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良くある転生物語 聖と魔  作者: Seisei
第一章 幼少期
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第二 アドバンテージ

読んでくださってありがとうございます。


第二 アドバンテージ


 転生の事は良く覚えていない。


 ヒロトが転生先で意識を取り戻した時はもう彼が一歳になるかならないかの時だった。

 多分、赤ん坊の脳の発達の加減か何かのせいだろう。


 ある日、いろんな記憶が沸き起こるようにしてヒロトの記憶が呼び覚まされた。

 彼はアールという可愛らしい赤ん坊になっていた。ややこしいので今後は彼の事をアールと呼ぼう。


「アール。なんて可愛いいんだ? お父様は貴方の可愛さの虜だ」


 乳母めのとの腕に抱かれたアールに西洋人のように彫りの深い男前の男が言った。後に父親のハルトと知る。ハルトとヒロトは音がどこか似ているなぁと感慨深い。


 それが最初のヒロトの転生先の世界で聞いた言葉だった。


 もちろん日本語では無いので何となくしか意味が分からない。生まれてからずっと聴き続けていた言語なので少しだけ意味が分かるような気がする程度だった。


 アールが日本語を話そうと頑張っていると乳母のキャサリンが「旦那様。奥様。お坊っちゃまが先程から少し変なのです」と騒ぎだしたのでアールは少し慌てた。


 心配そうに覗き込む三人。アールは笑って誤魔化した。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【アールの父ハルト視線】



 アールは不思議な赤ん坊だった。

 可愛らしく笑いかけるだけでグズッたり危ない事など普通の赤ん坊がしそうな面倒事を殆どしない。


 話すのも早かった。

 乳母めのとのキャサリンによると異常なぐらいに利発だとの事だった。


 異常なくらいとは不吉な物言いをするやつだとハルトは苛立いらだちを覚えたが乳母の言い分も分かる気がする。


 アールは利発とかで表現でき無いなにか普通でない雰囲気をまとっていた。


 あやすと少しだけ笑う。

 しかし目が笑っていないように感じた。

 かと言って病気とか気持ち悪いとかそんな感じでは無い。


 ある日、乳母めのとの驚きの声を聞きつけてアールの部屋に飛び込んだ時、ハルトと妻のサファリは我が子が飛び抜けた天才なのだと知る事となった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【アール視線】



 アールの転生先の感覚は子供に閉じ込められたって感じだった。


 前世の記憶はフィルターをかまされた感じ。


 先づ体の自由が利かない。うまく喋れない。周りの人達の言っている事が良く分からない。


 乳母のキャサリンは、アールに母乳をくれる人だ。キャサリンはとても綺麗だが胸が六つもある。


 しかもお乳は実用の為とばかりにとても女性のオッパイという感じからは程遠いものだった。


 しかし彼女のお乳はとても美味しく毎日飲んでも飽きなかった。


 乳母はいつもいろんな話を聞かせてくれる。


 彼女がキャサリンという名だと直ぐに分かった。アールの父親と母親の名前は最初旦那様と奥様って名前かと思ったがしばらくしてハルトとサファリだと知った。


 アールが日常見る人は両親のハルトとサファリ。乳母のキャサリン。その他大勢のメイド達。それと祖父母のギルとルーシーの二人で兄弟はまだいない様であった。


 アールは彼に話しかけてくれる人を好んだ。言葉は次第に理解できる様になった。


 転生先のいろいろな知識を渇望していた。


 確か転生前にアドバンテージだとかを貰えるって話だったがそれが何なのか分からない。確かに前世の記憶を持って生まれるなんてアドバンテージすぎるが。


 どうやらこの世界が少し変だとは、大勢のメイド達が普通の人間でないので薄々感じていた。


 両親と祖父母以外の者達はどうも人間というより想像上の生物って感じだった。


 名前は知らないがアールはロボさんって密かに呼んでいるメイドは手が八つもあり機械の様に手を鮮やかに操って家事をするメイドさんで一番不思議な生き物だった。


 アールはロボさんの不思議さに見惚れてじっと見ていたものだ。


 ロボさんは、肌が機械の様な銀色でキラキラテカっている。目は複眼ってやつだと思う。


 虫人間と言うと、ハエ男なんて古臭い映画があったがあんな感じを想像すると思うが全然違っていた。


 ロボさんはとても美しい。たとえたくさんの耳が並んでいても複眼がテカテカしててもそれらは全てとても美しかった。


 この世界は前世とは違い多様な知性生物がいる様だった。


 アールが最初にこの世界の本当の異常さに気づいたのはロボさんとは別のメイドのワニさんが魔法らしき物を使っているところだった。


 何か歌の様な多分呪文を唱えるとメイド達が運び込んだ用具が大きな台車に素早く飛び込んだ。


 宙を飛んで入って行ったのだ。


 アールは驚いてその光景に見入ったものだった。


 これは魔法か超能力かあるいは超文明かってアールは胸がドキドキした。


 よく観察しているとメイドのワニさんはそんな魔法みたいなのを時々使う。暫くしてワニさん以外のメイドにも似たような事が出来ることが分かった。


 一番驚いたのは、キャサリンがアールをワニさんみたいに宙に浮かせた時だった。なぜ乳母がそんな事をしたか良く分からない。


 普段は乳母が魔法みたいなのを使うのは見た事がなかったからワニさん他三人のメイドの特殊能力かなぁって思っていたのだ。


 乳母。やるじゃんって感じたが。

 正直、驚いて叫び声を上げてしまいました。


 その時の乳母の慌て様ったら無かった。


「申し訳ありません。お坊っちゃま。◯◯が◯◯◯して◯◯◯◯」


 まぁ、そんな感じだった。良く分からない。ただキャサリンって凄い。


 と言うのも、メイド達には明らかな上下関係がありキャサリンははっきり一番上って感じだかそれは乳母めのとだからだと思っていたのだ。


 メイドの上下関係は明らかにワニさん達魔法使いが上で、それ以外が下って事で確かに魔法が使えるのって偉いよなぁって思っていたら、キャサリン。凄いじゃん。


 全てのメイドさん達が最敬礼してんのも乳母だからって訳じゃなかったんですね。


 さて魔法の事。


 次第にアールにも魔法の事が分かるようになってきた。オーラみたいな奴がそこらじゅうに充満しているのだ。


 見るところワニさん達がオーラの大きさがそこそこで乳母が一番大きなオーラをもっている。


 しかし、アールのお父さんとお母さんが何と言ってもずば抜けているようだった。


 アールの両親って神? みたいなそんなオーラを持っていた。


 大した魔法使いでらっしゃるはず。


 自分のオーラに気づいたのはアールが小さな部屋(たぶんクローゼットの大きい奴だ)に入ると自分のオーラが部屋から溢れ出したのを感じた時だった。


 これはこれはって感じ。これがアドバンテージだと分かった。


 オーラと魔法が関連してるって分かったのはワニさんが魔法を使ったときにワニさんのオーラがハッキリ小さくなるからだ。


 少し派手な魔法を使ったときワニさんのオーラは明らかに小さくぼやける。


 さすがのキャサリンは少々の魔法を使ってもオーラに陰りが見えないから偉いと思う。


 その偉さの度合いでメイド達の恐れが最敬礼となって現れているのだと感じた。


 ある日、アールの部屋に見知らぬ人がやってきた。


 彼はアールに家庭教師だと自己紹介して丁寧に礼をした。


 この態度はなんだろう。


 しかし、一歳で家庭教師とは何て家だろう。教育ママか?


 アールの部屋はとても大きい。まだアールが見た転生先の世界はアールの部屋と衣装部屋だけだ。


 そろそろ意識が戻ってから数ヶ月になり、この部屋だけだと飽きてきた。


 そこに新たな登場人物って訳だ。


 しかし、この家庭教師は少し嫌味な感じがした。と、言うよりも、アールが気に入っているロボさんを汚い物みたいな扱いで追いやったのが気に入らない。


 ロボさんは最敬礼して退室してしまった。


 この野郎。


 美しいロボさんを見れなくなったじゃないか。


 家庭教師は人間だった。オーラはキャサリンの半分以下だ。大したことは無い。アールは、人間の父さんやお母さんみたいに普通の人間風の者はもっと凄いオーラを持ってるんだと思っていた。


 だって祖父のオーラは誰よりも強く、父親もそれに次いで強いオーラを発している。祖母やお母親もそこそこ強いオーラを発している。これらの事が最近分かってきたのとオーラの大きさで偉そうにしているような感じも薄々分かってきた。


 人間って皆んな凄いオーラしてるんだなぁって思ってた。


 乳母めのとは六つ胸のほぼ人族みたいな感じなので人間よりもオーラは少ないのだろうと思っていた。


 ところが家庭教師君の話からアール達と同じ種族をハイエンドと称していることが伺える。このハイエンドというのがどうやら人間の事だとアールは予測している。


 つまり乳母はハイエンドと何か別の種族のハーフみたいだった。


 乳母はハイエンドの血が入っていることを大層自慢していたからハイエンドと言うのが凄いのだろうと思っていた。


 ところが家庭教師君はハイエンドなのにハーフの乳母よりもオーラが小さい。なんだか訳がわから無い。


 どちらにせよアールの一家はかなり強い魔法使いの家系だって事みたいだと初めて分かってきた。


 こんなオーラの奴が偉そうに家庭教師ってどう? キャサリンさんはそれでいいのか?


 しかし、家庭教師君は一歳を何ヶ月か過ぎただけのアールに馬鹿丁寧に教授を始める。


 ところがこの家庭教師君。嫌味でロボさんへの風当たりは最低だが教え方がうまい。プロだね〜。


 曰く。魔法は◯◯がどうとかで◯◯だ。と難しい事を宣った後、分かりやすく、魔法の力はあらゆる物体に充満している。空気みたいな目に見え無いもんだとの事。


 アールにはオーラみたいに見えていたが普通は見え無いらしい。


 家庭教師君によると伝説の偉人は何人か魔法を感じる事が出来た。その内、伝説中の伝説の偉人の何人かはオーラを視認した。と説明してくれた。


 つまりアールはその伝説中の伝説の何人かと一緒の能力が有ると。うーむ。これもアドバンテージか?


 アールは思わず顔をしかめて頭に手をやった。


 家庭教師君は少し黙ってアールの様子を見ている。


「アールティンカーお坊っちゃま」アールは自分の本当の名前を初めて知った。この家庭教師君は嫌味だが実に有意義な奴だ。「お坊っちゃまがお疲れなら授業をこれで終わらせますが」


 家庭教師君は丁寧に聞いてきた。


「そのまま続けて」


 アールは話しにくい口を無理に動かして言った。


 一瞬、家庭教師君はギョッとしたが気を取り直し。


「アールティンカーお坊っちゃま。さすがでございます」


 アールは初めて喋ったので家庭教師君だけでなくキャサリンもアッと声を飲んでいる。


「魔法は自然にある魔法力を凝縮し方向性を与え効果を出します。大抵の者は呪文を詠唱したり魔法陣を書いたりして魔法を有効化しますがそれは魔法力に方向性と効果を付与するプロセスを表現しているにすぎません。例えば、火の英霊よ、かの者の吐息を集め雄々しく吐き出さん。と呪文を唱えればこのように火がつきます」


 呪文の効果が発動され家庭教師君の右手の上に火が現れた。


「これはあくまでも過程を詠唱して実体化させているだけで魔法の詠唱が絶対ではありません。例えば『火よ』とさけんでもこのように火は灯ります」


 家庭教師君はそう言って手を振った。見事に火がついている。


 家庭教師君の説明はとても分かりやすかった。


 思わずフムフムとうなづいてしまった。


 それだけでなくアールは、自分でも手に魔法力を集めて火を念じた。加減が分からないので出来るだけ小さな火を灯そうした。


 しかし意に反して手からは相当大きな火が立ち上がってしまった。


 おおっと! アールは少し驚いた。しかし本当に驚いたのは部屋にいたアール以外の人々だった。


 家庭教師君は椅子から転げ落ちた。

 キャサリンは悲鳴を上げている。

 メイド達も大騒ぎしている。


 そこに両親も騒ぎを聞きつけて部屋に飛び込んできた。


 アールは、なんでそんなに驚くの? って顔で辺りを見ている。


 ハルトとルーシーは唖然としてベッド上で右手を差し出して手の上を恐ろしいほどの火力の火をつけている我が子を見た。


 周りの騒ぎにキョロキョロ驚いた顔をしてアールは手の火を消した。


 そのまま、ベッドに座る。

 家庭教師まで床に這いつくばるようにして驚いているのをハルトは呆れて見る。


「これはどうした事だ?」ハルトが家庭教師に鋭く訪ねた。


 家庭教師の顔が蒼白になる。


「これはご主人様。奥様。ご子息アールティンカー様に燈火の呪文の原理をご説明させて頂いておりましたところ、ご子息様はどうやらご理解され実際に試されたようでございます」


「なんという事をしてくれる。もしもの事が有ったらどうしてくれるんだ」


 ハルトが語気強く言った。


「誠に申し訳ありません。しかし、ご子息様のお年で魔法を使われるなどは想定外でして、わたくしの致しましたのは、通常の幼児向け教育で家庭教師に慣れるための講義の真似事でございまして、それをご理解されたり実地に行われるなどは前代未聞でございます」


 家庭教師君。泣きそうだ。


「止めて下さい」


 アールがハルトに言った。


「アールが喋った」


 ハルトはあまりの事に、頭を抱えてしまう。


「キャサリン。どうした事だ?」


 ハルトがキャサリンに尋ねた。


「はい。ご主人様。アール坊っちゃまは、先程も家庭教師殿を促すようお話されました。乳母のわたくしも初めてお喋りになるのを拝見致しました」


次は『第三 裏アドバンテージ』です。

少し短めです。


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