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ちびっこエルフのサバイバル飯~精霊の愛し子を追放したエルフの森は消えるらしい~  作者: 富士とまと
第二章 ちびっこエルフは森の中

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 人間の街で普通に包丁や鍋は手に入るんだ……。知らなかった。

 やばいやばい。あまりにも知らな過ぎると怪しまれる。

「フワリ、しっかりつかまってろ」

 私の体に回されたヴァルさんの手に力が入った。

 ピリピリとヴァルさんが気を張る。

 すぐに目の前に魔物が現れた。

 狼型の魔物!エルフの村の周りでは見ない魔物だ。

 狼に似ているけれど、四本脚だけれどまったく動き方が違うから、狼と間違えることはない。歩き方が……そう、猿に似ている。

「危ないっ」

 思わず声が出た。

 そう、猿に似ている動き方ということは、2本脚で立ち上がることができるということだ。狼のような跳躍に、猿のように手を伸ばす攻撃。

「大丈夫だフワリ」

 大丈夫って言ったって、その魔物が、1匹2匹3匹と増えていき、すでに30匹くらいに周りを囲まれている。

 襲ってきた1匹をひらりと交わすと、ヴァルさんは背中に突き出た柄を握り、武器を取り出した。

「ふおっ」

「なんだ?」

「ううん、何でもない」

 中二病全快なかっこいい武器に、変な声が出た。

 背中に柄が見えてるから、大剣か何かだと思ってたら……メイスやゴルフクラブほどの長さか、それより少し長いルツェルンハンマーだ。

 先っぽが槍のようになっていて突き刺すことができる。

 そして片側はハンマーになっていてもう片側がピッケルいやツルハシみたいになっている武器。

 いや、良く見ればルツェルンハンマーのようにハンマー部分は4つに分かれてなくて金づちの形だし、槍部分はちょっと短い。

 棒部分も金属でできていて、黒光りしている。何の金属でできているのか分からないけど、初心者が持つ武器っぽさはない。装飾がいろいろされていて……高そう!

 ゲームだと終盤にしか手に入らなそうなかっこいい形のルツェルンハンマーもどきだ。

 こんな高そうな武器を持っているということは、ヴァルさんはけっこう上級冒険者なのかな?

 なんて考えている一瞬で、周りを取り囲んでいた魔物が一斉に襲ってきたと、思ったら、ヴァルさんが瞬殺。

 武器を背中に戻すと、何事もなかったように……。

「で、ドワーフに会って特別な鍋や包丁が欲しいのか?」

 話を戻した。

 どう言い訳したら、いいですか?

 ぐぅーとお腹がなった。

「ああ、なんだ。もしかして、今欲しいっていう意味か?お腹が空いているから料理しようとしたのか?」

 ヴァルさんがにこにこと笑った。

 イケメンが笑うと破壊力があるな。

 っていうか、特に筋肉もりもり脳筋タイプには見えないのに、何十頭もいる魔物を瞬殺とか、ヴァルさんやっぱりすごい冒険者なのでは?

 そして、鍋や包丁を欲しがった理由は……お腹が空いて料理したかったからということにしておこう。こくんと頷く。

「だけど、包丁も鍋もいらないぞ?」

 は?いりますけど?

「ちょっと待ってな」

 ヴァルさんが空を見上げた。

 チチチチとどこかで鳥の鳴き声が聞こえる。

 あ、そうか。魚なら捕まえて焼けば包丁も鍋もいらないなぁ。あとは果物かなぁ。

 うーん、何してるんだろう?川の場所を耳を澄まして探してるとか?それとも果物のなってる木を探しているとか?

 チチチチと鳴く鳥。

 頭の中で、存在しない時計がチッチッチッチッチと時を刻んでいるかのようだ。

 私を抱っこしたまま立って空を見続けるヴァルさん。

 精霊さん、果物のなっている木が近くにない?教えて。

 心の中で念じると、ふわりと風がいつものように私の頬を撫でた。

 フワリ……と、私の名前を優しく読んでいるようにも感じる。よかった、フワリって名前にして。

「【焼肉】」

 なんだかおいしそうな言葉をヴァルが口にしたのと、私が精霊が教えてくれた方向を向くのはほぼ同時。

 それからすぐにどさりと空から何かが落ちてきた。

 地面を見ると、真っ黒こげになっている何かだ。

 ヴァルさんが近づいて、真っ黒こげの何かのところへと歩いていき、私を地面に下ろした。

 両手で頭の大きさくらいお真っ黒こげを手に取り、ヴァルさんが引っ張ってちぎった。

「はいどうぞ。周りは焦げてるから、中の肉にかぶりついて食べるんだよ」

「これは、何……?」

 ヴァルさんが塩を取り出して、パラパラと肉に振りかけた。

「知らない?鳥だよ。焼きたてだからおいしいよ」

 にこりと笑うヴァルさんに、突っ込みが止まらない。

「これなら、包丁も鍋もいらないだろ?」

 まぁ、食べますけど。

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