旅立ち【1】
ある青年が、今日も村の近くの川へ来ていた。長めの綺麗な黒髪を全て後ろに束ね団子に結っている。この男は、その年にしては落ち着きすぎていた。
まだ20にも満たないような容姿からは想像できないほどの、大人びたこの男はいつも通り岩を探しに来ていた。一つ一つ、岩を見ては右手をかざし首を傾げては、次の岩はうつる。何度も何度も今日も続けていた。ふと、男は立ち止まると、両手をかざし目を閉じる。するとその岩が宙へと浮かび、男はそれを運び始めた。
「今日もここに来たのか」
ふと、前の木から小さな女の子が声をかける
「ルウ、君も来てたのか」
青年はその女の子を見かけるとふと笑いかけた。少し赤みの入った髪を上に一つに結っている、小さな女の子は、髪を揺らし無邪気に笑っている。その華奢で小さな女の子は弓を背負い、矢を腰につけていた。
「ミヤも、毎日毎日、そんな良さそうな岩よく見つけてくるね。今日のは特に力が込められそうじゃないか」
「確かに、良い岩が取れた、これで土から力を借りる者たちは、7日ほどは岩を見つけずとも過ごすことができるであろう」
岩を力ではなく‘何か’でささえているミヤと呼ばれた男は顔色も変えず、自分と同じほどの大きさの岩を今も浮かしていた。
「ルウは今日は何を取ったんだい?」
「今日は鳥さ、上物だからミヤにも分けてやるよ」
「それは楽しみだ」
そんなたわいのない会話をするこの不思議な二人は村に戻った。
「ミヤ、ルウ、今日はホの家のものから子が生まれたそうだよ」
二人が村に入ると、大人たちが口々に祝福の言を述べていた。二人も新しく生まれた子はどんなものかと見に行くため、子のいる家に向かった。
「おばさん、とうとう子が生まれたと聞いたんだが、男かい?女かい?可愛らしい子かい?」
家に着くなり、走って来たルウははしゃぎながら、まだ整いきらない息も落ち着かないうちに質問をした。
「そんなに一気に質問したら、おばさまが困ってしまうだろう」
あとから来たミヤはそう言い落ち着かないルウをなだめた。
「二人とも、わざわざ見に来てくれたのかい、ありがとうね、ほれ、この子が生まれた子だよ。可愛い可愛ある女の子だ」
そういうと母の顔をした女は、しゃがみ二人に赤ん坊を見せてくれた。まだ小さく可愛らしいその赤ん坊は母の腕の中ですやすや眠っていた。
「可愛い子だ、これはべっぴんさんになるぞ」
「きっとなるだろう。さらに生まれたてにして、力を感じる。将来、力の使い手の才能もあるやもしれない」
「ミヤのように力が使えるようになったら村も少し楽になるぞ、何の子になるだろう、楽しみだ」
「この子にはヤコという名をつけました、いつか子が大きくなった時、ヤコにミヤの念じる力も、ルウの守る力も、教えてあげてくださいね」
ヤコの未来を見守るかのようにその子の母は笑った、この子を思い二人も笑うのであった。




