16
背負子を池の近くにドスンと下ろす。
「はー、重たかった……」
今度からはもうちょっと量を考えて運ばないと。……それとも、土器は河原で作る?粘土を運ぶより、焼きあがって成功したものを運んだ方が軽いよね?
よし。そうしよう。かまどだけは作ってから運べないから、その分の粘土は必要だけど。石積みのかまどを粘土で補強するだけなら、あと何回くらい往復すればいいのかな?
昨日石を積んで使ったかまどを見に行く。
「あっ」
石が崩れ落ちてかまどの形は保たれていなかった。
「おかしいな?結構安定感あったと思うんだけど……」
でも、まあいいや。もう少し大きな方がいいかな?と思っていたところなんだよね。ドーム型にしたい。土台をちゃんとしてから作った方が良いはずだし。
となると、片栗粉を作るのに便利だからってだけでここに作ると後で後悔するかも。
もうちょっと場所を考えないといけない。
どこに作ろうか?
「あれ?昨日作ったレンコン餅が……」
地面に転がっている。
「もしかして、魔物が現れて踏み荒らしていった?」
かまどの石が崩れていたのも、レンコン餅が地面に転がっているのも……。
だとしたら逃げないと。この場所は危険。
ドチャッ。
「きゃっ」
足元に、何かが投げられた。
「これ……」
ぐしゃりとへしゃげた粘土。
昨日、私が作って日陰で乾かしていたコップが、ひしゃげていた。
ドチャッ。
また、一つ。粘土が足元へと投げ込まれ、ひしゃげた。
「みぃーつけたぁ」
声に驚いて顔を上げると、太陽を背に3人の子供の姿があった。
「村に帰ってこないで、こんなところで何してたの?」
異母妹が手に持っていた粘土のコップを手にしている。
「まさか、こんな泥遊びしてたなんてね」
ぐしゃりと、異母妹はコップを手で握りつぶした。
「あっ」
せっかく作ったのに。
「あー、やだやだ!手が汚れたじゃない、汚らしい!」
異母妹は、握りつぶした粘土を私に向けて投げつけた。
ドスンとお腹に当たった粘土は、風魔法で勢いをつけたのか思いのほか強い衝撃を受けてうずくまる。
異母妹の隣にいた少し年上の男の子二人が、私の腕をつかんで立たせると、異母妹がニタリと笑って私を見た。
「でも、それが何よりの証拠ね」
異母妹が、ひしゃげた粘土を指さした。
「証拠?」
「そう。出来損ないの無能が。ドワーフと手を結んだんでしょう?」
え?
「ドワーフが近くにいるの?」
手を結べば、鍋や鍬やいろいろな物を作ってもらえる。
「しらじらしいっ!」
異母妹が手を胸の前で右から左へシュっと動かすと、スパンと私の腕に痛みが走る。
ウィンドカッターで皮膚が切られた。
「ドワーフに頼まれて私たちを殺そうとしたんでしょ!」
は?
「殺そうなんてしてない」
異母妹があはははと笑った。
「失敗したからそう言って逃げるつもりでしょう?あはははは、残念だけど証拠は十分よ」
「証拠って、なんのこと?だいたい、魔法が使えない私が、風魔法で戦える皆を殺すなんて無理だって分かるよね?」
異母妹が真顔になって、それから私をにらみつける。
「私のことバカだと思ってる?魔法が使えなくたって、人は殺せるのよ?」
異母妹が、私をじっと見たまま、右手を上げた。そのままチョップをするように振り下ろす。
「でも、魔法を使った方がずっと簡単だけどね」
スパンと、私の髪の先と肩が切れた。
焼けるような痛みが肩に走る。
「まさか、私を殺す……つもり?」




