第一 プロローグ 転生
初めまして、聖 誠『Seisei』です。
第一部 『良くある転生物語 聖と魔』完結しました。
第二部『覇王の誕生』もそろそろ完結です。よろしくお願いします。
皆さまのご感想、批評、評価をお待ちしています。
第一章 幼少期
第一 プロローグ 転生
「あなたは死んだのです……」
エコーのような音声が頭に響いている。
何を言っているんだ? ヒロトは他人の事のように聞いていた。
そう言えば随分長い間、行列に並んで順番を待っていた。
この声は神様? 閻魔様? 最後の審判?
ヒロトは首をひねって彼の後ろに並ぶ何万もの人間を見ていた。
大抵はヨボヨボの老人だった。この人達は皆んな大往生だったんだなぁって感慨深い。
そうしているうちに、ついに自分の順番が回って来た。
「あなたは、生前良い事をしましたか?」
神様だか閻魔様だか知らないが、誰かの声が響く。なんとかの審判みたいな奴だろう。
審判は生前の行動が基準で判断されるのだろう。今更何を言っても裁定に影響はないだろうから正直に言っておく。
「良い事も良くない事も普通にしました」
まぁ、そう言うしかなかった。
「貴方の行いを精査したところ、あなたは、大きな良い事をしていますね」
声がそう言ったがヒロトには記憶はない。
「あなたは最後に人の命を助けました」
最後にって言うので記憶が蘇る。生前の事は何だか夢みたいだが最後に車を運転していたら飛び出してきた人を避けて電柱にぶつかった事を思い出す。
ああ、あの時に死んだんだね。
「そうです。あなたが身を呈して守った人は」
おいおい。だれも身を呈してなんかいないよ。咄嗟に避けただけさ。単なる条件反射ってやつさ。
声は続ける。
「その後、新薬を開発します。そして大勢の人の命を救います」
そいつは凄いやつだったんだなぁ。
声の仰るにはその人間は本当は前世でとんでもない悪い事をしたものだからこの時に死んで罪を償う予定だったのだという。
「つまりその人を助けた貴方の自己犠牲が大勢くの人を助ける結果となったのです」
声は前世とか言ってるので仏様なのか? しかしその声の言ってる事は、こじつけてるって感じがする。
「僕はそんなつもりはなかった」
ヒロトは一応そう言っておく。声がふふふって笑った。
「貴方はとても正直です。ここでは誰もが嘘をつきます。ここは嘘の間と名付けられているほどです。嘘を暴き前世の悪徳を突きつけ審判を下すところなのです。しかし貴方は一言も嘘を言いませんね。
私が先程から説明しているのは単なる因果事実です。貴方は咄嗟に人を避けて自己犠牲により死にました。
しかし、貴方はハンドルを切る時に確かに死を覚悟してハンドルを切り人を助けようとしたのです。
貴方が助けた人は辛い事があり自暴自棄になって自殺を図ったどうしようもない人です。
貴方の自己犠牲により命の助かったその人は貴方に申し訳ないという気持ちから、その後必死でやり直し、自分の子供を死に追いやった病を治す薬を生涯を掛けて開発するのです。
全ては貴方がきっかけなのです」
納得がいかない。
俺は、まだ小さな子供の時に、あるお店で目の前にあったジュースを思わず飲んでしまい途中で自分のした事が怖くなって元の場所に戻した事がある。三歳くらいだったか?
これって、盗みだよね。
半分だけ残ったジュース瓶の映像がその時に感じた罪悪感とともに鮮明に残っている。
捨て猫を虐めた事だってある。遊びで虫やカエルをたくさん殺した。悪い事ばかりしてきたように思う。
声がまたふふふと笑う。
「貴方のように人を助ける為に自爆する人なんて一億人に一人いるかいないかです。そしてその結果として何百万人もの命を救う事になったのです。そのように大勢の人を救う人も殆どいません。これは本当に稀な奇跡なんです」
そして声が審判を下した。
「貴方は多くのアドバンテージを得て転生する事ができます。貴方が生前望んでいたような世界に転生させてあげましょう。それともう一つだけ特別に貴方の何か望みを叶えてあげましょう」
どうも納得がいかないのでヒロトは望みを言う気がしない。
声が再度ふふふと笑った。
「貴方は本当に特別な人ですね。分かりました。貴方は生前良く、生まれ変わっても今の知識が無いんだったら意味無いよな。って言ってましたよね」たしかに言っていたよ。聞いてたのね?
声は続けて言う。
「では貴方の望みの通り今の記憶をそのままにして転生してあげましょう。それとアドバンテージもうんとはずんでおきましょう。それで貴方の最後の望みとしましょう。納得がいかなければ転生先で良い行いをしてくださいね。
裁定はくだされました。裁定に基づいてこの者の転生を執行してください」
読んでくださりありがとうございます。