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「こっちが水仙で毒があるから食べちゃだめなやつ。こっちがさっき食べた野蒜」
再びヴァルさんに抱っこされて森の中を移動中です。
右手に水仙、左手に野蒜を持って説明中。
「うーん、同じものにしか見えない」
「匂いが違うの!」
グイっとヴァンさんの鼻に野蒜を押し付ける。
「いい匂いだなぁ」
いや、いい匂いじゃないよね?ネギとニラが混じったようなにおいなんだから、匂いだけで言えば臭い。……いい匂いって香水にでも使えるような匂いでしょ?
いやだよ、ニラ臭の香水付けてる人。いくらヴァンさんほどイケメンでもね。匂いがニラ臭だったら逃げる。
茶色の髪に茶色の目。色だけなら地味なのに、イケメンの顏は派手だね。高い鼻に少し目じりがたれたパッチリした目。彫も深く、口は引き締まり口角が上がって大きいのに下品な感じはしない。ソース顔というのかな?
そのイケメンの鼻に野蒜を押し付けているのってよく考えたら変な図だよね。
「いい匂いじゃなくて、おいしそうな匂いって言って!」
ニラ臭イケメンを想像するから。
「お、おう。おいしそうな匂いだな。覚えた」
子供の言葉なのに、ヴァルさんは素直に返事をしてくれる。もうめちゃくちゃいい人だ。
「こっちが水仙。匂い違うでしょう?」
「ん?匂いしないな」
「うん、水仙は匂いが弱いの。ほとんどしないし、しても青臭く感じると思う」
「フワリは物知りですごいなぁ!」
「ん?そう?むしろすごいのはヴァルさんの方だよ」
こんな会話をしつつ、ヴァルさんは魔物の攻撃をひらりとかわし、蹴り倒し、投げ飛ばししているのだ。
私なら瞬殺されそうなゴブリンやオークなど、まるで蚊やハエを振り払うような感じで。
おや、そういえば……。
「オークって食べられるんだよね?」
「ああ、そだな」
「なんで食べないの?」
ヴァルさんが再び現れたオークを蹴り倒した。
「前にも言ったが【焼肉】魔法じゃ中まで火が通らないからな。それに森の中じゃ火魔法は危険だから使えない」
そうね。そうね、【焼肉】魔法を頼るならそうなるか。
でも、焼き鳥ばっぱり食べさせられて飽きちゃったんだ。ヴァルさんは平気なのかなぁ……。
「あ、料理か!もしかして、料理して食べればいいってことか?じゃあ、野蒜を探さないとな!」
野蒜がよほど気に入ったらしい。ホクホク顔になってる。
でもなぁ、私としては、毎度毎度野蒜になっても飽きちゃう自信がある……。
何かほかにもないかな?
「ヴァルさんはさばける?」
「ん?ああ、解体か。問題ないよ。まぁ、上手くはないが、肉を食べるためくらいなら問題ない。買取価格を高くするために傷をつけずにとなると苦手だがな」
ああ、なんかざっくりしてそうだもんね。性格が。飛んでいる鳥を丸焼きにしてちぎってるくらいだから。
「それじゃあよろしく。私、食べられる物探してくる」
「あ、おい、危ないぞ一人じゃっ!」
「大丈夫」
精霊さんが危険回避してくれるし。
「大丈夫じゃない、魔物が出るぞ」
「大丈夫、ヴァルさんの姿が見えるところまでしか行かないから」
これで納得してくれるかと思ったら。
「本当に大丈夫か?足元にも気を付けるんだぞ、スライムを踏むと」
「大丈夫だよっ」
過保護か!過保護なのか!
手を振って離れる。
「やっぱり着いて行こうっ」
って、来ようとする。
過保護すぎっ!
「もうっ、いつまでたっても解体してもらえなかったら肉が食べられないでしょっ!」
しゅんっと肩を落とすヴァルさん。
「だが……」
「ヴァルさんが毒を採取する方が大丈夫じゃないし」
完全に頭が下がったヴァルさんを置いてさっさと森の中へ。
イケメンで、優しいけど……束縛とも違うけど、メンドクサイって言って振られそうだな……。がんばれ、ヴァルさん……。
なんだか少し心配になったよ。いい人が見つかるといいね……。




