唱を早める技法がある。一種の呼吸法みたいなもので、詠唱を次第に速く言いながら魔法の発動練習をして会得する技である。


 必殺の得意魔法を何度も練習して会得する。魔法師が剣士に対抗するために編み出された技である。


 ところがレイライトの用いた魔法名で魔法を発動するという魔大帝級の魔法師の中でも特に最上級以上の魔法師のみが使えるという究極の奥義だった。


 現存する魔法書では、ラルウス・アプレウス著『魔法大全』に記されている。


 ラーサイオンの『爆砕』が霧消する。綺麗な『リジェクト』だ。


 またもやラーサイオンがギョッとして、恐ろしい打撃の方も止めてしまった。


 ディサイファ神龍王にコテンパンに打ちのめされた時とラーサイオンの態度は、全く違うものだった。


 何しろ、ラーサイオンの攻撃が全く赤子の手を捻るように鮮やかに全て無効化されているからだ。


 この目の前の男の子は、何者なんだ? と全ての動きを止めてマジマジと見つめている。


 ラーサイオンが放った全ての攻撃は、どれ一つをとってみても魔王級の超上級の攻撃なのだ。例え魔帝級の魔法師とて、ここまで完全に敵の攻撃を退けられるものではない。


 それは、ディサイファ神龍王との戦いの様子と比較しても明らかだ。


 魔法を習いたての初級魔法を上級魔法師が優しく対応しているかのようなレベル差を感じさせるのだ。


「こんな事はあり得ぬ。有ってはならん」


 ラーサイオンは、そう呟いた。



✳︎



 その時、シーナ教授が、言った。


「ラーサイオン・フュラス将軍。まぁ、その辺にされてはいかがでしょう。

 ディサイファ神龍王殿に諌められて少しは大人になられたと聞き及んでおりますが?」


 さらに、ラーサイオンがギョッと驚く。


「地の果ての出来事をこんなに速く御存知なのですか?」


 ラーサイオンは、シーナ教授に勧められるまま、大きな椅子にドカリと座り込む。


 レイライト事、アールやメイア・スライサイド、ヨッ君ことヨランダード・ドートマルキの三人もシーナ教授の勧めるソファーに座る。


 アールから事前の練習が入ったのでシーナは、いそいそと彼が来るのを待っていたのだ。


 その直後に、守衛士長から、念波が届いた。


 竜種が彼女を訪ねて、強引に侵入した事。その時に上級第一等魔法師である守衛士達をことごとくひれ伏して侵入した事が知らされた。


 タイミングが悪いが賢者サロン師からその様な挑戦者と大体のレベルを聞いていたのでもしどの様になっても何とかなるかと思っていた。


 彼女は、アールがやってくると聞いてどんな少年に成長しているかとても楽しみに待っていた。


 アールが入って来てシーナ教授は、ドキリとした。本当に素敵な男の子に成長していたからだ。


 目を細めて見ているとあの赤ん坊の面影はある。あの時の威圧感がなくなっているが、一目で纏っている闘気の質が明らかにこの男の子のレベルの高さを彷彿とさせる。


 アールは、彼女を抱擁して、挨拶をした。シーナも強く彼を抱きしめる。


 素敵な男の子になったアールは、逞しく成長しているのが肌で感じた。


 シーナは、少し気恥ずかしくなる女心を押さえ込んで、優しくアールに微笑みかけた。この年齢差がありがたかった。


 アールが紹介したいと言って来た二人も一目で成る程と納得させる魔力・聖力を纏っている。


 男の子の方は、アールに感じの似た子で恐ろしく大きな魔力・聖力を不器用に周囲に散らしている。


 もう一人の女の子は、アールの守護者の様にアールを抱いていたあの美しい女官と瓜二つ多分血縁だろうと思われた。この女の子も将来とても美しくなるだろうと思われた。少し勝気なところが出て、美しく整った魔力・聖力に努力家であることが一目で分かる。


 努力の成果が最近現れて、あらゆる能力が総合的に成長した者だけ示す輝きが顔にあらわれている。


 本当に素晴らしい仲間を手に入れた様だ。


 そこに、闖入者ちんにゅうしゃだった。一目で、賢者サロン師からの忠告の者と分かった。


 荒々しい無骨で禍々しいような魔力と不釣合いな聖力が無制御に溢れ出している。


 一目でまだまだヒヨコの思い上がりである事が見て取れた。


 アール達とは根本が違う。正しく魔法の制御を習わず、才能を無駄に使ったゴツゴツとした岩のような印象だった。


 荒々しい印象そのままに無礼な態度で言いたい事だけのべると突然の攻撃で、さすがのシーナ教授も驚いてしまった。


 あまり見ない、剣士型の魔法師なのだ。ひやりとするが、アールがサラリとその攻撃を受けてくれる。


 そういえば、シーナ達が魔法の研究のためにアールの元を去った後、剣聖ロンハードがアールの教育係になったのを思い出す。


 剣聖ロンハードは、ノーマルながら、五大陸で最も高名な剣士だ。天才のアールがどれ程の剣技を身につけているのか、剣の修業をした事のないシーナにはよく分からない。


 この後の闘いもアールに任せておけば大丈夫そうだと安心して見守る。


 果たして、アールの闘いっぷりは、シーナの予想をはるかに上回っていた。


 彼の闘いには、ほんのチリほどにも無駄が無いのだ。魔法名詠唱には逆に驚いた。


 無詠唱で魔法を使えるアールには全く必要の無い技術だ。この技はスペルマジックと言われる帝級以上の魔法詠唱法だ。


 シーナも使えるには使えるがどちらかと言えばアールが編み出した無詠唱魔法を鍛錬する事を重視したため得意では無い。


 本当の天才には、何をしても勝てないというのが賢者サロン師のこの十年の口癖だった事を思い出してシーナは、心の中で笑みを漏らした。


 賢者サロン師が口癖で評する本当の天才は、一瞬で部屋全員に防御結界を構築し、シーナを含む全ての者に厚い闘気の壁で包んでいた。


 眩しいほどの闘気の壁は、アールの優しさの表れのような気がしてシーナは、全身をその闘気に委ねた。


 竜種との争いは、呆気なく終わったようだ。竜種は、悪ガキが自分よりも弱いと思っていた子猫に逆にひっかかれた男の子みたいな顔をしてアールを唖然と見ていた。


 シーナは、ザマァみろとは思わない。目の前の光景は、十数年前に自分自身が味わった経験そのものだ。


 大帝級を凌駕する自分ですら、アールのレベルは計り知れないのだ。魔王級を一歩出て帝級の初歩をヨチヨチしているようなこの竜種では理解できないのは当たり前だ。


 少し可哀想になり、優しくソファーの中で大型の亜人向けに置かれている椅子に竜種の少年を誘ってやった


シーナ先生のレベルは、現在魔法レベル340の大帝級超えである事が明かされました。

もちろんアールは、さらに上のようです。


では、次回をご期待ください。この休み中は、頑張って更新します。

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