悪霊と死神
今回、サブタイトルは上手く思いつきませんでしたが、どっちかというと次回への伏線ですかね。②とか付けたいので。
ヂュンヂュン!
ん…?なんだもう朝か?というよりこの世界の鳥は随分と鳴き声が鈍いな。こんな魔物が各地に住み着いてるんだから当たり前かもしれんが…もしかしたら魔物の鳴き声か?
昨日よりは幾分マシな寝床になった寝室を出ると、早々に血生臭さが鼻をついた。目をこすると館の隅の方に血だまりが出来ていた。
「朝から何事だ。」
『スカム様、起きたッスか!実はっすね…』
話を聞くと、どうもサップの野郎が狼の姿で鳥を3羽仕留めて来たのはいいが、一匹死んでいなかったらしく瀕死ながらもそこらをかけずり回ったそうだ。流石にオットーでも殺せたそうで魂を喰ったようだ。
「で、サップは?それと髪の毛が抜けてるな…。どうやらレベルアップしてたらしいな。」
『それはおめでとうごさいまっす。サップは狼の体に血がついたみたいで洗いに行ってますッス。それとレベルアップしたのは契約の影響かもしれないッス。』
「契約の影響だと?」
「みんなー♪マリーの愛情たっぷりな朝食が出来たわよーん!来てちょうだい~!」
おっとマリーが呼んでるようだから、さっさと行くか。その話は食事のあとだと、言うとマリーの所へ向かうことにした。
「どう?今日はサプサプが早朝採ってきてくれたばかりのアイズバードと新鮮なアシ茸よん♪」
「マリー。この皿に盛ってある目玉とソテーにしてある赤子の足みてぇなものは、そのまんまの意味か?」
「そうよ?目がたくさんあることからアイズバード。目が多ければ多いほど身が締まってるし、栄養も抜群よ♪これは20個位あったから中の下ほどの品質ね。アシ茸は、人間の足の指のような傘をしてることと毛が生えてくることからの由来なのだけど…?これはまだ出来たばかりね。」
気持ち悪いが、こうして食べてみると悪くはない味だ。食間はナゲットみてぇだが味はまんま鳥だ。アシ茸も見た目は最悪だが、味は…しないな?マリーの言うとおり出来たばかりだからかもな?
「もぅっ!サプサプ遅いわよ!」
俺がアシ茸のソテーを食べ終えようとする頃、サップが戻ってきて地面に置かれた、器に盛られたソテーと鳥を食い始めた。
基本的に、狼の姿でいるつもりみたいだな。
「館の端に剥いだ皮が見えるが、あれは使わないのか?売れば幾らか金になったりしないのか?」
「あー?あれね…。アイズバードはそんなにランクが高くないから売っても銅貨80枚いったらいい方ね。服の生地としてはそこそこね。…あ、食べ終わったらそのまま机に置いといて頂戴?」
外見はかなり最悪だったが、腹は膨れたからよしとしよう。ただ、米とは言わないがパンくらいは欲しいな…。次、町に行ったとき探してみるか。
「ところでオットー、さっきの話の続きを頼む。」
『ああ、分かったッス。人間と人外の者との主従契約は何らかの条件が発生して契約となるッス。俺っちの場合は、魂を奪った時にもらえる経験値をスカム様に3割入るのと、魔法の属性に闇が追加されることッスね。』
「スカム、俺の場合はこの乗り移った個体、つまり狼が倒した敵などの経験値は全て狼が獲得するんだ。中身の俺はそのままだ。獲得っていっても経験値の6割はスカムに入ることになってる。これが契約だな。基本、さっき言った通り俺のレベルが上がる機会はない。だが個体が破壊された場合…個体のある程度までのレベルが加算される。この狼が仮に10だとすれば加算されるのは4~5っていったところだな?…後俺が元々持っていた魔法の属性が追加される。」
「じゃあ今朝、サップが狩った鳥の経験値とかも俺に入ってレベルが上がってるってことか?」
確認すると二人?から了承の返事が返ってきた。だとすれば大分、上がっててもおかしくはないはずだ。俺自身魔物を殺したし人も何人か殺った。サップやオットーが殺した分もきちんと入ってるはずだ。
早速見てみるか…。
***
スカム・チュッニー LV21
生命力:1251
魔力:2246
筋力:36
体力:61
敏捷:46
器用さ:86
賢さ:77
精神:45
【属性】光・火・水・闇
武器:サニー・ダガー
防具:革の鎧
***
随分と上がってるなww筋力は心もとないがかなり自分自身でも満足した結果になってる。
「そうだ、オットー。昨日俺が寝る前に頼んでおいたあの鍵付きの本を解錠しておいてくれたか?」
『バッチリッス!』
ふむ、オットーから手渡された本を読んでみると、これは魔術書だな。それも死霊術や魔族が使ったとされる魔法、か。外側は補強されてたみたいだが中身はかなり古い。俗にいう禁術を集めた本だろう。俺にとっては都合がいい、有効活用させてもらおう。
「本に集中し始めたな。俺が思うにあーなったら止まらんぞ?」
『じゃあ、その間お互いに質問でしあうッスか?』
「んじゃ、俺から。オットー、お前曾祖父が魔王って言ってたけどよ滅ぼされた経緯は何なんだよ?あと3代目勇者ってそんなに強かったのか?」
前から気になってはいたんだ。初代と二代目勇者は歴史的に悪とみなされ書かれている反面、3代目は正義の勇者で英雄と過剰な迄に評価されている。それ以降の勇者も評価されているし。
『まずひぃじいちゃんは、500年前当時の大陸の4割。現在でいうとナルセール王国領とグッティーノ帝国の北半分を支配していたッス。初代勇者の墓は帝国領の魔の山にあると言い伝えられていて二代目勇者が魔王となった時に埋めたッス。』
「待て待て、ということは、二人の勇者は魔族側だったってことか?」
『そうッスね。基本的に勇者ってのは全員異世界人ッス。たまたま、初代は魔族と仲良くなって国を築いたッス。500年前まではこの大陸はほとんど人間がいなかったらしいッスからね。二代目は異世界に迷いこんでしまった同僚にある年、ピクニックの最中殺されて、周りにいた魔族の子供達も惨殺されたッス。…その後、人間達の国に行った同僚は…3代目勇者を名乗ったッス。』
随分と自己中な奴だったんだな?親切に助けた二代目を裏切り、ましてや子供まで殺すなんてとんだ屑野郎だ。名声に惹かれてってところだが、実際はそんな強かったのか?
『魔族側は、勇者の信頼が厚かった部下を3代目魔王にして人間と戦争になったそうッス。その戦いの詳細を知るものはいないッス。少なくとも俺っちは父親からは知らないと言われたッス。そして、四代、五代と勇者に魔族が狩られて…六代目で魔族討伐は終了したッス。3代目から6代目までの300年で魔族はこの大陸からほぼ姿を消して他の大陸に移った魔族も殆ど根絶やしにされたッス。』
「んで、お前の一族はこの結界の中で細々と生きてきたわけか。それで、家族はどうなったんだ?」
「六年前、俺っちの誕生日に町に肉を買いに行って死んだッス。冒険者に…。今そいつはポロローズの警備隊長になってるッス。」
俺たちの話を本に集中しながらも聞いてたようでスカムが顔をあげた。
「じゃあ、お前も復讐相手がいるってことだな。アイツの名前はローだ。お前の親父を殺ったってことは見た目以上に強いか、お前の親父が弱かったかだな。」
『父さんは、八代目勇者に深手を負わせたッス。だからそう簡単に死ぬ筈はないッス。…その傷が原因で八代目は討死にしたと言われてるッス。』
「ならアイツが強かったということだ。後、勇者は歴代で何人いるんだ?」
「それは俺が答えるぜスカム。現在いる奴を含めると十人だ。っていっても七代目から単なる国の駒。所謂、戦争の道具だ。その死んだ八代目も教国に単身攻め入り死んだらしいがな。」
全く胸糞悪い話だな。俺もガキの頃は勇者の英雄譚として兄貴に読み聞かせられたが、オットーから聞いた限りじゃ人間が脚色した捏造だったな。
ふーん、と軽く顔を頷かせると本を右手に持ち館の中へ入っていった。どうやら中で集中するらしいな。それとも俺らの話を耳に入れたくなかったりしてな。
『次は俺っちが質問するッス。サップは兄弟が処刑されたって言ってたけど原因は何すか?』
「簡単だ。俺が生まれた時からずっと汚職をしていて六年前、騎士団が邸宅になだれ込んで幼い頃からいた使用人も大事に飼っていた番犬も全部死んだ。…そう月日が経たないうちに、親父と長男、次男は処刑されちまって、生き残ったのは王に密告した三男と四男。そして末っ子の俺と俺の弟分だったマービンって奴だ。庭師の子供でな、ガキの頃からずっと仲良しだったよ。」
『そのマービンは、今どうしてるんすか?サップが死んで悲しんでるんじゃ…。』
「…」
悲しんでる、か。むしろそういう結末なら俺は悪霊なんかにはならなかっただろうな。あいつが俺の死を嘆いてくれたらどんなに良かっただろうに…。
「死んだ。冒険者としてコツコツ採取などの地味な依頼をこなしてランクが地道に上がっていたのに…どっかの馬鹿が繁殖期の針虫の巣に突っ込んだ挙げ句に逃げ際にマービンに擦り付けて、針虫を殺したんだ。そいつはな、わざわざ先輩の冒険者に巣の近辺まで連れてきてもらったのに、視界の中にいないとみると巣の中へ近づいていったんだ。」
本来、針虫は穏やかな性格でその針はあくまでも防衛手段なだけだ。だから、付近を探して中ぐらいの奴等を仕留めればよかったんだ。なのに、あいつは巣の真ん前にいた幼虫をよりにもよって親の前で殺してしまった。それなのに―
「俺が上司に掛け合っても、誰も信じねぇ。失意のまま上司に警備任務命じられて教会に向かったらスカムが事件を起こしてそれに便乗した間者が暴れまわって、その隙に件の新米冒険者を殺そうとしたら何者かに殺されて死んだ。今は悪霊さ。」
『ま、結局のところはあんたも俺っちも複雑な事情があるってことッスね。』
そういうことだな。人間たちには深い恨みがある集まりってことだ俺たちは。それにしても改めて考えると人間は大分悪どいことやってるな。魔物よりも人の方が醜いかもな。
「おい、お前ら。ちょっと実験したいことがあるから今日の日が暮れる頃、昨日簡易的に作った門の前で待っていてくれ。」
スカムが本を手に持っていたが他にも、後ろの方を見てみると本が積まれていた。あの禁術の本と内容でも照らし合わせてるのか?でもそんなに合わせることもないだろうに。まさか、創作魔法か?
「ああ、分かった。」
『了解ッス。』
さてさて楽しみだな?スカムにはいってなかったが、微かにならアイツの気持ちを察することが出来る。随分とワクワクしてるみてぇだから、今夜はすげえことが起きるかも知れねぇな♪…今からでも楽しみで仕方ねぇ♪
微妙に本編にリンクです。本編で明人はあっさり簡単に最初の依頼をこなしましたが、裏を返すと非常識な行いをやってしまっていたということですね。そのせいでサップの恨みを買ってしまい、本編の方で襲われたってことです。
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ふくろ;二十年ほど前に地球から来たケン・コマツが従来あった収納用である背負い袋ほどあった魔具(収納量は背負い袋の体積の三倍ほど)を改良して腰につけることが出来る大きさにした。使用者の魔力に合わせて収納量を変えることが出来るようにし、デフォルトの入れられる量はかなり多い。(具体的な量は不明)
その後、ケンは設計図を公開した。
粗悪品が出回るも、本人はそれでもいいらしく裕福な市民や冒険者が好んで使って、その後正規品を買ってくれるので結果オーライといえるだろう。




