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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部9章『ホーム・リフォーム』第1037技術開発拠点-残技の衛星
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#9

 その後、G17に聞いたところによると1号機を乗り逃げしたのは敵対勢力……すなわちギルド諜報部の人間で、3号機に乗っていったのは「資格ある来訪者」との事だった。


「G17。その来訪者というのは、テロマーのヨーコ・ハヤマですか?」

『個人情報保護規定のため、詳細はお答えできません。補足・テロマーの女性であった事は肯定します』

「では訪問時期は約250年前で間違いありませんか?」

『はい。正確には97,993日前……およそ268年と3ヶ月前です』

「時間、判るの?」


 アリサとG17のやり取りを聞いていたトワが不思議そうな声でそう問いかけた。

 なんでもG15は時間計測のシステムが壊れていて時間の概念を理解出来なかったらしい。


「資格ある来訪者によって時間計測システムのリセットとアップデートが行われました。システム停止中は時間の計測ができませんが、リセット後の268年前以降の時刻は正常に計測されています」

「よくわからないけど、わかった」

『ご理解頂き光栄です、セレスティエル。ところで他の装備品もご覧になりませんか?先ほどテロマー・アリサが観覧されたエリアの先にいくつか当施設で開発された品が保管されています』

「……失敗作?」

『徴発されなかった品、です』


 私の皮肉に、G17は抗弁して見せたけど……この子、面白いね。人工知性体だと言ってたけど、まるで人と話をしているみたいだ。

 アルカンシェルの整備点検にはまだ時間が掛かるらしいし、徴発されなかった品とやらを見に行くことにした。


 その移動中、私は少し気になっていたことをマリエッタに問う。


「ね、マリエッタはオンブルの事を詳しく知ってたみたいだけど、やっぱりハッキングで知ったの?」

「えっと……ちがいますっ」

「そうなの?かなり機密レベルの高い情報だったはずなんだけど。私もアリサも知らされてなかったし。あ、もしかしてオラクルでお披露目されたから?」

「いえ、その……アイリスさんになら話しても怒られない、ですよねっ?マリエッタ、実はオンブルに乗った事があってぇ……」


 少し躊躇いがちにマリエッタが言うには、彼女が故郷の星からオラクルへ移送される際に当時試験配備されていた試作機で送迎されたのだそうだ。

 マリエッタの言葉が事実なら統括局は2年ほど前から人の移動に超光速航行を使い始めていたことになる。おそらくオンブルが正式に配備されたことで、今後は徐々にそんなケースも増えるのだろう。


 ここでは失敗作とされたリュミエールを元に生み出されたオンブルの普及は私達にとって大きな技術革新になる。

 なら他の失敗作も……そんなことを想いながら、私は失われた技術が展示された品々の見学に臨んだのだけど。



『こちらが惑星破壊爆弾になります。掘削機構付き弾頭で射出後は地下へ潜行。約24時間で地核を破壊し、星ごと壊滅させる事が可能です』

「これ何を攻撃するつもりなのよ?戦争で使うにしても、こんなので攻撃したら占領もできないじゃない……」

『はい。星ごと放浪機を確実に破壊するためのスターデストロイヤーです』

「いや、それ試合に勝って勝負に負けたってやつじゃない……?」



『ではこちらの光子魚雷(フォトン・トルピード)はいかがですか?フォトンエネルギーを用いて直径300mの範囲を光子化し消滅させることができます』

「いや、私達戦争してる訳じゃないから……」

『いまなら手動発射可能な魚雷キャリアも付いていますよ』

「お買い得品みたいな紹介の仕方、やめてね?あとトワもマリエッタも欲しそうな顔しないの!」



『こちらが救命銃フレンドリファイヤです。回復薬を充填したシリンジを射出して遠距離から味方を救護することが可能な銃です。ただし射出力が強すぎてシリンジで殺傷してしまう可能性があるので使用時には注意してください』

「いや、名前の時点でダメなの判ってたでしょ?味方を撃つ気満々じゃない!」

『命名者はDr.ランドルフです』

「誰よ、そのランドルフって」

「アイリス。それ娯楽がないと生きていけない人」



『こちらが歩兵用外骨格ユニット、エクソギアです。歩兵の活動支援を目的としたサポートマシンで放浪機の侵食を防ぐため人工知性体が搭載されていません』

「と言うことはフルマニュアルで動かせと?無理じゃない?」

『高度な情報処理能力があれば利用可能です。ただしご覧の通り横幅3.2m、重量が300Kgなので、可搬性は低いです』

「いや、低いとか高いとかいう以前に持ち運べないよね?」



『こちらが永久保存食です。永久に劣化しないという触れ込みの完全栄養食です。既に貴船にも1箱搭載しておきました。なお環境変化に極めて強いため、体内でも消化できない可能性があります』

「ダイエット食品か何かなの……?っていうか、どうしてもう食べてるのよ、トワ!吐き出しなさい!」

「……もう飲み込んだ。味しなかった」

「明日、大変な事になっても知らないよ……」



 一事が万事のこんな調子だった。

 私が期待していた「失われた技術がもたらす未来」とは無縁すぎるのは、さすが「徴発されなかった品」といったところだろうか。

 他にも飛び続ける誘導ナイフだとか、撃つと射手が負傷する銃とか、使い捨て衛星兵器とか、本当に訳のわからない物ばかりがストックされていた。


 いや、G17が言うように実戦配備できるものはきっと全部放浪機との戦いに使われたのだろう。残されたのは余剰在庫や失敗作で、ここはそういうガラクタ置き場の拠点だったということか。

 私が黄昏れた気分でそんな事を考えていると、マリエッタが声を掛けてきた。


「あのっ、アイリスさん!わたし、欲しいものがあってっ!」

「惑星破壊爆弾はダメよ?」

「違いますっ!エクソギア、エクソギアが欲しいんですっ!」


 マリエッタはそう言うと陳列されていたエクソギアの前に走っていった。小柄なマリエッタの背後にそびえ立つエクソギアは……正直、サイズだけ見てもマリエッタの手に負える代物ではなさそうだけど。


「これ、重力制御で浮遊できる仕様になってるんですっ!だから、私でも持ち運べますっ!」

「いや、持ち運ぶっていうより、持たれて運ばれる感じだよね?」


 私は改めてエクソギアを見上げた。

 胸部から上だけの機械の巨人といった佇まいで、重機にしか見えない巨大な両腕が付いている。頭部は制御用知性体が入っていないという触れ込みが納得できる小ささで、正直運用方法が思いつかない。

 ……まぁ、だからこそここに残されているんだろうけど。


「さっき扉のコンソールパネルを弄っていて気付いたんですけど、いくつかの端子は現在の技術と互換性あるんですっ。だから、頭部モジュールを今のドローンと交換できれば、きっとボイスコマンドで操作できますっ!」

「でも、持ち運びは?こんなの常時連れ歩けないでしょ?」

「そこで、リュミエールですっ!」


 マリエッタがそこで何故かリュミエールの名前を出してきた。確かリュミエールは単座で、貨物スペースも大きくはない。

 到底エクソギアを搭載できる場所なんて……と思った私はマリエッタが何を言おうとしているのか、気が付いた。


「……グラビティスリング?」

「はいっ!未使用時はリュミエールに接続しておいて、使う時はグラビティスリングで呼び寄せます!」

「なるほど……惑星上でのみ使う前提って事か。なら1200Kmって言う距離も……」

「衛星軌道から地上までなら余裕で届きます!」


 私はマリエッタの発想に驚き、納得した。なるほど、その組み合わせなら無理なくエクソギアを運用出来るかもしれない。でもG17はそんな方法を検討しなかったのだろうか?


「G17、今の話聞いてた?」

『はい』

「実現可能だと思う?」

『想定外の運用方法ですが、理論的には可能です』

「わっ、想定どおりですっ!」

『エンジニア・マリエッタ。貴女に敬意を表します』


 最初は敵性存在だなんだと言ってた割には、以外にあっさりとマリエッタの事を認めたよね、G17。

 まぁ彼女(・・)もここの品は役立たずの失敗作だと言われていた事に忸怩たる想いがあったんだろう。それらに実用的な使途を見出して見せたマリエッタに敬意を感じるのは……理解できなくもない。


「アイリス、じゃあ私は完全栄養食とフレンドリーファイヤが欲しい」

「一応、何に使うか聞いていい?」

「完全栄養食は食べる。フレンドリーファイヤはアリサが怪我をしたときに撃つ」

「トワ様、怪我をしているときに撃たれると……さすがの私も命の危険が……」

「うん、却下ね」


 トワに組み合わせセンスを期待したのは間違いだったようだ。いや、トワはそんなとぼけたところも可愛いんだけどね。


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