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良くある転生物語 聖と魔  作者: Seisei
第三章 青春期 学生編

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第二十七 ヨランダード・ドートマルキ2

ヨランダード・ドートマルキ君の正体が明かされます。



第二十七 ヨランダード・ドートマルキ2



 アールは、マムルーク魔法高等学校に入って、一人だけ飛び抜けて魔力・聖力の大きな子がいる事に気がついた。神祖一族最高の祖父や父親のレベルに近い大きさだ。アールは、最初、外見からしてハイエンドの神祖一族の血統の者だろうと思った。


 ところが、その子は、クラス内での扱いがどうも変なのだ。クラスの女の子からは絶大な人気を誇っているのに、純ハイエンドの優等生とは疎遠そうだ。こんなに優秀そうな子が変だと言うのが最初の感想だった。


 メイアにその疑問を聞いて、その子の異常性が初めて理解できた。その子は地方貴族で大富豪の子供でヨランダード・ドートマルキと言い、金持ちの特別枠で免状を貰うために入学している特待生で、ハイエンドの様にみえるがハイエンドではないと言うのだ。


 どうも、ハイエンドのようなノーマルの母親、祖母の影響でこれまでにないくらいにハイエンドらしくなったと言う事で本人も自分の才能の無さをネタにして卑下しているような男の子なのだと言う。


 しばらく、その子、ヨランダード・ドートマルキを観察していると、アールは、ある事を思いつく。


 そもそもハイエンドとノーマルとはどこが違うのだろうかという事だ。


 まず、外見が違う。しかし、ヨランダードは、ほぼノーマルだと言っているのに、見た目はハイエンドと少しも変わらない。魔力・聖力の総量は、恐ろしく大きく普通のハイエンドと比べてもずっと大きい。


 この違和感は、亜人間とハイエンドのハーフのキャサリンにも感じた事だった。彼女の魔力・聖力も平均のハイエンドを超えていた。


 しかし、アールは、同年代でこのヨランダードほどの魔力・聖力の総量を持った者を見た事が無いのだ。


 そこである事実に行き着いてアールは、愕然とした。


 そもそもハイエンドとは、ノーマルの中で魔法が得意なだけの一族なのでは無いか? と言う疑惑だ。


 この疑惑は、アールにノーマルに対する考え方を改めさせるきっかけとなった。アールは、このヨランダード・ドートマルキにとても興味を持った。


 アールは、ヨランダードと魔法の事などいろいろ話をしたいと思っていたらその機会はすぐにきた。ヨランダードから接触してきたのだ。


 おずおずとした、ヨランダードの態度にアールは、気さくに話しかけた。


「どうしたの?」


 ヨランダードが自分の悩みを打ち明けるのをアールは黙って聞いていた。面白いのは、ヨランダードは、自分が魔法の才能が無いと決めつけている事だった。


 彼がそんな誤解をした原因は、彼の家系にある事がすぐに分かった。彼の家は、高名なドートマルキ商会なのだと言う。王国でも飛び抜けた豪商だ。


 ドートマルキは、富豪である事で飽き足らず貴族の仲間入りをしたかったのか貴族株を買って、地方貴族の仲間入りをしていた。


 ただ、ドートマルキ商会ほどともなると普通は、叙勲爵位と言って名誉貴族に叙されるはずだが、ヨランダードの話を聞いていると、ドートマルキ家は、地方貴族からハイエンドの血を混ぜながら徐々に貴族への本格的な仲間入りを果たそうとしていたようだ。


 どうも、彼の家系では、ハイエンドへの憧れが強すぎたのだろう。それが家のコンプレックスにまでなり先代も当代の当主もノーマルの女性と結婚してしまったのだと思われた。


 唯の地方貴族では、ハイエンドの高貴な娘もなかなか嫁いでくれないだろうがドートマルキ家なら喜んで嫁ぐ娘はいくらでもいただろうと思われた。


 ヨランダードの話からすると、ドートマルキ家の者は相当に個性的な家系であるようだった。


 考えてみると、アールがカナピア地方などという首都エバーハークから遠く離れた地方にきたのは、もちろん隠密行動のためだ。しかしエトナード群の群都バッシータがドートマルキ商会の発祥地で商都として栄えていることも理由だった。マムルーク魔法高等学校を選んだのも、アールの素性を知っていそうな貴族が少なくてかつ大きな魔法高等学校だからだった。もちろん乳母であり秘書官でもあるキャサリンの娘メイアが通っているのも選んだ大きな理由だったが。


 ドートマルキ商会の跡取り息子と同じ学校になるのも何かの縁だったのだろう。


 ひとしきりヨランダードの話を聞きながらアールことレイライトは、試しに巨大魔力をボール大にして、ヨランダードの目の前で動かしてヨランダードの様子を見てみる事にした。


 やはり、ヨランダードは、その魔力に明らかな反応を示している。ヨランダードは、単に自分が魔法の才能が無いと思い込み才能を発揮していないだけの天才なのではと思われた。


 アールは、魔力のボールを今度は、聖力のボールにしてみる。果たして、ヨランダードは、その瞬間、目を瞬いた。


 ヨランダードは、魔力・聖力の違いも見えるようだ。これじゃ、水晶級のシーナ・ジュライ先生よりも才能から言えばずっと高いじゃ無いか。とアールは驚いてしまった。


 アールことレイライトは、ヨランダードに魔法感知能力の事を何か知っていないか探りをいれてみた。しかし、ヨランダードは、自分の才能など全く気付いていないのか、次のように言った。


「魔法感知能力なんて、神様か魔王様なんて特別な者しか持てないのじゃないの?」


 ヨランダードのその発言にアールは、笑い出してしまった。アールは、ヨランダードの能力にある程度確信が持てたので次のように言った。


「ヨランダード君。君は、たぶん先天的に魔法感知能力が有ると思う」


「そんなはずないよ」


 まぁ、そう言うだろう。


「君は、自分がどれほど恵まれた才能を持って生まれたか気づいてないだけさ。

 君は、たぶん先天的な魔法の天才だと思うよ」


 アールは、ヨランダードにそう言った。


「ヨランダード君。良かったら君に魔法、奇跡を教えてあげよう」


 ヨランダードは、アールの申し出を単純に喜んでいた。彼はアールの言葉を励ましのために言ったお世辞程度にしか考えなかったが。



次回は、キャサリンと娘のメイアについて、キャサリンがメイアを捨ててアールに夢中になっている事をメイアがどう思っていたかが明かされます

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