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氷魔法の弓騎士 ~パン屋の息子は騎士になる~  作者: もっちゃれら
第一章 訓練生編
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閑話 プガレの村の長男坊

「お~い騎士様!!収穫するの手伝ってくれぇ!!」


「おう!!任せとけ!!」


グストンのおっちゃんがオレを茶化す。

オレが騎士を夢見ていることを知っているからだ。


オレは今年、騎士団の入団試験を受ける。

そして、強い魔物をぶっ倒して英雄になる。

でも今は野菜の収穫時期だから、野菜を引っこ抜く。


小さい頃から畑仕事を手伝ってきたから、体力や力には自信がある。

腰を痛めてるおっちゃんに代わって次々と野菜たちを早く丁寧に収穫していく。

このプガレの村は、人口百人くらいの小さな村だ。

皆がみんな、畑で野菜を育てて、街で売った金で生活している。


「おお~、さっすがグラーシんとこの長男坊は頼りになるなあ」


「だろ?」


昔は親父も力自慢だったらしい。今はそんなでもないが。



収穫が終わる頃には、大体日が傾いてる。

それくらい広い畑だ。


「トーマスは早えーなあ。こっちは今終わったとこだぜ」


収穫を終えて一休みしていると、幼馴染のハッフルが話しかけてくる。


「おう、お疲れ!」


「なあ、お前ほんとに入団試験受けるのか?」


「どうした急に」


「お前が居なくなったら仕事がしんどくなっちまうからよお、残ってくれよ~」


「ハッフル。これはな、オレの人生に欠かせねえ決定事項なんだ。お前ももっと鍛えろ!」


こいつはちょっとネガティブなのがいけない。

男は気持ちを強く持つのが肝要なんだ。

オレはこの村も人も大好きだが、夢には代えられない。


本格的に日が暮れ始めたので、ハッフルと一緒にあぜ道を歩いて家に帰る。


「ただいまー」


家に帰ると、母ちゃんが夕飯を作っている。

畑の新鮮な野菜を使ったスープとサラダ、あとパン。

いつもは保存が効く水分の少ないパンだが、今日は食パンだ。

駐屯兵のベルトンさんが仕事で王都に行ったときにお土産で買ってきてくれたらしい。

なんでも王都にはすこぶる美味いパン屋があるのだとか。

何とかベーカリーっていうらしい。入団試験の時に行けたら行ってみたい。


夕飯を食べて家族とゴロゴロしていると、隣のおじさんがやってきて親父が呼ばれた。


「ちょっと、村長が話があるらしいから行ってくるわ」


「あ、オレも行く」


「別にいいが、どうせまたつまらん愚痴を聞かされるだけだと思うぞ」


オレも親父について、松明を持って外に出る。

足元に気を付けながら、暗い道を歩いて他よりちょっと大きな村長の家に着いた。

中から話し声がする。

ノックをして二人で家に入ると、玄関と一体になった広間に、村長やグストンのおっちゃんたち大勢とベルトンさん始め駐屯兵の皆もいた。


「おお、グラーシか。トーマスもよくきたの。座れ座れ」


村長がオレたちを促し、広間に上がる。

親父は仲のいいグストンのおっちゃんのとこへ。

オレは尊敬するベルトンさんの近くへ行き座る。


「大方揃ったか。そんじゃあベルトンさん、頼めるかい」


「わかりました」


ベルトンさんの話によると、ここから東に数日の距離の村が魔物に襲われたらしい。

そのせいでこの村の駐屯兵が応援に駆け付けることになったそうだ。

なので、今日から計一週間以上村を空けることになる、という話だった。


皆は難しい顔をしている。

ベルトンさんたちが抜けるのが困るからだと思ったら、村が襲われたっていう話の方が気になるらしい。

まあそれもそうだよな。

一度納得してしまえば、オレも他人事には思えなくなってきた。


ベルトンさんの話を断る理由なんかないから村の皆は了承する。

そこで今夜の集会はお開きになった。



ベルトンさんたちが発ってから数日は、何事もなく過ぎて行った。

今日は八日目、そろそろベルトンさんたちが帰ってくる頃だ。


何もなくてよあったなあと話しながら、畑仕事をしていた昼過ぎ。

向こうから、いつもは畑が遠くて顔を合わせないおじさんが血相変えてこっちに走ってきた。


「魔物だ!!ツノウサギが出た!!」


親父や他の皆も呼んで、鍬やスコップを持って慌てて駆け付けると、ツノウサギが先に対峙していた人に威嚇していた。

普通のウサギと違って、大人の膝くらいまでの大きさが五匹いる。


「おら!出ていけぇ!!」

「この野郎!!」


親父とグストンのおっちゃんが必死でスコップと鍬を振り回すが、ツノウサギは怯む様子がない。

それどころか、威嚇して親父たちを襲おうとする。


他のツノウサギが隣家のおじさんに飛び掛かった。

ハッフルがスコップで叩いてツノウサギの勢いをとめ、隣家のおじさんが必死で鍬を振り回しツノウサギを飛び退かせる。

だが鍬を振り回した時、近くにいたベン爺さんの手首に当たってしまった。


「ぐわあああ!」


「爺さん!!」


オレは鍬を放って、ベン爺さんを抱えツノウサギから離れる。

木陰で爺さんを休ませていると、母ちゃんたち女の人がやってきた。


「どうしたんだい!手が折れちまってるじゃないか!」


「うう・・・」


「母ちゃん、爺さんを頼む!」


「わかった、アンタは出張り過ぎるんじゃないよ!」


「おう!」


ベン爺さんを預けて魔物のところへ戻る。

放った鍬を拾って、皆と魔物を囲む。

ジリジリと五匹のツノウサギを追い込み、一か所にまとめる。


オレは騎士になるんだ。こんなウサギに負けてたまるか!!


「うおおお!!」


ツノウサギ目掛けて鍬を振り下ろす。

一匹に当たった!

毛皮が想像以上に硬くて大したダメージは与えられない。


だがそれで怯んだのかツノウサギは逃げ腰になった。

オレの一撃をきっかけに親父たちが畳みかける。


皆でがむしゃらに戦った結果、ツノウサギたちは退散していった。



「怖かったなあ、しかしグラーシんとこの息子はさすがだ」


「ハッフルもかっこよかったぞ!」


「トーマス、お前よくやったなあ!」


皆口々に、魔物に一撃食らわせたオレとハッフルを褒めてくれる。


「だろ?」

「へへ。まあな」


ちょっとカッコつけたけどすごく嬉しかった。


この後は、遅くまでグチャグチャになった畑を直して、魔物のことを村長に報告。

オレたち男は、総出で夜番をして魔物に備えた。


そしてベルトンさんが帰ってきたのは、翌日の朝になってからだった。


あれから数カ月後の朝。

オレは、一日に一回しか来ない王都行きの馬車を待っていた。


「トーマス、体に気を付けるんだよ」


「オレの息子なら大丈夫だ!頑張ってこい!」


「帰ってきたらオレにも魔法教えろよな!!」


村の皆に見送られて、馬車に乗り込む。

王国までの運賃と宿代は、親父が貯めてくれた金だ。

大事に使おう。


馬車が発車すると、まだ顔もはっきり見えるくらい近いのに、目一杯手を振る。

それから村が見えなくなるまで、手を振り続けた。


この村を守る駐屯兵になろう。


これが、この数カ月考えたオレの答えだ。

オレが守りたいのは王国じゃなくて、あの村の平和だって気が付いた。


そのためにオレは騎士団に入るんだ。

馬車の中でそう決意して、ゆったり揺られながらオレは王国へ向かった。

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