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良くある転生物語 聖と魔  作者: Seisei
第二章 青春期 初恋編

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第二十一 女神女帝カサノバ

第二十一 女神女帝カサノバ




 アールの召喚に答えて聖霊が召喚される。


 部屋に現れたのは、天神種の英雄カサノバ女神女帝だ。


 彼女は、目の覚める程に美しく鮮やかな金色の聖力の羽を生やしている。


 その巨大で力強い聖力の羽は天眼通を通して天神種達には見えていることだろう。


「可愛らしいお嬢さんがいるな」


 カサノバがサーリ皇女を見て優しい笑みを浮かべる。

 それから部屋の状況を見て少し考え込む。


 カサノバは、第三使徒で戦闘力で言えば第三位だが、知力は一番高い使徒だ。


 部屋の中の奇跡の発動に伴う残滓を微妙に感じ取り、女官長と三位参議に視線を移す。


「お前達、身の程も知らず、アール様に攻撃系奇跡を発動したのか?」


 次から次へ、想像を絶する事が起こり、三位参議スハークと四位女官長マナミは、目を白黒させている。


 女神女帝カサノバは、彼女達の天眼通では一目で恐ろしくレベルの高い天神種であることがわかる。


 もし、本当に女神女帝カサノバの聖霊なのだとすれば彼らは天帝以上に敬わねばならない存在を目の前にしている事になるのた。


「貴方は本当に女神女帝様ですか?」


 三位参議がおずおずと尋ねた。


「黙れ小僧!」


 女神女帝が一喝する。


 その威圧ある叱責に、三位参議スハークは、椅子から飛び降りて床に平伏してしまった。


 それに合わせてサーリ皇女以下もカサノバの前に跪いた。


「神祖様。わたくしは、天帝女帝の娘でサーリと申します。ご尊顔を拝しまして恐悦至極でございます」


「うむ。サーラの娘か。まだ若いようだが幾つになる?」


「はい。今年十六歳になります」


「なかなか、才能に恵まれておる。アール様ほどではないにしても、私やお主の母天帝サーラなどよりは余程筋が良いぞ」


「ありがとうございます。お母様からご神祖様の事は聞いておりました」


 サーリは、伝説の英雄に会えた事に興奮している。


「天神種がこのヘカテニーナ宮殿に来るとは珍しい事よ。

 時代が変わったのか?

 サーリ。他の者を紹介してくれるか? 同族と会うのは七百年ぶりなのだ」


 三位参議以下が紹介される。皆、実に恭しい態度だ。彼らは先祖を最も大切にする人種のようだ。


 最後にカサノバが自己紹介する。


「わたしは女神女帝カサノバの聖霊だ。本人ではないが本人と全く同じだ。わたしはここにいるアール様の召喚聖霊となった。詳しい経緯は話せぬ。

 天神破魔八万騎を配下としている。

 もし、アール様と戦火を交えるなら同族とはいえ相手になろう。

 しかし、忠告だが、アール様は、マキシミリアン王国の何千万もの軍を動かす事も可能なようだし、その上、我ら十二使徒を使役されている。

 わたしを始め、強力な十二使徒と十二使徒の使役する百万の軍勢は、本当に強いぞ。わたしが生前鍛えていた破魔百万軍をもってしても十二使徒の軍にはかなわぬだろう。

 しかし、本当に恐ろしいのは、アール様ご自身だと思う。アール様なら我ら十二使徒とその配下百万の軍勢でも勝てる気がしない。

 お主達がもし、アール様に無用な争いを画策しておるなら直ちにやめることを勧める」


 カサノバは、そう言うと黙ってしまった。喋りすぎたと言わんばかりだ。


 事実、彼女は本来なら絶対に漏らしてはならない軍事機密を同族であると言うだけでやすやすと漏らしているのだ。


 それは、彼女の愛した一族の可愛い子孫達があまりにも哀れだったからだ。


 あろう事か、最も逆らってはならない相手に全面的に楯突く愚かな後輩達の無知に哀れを感じるのだ。


 カサノバは、部屋の中の聖力の残滓からどの様な奇跡が発動されたか推察できる。もちろん、カサノバの様な高位の能力者だからできる事だ。それによると、最後にアールの『復活』が唱えられているのがわかる。


 絶対的な攻撃魔法を有するアールが『復活』などと言う究極級の治癒系の奇跡を発動するなどは、アールの慈悲の心にほかならない。アールが無駄な争いを避けかつどれほど高級な奇跡を扱えるかを示そうとした事が明らかだった。


 その奇跡を受けた三位参議は、何が起こったか分からず。惚けた顔をして、最高の危機的状況なのに皇女を守ろうともしていない。


 何とも情けない状況だ。サーリ皇女一人が落ち着いているのが奇妙に感じられる。


 たぶん、サーリは、アールの人柄を直感的に悟ったに違いない。


 それは大切な気質だが、アールは外見ほどには生温いお坊ちゃんとは違うのだ。


 必要とあらば、この部屋は地獄と化すだろう。カサノバにそう命ずることを厭うような甘さはアールにはない。その事をカサノバは知っていた。


「アール様。少なくともサーリ皇女は殿下に無礼を働いてはいないのではありませんか?」


 カサノバが訪ねた。


 その問いにサーリ皇女は、穴が有ったら入りたいという風情で俯いてしまう。


 カサノバは頭を抱えたくなる。


 しかし、アールの発言は違ったものだった。


「確かに、サーリ皇女殿下は、何も失礼は、なされませんでした」


 アールが笑顔で言った。


 先ほどの恐ろしい様な迫力はなくなっている。


 カサノバは、胸をなでおろした。

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