第十二 十二使徒
第十二 十二使徒
部屋には魔法陣が描かれていた。これがスクロールか? って思わぬこともなかったが魔法陣に魔力・聖力を注ぎ込む。相当な魔力・聖力が吸い取られそうになったので周囲から魔力・聖力を引っ張ってきた。
そしてカラクリに気づいた。彼の魔力・聖力は魔法陣に吸い取られてこの部屋に戻されているのだ。
アールと同じ様に魔力・聖力を操れる者でないと魔法陣を起動したら確実に途中で倒れてしまうだろう。
しばらく魔力・聖力の循環をしていたがある程度魔力・聖力が循環したら起動するシステムになっていたようで魔法陣が輝き出した。
すると部屋の真ん中にスクロールが出現した。
この部屋も良くできたセキュリティだと思った。
この部屋にアール以外の人間が入っていたらこの循環システムに巻き込まれ、ただでは済まなかっただろう。
スクロールは思ったよりも小さい。スクロールの中に一枚説明書が付いていた。
読むとこのスクロールは実行した人間に吸収されて消えるらしい。つまり携帯スクロールなのだという。
どういう原理なのかアールは、魔法陣を興味を持って調べてみる。
しばらく見て、なるほどってなる。天才だ。
そもそも、魔法陣も詠唱も魔法の発動を制御する一つの手法にすぎない。
まぁ、手順化ってことだ。だから大きな魔法は詠唱が長くなる。魔法陣も大きく複雑になる。
そこまでは大体分かっていた。この魔法陣はその手順化を肉体に埋め込む手法なのだ。肉体に回路を書いて透明化するって言えば分かるだろうか?
とにかく、魔法陣を発動させてみる。面白い事に魔法陣によって魔力と聖力の入れる量を微妙に変えるらしい。
アールは魔法陣だから魔力ばかり入れていたが、その結果、召喚されるのが悪魔系になっていたのだ。聖力なら神系が召喚されるって事に違いないと直感で理解できた。
しかし魔法陣の内容も神系用は随分と違うのだと知った。
悪魔系には魔力の供給を餌として絡め取るのに、神系は聖力ではなく、情報を餌とするようだ。
魔法陣には、天界の秘密みたいな情報を織り込んでいる。しかしこれで罠に引っかかるのだろうか?
まぁ、書いてある通り使ってみる。
一枚目だ。
魔力八聖力二、それに果肉の匂いをフレーバーして用いよとある。果肉をどうフレーバーするのか分からない。フレーバーの概念が分からない。
二つ目は、魔力十、怒りをフレーバーする。
ここでフレーバーの意味を理解した。要はイメージで意識を流し込むのだろう。
良しやってみよう。
一つ目のスクロールを開く。魔力八、聖力二で果肉の香、そうだリンゴにして実行してみる。
おおっ‼ 出てきた。
そいつは、アールを透かしみた。
出てきたのはサナエルの小型版。魔神だった。
しかし、一目でサナエルよりもずっと上位の魔神だとわかった。
纏っている魔力の総量もずっと多いし、魔力の制御もできている。
「お初にお目にかかります。私は魔大帝プリサタ。火炎魔法を得意としておる魔大帝級魔神でございます。あなた様がアルフレッド様の後継者様でございますか。よろしくお願いします」
「アールティンカーと言います。よろしくお願いします。アールと呼んでください」
「アール様。あなた様は、私の知る限り十二使徒を召喚された最年少の後継者です。先が楽しみです。何か御用はございますか?」
「何を頼めるんですか?」
「私は、魔王八軍を召喚できます。戦の時には八軍を召喚し全滅するまで御身に尽くしましょう。また、私は魔神に詳しい者。それらについて知りたい時には役立つものと思われます」
「一軍でいかほどの軍事力があるのですか」
「一軍は八魔将軍、各将軍に三千の魔界騎士、百人の魔界百人隊長と言う構成となります」
「歩兵八万騎兵二万四千で八軍で約八十六万ですね」
アールが感嘆の声を上げる。
「アール様は計算が早うございますな。聡明な主君に仕えるのは私の誇りでもあります。私は十二使徒では一番支配する配下が多い召喚聖霊です」
なるほど。しかしすごい。
召喚した聖霊は個人だけでなくその聖霊の部下全部を使役できるって事みたいだ。
そんな事は初めて知った。要は軍を召喚するって事なんだろう。
次のスクロールが楽しみだ。
「では召喚魔法陣に戻られよ」
アールがそう言うとプリサタは少し目を細めてお辞儀をした。
「いつなりとお呼びください。失礼する前にアール様に一つ忠告させて頂いてもよろしいですか?」
「はい。何でしょう?」
「召喚して使役する聖霊はいつもアール様の隙を狙っております。十二使徒の中には第二使徒悪魔大帝アルマンディスクなどのような脳筋全悪武闘系の聖霊などもおります。彼の聖霊は力で抑えねば納得せぬ愚か者です。ご用心を」
そう言うとプリサタはかき消えるように消えた。
プリサタが消えると同時に魔法陣が体に染み込んできてスクロールが消えていった。
すごい。ご先祖アルフレッド。
第二使徒の悪魔大帝アルマンディスクは、魔神大帝プリサタが言った通り召喚するなりアールに飛びかかってきた。
アールは闘気で身を包んでいたのでアルマンディスクの攻撃を軽くいなしてやったら悪魔大帝は相当驚いていた。
第三使徒カサノバは美しい女性の使徒だった。
アルフレッドの彼女だった聖霊。
女神女帝とか言っていた。
そんな感じで今まで出会った事のないような高位の聖霊達を次々に召喚し隷属させていった。
十二使徒の中でアールは第九使徒聖獣王カーツと第十二使徒光神サタヨナの二聖霊を常住させる事にした。
アルフレッドの手紙の忠告が気になっていたからだ。
世界と言うのはバランスを取るもんだとアルフレッドの手紙が言っていた。もしそうならアールは明らかに何かに対してバランスを崩す要素でそれは何かバランスを崩す存在が発生しているからアールが生まれたって事だろう。
しかし自分が世界のバランスをどちらに崩しているのかはよくわからない。
パワーオブバランスという事ならば自分にはパワーがありすぎだ。
そもそも自分は原子崩壊を魔法で起こせそうだと知った上で、電子発光の実験をして、あんな騒ぎを起こした。あの電子発光の魔法が思ったよりも簡単にできた事はアールにこれ以上の能力を発達させる事が本当に必要なのかと思わせるのに十分な出来事だった。アールの学習意欲の大きなブレーキとなっていたのだ。
それが良識ってもんだ。
考えてもみたまえ。あの歴史的に忌まわしい爆発を好きな場所に好きな規模で起こせる奴はこの世に存在しても良いと思うか? もし自分ではない誰かがそんな恐ろしい能力を持っていると知ったら? 考えたくもないだろ?
だからアールは敢えて攻撃魔法を全く考えないようにしていた。
しかしアルフレッドは甘えるなって叱責をしていた。部下を鍛えろとも。
もっとパワーオブバランスの自重を増やせってことだろう。
しかも、地下倉庫には想像を絶する財宝と戦闘力の物量が用意されていた。
おーい。この世界で何が起ころうっての?
アルフレッドの手紙はアールの考えを根底から崩し再構築を強要したのだ。
だから十二使徒のうち比較的おとなしく見える目立たないのをチョイスし自分達の自衛とアール自身の今後のいろんな相談役として常住させる事にしたのだ。
二人は十二使徒の中では少し位が低くなるがそれでも究極級の召喚聖霊でありそれぞれ魔法と神威奇跡に詳しく何より変身が上手なので護衛としても教育役としても良い選択だと思ったのだ。
アールの考えをプリサタを呼んで相談したところ良い考えだと了承してもらった。
アールがこの部屋から出た時、白いオオカミと白銀の鎧に身を包んだ騎士を従えていた。
なかなか出てこないので案じていたギル王以下四人はアールの無事を見て大きな安堵の溜息をついていた。




