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白い結婚の終わり

最終エピソード掲載日:2026/03/11
五年間、結婚記念日の食卓に夫が来たことはない。
伯爵夫人ノエルの結婚は、最初から名ばかりだった。
夫は社交の場でだけ妻の腕を取る。
領地の成果はすべて、愛人の助言として語られた。
帳簿を整えたのはノエルだった。
防疫体制を一人で築いたのも。
それでも彼女の名が報告書に載ることはなかった。
五年目の記念日、ノエルは食卓に一通の書類を置いた。
婚姻無効の申請書。
微笑んだまま告げた一言を残し、彼女は屋敷を出た。
持ち出したのは、木箱ひとつ。
五年分の帳簿の控えだけ。
残された引き継ぎ書を、読める者はいない。
招かれた王都の救療院で、ノエルは寡黙な軍医と再会する。
二年前、領地で一度だけ言葉を交わした男。
彼はなぜか、ノエルの処方を密かに書き写していた。
帳簿を失った領地で、何が起きるのか。
あの軍医が処方を覚えていた理由を、ノエルはまだ知らない。
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