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第二章 獅子と黒蛇.04

その男が甲板に出てきた瞬間、

オールド号の乗組員は一瞬にして格が違うと悟る。

先日は丸腰だったために、

中肉中背の男に対して何の脅威も感じてなかった。

だというのに、今はまるで虎を前にしたような、

心臓を鷲づかみにされるような恐怖。

それほどまでに巨大な双月剣は威圧的で、

レイジェ王国の軍人だということを初めて痛感していた。


「へぇ……♪」


彼の肩には獅子が剣を抱えるエンブレム。

レイジェ王国の軍服を着たままのイクルを

ヨウコは嬉しそうに見ながら口笛を吹く。


「……これはいったい、何が起きているんだ?」


何故呼ばれたかも聞かされていないイクルは、

不審げにオーシャに尋ねた。

真っ先に彼女に問い掛けたのは、

わざわざ自分を船倉から呼び出すなんて真似……

どうせまたこの少女の仕業に違いないと確信していたからだ。


「なんかね、他の海賊船とトラブルになっちゃってさ。それで成り行きによって一騎打ちでケリをつけようってことになったのよ」


「で、それで船員でもない全くもって関係ない俺を連れ出して、どうしたいんだ?」


「一番強い奴って、うちの船に乗っている人ならイクルだし」


「お前……俺が嫌だと断っているのが、わかっていて言ってるだろう」


ジーウィルは、あまりの少女の図々しさにさすがに止めに入った。


「待て、オーシャ! イクルはうちの船員じゃないから! それに、そもそもだよ。誰一人として一騎打ちで決めるだなんて――」


唾を吐きながら早口で文句を言う船長だったが、


「その通りよ。我がグラットン号とオールド号は一騎打ちで勝負することになったの」


すすっと足音もなく前に出てきたヨウコが肯定した。


「おい黒蛇……勝手なことを!」


静観していたテムスもさすがに口を挟む。

けれど、ヨウコは自信たっぷりの表情を浮かべて


「なにかしら。まさか、私が負けるとでも思っているの? 今までの私の戦いを見ているのにも関わらず言っているのであれば、酷い侮辱ね。もしそうならば副長でも許せないわ」


その言葉は穏やかな口調にも関わらず、

明確な殺意が込められていた。


「……ふん。好きにしな。ただ負けたら相応の責任はてめぇに取ってもらうぞ」


こうなってはもう何も聞かないだろうと

悟ったテムスはあっさりと下がる。


「確かにレーゼン商会に雇われてから、つまらん相手ばかりだったろうしな。お前もそろそろ退屈しているのではないかと思っていた。思う存分に暴れてストレス発散しちまいな」


「あら、話がわかるわね。『大熊』とかつては恐れられた男も窮屈な思いをしてるのかしら」


もう完全に相手はやる気まんまんだった。

だがイクルは首を振り、


「残念ながら俺は捕虜だ。付き合ってやる義理もないし、なにより無駄な戦いは好まん」


背を向けた。


「あらそう。勇ましい姿をしているのに、つれないわね」


次の瞬間、何が起きたか誰もわからなかった。

ギィンッ!

金属同士がぶつかりあう激しい音が響く。


「今のを防いでくれるなんて、あなた……思った通り、やっぱり素敵だわ」


「それだけ殺気を放っていればな、嫌でも体が勝手に動く」


まるで風のように一瞬で接近したヨウコが、

イクルに襲い掛かっていたのだ。

振り下ろした大剣をイクルは背中越しに双月剣で防いでいる。


「ふっ!」


まるで風車のように回転させて返す刃で、相手の首を狙った。

読んでいたヨウコはさっと後ろに跳んで距離を開ける。

ゆらっと立ち大剣を構える黒蛇。

それに向かい合うのはまるで気負った様子もない軍人。

誰もが固唾を呑んで見守っていた。


「どうやらやる気になってくれたみたいね。嬉しいわ」


「できれば俺以外と決闘してくれないか。悪いが俺は決闘には興味がない」


「本当、つれない男ね」


仏頂面のイクルに対して、

ヨウコはもう楽しくてたまらないという表情を浮かべていた。

彼女は少し、体を沈めて


「でもそこがまた、いいんだけど――!」


弾丸のごとく飛びかかる。

今度はイクルも前に出て迎え撃つ。

重たい双月剣は守備よりも攻撃に適した武器だ。

故に相手が強ければ強いほど攻めざるをえない。

下からすくうように刃を振り上げるが、

ヨウコは大振りな動作で避ける。

その大きなモーションは絶好の隙だ。

イクルは返すもう一振りの刃を使えば、

ヨウコの首を落とすことができる。


初撃の刃が彼女の動きを追うように動くマントに当たる。

普通であれば布ごと彼女の体を難なく切り裂けるが、


「……ちっ!」


イクルは彼女の意図に気付き、

攻撃を中断して強引に後ろに跳び退いた。

無理な体勢でのバックステップは当然バランスを崩し、

不安定な状態で着地する。

それを見逃すヨウコではない。

すかさず追いかけ、大剣を突き出す。

剣で受ければ防げるが、あえてそうせず、

横に転がりながら避けて立ち上がった。

その様子を見ていたオーシャは、ジーウィルに尋ねる。


「どうして今、イクルは下がったの? なんか勝てそうだったのに」


けれど船長は首を振る。


「あのまま突っ込んでいたらイクルは負けていたな。よくもまあ気付いたモノだ」


賞賛するような声に、

オーシャは訳が分からないと首を傾げる。

再び、距離を開けてにらみ合う二人。


「なるほど、随分と厄介なものだ」


イクルはヨウコが身にまとう布を見て呟く。


「防刃繊維の塊か。相当に重いのではないか?」


「慣れたらそうでもないわ。あなたのその剣よりは軽いはずよ。私、自分より大きな剣を使う剣士って初めて会うのだけれど、それだけの重量に関わらずとても鮮やかな腕前ね」


そう、ヨウコが身に纏っているのは

特殊な防刃繊維で編まれた布である。

彼女はそれで相手の武器や体を絡めとることで止めを刺す。

布は読みにくい動きをして扱いは難しいが、

それは戦う相手にとっても同様のことで厄介極まりない。

ところどころ穴が空いてボロボロのように見えるが、

それは相手の剣を封じるための「ひっかけ」なのだ。


攻守一体の布を使う剣士、それが黒蛇の正体である。


勿論ただ切れない「だけ」なので、

直撃すれば衝撃で十分に致命傷になりかねないし、

女性である彼女が力で勝る相手を絡め取ることは、

逆に自分の首を絞めることにも繋がりかねない。

だというのにそれを使いこなしているからこそ、

彼女は恐れられているのだろう。


「まさか、2回も避けられるとはね」


先程の突きで大剣に巻かれた布を使い

双月剣を巻き取り決着をつけるつもりだった。

遠心力を利用して攻撃する双剣は、

一度動きを止めればただの重たいだけの鈍器。

だというのに……

よくもまあ一瞬でこちらの意図を読んだモノである。


「まぐれだ」


イクルは淡々と呟く。

今の状態の双月剣では相性が最悪の相手である。

相手はカウンター狙いの剣士……

小回りがどうしても効き辛い大きい剣では後の先は難しい。


横目でこの決闘の発案者である少女を睨む。

オーシャは気楽そうな顔で

船長と話しながら一騎打ちを眺めていた。


(全く……面倒なことをしてくれる)


まんまと少女に乗せられてしまった。

イクルとしては、そう長々と戦いたくない。

彼の剣はこんな海賊同士の諍いに使うために

鍛えたものではないのだから。


「次で、勝負を決める」


だから宣言した。

長引けばイクルが不利になることを知っている

ヨウコはわざとらしく肩を竦めた。


「あら残念。私はもっとあなたと踊りたいのだけれども」


「ダンスには興味がない」


二人の間に緊張が高まる。

しばらくの沈黙の後、


「いくぞ」


今度はイクルから仕掛けた。

重い武器を持っているにも関わらず、爆発的な瞬発力。

再び、下からの斬撃を見舞う。


「勇猛な獅子だわ! でもそんな単調な攻撃……!」


右へのステップで攻撃を避けようする。

けれどそれは当然、イクルもわかっていた。


ガシッ!


ヨウコに迫るとかと思った双剣だが、

刀身が長いためか下から切り上げようとした刃が甲板に突き刺さる。

それがまるでつっかえ棒のようにイクルの体が強制的に停止した。


「……」


そして更にその反動で剣を反対方向に回転させ、

ステップで避けようとしている敵へ踏み込む。

完全に虚を突かれたヨウコだったが、

冷静にマントをはためかせる。

大きく何重にも重ねられた布は

相手に正確な距離を測らせない役割も持つ。


「ふっ……!」


相変わらずの余裕の笑みを浮かべていたヨウコだったが、


「その程度で獅子を止められると思っているのか!」


イクルは双剣を正面に構え、

風車のごとく前面で回しながら突っ込んでいく。

いくらヨウコが並より優れた瞬発力を持っていたとしても、

拮抗した実力同士ではどうしたって

重装備である彼女の方が移動は遅い。

剣の間合いからは離れることができなかった。

血の染みが目立つ布に惑わされがちだが所詮、

布は布。それ自体に殺傷能力はない。

激しい勢いで回転する刃が布を巻き込んでいく。


「くっ!」


咄嗟にマントを脱ぎ損ねたヨウコがぐっと引き寄せられる。


そして――


「……」


「……」


二人は密着する形で静止していた。


「あっ……」


オーシャが思わず声をあげる。


「ふむ、俺らの勝ちだな」


テムスが宣言した。

そう、ヨウコの大剣がイクルの首筋に当てられていた。

対するイクルの刃はヨウコの胸の手前まで迫っているものの、

布が絡まって届かない。


――勝負は決まった。


だというのに、


「どういうつもり、かしら」


押し殺したような声が、響く。

ヨウコは完全に怒りを灯した瞳で、

間近にある澄まし顔の男を睨む。


「ふんっ、何のことだ」


イクルは剣を突きつけられているというのに、

まるで何事もないかのように無表情。


「ふざけないで! この私に手加減をするだなんて……ふざけるのも大概にしなさい!」


マントをはためかせるとまるで魔法のようにすっと

イクルに絡み付いていた布がほどかれていく。

解放された彼は、軽いステップで少しだけ距離を空けた。


「おい、ヨウコ。どういうことだ。てめぇの勝ちだろうが」


「ええ、私の勝ちですわ。けれど、この男に手を抜かれてね! こんな屈辱……初めてよ!」


戸惑うテムスに彼女は吐き捨てる。

オーシャは彼に近づき、「どういうこと?」と尋ねると、

負けたはずの剣士は「さてな」と肩を竦めただけだった。

その様子にますます機嫌を損ねたヨウコが

つかつかと歩いてきて、双月剣を手から奪い取る。

剣を見つめて、忌々しそうにしていた。


「やっぱりそういうことね。この剣は……」


そして手元を弄ると、

剣は中心の柄の部分で二つに分かれた。

折れたわけではない、元々外れるようにできているのだ。


「双月剣は一つの大剣であり、そして分離させることで文字通りの双剣にもなる。使いこなせれば変幻自在な戦い方ができるのだよ」


ジーウィルがのほほんと説明してくれる。

オーシャがジト目で睨むと、

「ワシ、聞かれなかったし」と視線を逸らしていた。


「最後の瞬間、あなたは剣をバラそうとして……でも止めた。それはどうして? あのまま分けて振り抜いていれば私の首を飛ばせたはずよ」


返答次第では今度こそ殺すと言わんばかりの目。

自分が睨まれているわけでもないのに、

オールド号の船員たちは「おっかねぇ」と身を震わせていた。


イクルはあっさりと、


「確かに俺の剣の方が速かっただろう。けれどそうするとお前は剣を止めることができずに俺も無傷では済まなかった。俺には勝つ義理も理由もない。故にこんなところで無駄な傷は負いたくないからな」


「私が寸止めしなければ、あなたは死んでいたのに?」


「だが現にお前は剣を止めた。結果が全てだ。それに……」


そう言って、彼はオーシャに視線を移した。


「この幼い少女の思惑通りに動くなど、癪だからな。良いように利用されて素直に従ってやるのは俺としても我慢できん」


彼はこの船に来て初めて、にやっと笑った。

レイジェ王国の軍人としてではなく、

イクル=リタースとしての感情……意地悪そうに少女を見下ろす。


「ありゃ、私のせいだったのか。それじゃあ負けても仕方ないね」


少女は悪びれた様子もなく、二カッと笑う。

それを見つめるジーウィルは、

もうそれは心底痛そうに頭を抱えていた。


「さて……」


けれど勝負は負けたのだ。

オーシャは状況が動き出す前に、自分から一歩前へ進む。


「ねえ、一緒に来ない?」


少女は黒蛇と恐れられている剣士に迷いなく手を差し出した。


「……意味がわかりませんわ。一体あなたは何を言っているの?」


戸惑う彼女。

オーシャは「私にはわかっている」とばかりに嫌らしく笑う。


「オーシャよぉぉぉぉぉぉぉ! いくらなんでもお前、見境がなさすぎるぞ! 誰これ構わずに誘いすぎ! 一体何を考えてるんだ!?」


もうジーウィルは悲痛としか表現できない叫び声だった。

オーシャは「心外だなぁ」と口を尖らせて、

差し出していた手を戻す。


「誰でもいいわけじゃないよ。私は一緒に旅をしたいって思う人にだけ誘っているの」


「いくらなんでも、相手にも立場というがあってだな! 正面切って誘われると困るの!」


「そう? でも――」


彼女は、一瞬だけイクルに見てから、ジーウィルに告げた。


「ロラは私を、全く軍人でも船乗りでもないオーシャという少女を誘ってくれた。一緒に戦って欲しいと。私はさ、あの人みたいに格好良くなりたいんだ。あの人が間違っているとは思わない。だから、私は私なりにあの人の真似してみようかなって」


それは。とても強い意志の込められた言葉だった。


「ロラ将軍が……?」


イクルは呆然と呟く。

彼はあの女性の軍人は冗談を言わないことを知っている。

故に、オーシャを誘ったことも本気なのは間違いない。

彼はロラ副将の下についてそれなりに長いが、

副将が誰かを勧誘するなど一度も見たことがなかった。

だから……にわかには信じられない話である。


「あの副将のせいか……余計なことをしおってからに……!」


ジーウィルはまるで自分の娘の我侭を嘆くように

空を向いてわなわな震えていた。


オーシャはゴメンねと軽く舌を出して謝る。

そして再び、剣士に向き直る。


「ヨウコ=ミクラ。私とくれば、あなたも退屈しないと思うよ」


みんなが見守る静かな船の上、黒蛇のマントが風でなびく。


「私は……」


さすがに急すぎる提案に答えあぐねていた。

普通ではあれば考えるまでもなく蹴る話。

彼女は雇われているのだ。

傭兵とは腕よりも信頼の方が大事なのは当然のこと。

それ以上にヨウコがこのオーシャという少女に

ついていくという理由が全くない。


「……」


だというのに、どうして断る言葉が出て来ないのだろう。

いや、わかっている。

この少女の言葉が魅力的なのだ。

何故だか、一緒についていってみたいという、

強い想いが沸き起こってくる。

まるで炎のように眩しい髪をなびかせる姿が、

燻っている心に強くとても強く訴えかけてくるのだ。


「行っちまえよ」


意外にもそれは、テムスの言葉だった。


「ったく……面白い誘いだってのに、俺には声がかからん。全く羨ましいねぇ」


「テムス……アンタ、何を言っているの?」


「わかってんだろ、聞くな。正直、今の生活はつまらんし、刺激もない」


そう言い切ってから、歴戦の勇士は少女に向き直り、


「そんな時に、こんなに強く誘われたら……俺なら断らんね。なんかわからんが、ついていけば絶対に刺激に困らない生活が待ってるって、はっきりと見えてんだからな」


眩しそうに見つめた。


「ジーウィル船長。その子、まるで若い頃のアンタそっくりだよ、全く。泣く子も黙る大海賊ジーウィル=ポラリスの写し身じゃねぇか」


「えー、ワシこんなに常識外れなことしたことないぞ。いくらなんでもちょっとこの子と一緒にされるのはワシ心外だな……いたっ、痛い痛い! オーシャ蹴るな!」


しばらく、黙っていたままのヨウコだったが、

副長のテムスに一言。


「……本当に、いいのかしら?」


「ああ。坊ちゃんは溺れて気絶してるしな。お前がそのオーシャって子に負けて連れ去られたってことにしとければいいだろ。たまにはうまくいかんことってのを、坊ちゃんにも学んでもらわんと。つか、あいつお前のこと怖がってたし、ちょうどいいんじゃねえか」


「あら、やっぱり怖がられていたの? 私の気のせいではなかったのね」


話はまとまったようだった。

オーシャは「ごめんね」と

この船に来てから何度目かわからない、

謝罪する気など毛頭ない軽々しい手を顔の前に出すだけの合図。

テムスは毒気を抜かれた顔で、

「今度は俺も誘ってくれ」とひらひらと

少し拗ねたように手を振っていた。

いかつい顔に似合わず、

意外と可愛いところもあるようだ。


「あの、テムスよ……ちょっといい? うちの船員が既に怖がってるんだけど。できれば引き取りたくはないって気持ちで、ワシお腹がいっぱい。ほら、あのメイツェンもさっきから遠く手を振ってるだけで帰ってこないし」


「知るか、お前の娘みたいな奴が言い出したんだ。責任取れよ」


ヨウコはオーシャの前に立つ。


「よろしくね、ヨウコ」


そして、改めて手を差し出した。

彼女はしっかりとその手を握り締めて、悠然と微笑んだ。


「よろしくお願いするわ。私を退屈させないという言葉……忘れないわよ」


そして、先程まで死闘を繰り広げたイクルにも手を差し出す。


「俺はこの船の乗組員じゃない。勘違いするな」


しかし彼はその手を取らず、

背を向けて船倉へと戻っていった。

オーシャと「そういうこと」と肩を竦めるが、

ヨウコは「私に任せておけばいいわ」と

明らかに企みごとをしている顔をして笑った。


「あのー……、オーシャ君? ワシが船長なんだからね? そろそろワシに相談なくあんまり勝手に船員とか増やすと怒るよ?」


呆れたような口調。対するオーシャは「えー」と不満そうにしている。

ヨウコはオーシャを背中に庇うように立ち、

ジーウィルの顔を見てニッコリ笑った。


「ジーウィル船長。よろしくお願いし・ま・す・わ・ね♪」


「おぉ……よろしくな。あの、どうして剣をチラつかせながらワシに近づいてくるのかな?」


「いえいえ、船長は私が乗ることにご不満があるようですので。少し、デモンストレーションでもした方がいいのかしらと思っているのですわ。船長のか・ら・だ・で」


「ひぃっ! 誰か助けてくれ! おいメイツェン。いやナッツでもいい。それか日頃から偉そうなデイエンでもいいから! 頼む!」


もう完全な命乞いとしか聞こえない叫びに、

誰もがさっと視線を逸らして、それぞれの持ち場に戻っていった。


「ワシ、船長なんだからな!」


オーシャは気楽そうに

「そんなに叫ばなくてもみんなわかってるよー」と

バンバンとジーウィルの背中を叩く。



こうして黒蛇と恐れられていた

黒衣の剣士のヨウコ=ミクラが新たに加わった。


それはこれから長く続く大海賊の物語に置いて、

重要なピースの一つとなるのだった。



第二章 獅子と黒蛇 ~完~

第三章 家族と港街へ続く


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