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耳なしエルフと髭なしドワーフのゆるり旅 ~6歳と25歳で出会った二人は200年後も旅してる。森が滅びる?私のせいじゃないですよね?~  作者: 富士とまと
第一章 ちびっこエルフは村の中

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8

 バシャンと水音と、冷たさに飛び起きる。

「いつまで寝てるのよ!さっさと起きなさい!」

 異母妹が桶を持って立っていた。

 塗れた地面が視界に入り、水をかけられたことに気が付いた。

 ただの水ではなさそうだ。生臭い。

 魚の内臓でも洗った水だろうか……。

 昨日の夜は、精霊が運んでくれたラベンダーのいい香りがしていた掘立小屋の中が、一気にゴミ捨て場のようなにおいになってしまった。

 私もひどい臭いになっているだろうな。

「さっさと起きろっていってんの!聞こえてるの?この耳は飾り?」

 異母妹が私の耳をひっつかんで引っ張る。

「あはは、こんな醜い耳、飾りにもなりはしないか!短いと聞こえないって言うなら」

 すーっと息を吸い込む音がしたと思うと、引っ張った耳に口を当てて異母妹が大声を出した。

「無能ーっ起きろっ」

 あまりの大きな声に、耳が痛くて、とっさに体を引いて耳を塞ぐ。

「ふんっ、起きたなら、さっさと薪拾いに行きなさいよっ!あんたが一昨日、薪を運ばなかったから昨日は大変だったんだからっ!」

 昨日は大変?何があったんだろう。ずっと片栗粉を作ったり村を離れていたから分からない。

「薪を運んでいるあんたに、醜い姿を見せるなって言った私とお母様が責められたのよっ!言ったわよね、お母様は暗くなってから運べって。サボってんじゃないわよっ!」 

 異母妹は、地面にたまっていた臭い水を足で跳ね上げる。

 土が混ざって泥になった水が頭も腕も汚す。

「あ、そうだ、お腹空いてるんじゃない?仕事をさぼったから何も食べてないでしょ?風魔法が使えないから、木の実一つ取れないものねぇ」

 異母妹がにやにやと楽しそうに笑っている。

 風魔法で木の実を落とすしか方法がないと思っていたけれど、木登りを覚えれば私にも取れる。自然に落ちてくるのを待つことだってできるはずだと、前世の記憶が教えてくれる。

 木登りをしたことがないから練習しないといけないけど、栗拾いのように、落ちているものを拾い集めて食べたっていい。

 土の下のものは食べないエルフは、一度土に落ちた実も不浄だと食べない。

 ばかばかしい。

「ほーら、パンをあげるわ。食べたらさっさと薪集めに行きなさい!」

 にやにや笑っている異母妹が私に食べ物を差し出すなんて珍しいこともあると首を傾げると、異母妹の口の端がくっと上がった。

「やっだぁ~さっそと受け取らないから、落としちゃったじゃない」

 ポロリと異母妹の手からパンが落ちて、臭い水が溜まっている地面に落ちた。

「あはは、硬いから、水で柔らかくなってちょうどいいんじゃない?くすくす」

 さあ、ここで問題です。

 食べ物を粗末にしたら、日本人はどうなりますか?

 答えは、怒る。それはもう、いくら飽食だったとしても、食べ物で遊ばれたらドン引きするし、炎上する。

 第二問。精霊はどうなのかな?

「私は精霊の加護が弱くて魔法が使えないのは知ってるよね?」

「ふふっ。当たり前じゃない。無能。なぁに?もしかしたら魔法が使えるようになったとでもいうの?あははは、じゃあ、見せて見なさいよ!」

 異母妹の挑発するような言葉に、真顔で答える。

「私は魔法は使えない」

 両手を広げる。

「だから、もし、この小屋の中で風が吹いたら、それは精霊が起こした風。……食べ物を粗末に扱った、森の恵みを無駄にしたあなたに風の精霊が怒っているということ」

 答えは……。

 ぶわっと私の背後から突風が吹き、泥水を巻き上げて異母妹の頭から足先まで霧吹きで吹きかけたように泥水をぶっかけた。

 精霊、怒ってるみたい。

「なっ、何するのよっ!」

 ペッと口に入った泥水を吐き出し、異母妹が私の襟首をつかんだ。

「私は、魔法が使えないのはあなたはよく知っているでしょう?だから、今の風は私ではなく……。大丈夫?あなたはまだ魔法が使える?精霊を怒らせてしまってもまだ大丈夫?」

 異母妹の顏がさぁーっと青ざめた。私を掴んでいた手を離すと、後ずさる。

「わ、わざとじゃないわ。本当に手が滑って落としただけで。森の恵みを粗末になんてしてない、ほ、本当よ」

 小刻みに震え、おびえた顔をして小屋を出て行った。

「……そっか。やっぱり食べ物を粗末にすると精霊も怒るのね」

 風が少しも吹かない。

 え?違うの?

 でも、パンをわざと落として食べられないようにしたから異母妹に泥水浴びせたんじゃないの?

 ……私をいじめたから怒った?……そんな都合がいいことあるわけないか。

 私の加護は魔法が使えないほど小さいのだから。

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