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良くある転生物語 聖と魔  作者: Seisei
第三章 青春期 学生編

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第二十五 魔法の事

こんにちはです。


なかなか、思うように話が進みませんですみません。


そろそろ、話を大きく展開させたいと思っています。


すっごい、戦闘シーン。派手な展開を考えていますが、しばし緩やかな話を許してください。


魔法のレベル計算が間違っていたのでレイライト君の合格したのは二百八レベルではなく百二十八レベルでした。ちなみに白銀級です。2015年10月6日改訂

第二十五 魔法の事



 アールは、レイライトになりすまして、マムルーク魔法高等学校に入学した。


 マムルーク魔法高等学校には、キャサリンの娘メイアが通っていた。


 アールは、レイライトと言う架空の人間を作り、隠密行動を可能にしようとしたのだ。


 そして、キャサリンからはもう一つ強く言い渡されている事がある。それは、アールがいかに桁外れで非常識なのかを身をもって普通の子供達の中に入って実感してこいと言うのだ。


 アールをレイライトと言う一般の学生の設定にし、アールは、その設定を演じきる。その中で同年代の普通に優秀と言われている魔法師がどのような常識を持っているかを知る事が二つ目の目的だった。


 レイライトの設定は、以下のような設定となっている。


 初級クラスの魔法は、ほぼマスターしている。中級クラス魔法は、概ね使える。上級魔法はまだまだ未熟。神威も初級と中級を少し。詠唱速度は普通より早い。


 キャサリンは、詠唱速度について、絶対に途中で一度は思い出しているふりをする事と何度も念を押していた。


 アールは、クラスメイト達の魔力・聖力の大きさを先ず見てその恐るべき小ささに驚き信じられなかった。そこで自分の魔力・聖力を同じぐらいの大きさに合わせたのが彼のした最初のことだった。


 彼は、普段魔力・聖力は、キッチリと体に隠すようにしていたつもりだったが、クラスメイト達の魔力・聖力は、それよりも遙かに小さかったのだ。


 賢者サロンが『インジブル』の魔法と言っていたのは、もっとより精度の高い物を要求されるだろうと初めて知った。普通の魔力・聖力というものがいかに小さいかという事にアールは、逆に感心してしまった。自分の魔法がだだ漏れだったと知った瞬間だった。


 次に、普通の生徒達は、魔法の詠唱を間違えるのだと知った。途中で言い直したり、つっかえたり、はたまた単語が間違っていたり、言葉の前後が逆転したりと。本当にありとあらゆる間違えをする。


 例えば、『……夜の帳に、花開く……』というところを『……夜は花開く……』と言ってみたり『……花開く夜の帳……』と言ってみたりメチャクチャだ。


 アールが聞いていた限りまともに魔法の詠唱をしている者は一人もいない。


 そもそも、アールは魔法の詠唱は全て言えるし間違えたりつっかえたりなどありえない。


 それは、魔法の詠唱には、魔法を正しく発動させるためのいろいろな仕組みが取り込まているからだ。だから詠唱単語の初期形態の多い初級魔法の詠唱が重要だと言われている。


 それらの基礎の上に立って魔法は発動されているのだ。初級の詠唱こそ何万回も唱えるべきだ。


 クラスメイト達は、初級の詠唱がまるでなってない。


 こんな調子で上級など笑っちゃう。



✳︎



 本日は実技試験だった。レイライトは、本当に見事なもので、さらりと合格してしまった。彼は百二十八レベル魔法を実演し見事に合格した。


 全く減点するところがない。本当の天才だと皆が確信する手際たった。


 後は、ラホークと取り巻きのベンジがギリギリ合格したが、メイアは落第してしまった。


 メイアは、本当はキャサリンにダメだと叱られるのは知っていたがレイライトにどこが悪いか思わず聞いていた。


 レイライトの答えは、メイアには意外であった。


「基礎力が足りないね。先ず、初級魔法からやり直した方が近道だろう」


 レイライトは、爽やかで優しいとばかり思っていたのに初級魔法からやり直せとは酷い言い方だと思った。


 さすがにムッとしていると、ラホークがここぞとばかりにレイライトに噛み付いていた。


 レイライトは、無視を決め込んだ。


 メイアとレイライトの受け答えは、クラスの皆も興味のあるところでレイライトの答えが酷く意地悪に聞こえたのも事実だった。


「メイア。君はレベル一の『ファイア』を多分、『フ』を強く『ァ』も少し強く『イ』をかなり弱く『ア』を軽伸ばし気味に言っているだろ。そもそも『ファイア』は、単語のファイアとはちがうのさ。

 正しくは、『フ』をできるだけ小さく優しく言って火の聖霊に注意を向けてもらい、次の『ァ』で注意を固定する意味を込める。ここは言い方よりも意思を強くって事に意味がある。多少強めに言うぐらいが妥当さ。次の『イ』が大切なんだこれは火の発火のための呪文なんだ。この『イ』が全てと言っても過言じゃないね。

 それから『ア』だけどここが一番大切なんだよ。つまり火の存続についての魔法の調整どころさ。ここを強く言わないでどうする。

 まぁ。どれもこれも一番大切だって事さ。君の『火』魔法に関する呪文は全くなってないよ。

 しかし、そもそも君は初級魔法をちゃんと練習したのかい?」

 日頃それほど多弁でないアールが、メイアのためにキッチリと説明してあげたのがよく分かった。

「初級魔法は、たった二十レベルしかない魔法だけど一番重要な基礎なんだよ」


 アールがそう締めくくった。


 メイアは、とかく勝気が目立つ女の子だったが、何を思ったのか「『ファイア』。『ファイア』……。」と呪文を練習し始めた


 レイライトことアールがいちいち訂正してやった。


 そのメイアの様子を皆が気の毒そうに見ていた。


 この日から、メイアはレイライトことアールに初級魔法の伝授を受けはじめた。この時、クラスの落ちこぼれ達何人かも一緒に教えて欲しいと加わった。


 レイライトことアールの初級魔法の授業は本当に噛み砕いてすり潰すように細かく繊細な講義となった。


 しかも、一つの初級魔法を本当にそれこそヘトヘトになる迄繰り返すのだ。


 次第に飽きだした者から離脱し始める。しかしメイアだけは諦めずに続けた。


 最初の『ファイア』の練習が一月間もこんな感じで繰り返されたが何の変化もなかった。しかも、毎日魔力が無くなるでヘトヘトにるまでやるのだ。


 遂には、レイライトに習うのはメイアだけになっていた。


 しかし、最近メイアの『ファイア』の呪文が明らかに変わってきた。唱えるリズムが美しく滑らかになり、最初一日で三十回も唱えるとヘトヘトになっていたのに、近頃は、連続で百回以上唱えても平気になってきた。


 そして、『ファイア』に明らかな変化が出はじめた事に誰もが気づきはじめた。


 メイアの初級のはずの『ファイア』が次第に明るく力強く変化し始めた。その内、中級クラスの『ファイアボール』級の大きさになってきた時、一度落第した、落ちこぼれがまた、レイライトに教えを請いにきた。レイライトは、快く引き受ける。


 二人だけの個人授業に参加を要請してきたのは、ほぼノーマルのガット君二十歳と本当に純ノーマルのマサ君だった。


 二人は、ノーマルの割と裕福な家に生まれた学生で落ちこぼれて三年を三回している、言って見れば情けない後の無い二人だった。彼らが止めずに三年間も三年をしてこれたのは同じ境遇の人が側にいたからと、魔法が本当に好きだからだった。


 少し積極的なガット君がある日、見るからにメイアの特訓の成果と思われる変化が出てきたを見て、誰にでも気さくに話してくれるレイライトに尋ねたのだ。


「一度、嫌になって止めたけどもう一度最初から教えてくれる?」


 レイライトことアールは.「良いよ。やる気さえあればいくらでも」とフレンドリーだ。


 いつも、威張り散らしノーマルの事なんかバカにしているハイエンド様達の機嫌を損なうのは彼らの本意ではなかった。だから、あまり目立たずやった来た。しかし、レイライトは、全く威張るところがない。いつもとてもフレンドリーで話やすかったのだ。


「レイライト君。僕たちでも少しは、魔法が、マシになるかな?」


 ガットが聞いた。


 ラホークが聞こえよがしに「あれは、メイアだからできるようになるんだ。ほぼ全ノーマルの落ちこぼれなんかにあんな芸当ができるようになんかなるもんか」とバカにした。


 ガットがラホークの方を見て黙って一人で頷いて。


「あぁ〜。ごめん。ラホーク君の言う通りだな」


 そう言いながら引き下がろうとする。


「ガット君。メイアなどより君達の方がずっとマシなんだよ」と、レイライトことアールが言った。


 事実、ガットとマサは、魔力・聖力の総量もクラスで良い位置にいる。それよりもクラスの他の者達より基礎ができているのだ。彼らには、自分達が落ちこぼれだとの強い固定観念があり、それが障壁となって魔法の成就段階で魔法の発動の阻害をしているが、それまでは綺麗な魔法が形成されている。


「ガット君やマサ君は、魔法の基礎がメイア達と比べると良くできている。よっぽど成長する可能性は高いさ」


 レイライトの話は、学生達に大きな衝撃を与えた。つまり、ハイの率も才能も関係なく努力をすればなんとかなると?


「君達は、今迄誰より努力してきたんだろ。努力は裏切らないよ」


 レイライトが爽やかに笑った。


 こうして三人の『ファイア』の特訓がはじまった。


 その頃からレイライトことアールの講義は、より厳しさを増していった。メイアとクラス一落ちこぼれの弟子達がひたすら『ファイア』を唱える日々が続いた。


 それから、さらに一月が経ち、実技試験の日が来た。


 レイライトの提案で、彼ら三人は、『ファイア』の中級六十五レベル魔法『ファイアボール』を実技科目として選んだ。


 実技選択魔法には、レベル指定がなくどのような魔法を選んでもよいが、やはり三年生ともなれば皆、上級の魔法を選びたい。それの方が高得点が期待される。


 しかし、レイライトは、三人に大丈夫と太鼓判を押し、先生に自分達の実技は教室では危険なので講堂でしてやってほしいと申し出た。


 誰しも、何を中級の魔法如きでとバカにした。


 しかし、最近の猛特訓は、全てのクラスメイトが見ている。ライバルたるクラスメイトが頑張っているのを見るのは、少し不安でもある。常に自分達のやり方は正しいか? そう自問自答しているものだ。


 バカみたいに初級魔法だけを繰り返し練習する彼らのやり方が正しいわけがないと信じて疑いたく無かったのだ。


 このため、講堂には、大勢の見学人がやってきた。


 三年生だけではなかった。先生や下級生達、特にノーマルの生徒が多かった。


 それは、都会からきたエリートの秀才が、ガットやマサなどのほぼノーマルでハイエンドの血が混じっていない、落ちこぼれに可能性があると言ったとの噂が学校中に広まっていたからだ。


 試験が始まった。


 試験官は、先生二人と選ばれた生徒達三人。レイライトは、関係者だから辞退していた。


 それだけで不利に思うのは、ノーマル達だ。だって試験官は、純ハイばかりだから。


 三人が講堂の端に並んで立ち、手を広げる。


「いつもの、『ファイア』で肩慣らしを!」


 レイライトが号令をかける。


 三人が直ちに『ファイア』と詠唱。見事な炎が三人の手から放出された。


 その詠唱の速さ、魔法の発動の滑らかさ、正確さ、大きさに誰しもが度肝を抜かれた。


 あれが初級レベル一の『ファイア』なのか? 誰もが驚きの声をあげた。


「もう一度!」レイライト。



「『ファイア』!」

「もう一度!」

「『ファイア』!」


 と、小気味のよいリズムで『ファイア』の魔法が発動された。


 試験官のセェーヌ先生などは、この『ファイア』だけで、高等学校の実技をパスしても問題ないと本気で思っていた。


 何という初級魔法だろう。完璧な魔法は、レベルをまたぐ。と、そう言われている。その実例が目の前の『ファイア』だとセェーヌ先生は思った。


 レベル一の一番最初に覚える魔法。それが『ファイア』だ。それは弱々しい微かな光に過ぎない。そう誰しもが考えている。


 彼らの発動している『ファイア』は、そのレベルを遥かに超えて、上級の『爆炎』と言っても言い過ぎとは思わない。


「よし!」レイライトだ。「皆。今迄、良く訓練に耐えた。これから中級の『ファイアボール』を発動する。それに当たり注意を述べるのでよく聞き実践すること。

 魔法の詠唱は、出来るだけゆっくりと。まず、『弾けとべ』を本当に火が弾けることを意識しつつその力を次の炎に全て乗せる事を意識する。次に『ファイア』は、今迄と全く同じだが、前後の速さに合わせて出来るだけ緩やかに。最後の『ボール』は、『ファイア』で作った火炎をできる限り小さく固くする事を意識して『ル』で先程『弾けとべ』で溜めた力が前方に爆発的に弾けることをイメージして『ル』を詠唱するように。

 見学の者は防御体制、防音体制をとってください。では、ファイアボール ぅってい!!」


 三人が詠唱を始める。詠唱は、とてもゆっくりと、しかしリズミカルに抑揚がつけられて詠唱された。


『弾けとべ! わが腕に秘めたる炎の王よ ファイア ボール!』


 魔法の詠唱に従い、掌から巨大な炎が出現し、急速に小さく圧縮されると、凄い速さで弾け飛んだ。


 講堂の端に備えられている分厚いコンクリートの壁と大きな砂山が恐ろしい音を立てて爆発した。


 これが唯の中級のなかでも簡単な部類のレベル六十五『ファイアボール』とは思えない大爆発だった。


 講堂は、大爆発と大音響でしばらく騒然としていた。


 この『ファイアボール』の結果を一番驚いたのは、魔法を発動した本人達であった。

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