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村を出て森へ入る。
薪になる枯れ枝を拾いながら奥へと進んでいく。
「うふふ、ふふふ」
思わず楽しくなって声が出る。
異母妹のあのこわばった顏。今頃は魔法が使えなくなってないか確かめてるかしらね?
嫌味ではなく、汚水をぶっかけてくれてありがとうって言いたい。
あれで目が覚めた。
すっきりした。
昨日の夜はもう死んじゃおうかなんてほど精神的に追い詰められいたけれど。
どうせ死ぬなら、村の中より森の中。魔物に殺された方が幸せな最期なんじゃない?
毎日、村の人たちにいじめられ、辛い目にあわされ続け殺されるように死んでいくよりも。村を出て、自由に生きて、あらがえない自然の摂理で命を落とす方がよほど幸せに違いない。
そう思ったとしても、踏ん切りがつかなかった。
魔物は怖い。一人で生きていけるのかな。不安ばかりが頭をよぎってしまう。
けど。
蹴られ殴られ水をひっかけられ、食べる物もろくに与えられずに働かされる現実に気が付いた。
大人になったら村の男たちが私をどう扱うか。嫉妬した女たちが私をどうするか。前世のいろいろな記憶が警鐘を鳴らした。
ああ、村を出ていくしかない!すとんと気持ちが固まった。
いったん決意しちゃうと不安よりもこの先の生活が楽しみになってくるから不思議だ。
「今日は片栗粉を使って何か作ろう。ふふふ。楽しみ。おっと、その前に、水浴びしよう」
目をつむり耳を澄ませると、斜め前から風が吹いて耳に当たった。
「うん、いつもの池なら安全に水浴びできるのね?でも水を汚したくないなぁ」
耳をもう一度風が撫でる。
「そっちは、川のある方ね。でも村に流れ込む川の上流を汚すわけに……あ、まぁいいのか、な?」
村を出てしまえば、村の決まりを守る必要はないんだよね?
とはいえ、あんまり村に近い場所では見つかってひどい目に合うかもしれない。
奥へと進み、片側が川の流れに削れて崖になっている人目につかない場所まで移動する。
「カーブしている川は、外側は流れが早くて深い。内側は流れが緩くて河原ができている……と、理科で習ったまんまだ」
とはいえ実際はカーブの仕方で中央が一番流れが早かったり、急に深くなっている場所があったり危ないんだったっけ。
全身洗う。
「あー、石鹸が欲しい!」
なんだったっけ、泡立つ実。えーっと、形は覚えているんだけど名前が思い出せない。シャボンに似た名前のサボンは柑橘系で別っていうのは覚えてるんだけど。んー、プラスチックのような艶感のある皮の中に、黒くて真ん丸な実が入ってるやつで。
石鹸代わりに使ったり、羽根つきの羽根に使われたり、あとは食べると大豆とアーモンドを混ぜたようなとか、いくらっぽいとか言われる味がする、あれだよ、あれ!名前が、思い出せないっ。
日本だと割とどこにでも生えてる。都会の公園に植えられていたりハイキングコースですぐに見つけられたりする、名前が思い出せない。
エルフの住む森にも生えてるといいな。今度探してみよう。名前の分からないあれ。
いや、それよりも探さないといけないのは寝る場所かな。
風雨がしのげて安全な場所。
村にはそれがあった。いや、むしろそれくらいしか与えられていなかったというべきか。
そういう場所を見つけさえすれば、すぐに村での生活よりも豊かな生活になる。
「ハードルが低い。ふふふ、でも、昨日は食べそこねちゃったけど、パンよりもカタクリのカスハンバーグもどきの方がおいしいんだよね。」
あ、塩……。村には塩があったんだ。岩塩が取れる場所が森のどこかにあるらしい。この辺にもないかな?
川の流れで削られた対岸の崖を見る。
地層があらわになっている。岩塩の層は見当たらない。そりゃそうか。こんなところにあったら雨が降って塩が溶けだして川の水が海水みたいになっちゃうよね。
ってことはやっぱり岩塩があるのは地下?どっかの国に岩塩掘った地下に礼拝堂やら宮殿やらなんかいろいろあったりするよね。
あと有名なのは死海。でも死海なんか木は生えないだろうし?
体を洗い終えて、服を手にする。先に洗っておいた服はすっかり乾いている。
「ありがとう」
精霊が風で乾かしてくれたのだろう。
「よし。綺麗になった」
薪を抱えて、池に向かった。
2日かけて作った片栗粉で何か作ろう!




