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ただの後衛職だと見捨てられた俺、『ステータス改竄』で覚醒する〜俺を溺愛する最強の氷の魔女と、辺境で温泉スローライフを始めます〜  作者: KIZUNA


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賢王からの招待状



リリアス公国が建国されてから数ヶ月。 急激な発展を遂げ、魔王軍すら退けた我が国は、大陸において完全に無視できない存在となっていた。 だからこそ、この書状が届くのは必然だったと言える。


『我が盟友たるアイン大公。リリアス公国の建国、改めて祝着至極。 つきましては、アルカディア王都にて「公式な同盟調印式」および「諸国会談」を執り行いたい。貴殿と、誉れ高き正妃殿下のご来訪を心待ちにしている』


賢王オズワルドからの、直々の招待状である。


小国や使節団とのやり取りは進めていたが、最大の覇権国家であるアルカディアとの正式な調印式となれば、君主である俺が直接出向かないわけにはいかない。


「というわけで、留守中の公国の防衛と内政は頼んだぞ、ヴァルガス、エレイン」 


「任せておけ! この国に近づく馬鹿がいれば、俺の拳で塵にしてやる!」


「アイン様もリリア様も、王都への長旅ですわ。どうかお気をつけて」


見送りに来た頼もしい仲間たち(と、「お土産いっぱい買ってきてね!」と手を振る神話級の幼女)に背を向け、俺たちはアルカディアが手配した豪奢な馬車へと乗り込んだ。


馬車に同乗しているのは、正妃であるリリアと、護衛兼馬車を操るクオンのみ。


ガタゴトと心地よい揺れを感じながら、リリアは俺の腕にギュッと抱きつき、窓の外の景色を嬉しそうに眺めていた。


「ふふっ……二人きりでの長旅なんて、初めてね!まるで新婚旅行みたい!」


「クオンが御者台にいるから、厳密には二人きりじゃないけどな。でも、たまにはこういうのも悪くない」


「もうっ、無粋なこと言わないの」


リリアは頬を膨らませつつも、嬉しそうに俺の肩に頭を乗せる。 そんな穏やかな時間が半日ほど続いた頃だった。


ピタリ、と。 唐突に、馬車が不自然な急ブレーキをかけて停止した。


「どうした、クオン?」


「……アイン様。前方の街道が、完全に『封鎖』されています」


御者台からの微かな緊張を孕んだ声に、俺とリリアは顔を見合わせ、すぐさま馬車を降りた。


そこは、周囲を切り立った岩肌に囲まれた渓谷地帯。 そして前方の道には、白銀の甲冑と目深なフードを纏った数十人の集団が、まるで最初からそこに生えていたかのように静かに立ち塞がっていた。


「……アルカディアの出迎え、というわけではなさそうだな」


俺の呟きに応えるように、集団の中心にいた大柄な男が一歩前に出た。 その胸元には、太陽と剣を交差させた紋章。先日報告に上がっていた、大陸中央の宗教国家――聖導国ルシエラの国章だ。


「リリアス公国・大公アイン。並びに『氷の魔女』リリア。我らは聖導国ルシエラが誇る『神罰執行部隊』。……神の理から外れた冒涜的な力を振るう貴様らを、異端としてこの場で浄化(はいじょ)する」


男が懐から、禍々しいまでの純白の光を放つ十字架を天に掲げた。 その瞬間、俺たちの周囲の空間に、幾何学的な光の紋様がドーム状に展開される。


「異端審問官か。狂信者どもが、俺たちをここで暗殺するつもりか……返り討ちにしてやるわ」


リリアが一歩前に出て、周囲の大気を凍らせようと魔力を練り上げる。 しかし。


「――えっ?」


リリアの手のひらで生み出されようとしていた絶対零度の氷が、パリンッ、と呆気なく砕け散った。


それどころか、彼女から常時溢れ出ていた神話クラスの魔力が、目に見えて急激に萎縮していく。


「リリア!? どうした!」


「わ、分からない……! 魔力が、うまく練れないの! それに、体中が鉛みたいに重くて……っ」


俺は即座に状況を理解すべく、自身のスキル『領民録』のステータス画面を展開しようとした。 だが。


『警告(エラー):強力な【概念遮断結界】により、対象との魔力接続(リンク)が物理的に切断されています。能力の共有、および付与が一時的にダウンしました』


「何だと……!?」

「無駄だ、異端者どもよ」


白銀の甲冑の男が、嘲るように鼻で笑った。


「これは我が国に伝わる聖遺物『神絶の十字架』。この結界内では、対象同士の『魔力的な繋がり』を強制的に切断し、周囲の魔素を徹底的に浄化(フラット)にする。貴様が配下を強化する不気味な術も、高密度の魔力も、この領域では一切発動しない!」


なるほど。魔王のように力でねじ伏せるのではなく、俺の『絆によってステータスを解放する』という能力の仕組みそのものを封じてきたというわけか。


魔力のパスを切断されたリリアは、神話クラスの恩恵を失い、さらに結界のデバフによって本来の【英雄】クラスの力すら半分も出せない状態に陥っていた。


「さあ、ただの脆弱な人間に成り下がった気分はどうだ? 処刑を開始しろッ!!」


男の号令と共に、数十人の暗殺者たちが一斉に襲いかかってくる。


彼らの動きは統率が取れており、殺気に迷いがない。純粋な個の力では俺たちに及ばなくとも、連携とこの結界の恩恵があれば十分に勝てると踏んでいるのだ。


「クオン、リリアを守れ! 俺が前を止める!」


俺は腰の短剣を引き抜き、迫り来る刃を弾き返した。 『領民録』による他者へのバフは遮断されたが、俺自身がかつて施した『ベースのステータス改竄(筋力・敏捷の底上げ)』は、自己完結しているためかろうじて機能している。


だが、敵もさるもの。


「チィッ……! 腐っても怪物か! だが、これならどうだ!」 暗殺者たちは俺との正面衝突を避け、特殊な粉末を周囲に撒き散らした。


「……ッ、毒の煙幕か!」


視界が奪われ、吸い込めば神経を麻痺させる毒霧。息を止めて凌ぐが、ステータスがいくら高くても、視覚と呼吸を封じられれば動きは鈍る。


俺が対応に遅れたその一瞬の隙を突き、数人の暗殺者が煙の向こう側でリリアへと肉薄した。


「リリア様ッ!」 クオンが応戦するが、多勢に無勢。刃がリリアの華奢な肩を掠め、鮮血が舞う。


「くっ……アインには、指一本触れさせないわ……ッ!」


リリアは痛みに顔を歪めながらも、残された僅かな魔力を振り絞り、氷の盾を展開して必死に持ち堪えている。だが、あのままでは限界が来るのは目に見えていた。


(純粋な力では勝っているのに、見えない縛り(デバフ)のせいで手も足も出ない……!) 焦燥感が胸を焼く。


結界を張っているあの『十字架』さえどうにかすれば、俺とリリアの接続(リンク)は復活する。


だが、十字架を持つリーダーの周囲には、最も分厚い護衛の陣形が敷かれていた。


(……なら、俺の『書記官』としての原点を叩き込むまでだ!)


俺は毒煙を抜け、リーダーの男へ向かって地を蹴った。


「愚かな! 自ら死地に飛び込んでくるとは!」


五人の護衛が一斉に槍を突き出してくる。


俺は躱すことすら放棄し、あえて左腕を前に突き出した。


グシャッ、と。 二本の槍が俺の左腕を貫く。激痛に意識が飛びかけるが、歯を食いしばって前進し、そのままリーダーの男の懐へと強引に潜り込んだ。


「なっ……狂人がッ!?」


男が驚愕に目を見開く中、俺は血まみれの右手で、彼が掲げていた『神絶の十字架』をガッチリと掴み取った。 人とのリンクが遮断されているなら、ただの『物体』のステータスを書き換えればいい。


【対象:聖遺物『神絶の十字架』】

・状態:『結界展開中』 → 『完全沈黙(機能停止)』へ置換。


バツンッ!!!


不快な破裂音と共に、十字架から放たれていた純白の光が完全に消失し、周囲を覆っていた幾何学的な結界がガラスのように砕け散った。


「あ、馬鹿な!? 聖遺物が、ただの石ころに……!?」


リーダーが狼狽えた、その直後だった。 俺たちの頭上に、太陽の光すら遮るほどの、極低温の猛吹雪が吹き荒れ始めた。


「……よくも、私のアインを」


振り返ると、結界の呪縛から解放され、俺とのリンクによって再び【神話クラス】の魔力を取り戻したリリアが、宙に浮遊していた。


そのサファイアの瞳は、これまでにないほど冷酷な殺意で研ぎ澄まされている。


「お前たち……後悔する時間すら与えないわ」


リリアが静かに指を鳴らす。 瞬間、渓谷一帯の空間が文字通り『凍結』した。


毒の煙幕も、襲いかかっていた暗殺者たちも、リーダーの男すらも。悲鳴を上げる間もなく、数十人の神罰執行部隊は、全員が魂の底から凍りついた美しい氷像へと変わり果てた。


「アインッ!!」


敵を全滅させた直後、リリアは弾かれたように空から舞い降り、血まみれの俺の左腕を見て大粒の涙をこぼした。


「ごめんなさい、私が不甲斐ないばかりに……! またアインにこんな怪我を……ッ!」


「泣かないでくれリリア。結界の不意打ちは誰にも予想できなかった。それに……君が無事なら、これくらい安いものだ」


俺が痛みを堪えて微笑むと、リリアは急いで極大の治癒魔法をかけながら、俺の胸に顔を押し当てた。


強大な力を持ったとしても、それを封じる手段や絡め手を使ってくる敵は必ず存在する。 ルシエラ……人間社会の闇に潜む悪意は、想像以上に深く、そして狡猾だ。


「アルカディアの王都に着いたら、この件も含めてオズワルド陛下と話し合わなきゃな」 傷が癒えていくのを感じながら、俺は冷たい氷像と化した暗殺者たちを見据え、来るべき人間同士の熾烈な権謀術数への覚悟を新たにするのだった。


個人的にはかなり気に入っている作品ではありますが、、

想像以上に反響がないため一旦ここで一区切りとしたいと思います。


もし反響があればまた続きを描きたいとおもっている作品ではありますので、ぜひ御一読いただけたら嬉しいです。

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