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氷魔法の弓騎士 ~パン屋の息子は騎士になる~  作者: もっちゃれら
第一章 訓練生編
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閑話 紫髪のカミナリ少女

雨の降る暗い夜、教会の庭に雷が落ちた。


その紫の閃光に、当時の私は目を奪われた。



「はい、皆さん。お夕飯ですよ」

教会で一番偉い修道女のベラおばあちゃんがご飯を作ってくれる。


この教会は聖樹教の教会で、孤児院としての役割も兼ねている。

つまり、ここの子供たちはみんな孤児だ。

私の両親は魔物に襲われて死んじゃったと言われているけど、本当のところは分からない。


「お姉ちゃん、食べさせてー」


「あなたはもう自分で食べなきゃダメ」


「え~」


今年で十五歳の私は、ここの孤児の中で最年長だ。


まだまだ甘えん坊の子たちも早く自立するために、出来るようになったことは自分でさせるのだ。

夕飯の後は聖樹様にお祈り。

この世界の人々は、聖樹様がもたらしてくれる清浄なエーテルのおかげで生きていけるので感謝を捧げましょう。というのが基本の教えだ。

他にも細かい教えがあるけど、忘れた。

お祈りが終わった後、部屋に戻ろうとするとおばあちゃんに呼び止められた。


「テレーズ、やりたいことは見つかったかい?」


「ううん、まだ」


「そうかい。まあ、ゆっくり探すと良いよ」


十五歳になると、教会から出て一人で生活しなければいけない。

これまでいろんな仕事の奉公に出てきたけど、どれもしっくり来なかった。

やりたいことがないというのが私の悩みだ。



翌日。今日の夕飯の食材を買いに、大通りへやってきた。

王都の大通りには何でも揃っていて、私のように食材を買いに来る人、出店をひたすら回って食事を済ませる人、いろんな人がいる。


今日のメニューはポトフだから・・・。

人参、じゃがいも、玉ねぎ、キャベツ。あと忘れちゃいけないのが肉。牛肉ね。


「まいどあり~」


肉屋さんで最後の牛肉をゲットした。


さて、帰りましょ。


食材たちを前に抱えて、人にぶつからないようにしながら歩く。

すると後ろの方から悲鳴が聞こえた。


「キャー!泥棒ー!!」


振り返った瞬間、誰かが突き飛ばされて私は尻もちをついた。


「キャッ」


「邪魔だよ、どけ!!」


ぶつかってきたのはボロを着たおじさんで、悲鳴の主が持っていたであろう何かが入った袋を抱えて向こうへ走り去っていくところだった。


ムカつく。


食材たちを急いで拾って泥棒を追いかけようとした時、ものすごい速さで紫色の光が私を追い抜いて行った。

泥棒はかなり遠くにいたはずなのに、あっという間に追いついて組み伏せてしまった。


カッコイイ・・・。


紫色の光は、男の人だった。

遅れて駆け付けた衛兵さんと、何かを話している。

衛兵さんは泥棒を連行して行き、男の人は被害者のおばさんにお礼を言われてどこかへ行こうとする。

人ごみで見失わないように、慌てて男の人を追いかけて話しかけた。


「あ、あの!」


「ん?どうした?」


「さっきの紫の光は何の魔法ですか?」


「ああ、あれはね、雷の魔法だよ」


「どうすれば使えるようになりますか?」


「んー、雷を確実に使えるってわけじゃないけど、魔法を使いたいなら騎士団か、魔法師団に入ることだね」


「お、お兄さんはどっちに居ますか?」


「オレは騎士団に所属しているよ」




お兄さんと別れて、帰り道を歩く。


あの紫のやつ、カッコよかったな。

私のやりたいこと、見つかったかも。


教会に帰ると、おばあちゃんが迎えてくれた。


「おかえり。ちょっと遅いから心配したよ」


「ごめんなさい、色々あって。でも、やりたいこと見つかったの」


「おお、そうかそうか。何になるんだい?」


おばあちゃんが優しい顔で聞いてきた。


「私、騎士になりたい」





あれから五年。

私は教会の近くに住んでいる。

大家さんは顔見知りで、私が元孤児なのを知っていたから家賃を半分以下に下げてくれた。


トーマスとユーゴをみんなで見送った後、みんなと別れて大通りに食材を買いに行く。

今日は、教会にご飯を作りに行く日。


仲間ができたこととか強くなったこととか、おばあちゃんにたくさん聞いてもらわなきゃ。

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