エピローグ『世界は北極星を中心に廻る』
さて、これで大海賊の始まりの
エピソードは終わりとなります。
少しは、楽しめたでしょうか?
こうして我らが大海賊オーシャ=ポラリスが
歴史……我々が言う歴史の
表舞台へと姿を現したのです。
それはあまりにも眩く力強い輝きを持って。
おや、あなたには
いくつか気になることがあるようですね?
そうですね……
例えば、アロガン大陸の傍にある
今も中立都市であるエシアの海賊の話が、
広大なルドニス洋の向こう側の
シカザ大陸でどうして英雄視されているかですか?
それはこれからの物語で明らかに……
あっ、違いましたか。
なになに……ああ、なるほど。
スピカという名前が気になっていましたか。
それは私たちもはっきりとわからないのですよ、
彼女に関しては憶測でしかないのです。
あなたの知るスピカという女性は、
ロラ=ミストレル将軍の最後の旗艦
『レオ』を建造した
『賢者』と呼ばれる王国一の職人であり、
また併せて『白銀の星』の名を持つ偉大な軍師。
そして何より、大陸の覇者となった
ベリエル=レイ=レイジェの妻……
王妃となった女性の名前でしょう?
あの王妃も確かに出自が不明でした。
そうですよね、あなたたちからすると
ロラ=ミストレル将軍も誇るべき存在ですが、
それよりも誰も素性知らないというのに
あれほどの逸話を持つ王妃のことの方が
気になるのは当然でしょう。
けれど申し訳ありません、
この物語に出てくる
オーシャ=ポラリスの姉である女性と、
同一人物であるかは……私たちも存じ上げません。
ああ、勿体ぶっているわけではないのですよ。
ひょっとしたら違う物語を
紐解けば真実がわかるのかもしれませんけれど、
それは大海賊の物語ではありません。
きっと、王者たる獅子、
ベリエル=レイ=レイジュの英雄譚に
真実が隠されているのではないでしょうか。
さて、レイジェ国民のあなたが
何故この物語を知らないか。
……どうしてだと思います?
ええ、やっと気付きましたか。
あなたたちの歴史では、
ロラ将軍は常勝不敗と謳われています。
さすがにそんな風に伝わっているのに、
こんな物語があるのは不自然しょうからね。
どちらの歴史が正しいかはともかく、
王国にとっては面白い話ではありません。
さてそろそろこの物語……誰が書いたか、
あなたも気になってきたのではありませんか?
そうでしょう、そうでしょう。
――この物語のタイトルは
『世界は北極星を中心に廻る』。
作者はアロガン大陸から
シカザ大陸に渡ってきた
ローレライ=ミストレルという吟遊詩人。
彼女が幼い頃に母親から
子守唄代わりに聞かされた物語を、
彼女は歌って広めたのですよ。
その母となる人物が誰かは、
ご想像にお任せしましょう。
……おっとエシア行きの船が来ました。
あなたはアロガン大陸へ帰られるのでしたね。
随分と長い話に付き合って頂き、
ありがとうございました。
えっ、話の続きを聞かせてほしいって?
――それではまた、別の機会に会えたら
物語の続きをお話しましょう。
『世界は北極星を中心に廻る』~完~
最後まで読んで頂けた方々、
また色々とご意見を聞かせて頂いた方々、
本当にありがとうございました。
過去に書いた作品を少しだけ加筆・修正したのが
本作となります。
一人でも多くの読者様に楽しんで頂けたならば幸いです。
もし良ければ感想とかレビューを書いてもらえれば、
作者も喜び、また次の作品の励みになります。
ぜひともよろしくお願いします。
なお、さも続きがありそうな終わり方ですが、
続きは特に書いてないので白紙です。
今の流行りからすると文章もそうですし
展開やら世界観、キャラクターも
古いタイプのファンタジーですが、
やはり王道モノが私は好きです、はい。




