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哀れに思ったから全世界最強のチート能力を持った神が無双してみる  作者: トリ


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5/5

#5 王女と、世界の異変。

『世界法則が、少しずつ壊れ始めてる』


その言葉を聞いた瞬間、部屋の空気がわずかに重くなった。

フレイヤが怪訝そうに眉をひそめる。


『……何それ』


ミーミルは肩をすくめた。


『そのままの意味ですよ』


彼は水晶のヒビを指でなぞりながら続ける。


『例えば本来、王都周辺にB級以上の魔物はほとんど出ません。結界と騎士団の巡回があるので』


『でも昨日は出たわ』


『そう。しかも“突然”』


ミーミルの目が細くなる。


『出現記録も曖昧なんです。まるで空間そのものに穴が開いて、そこから落ちてきたみたいに』


ヴィザルは黙ったまま聞いていた。隣でアースの表情も少しだけ変わる。神界で感じていた違和感。それと同じものを、この男も感じ取っている。


『まあ、上はまだ偶発事故扱いしてますけどね』


『偶発じゃないの?』


フレイヤが聞く。


『偶発にしては頻度が増えすぎてる』


ミーミルは机の上に積まれた資料を軽く叩いた。


『ここ三ヶ月で異常発生件数は四倍。王都東部、北方森林、旧鉱山区……全部本来あり得ない場所です。しかも共通点がある』


ミーミルはそこで一度言葉を切った。


『“空から落ちてくる”』


その瞬間。ヴィザルの脳裏に、神界で見た報告が一瞬よぎる。

空から現れる未知の物体。世界の外側。バグ。だがヴィザルは何も言わない。まだ確信はない。


『で』


フレイヤが腕を組む。


『それをなんで私たちに話すのよ』


『別に?』


ミーミルはあっさり答えた。


『面白そうだから』


『最低な理由ね』


『研究者なんてそんなもんです』


そう言ってから、彼はヴィザルを見る。


『それに、君たち多分その異常と無関係じゃない気がしましてね』


空気が止まる。アースがわずかに身構えた。だがミーミルは気にした様子もなく続ける。


『安心してください。別に通報する気はありません』


『通報って』


『ギルドにも王国にも、面倒な連中は多いので』


心底面倒そうに言う。この男、本当に研究以外に興味がないのだろう。

その時だった。コンコン。鑑定室の扉が叩かれる。


『ミーミル様』


外から女性の声。


『第二王女殿下がお呼びです』


部屋の空気が変わった。フレイヤが目を丸くする。


『……王女?』


ミーミルは露骨に嫌そうな顔をした。


『うわぁ……』


『なにその反応?』


彼は深いため息を吐きながら立ち上がる。


『異常案件についてですよ。最近ずっとこれだ』


ミーミルは扉へ向かい――途中で足を止めた。そして振り返る。


『君たち、暇です?』


『嫌な予感しかしないんだけど』


フレイヤが即座に言う。ミーミルは気にせず続けた。


『もし興味あるなら来ます?というか、来ていただきたいのですが』


「どこへ?」


ヴィザルが聞く。

ミーミルは少しだけ笑った。


『“空から落ちてきたモノ”の調査ですよ』


静かな一言だった。だが、その場の空気を変えるには十分だった。

フレイヤが露骨に顔をしかめる。


『いやいや待って。それ絶対私たちが行っていいような依頼じゃないでしょ』


『その通りです』


ミーミルは即答した。


『本来なら騎士団案件です。実際、既に先遣隊も出てます』


『じゃあなんで僕らを誘うんですか』


アースが警戒したように聞く。

ミーミルは少しだけ考える素振りを見せてから、ヴィザルを指差した。


『面白そうなので』


『理由が最悪なのよこの人』


フレイヤが頭を抱える。だがミーミルはどこ吹く風だった。


『まあ安心してください。戦闘が目的ではありません。今回はあくまで“確認”です』


『確認?』


『王都東部で、昨夜またエンドフォールらしき現象が確認されました』


ヴィザルの視線がわずかに動く。

ミーミルは気づいていないのか、そのまま続けた。


『落下地点周辺では空間異常と高濃度魔力反応を観測。騎士団が封鎖していますが、内部調査が進んでない』


『……エンドフォールって何?』


フレイヤが聞く。

ミーミルは少しだけ驚いた顔をした。


『知らないんですか?』


『童話でしょ?』


『一般認識はそんな感じですね』


彼は壁にもたれかかる。


『“終わりの大地エンドフィールドから、災厄が空より落ちる”――古い伝承です』


『子供向けの寝物語じゃないの?』


『少なくとも昔はそう思われてました』


ミーミルの目が細くなる。


『でも近年、本当に落ちてきてる』


沈黙。部屋の空気が少し冷えた気がした。

ヴィザルは無意識に窓の外を見る。王都。人々。平和な日常。だが、その裏側で世界は少しずつ壊れている。そんな感覚があった。


『……行くの?』


フレイヤが小声で聞いてくる。

アースは少し悩むような顔をした。


『危険そうではありますね』


『絶対に危険よ』


『でも』


アースはヴィザルを見る。


『ヴィザルさん、多分もう行く気ですよね』


「まあな」


即答だった。

フレイヤが呆れたように額を押さえる。


『即答なのほんと怖いんだけど』


「面白そうだから」


ヴィザルが言う。その瞬間、ミーミルが吹き出した。


『ははっ』


初めてだった。この男が感情らしい感情を見せたのは。


『いやぁ、やっぱり君変ですよ』


「よく言われる」


『ちなみに褒めてますよ』


『多分褒めてないですよね?』


アースのツッコミが飛ぶ。

そんなやり取りにフレイヤは大きくため息を吐いた。


『……分かったわよ。行けばいいんでしょ』


『おや』


『ただし!』


フレイヤはミーミルに対して指を突きつける。


『ヤバそうならすぐ逃げる!新人二人死なせるの後味悪いから!』


『保護者みたいですね』


『誰がよ。行くと決まったならちゃんとするわよ』


そういうフレイヤにミーミルは小さく笑いながら扉を開く。


『では行きましょうか。王女様も待ってますし』


『……本当に王女いるの?』


フレイヤが急に緊張し始める。


『そりゃいますよ』


『いや待って心の準備が』


『今さらです』


そんなやり取りをしながら、一行は鑑定室を後にする。その背中を、ヴィザルは静かに見ていた。

――エンドフィールド。その単語だけが、妙に頭に残っていた。


ミーミルに案内され、一行はギルド上階へと続く階段を上っていた。冒険者たちの喧騒は徐々に遠ざかり、代わりに静寂が支配する空間へ変わっていく。

壁には王国の紋章。窓の外には王都の街並み。そして廊下のあちこちには武装した騎士たちが立っていた。


『なんでこんなところ来てるのよ私たち……』


フレイヤが小声で呟く。いつもの強気な態度はどこかへ消え失せていた。


『緊張してるんですか?』


アースが聞く。


『してない』


だが声が少し震えていた。


『してますね』


『してない』


『してます』


『してないって言ってるでしょ』


『耳が赤いですよ』


『うるさい!』


アースが楽しそうに笑う。そんな二人を見ながら、ヴィザルは欠伸をした。


「やっぱ帰りたくなってきた」


『今からですよ!?』


『この人いつも帰りたがりますね……』


ミーミルが呆れたように言った。そのまま廊下の奥へ進む。やがて大きな扉の前で止まった。騎士が二人。厳重な警備だ。

ミーミルが軽く手を挙げる。


『失礼します』


騎士が扉を開いた。中は会議室だった。長い机。壁一面の地図。そして数名の騎士と魔術師らしき人物。

その中心に一人の女性が座っていた。金色の長い髪。透き通るような青い瞳。年齢は二十歳前後だろうか。

美しい。だがそれ以上に感じるのは威圧感だった。王族特有の気品。そして責任を背負う者の重圧。彼女は書類から顔を上げた。


『遅いわね、ミーミル』


『すみません』


全く反省していない声だった。女性はため息を吐く。そして視線がこちらへ向く。一瞬で全員を観察するような目だった。


『その子たちは?』


『冒険者です』


『帰らせなさい』


冷たい声だった。

フレイヤが固まる。アースも固まる。ヴィザルは欠伸した。


『今回の案件はBランク以上推奨です』


女性は淡々と続ける。


『新人を連れて行く理由がない』


正論だった。しかしフレイヤの眉がぴくりと動く。


『まだ何も話聞いてないんだけど』


女性の青い瞳が向く。


『聞く必要があるかしら?』


『あります』


『ないわ』


『あります』


『ない』


『あります』


『ない』


『あります』


『ない』


『あります!』


完全に意地だった。

会議室の空気がおかしくなる。騎士たちが視線を逸らしている。ミーミルは笑いを堪えていた。女性は初めてフレイヤをまともに見た。


『名前は?』


『フレイヤ』


『ランクは』


『C』


『帰りなさい』


『だからなんでよ!』


フレイヤが机を叩きそうになる。女性は表情を変えない。

そして静かに言った。


『勇者も死んだのよ』


空気が凍る。フレイヤの口が閉じる。誰も何も言わない。しかし彼女は続ける。


『王国最強だった。人類最大の希望だった。それでも死んだ』


その声には感情がなかった。だが逆に、それが重かった。何度も何度も絶望を見てきた人間の声だった。


『だから私は、死ぬと分かっている人間を前線へ送るつもりはない』


フレイヤが俯く。

反論できない。勇者アリスは死んだ。それが現実だからだ。

沈黙。

しばらく続いた後――


「なら」


声が響いた。ヴィザルだった。全員の視線が集まる。

ヴィザルは机の上をじっと眺めながら続けた。


「なおさら見に行くべきだろ」


青い瞳の女性が眉をひそめる。


『なぜ?』


「勇者が死んだ原因を放置する方が馬鹿だ。僅かな希望があるなら藁にも縋る思いでその希望に託すくらいの緊急事態なんじゃないのか?」


静まり返ったことには気にもくれずヴィザルは続けた。


「勇者が死んだ。つまり、普通の方法じゃどうにもならなかったってことだ。だったら常識外れでも何でも試すしかないだろ」


誰も反論しない。それは事実だった。アリスは人類史上最高の勇者。その彼女が敗北した。それが意味するものは重い。

ヴィザルは肩をすくめる。


「どうせ何もしなきゃ滅ぶんだから」


フレイヤが目を見開く。アースも少し驚いた顔をしていた。ヴィザルらしくない。そう思ったのだろう。だが本人に自覚はない。ただ思ったことを口にしただけだった。

会議室は再び静まり返る。

やがて。女性が小さく息を吐いた。


『……変な人ね』


「よく言われる」


『褒めてないわ』


ミーミルが吹き出した。


『それもよく言われてますよね』


『あなたは黙ってなさい』


『はい』


全然反省していなかった。

女性は椅子に深く腰掛ける。そして窓の外へ目を向けた。王都の街並み。そこには今日も人々の生活がある。市場。子供たち。商人。兵士。それらだけじゃない。だが、勇者が死んでも世界は続く。だからこそ守らなければならない。

しばらくして女性が青い瞳を向け、再びこちらを見た。


『……あなた達は勇者を信じる?』


突然の質問だった。

フレイヤが真っ先に答える。


『当然です』


迷いはなかった。


『勇者アリスは世界を救おうとした』


拳を握る。


『最後まで諦めなかった。だから私は勇者になります』


女性は何も言わない。ただ静かに聞いていた。

そして次にアースを見る。


『あなたは?』


『僕は……』


アースは少し考える。


『勇者を信じるというより、…勇者が必要だった人達を信じます』


『必要だった人達?』


『はい』


アースは頷いた。


『誰かが立ち上がらないといけなかった。だからアリスさんは立った。それだけでも凄いことだと思います』


少しだけ青い瞳を細めた。そして最後にヴィザルを見る。


『あなたは?』


会議室の視線が集まる。ヴィザルは少しだけ考えた。

そして。


「別に」


と答えた。

フレイヤがずっこけそうになる。


『は!?』


「勇者だから特別とは思わん」


『ちょっと!?』


「ただ」


ヴィザルは続ける。


「十五歳のガキが世界のために死んだ」


その言葉に。部屋の空気が変わる。


「だったら大人が後始末くらいするべきだろ」


静かな声だった。誰も言葉を返せなかった。女性もフレイヤもアースも。そして――女性は初めて少しだけ笑った。本当に僅かに。


『なるほど。…確かに変な人ね』


呆れたような声音だったが、不思議と嫌味は感じなかった。むしろ少しだけ興味を持たれたような気さえする。女性は姿勢を正すと、こちらへ視線を向ける。


『改めて自己紹介を』


そう言って胸に手を当てた。


『私はアストリッド・フィンブル』


その名を聞いた瞬間、フレイヤの背筋がぴんと伸びる。


『フィンブル王国第二王女を務めています』


凛とした声。威圧感はない。だが、その一言だけで場の空気が変わった。王族。それも、この国の王女。

フレイヤは慌てて一礼した。


『フ、フレイヤです! 冒険者をしています!』


『そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ』


『無理です!』


反射的に否定が飛んできた。

王女_アストリッドは少しだけ目を丸くし、それから小さく笑う。どうやらこういう反応には慣れているらしい。


『あなた方のお名前も聞いても?』


アースが一歩前へ出る。


『アースです』


「ヴィザル」


俺も続けて答えた。


『ヴィザル……』


アストリッドがその名前を小さく繰り返す。まるで何かを考えるように。だが結局、首を横に振った。


『珍しい名前ですね』


「そうか?」


『少なくとも、現実で会ったことはありません』


そりゃそうだろう。俺も昨日適当に決めたんだからな。

そんなことを考えていると、その言葉を聞いたフレイヤが小さく声を上げた。


『あ』


全員の視線が向く。

フレイヤは少し迷うような顔をした後、ヴィザルを見る。


『いや……どこかで聞いた名前だと思ったのよ』


「なんだ?」


『ほら、童話よ。勇者の童話に出てきたじゃない』


フレイヤが答える。アストリッドが小さく頷いた。


『ええ。最後の勇者ですね』


『最後の勇者?』


アースが首を傾げる。

アストリッドは説明を続けた。


『勇者伝承に登場する七人の勇者。その最後に語られる人物がヴィザルです』


「へぇ」


ヴィザルは特に興味なさそうだった。アストリッドは少しだけ肩をすくめる。


『もっとも、現実ではほとんど見かけない名前です。童話の影響で避けられているのかもしれませんね』


「なんで?」


『その物語の勇者は死んでいったものばかりですから』


フレイヤが答えた。


『縁起悪いじゃない』


「なるほど」


ヴィザルは納得した。確かに人間はそういうのを気にしそうだ。

するとミーミルが口元に笑みを浮かべる。


『もしかすると、このヴィザルさんこそ、その童話の勇者本人なんじゃないですか?』


ミーミルが冗談めかして言う。

うん。


「ないな」


ヴィザルが即答した。


『ないですね』


アースも即答した。あまりにも迷いがない。

ミーミルが少し残念そうな顔をする。


『そうですか』


『あくまで童話ですよ?』


アースが呆れたように言う。


『しかもヴィザルさん、冒険者になったの昨日ですし』


ヴィザルも頷く。


「勇者どころか登録したのがな」


『しかもヴィザルさんが勇者になるとは到底思えません』


「その通りだ。面倒だからな」


アースがため息を吐いた。フレイヤは頭を抱えた。


『なんか納得しそうになった私が馬鹿みたいじゃない』


『いやぁ童話と似たような事件が起きているものですから』


ミーミルが残念そうに肩をすくめる。


『研究対象としては最高だったんですが』


「人を研究材料みたいに言うな」


『そんなに褒めても何も渡せませんよ』


誰もミーミルの言葉に突っ込み入れなかった。

そして数秒後、アストリッドは再び表情を引き締めた。先ほどまでの穏やかな空気が消える。王女としての顔だった。


『さて、本題に入りましょう』


彼女は机の上に置かれた一枚の地図へ視線を落とした。


『皆さんをお呼びしたのは、少し気になる報告がありまして』


彼女が指差したのはフィンブル王国東部。王都からかなり離れた地域だった。一つだけ赤い印がついている。


『最近、この周辺で魔物の出現数が増えています。昨夜の落下地点でもあります。しかし増えるだけなら珍しくありません』


横にいた騎士が資料をめくる。


『問題は種類です』


資料が机の上へ置かれた。そこには魔物の名前が並んでいる。

フレイヤが目を細めた。


『……これ全部、生息地が違うじゃない』


『その通りです』


アストリッドが頷く。


『本来なら山岳地帯にしか現れない魔物が平原に現れる。森林に住む魔物が海岸付近で確認される等、原因は不明です』


「引っ越しでもしたんじゃないか」


俺が言うと、アースが肘で脇腹を小突いてきた。

痛い。

しかし意外にもアストリッドは真面目に返した。


『ですが数が多すぎるのです。それに移動経路も確認できていません』


フレイヤが資料を覗き込む。


『つまり突然現れてるってこと?』


『ええ』


ミーミルは特に驚いた様子もない。さっき言っていた通りだろう。


『昨日、皆さんが遭遇したグレイガルム。本来なら王都近郊で確認される魔物ではありません』


フレイヤが腕を組む。


『あれも異常発生の一つってこと?』


『その可能性が高いと考えています』


アストリッドは頷いた。


『王国騎士団の記録にも、過去二十年で王都周辺にグレイガルムが現れた事例はありません。少なくとも私が確認した限りでは』


『さらに面白い報告があります』


『面白くはないでしょう』


アストリッドがミーミルの発言を訂正した。


『研究者的には面白いんですよ』


相変わらず王女に言われても全く反省していない。

ミーミルは資料を一枚取り出した。


『魔物同士が争っていません』


『……は?』


フレイヤが固まる。


『普通なら縄張り争いが起きます。海の魔物と山の魔物なんて遭遇した瞬間に戦い始めてもおかしくありません。ですが起きていない』


アースの表情も真剣になる。


『じゃあ何をしてるんです?』


ミーミルは地図を指差した。


『移動しています』


『どこへ?』


『同じ場所へ』


沈黙。全員の視線が地図についている赤い印へ集まる。昨夜の落下地点。エンドフォール。

ヴィザルは腕を組んだ。


「集まってるんじゃない」


『え?』


フレイヤが振り向く。ヴィザルは地図を見たまま言う。


「呼ばれてるんだろ」


誰も何も言わなかった。だが、その言葉は妙にしっくりきた。アストリッドも小さく目を細める。


『私も同じ可能性を考えています』


会議室に再び静寂が落ちる。やがて王女は立ち上がった。


『だからこそ確認が必要です』


彼女の青い瞳が全員を見渡す。


『これ以上放置するわけにはいきません』


騎士たちも頷く。


『先遣隊は既に現地へ向かっています。我々も一時間後に出発します』


フレイヤが思わず声を上げた。


『一時間後!?』


『はい』


『思ったより早い!』


『緊急事態なので』


フレイヤにとって王女のその答えには頭を抱えることだった。アースは苦笑する。ヴィザルは欠伸をした。


『緊張感ありませんね』


アストリッドが呆れたように言う。


「眠いからな」


『そういう問題ではありません』


『ですよね』


アースが頷いた。その時だった。会議室の扉が勢いよく開く。全員の視線が向く。飛び込んできたのは若い騎士だった。


『失礼します!』


駆け込んできた若い騎士は息を切らしていた。全員の視線が集まる。アストリッドが眉を寄せた。


『何があったのですか』


騎士は敬礼すると、焦った様子のまま報告する。


『東部監視隊より緊急連絡です!』


嫌な予感がした。

ミーミルが先に口を開く。


『落ちましたか?』


『はい』


騎士は頷いた。そして告げる。


『空から、何かが落ちてきました』

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