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「ぽっちゃり系なんて言語道断です」 62.0 kg

 葵の爆弾発言のせいで楓の処理能力が追い付かなくなったようで、ひとまず朝食をとった後に家族会議もとい裁判が執り行われることとなった。裁判前に葵と相談したいところだったが、一層疑念を深めた楓が目を光らせており口裏を合わせようにもなかなか2人きりにさせてもらえない。

 

 白米と目玉焼き、おひたしに味噌汁といった軽めの朝食を3人で並べているさなか、せめてアイコンタクトで何か伝えられないかと葵を見つめる。黙々と配膳を続けていた葵だったが、少ししたところでこちらの視線に気づいたようだ。

 秘密は守るように、という旨の熱い視線を送ると、葵が大きくうなずいた。何とか伝わったかと安堵していると葵はニヤッと微笑み、バチコーン☆とウインクを飛ばしてきた。これは伝わってないな。しかも、真横で見ていた楓が泣きそうな顔をしている。勘違いを深めてどうするんだ。


 食事を済ませて一通り片付けた後、リビングのソファーに腰掛け、裁判官姿の楓と向き合う。半ば有罪と決めてかかる雰囲気の裁判長と、なにを言い出すかわからない共犯者。この場には敵しかいないとみて間違いないだろう。

 しかし、裁判を始める前に確認しなければならないことがある。


「楓裁判長。裁判の前にひとつ確認したいことがあるのですがよろしいでしょうか」


「ご主人被告。発言を認めます」


 ノリノリである。黒いローブを羽織り、それっぽい格好をしているが、あまりに低い身長が子供のコスプレ感を助長している。実にかわいらしい。どこから調達してきたのか、木槌ももっている。うちの国の裁判官は木槌持ってないらしいぞ。


 聞かねばならないのは報告の件だ。


「本件に関して、本家への報告はすでに済ませておられるのでしょうか」


「あんな破廉恥なこと楓の口から報告できるわけありません!なんですか!羞恥プレイですか!」


「いや、だから破廉恥なことはしていないと」


「それは今から聞きます!ご主人被告。まず、自身の主張をどうぞ」


 とりあえず、懸念事項は解消できた。あとは身の潔白を証明するだけだが、俺は扉の前で一度弁明している。楓は賢いので、そのときの発言と差異があればすぐに気が付くだろう。非常に不安だが、ここは葵に任せるしかない。


「今朝説明したことの繰り返しになりますが、昨晩空腹で目を覚ましてキッチンに夜食を漁りに行ったところ、空腹になることを見越していた葵さんが待ち構えていました。用意されていたハニートーストとホットココアを飲んで一人で床に入りました。やましいことはありません。以上です」


「その件は葵ちゃんが空腹管理を怠るはずがないと否定したはずです。葵ちゃん被告。なにか弁明はありますか」


「はい。私があえてご主人さまを空腹にして真夜中に起きるよう、夕食の量を調整しました」


「なぜそんなことをする必要があったのですか。葵ちゃん被告」


「それは……」


「それは?」


 『体質』の秘密だけは守ってくれと念を飛ばす。


「私の好みがぽっちゃり系の男子だからです。ご主人さまは167 cm の61 kg と平均的な体格をしています。これを70, 80 kg 付近までもっていく野望なのです。ご主人さまは少しぽよぽよのほうが抱き心地がいいはず!」


「ぽっちゃり系なんて言語道断です!ご主人には楓の理想である細マッチョになってもらう予定なのです!ほどほどに厚い胸板と筋肉質の腕に抱きかかえられるほうがいいに決まっています!」


 緊迫した雰囲気が一気に弛緩した。使用人ズが立ち上がり、やいのやいのと謎の主張合戦を始める。葵の好みは冗談としても、楓は細マッチョが好きなのか……



 秘密は守られた一方で、葵が今後も俺を太らせようとする表面上の理由ができてしまった。


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