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急いで、急いで、急いで、急いで!
まずは村から遠くに行かなくちゃ。
いつ、異母姉が目を覚まして村へ戻って私を探しに来るか分からない。
村長の娘である異母姉が怪我をして戻ったとなれば、村を上げて私を捕まえに……いや、殺しに来るかもしれない。
日が落ちるまであとどれくらいだろう。日が落ちてしまえば、村人は村を出ることはないだろう。もし出たとしても、夜目が聞かないエルフはたいまつを持って移動する。それなら明かりで場所が分かるから、逃げたり隠れてやり過ごすこともできる。
私は暗闇でも進んでいくことができる。精霊さんが危険が教えてくれるからだ。
うっかりスライムを踏むこともないし、ゴブリンやオークに近づいてしまうこともない。
早く、日が落ちて。
日が落ちるまでは休むことなく1歩でも遠くへ進んでいく。
夕日が影を濃くすること、ほぅと息を吐きだす。
「はー、疲れたぁ。ちょっと休憩!」
鞄から果物を取り出す。
急いで取ってきたから確認はしていない。
一つ取り出す。
洋ナシのような皮の色で、形はキウイを大きくしたような感じ。
「何、これ?」
村では私には果物は与えられた記憶はほとんどない。与えられたとしても、苦い渋い青臭いといった「収穫時期を誤った」果物だった。
「村で見たことがないということは、私にあげたくないようなおいしい果物なのでは?」
鞄の中をのぞけば、全部で8個ある。
その一つが少し黒ずんでいる。
「もしかして、バナナみたいにスイートスポット……甘くなると黒くなるとか?」
手にしていたものを戻すと、黒ずんでいるものに手を伸ばす。
「あ、ちょっと柔らかい気がする。やっぱり、これが一番食べごろに違いない」
ふわっとトロピカルな香りが鼻に届く。
「我ながらトロピカルな香りってなんだ?って話だけど、他に表現のしようがない」
バナナのようなマンゴーのようなメロンのようなブドウのような……って、落ち着きを取り戻すと、何、この匂い!
匂い強くないか?うん、すごく匂いが強い。今まで必死に歩いてきてそれどころじゃなかったけど。トロピカルジュース製造工場にいるような気持になってきた。
何ていうか、甘さもある匂いなんだけど、やたらめったらいろんなものを混ぜたような独特の匂い。好き嫌いが分かれそう。
あれ?どこかで聞いたことがある。
「あ!これ、もしかして幻の果物って言われる、ポポなのでは?」
すごい!食べてみたかったんだよ!
まさか異世界で幻の果物であるポポを食べることができるなんて!
しっかり熟していれば、手で皮がむける。熟し方が足りないと青臭くてまずいらしいけど熟していれば……。
「うーん、本当にクリーミー!アボカドのようなカスタードクリームのようなトロリ食感。種は大きくて黒いから間違えて食べちゃうことがなくて取りやすいし。甘いよ、甘い。この世界で食べたものの中で一番甘いよ」
おいしい。
おいしい。
「あ、1個でお腹いっぱいになっちゃった……」
夢中であっという間に食べた。久しぶりの甘味。
ポポは栄養もあるって話だ。……って、たぶん私が今まで食べていたわずかな食事に比べたら格段に栄養があるんだろうな。
異母妹の方が数か月年下にもかかわらず、私の方がずいぶんと体が小さい。栄養が足りてないのか、足りない栄養で生き延びようと成長が抑えられているのか。
まるで鶏が先か卵が先かみたいね。
「さ、もう少し村から離れよう。精霊さん危険があったらお願いね」
精霊の道案内で夜の森を進んでいく。
木々の間から漏れる月明かりはわずかだが、近くの物はぼんやりとした形は見える。
だけど視線を上げると、月明かりも届かない闇が広がっている。
うん、怖いな。ぶるりと震えると、ふわりと頬に風が当たる。
怖いけど、怖くない。精霊がいれば、怖い場所でも怖くない。大丈夫。
暗い森の中を何時間か進み、疲れたところで安全な場所を教えてもらって、眠った。
日が昇ると、すぐに起きてまた進む。お腹がすいたらポポを食べ、必死に村から遠ざかる。
そうして、4日が過ぎた。




