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第408話 舞 口移し

 舞はたまに公介に口移しをおねだりする。


 きっかけは公介と一緒に観たある映画だ。


 弱っている主人公に、ヒロインが口移しで食事を与えるシーン。


 舞と公介は、ふざけてそのシーンを再現した。


 舞にはその行為がまるで、神聖な儀式のように感じた。


 それ以来、舞はこの行為を気に入って、たまに公介に口移しをしてもらっている。




 家。


 舞は公介のためにりんごの皮をむいていた。


 公介に口移しをしてもらうためだ。


「はい、どうぞ〜、公介」


「わ〜い」


 公介が美味しそうにりんごを食べる。


 舞はそわそわしている。


「このりんご美味いな〜」


「ええ、そうね。あ、あの、公介」


「なんだ?」


「あの、その……」


 さすがに口移しをおねだりする時は恥ずかしい。


「どうした?」


「りんごを、食べさせてほしいんだけど……」


「いいぞ、はい、あ〜ん」


「そ、そうじゃなくて」


「そうじゃない? あ、舞、ひょっとして……」


「……」


「舞、ちゃんと自分の口で言いなさい」


「は、はい……このりんごを、く、口移しで、食べさせてください!」


「舞は変態だな〜」


「うう……」


「はは、もちろんオーケーだよ。ちょっと待っててくれ」


「ありがとうございます!」


 公介がりんごを口に入れて、咀嚼する。


 口移しで、公介が舞にりんごを食べさせる。


 舞は、これは神聖な儀式なのだ、と想像する。


 そうすると、不思議と美味しさが増したように感じられる。


「もぐもぐ……お、美味しい! 美味しすぎるわ!」


「はは、それはよかった」


 公介が咀嚼したりんごを食べる舞は、とても幸せそうだった……。

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