第十一 神祖
初レビュー書いてくださった方。ありがとうございます。嬉しかったので、更新しちゃいました。
第十一 神祖
アールはそろそろ三歳になろうとしていた。
体の成長に合わせて頭脳の成長も著しい。
もちろん頭脳の成長に従い魔力・聖力闘気もうなぎのぼりの成長を示している。
ハッキリ言って自分でも手がつけられない。
最近では大きな魔法は極力使わない事にしている。例えばファイアーなんて魔法を使うと普通の人ならマッチの火からガス火程度までの効果にしかならないが最近のアールが使うとジェット戦闘機のバックファイアーの様な炎が出て辺りを吹き飛ばしてしまい兼ねない。
これはアールが成長しているためだけではない。アールの魔法スキルが上昇したためでゲームのレベルアップみたいなものだと思われた。
アールの場合、レベルゼロみたいな時ですら世界一みたいな感じだったが、この一年の成長はレベルアップ換算するとどれ程になるのか想像したくなかった。
これは車の排気量と船の排水量を比較している感じの差である。
車が軽自動車から普通自動車に変わるとそれなりの排気量が増えるが、船のレベルが変わった時の排水量の変化に比べたら可愛いもんだ。
他の者とアールとではそんな感じで成長の単位が別なのだ。
しかしアールの魔法の独学には限界を見ている。最近新しい発見がない。
どんな魔法学の本を見てもつまらないと思うだけだ。
さて、そんな訳で最近のアールのブームはよく会話に出てくる神祖とか三祖とかアールのご先祖様についてだ。誰に聞いても大した知識がないのか抽象的すぎてイメージが湧かない。
何だか宗教の触れてはならないモノみたいな扱いだが突っ込んで聞くとよく分からないって事らしい。
仕方がないのでお爺様であり王であるギル王に聞く事にした。
ギル王は執務が忙しくあまり会う機会が無い。
やっと会えてご先祖様の詳しいことを教えてくださいと丁寧に頼んでみた。
愛孫に丁寧に頼まれて断れる爺様などはいるはずかない。ギル王は一発で陥落。
後日しっかり時間を作って教えてくれる事になった。
ついでにと王妃ルーシーと皇太子ハルトと皇太子妃サファリも一緒にって事になった。何だか改めて発表になる重大情報みたいだった。
集められたのは宮殿の深奥部。神祖廟と呼ばれるどころだった。
そこは神祖の一族しか入れないところで家族揃っての墓参りみたいな事なのかなぁって思ったらやっぱりそうだった。
お墓の前で皆でお祈り。
どんな世界でも一緒だとアールは思った。
ところが。
「今日はアールの求めでご神祖様の事を教えて欲しいとの事だった。そこで本日は一族の直系の者にしか伝えられていない伝承について説明する」
と、アールの知りたかった事が話されるようだ。
アールは期待に胸を膨らませる。
ところが。
「と、言っても伝承は、新しき子孫が誕生するとここに来てファルムに従えってそれだけ。
そこで我が一族では産まれて五歳の誕生日にここに来てファルムにお参りするのが習わしになっている」
ハルトも霊廟にお参りしたと言う。
「お爺様。ファルムとは何でしょうか?」
ギル王は笑って答えずアール達をそのファルムというところに案内してくれるという。
「アールは、特別だから今日は我々の方が少し期待しているのだ」
ギル王の言葉に大人達が少しハイになって話始める。
ファルムは一目で自分の様な子孫のために残されたモノだとわかった。
ファルムは上部にファルムと書かれている。
しかしァでは無くィだと思う。そう、フィルムだと思う。
そこには魔力・聖力で次のように書かれていた。
「俺は開祖王の孫のアルフレッドだ。たぶんお前はこの手紙を読んで驚いてんだろうな。
ちなみにお前は幾つだ? 俺は二つになる前におれがとんでもないスペックなのに気づいた。
同じ様な奴はおれのじい様もだが飛んでもなくハイスペックだった。
じい様も俺もいろいろあった。
で、教訓。
お前が生まれたって事はなんか起こるって事じゃないか?世界ってのはバランスが取れてんだぜ。
そこで。
遠慮せずスペックを精一杯思いっ切り高めろ。
甘えんな。
部下を教育しろ。
次に贈り物だ。
このファルムの右下に隠し扉がある。そこにはマジックアイテムを入れておいてやった。これは使えるぜ。
それと召喚魔法の魔方陣のスクロール十二枚が入ってるのですぐに使え。
そいつで召喚できんのはなかなか使える奴らだ。
お前はファルムって意味分かるか? じい様も意味分かんなかったみたいだ。
じい様は、古代の人間の中にそんなもんを作ってこの手紙みたいので子孫に教訓を垂れた奴がいたみたいだ。
そいつはそれを見たって書いてた。そいつの伝言はこの俺の作ったのより相当に煌びやかだったがなんかファルムみたいじゃなくって申し訳ないって謝ってた。
俺たちのファルムはもっとショボいかもな。
忘れてた。
召喚した女には手を出すなよ。俺の女だ。
子孫よ。余はマキシミリアンだ。
私は幸いに孫を得た。
アルフレッドに全てを託した。後はアルフレッドのファルムに従ってもらいたい。
幸運を祈る
なるほど。ファルムって映画のフィルムの事だろう。
アールよりも百年ほど前に死んだ転生者だろう。
こっちの世界では転生までの期間に随分と差ができてるようだ。
いろいろ分かった。
しかし子孫に伝言できるって、とてもいいシステムを考えてると感動した。
世界にはバランスが有るってなるほどと思う。
自分の存在は明らかに世界のバランスを崩し兼ねない。
バランスを取れるような奴が世界のどこかに生まれてるって事か?
アールは伝言を声を出して読んでやった。
ギル達は甚だ関心していた。
アールは、右下の隠し扉っていうか「扉だよ。壊してね」って書いてあるところをみて三祖のアルフレッドは茶目っ気の多い人物だったんだろうって思った。
アールはギル王に書いている事を説明して壊す許可をもらう。
闘気を込めてワンパンチ。
ガラガラって壊れる。
中に入りスーパースモールライトって心で唱える。
小さな光がついた。
電子発光による透明な冷たい光が辺りを照らした。
下階段になっている。
さてどれくらい降りただろうか? 大きな部屋に繋がっていて、大きな扉が出てきた。
扉には魔力・聖力で「扉に例の呪文を言え」って書いてある。
アールは、まぁ違うよなって思いながら「開けゴマ」って言ってみた。しかしさすがにそれでは開かず一人恥ずかしくなる。
それでは開門の呪文を言ってみる。と、言うか最初にそれをしろってツッコミされそうだ。
「カナンの地に降り立った行商人は門番に申す。彼の国より参りましたる行商で貴国に有益な荷を多く持ち來たりたり。門を開き我らを通さん」どうだ?
ピンポンってそんな音が鳴った。すぐに恐ろしいような魔力・聖力が扉の方に流れてゆくのが分かる。アールはなるほどって思った。自分から魔法の詠唱をしたら魔力・聖力は何のためらいもなく扉を開くために流れ込んで行く。
それは魔力・聖力の総量によるセキュリティなのだ。
うまく考えている。扉を開く普通の魔法で開くことができるが、扉が開かれるまでに恐ろしく魔力・聖力を浪費させる仕組みなのだ。
アルフレッドの言うハイスペックな者達でないと扉が開かれるまでに魔力・聖力が枯渇して死んでしまうだろう。
巨大な扉が開いた。
そんな仕掛けがあるとは皆知らないだろうから教えておく。
アール以外の者がこの扉を開けるためにやってくると危険だからだ。
中に入って皆が驚きの声を上げた。
そこは巨大な巨大な宝物庫だった。
三祖アルフレッドは、相当粗野な印象の人物だが特に何も言っていなかったが巨万の財宝がそこに保管されていた。
王族って人々は財宝が置かれていてもそれ程驚かないのかって思っていたがそうでもないようだ。
皆、手短な財宝に歩み寄り美しい財宝を手にとって眺めている。
息を飲むような光景だった。
アールはアルフレッドから託されたマジックアイテムとか魔方陣のスクロールがどこにあるのかそちらの方が興味があった。
アールと同じ様なハイスペックのアルフレッドがなかなか使えるっていうぐらいだから相当なアイテムのハズだった。
アールは流行る気持ちを抑えてスタスタと奥に歩いていってなるほどと理解した。
財宝倉庫の奥に間仕切りがあり新たな倉庫の入り口がある。
そこは想像を絶する巨大な宝物庫だった。
天井まである巨大な棚には、魔法の鎧、盾、剣、槍、馬具鎧が一つのセットにされ、そのセットが何百万セットも整然と並べて飾られている。
そのどれ一つ取ってみても見事な魔力が込められた武具なのは一目瞭然だった。
同じ様式で、同じような強い魔法アイテムの武具セットはひとセットでお城を買える程の価値があるとギルがため息混じりに呟いていた。
それが見渡す限り揃えられているのである。
武具セットのコーナーの次には大物のマジックアイテムが置かれていた。
身の丈何十メートルもあるゴーレムが無数に置かれている。
その次にはゴーレムよりも大きな龍のゴーレムだろうか。何て大きさだ。
次に宇宙戦艦みたいな巨大黄金の船。
黄金の砲塔が数百台。
巨大な戦槍。こんな巨大な戦槍って誰用なんだろうか?
様々なマジックアイテムが所狭しと置かれている。
さてスクロールだ。
こんな巨大な場所で十二枚のスクロールをどうやって探すのだろうか?
しかしそれは呆気なく見つかった。最深奥の一角にドアがありそこには「後継者のみ入室を許可する」と書いてある。
ギルに説明するとドアの前で待っているので入って来なさいと来た。
しかしそれって怖いんすけど。




