ボクと水龍
全編改稿。
本文はそのままですが、冒頭に脇役の語りを付けました。
「光あれ! 光あれ! ワレラが主! ワレラが王! ワレラが玉!
究極の天に光あれ! 絶対の地に光あれ! 深淵の海に光あれ!
―――ワレラが至高の頂に光あれ!
炎よ踊れ! 焔よ踊れ! 闇を払え!
贄を捧げよ! 贄を投じよ! 森の玉を贄とし、天地海遍く掲げよ! ワレラに、禍を逆した祝福を!
欠けた母成る月を贄で埋めるのだ!
嘆き隠れた父成る陽の火を取り戻すのだ!
ワレラは正義なり!!」
-拝火教団 教主メヌヌス-
膝から崩れ落ちて、目の前が真っ暗になったボクの耳が捉えたのは、小さな小さな悲鳴だった。
何も考えられないままボクは、声に誘われるようにそちらに歩いて行った。
足元に広がる……深い深い森の中。
いつの間にかに日が落ち、辺りが薄闇に包まれる。それでもボクは、ふらふらと声の主を探す。
闇の中、木々から漏れるように、明かりが見えた。
誘われるように光に近づくと、ほんのすこし開けた場所に、それはあった。
環状石籬……ストーン・サークルとしか思えないオブジェだ。
ただ、だいぶ前にテレビでみたものとは形が違っているし、何よりも色が異なっている。
―――黒い。
艶ややかな黒い岩が、輪になるように配置され不気味な燐光を放っている。
暗い森の中、闇に浮かび上がるように炎が灯され。小さな無数の人影が、それを輪になって囲むように立っていた。
そして、灯された炎に目を向ける。
輪と輪で二重に囲まれるように中央で燃え盛る炎の中に……“人”が居た……。
―――なんてことをっ!?
ボクは慌てて火に手を突っ込み、人形を掴み出した。
燃え盛る炎を消さなきゃ!
足元で慌てふためく小さな人影達を無視して、ボクは炎を何度も踏みつけ消火する。
そして、両手のひらで人形を包み込むようにして保護したまま、ボクはその場を離れる。
―――手の中が熱い。
離れた所で手を開くと、そこには焼け焦げた人形があった。
いや違う……認めよう。これは人間だと……。
服は焼け焦げ、全身が赤く。アチコチを火傷してるようだけど……生きてる!
手の中の人は、苦悶の声を上げながらも動いている。
えーと、火傷した時ってどうすれば良いんだっけ?
水で冷まして……それからお医者さんに……って、病院が何処にあるかなんて知らないよ!?
えと、こういう時は確か……そうだ、たしか軟膏を塗って……。
ポケットを探ると……あった!
自分で言うのもなんだけど、ボクは結構ドン臭い。
軽い擦り傷や打撲はしょっちゅうだ。
だからいつも軟膏を持ち歩いている。
これを塗れば……あ、でも先に傷を水で綺麗にしないと!
ボクは辺りをきょろきょろと見渡した……あった! 池だ!!
離れた所に、キラキラと星明かりを反射する水面を見つけたボクは、そこに駆け寄った。
――――
―――
――
星と月明かりを反射する大きな水たまり……湖は、ドライアイスみたいな霧がかかっていて、とてもとても幻想的だったけど……今はそんな場合じゃない!
湖の横にハンカチ置いて、そこに寝かせたあと、湖に手を突っ込み水を手で掬い上げた。
―――うん、透明で、変な匂いもしない。
少し飲んでみる……美味しい。
よし、これなら清潔そうだ……ならば早く冷やしして火傷の炎症を抑えないと……手遅れになる前に……なっ!?
ボクが再度、水を掬い上げようと手を見ずにつけた時、それは起こった。
あいたっ!?
ガブリと、何かに手を噛まれた!?
見ると蒼い艶やかな鱗の蛇が指に噛み付いていた。
―――海蛇? 毒蛇!?
慌ててボクは、開いた方の手で、蛇の頭を抑え口を無理やり開かせると噛まれた指から牙を外した。
そして痛みをこらえ、噛まれた手で尻尾を握ると……全力で振り回した。
遠心力全快で振り回される蛇を、その勢いのまま遠くに放り投げる。
シャギャっ!!? ……っと、蛇とは思えない叫び声を残して蛇は地平線の彼方に飛んでいった。
え? 飛びすぎじゃない?!
……あ、とソレよりも治療しないと、チラリと噛まれた指を見るが、血は出てるけど大したこと無いみたいなので、今は放置。
できるだけきれいな部分を……と、上澄みを掬うように水を汲み。
寝かされたまま、うなされている人形に持ち上げ、手の中で何度もかける。
そして、もう一枚、ハンカチを取り出し水分を拭き取る。
勿論、擦ったりしない。優しく優しく、ちょんちょんと叩くようにして拭き取る。
ハンカチ二枚持っていてよかったよ……。
地面においたままのハンカチの上に降ろし、軟膏を全身に塗る。
ボクの血が少し混じったけど、変な病気は持ってないし大丈夫だよね?
……それより、たしか火傷って、全身の皮膚の50%だか、70%だかが焼けたらアウトじゃなかった?
……人形は、どうみても全身が真っ黒に焼け焦げてる。男女すらわからない。
ダメかもしれない……。
――――
―――
――
いまさらだけど、湖で軽く手を洗い。噛まれた指を咥えて、毒を吸い出してみる。
吸っては吐いて、吸っては吐いてを何度か繰り返してると、いつの間にかに明るくなっていた。
それに、指を見てみると血も止まっていた。
傷が浅かったのかな?
まあいいや、それより人形の方は……あれ?
なんかキラキラしてる?
羽虫が集ってる!? ええっ死んじゃった!?
慌てて追い払おうとしたけど……どうも様子がオカシイ。
羽虫じゃない?
小さくてよく分からないけど……羽の生えた半透明の人間っぽい?
え? え? ナニこれ?!
人形姫が一人だと言った覚えはない、いいね?




