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だけど今のように完全に眠ってしまったのは初めてだ。
夢の世界へ行く前の自分が思い出せない。
マリアの話では放心状態になっていたのはそれほど長い時間じゃないと言うけれど、夢でジョゼと過ごしたのは数時間はあったように感じた。
それにいつもなら夢を見てる間に現実の私はアトリエで絵を描いていたのに、今はそれもない。
夢の中の私はジョゼの側へ行き、その腕に身を委ねていた。
私を包み込んでキスをして……そして琥珀が揺れていた。
こうしていても何か現実感がなくて、周囲に霞が掛かったように感じる。
だんだん夢と現実の境界線が無くなって自分が分からなくなる。
不思議な浮遊感。
「フィオナ、もしかして……夢でも見ていた?」
「……」
マリアの瞳は真摯に私を捕えていて、少し居心地が悪くなった。
探るような声と瞳。
だけど何だかマリアの方が泣きそうだ。
「ねぇ正直に答えて。あの夢、まだ見てるんじゃないの?」
話せば何かが変わるのかな?
そんな事も頭には浮かんだけれど、夢だと言い張られるのが関の山。
それどころか本当に私を病院に連れて行くかもしれないし、きっとジョゼと引き離される。
だから言えない。
マリアは大切な人だから、これ以上心配はさせられない。
だけどジョゼもまた大切な人。
「大丈夫よ、夢なんて見てない……ちょっと疲れてるのかしらね」
話を終わらせようと椅子に座り直してマリアから目を逸らす。
それでも私が感じている妙な感覚はそのままで、うっかりするとまた夢の世界に誘われそうだった。




