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10/16

case8・ひとりかくれんぼ

バレンタインにひとりかくれんぼするぞ


1:兄 2020/2/10 14:30:51 ID:kKbWNQuK8i

今度、ひとりかくれんぼやるからスレ立てした!


2:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/10 14:36:11 ID:LjF1UlEhbV

マジか


3:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/10 14:39:17 ID:pwcI7C0sqO

久々にひとりかくれんぼやる奴みたわ


4:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/10 14:42:20 ID:LwAdXDuPe2

ん?兄ってコテハンなんか見覚えが……。


5:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/10 14:47:44 ID:4BfrwETyyP

去年の秋ごろに妹がこっくりさんに取り憑かれた奴じゃん?


6:兄 2020/2/10 14:52:30  ID:kKbWNQuK8i

あ、それ俺!今回は大学のサークル活動の一環でひとりかくれんぼやろうと思ったんだわ


7:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/10 14:58:00 ID:UOQf2TMr4i

どんなサークルだよ……


8:兄 2020/2/10 15:01:15  ID:kKbWNQuK8i

オカルト研究会


9:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/10 15:04:27 ID:oFxHRJkwkk

さもありなんだわ


10:兄 2020/2/10 15:08:20  ID:kKbWNQuK8i

今週の土日に親が旅行行くからその日にやる予定


11:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/10 15:11:43 ID:B6vwF7t6Wg

妹は?


12:兄 2020/2/10 15:14:44  ID:kKbWNQuK8i

妹は家にいるけど、一回寝たら起きないタイプだし大丈夫だと思う


13:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/10 15:19:42 ID:mUHg7PsaDd

ほんとかぁ?


14:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/10 15:25:40 ID:16uufXYTO6

まぁ言うてなんも起きないだろ


15:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/10 15:29:13 ID:BmxnHhh9iZ

当日の実況楽しみにしてるわ


16:兄 2020/2/10 15:32:16 ID:h72IatyYJq

おう、楽しみにしてな!


その週の週末


44:兄 2020/2/14 23:58:48 ID:ZnWpRgmICp

ぬいぐるみの名前は『モモ』に決定


45:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/15 0:02:45 ID:y9FwyhC6rN

待ってました!


46:兄 2020/2/15 0:08:10  ID:FpoTCaKsJz

準備もできたし、はじめるぞ


47:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/15 0:24:06 ID:FpoTCaKsJz

やばいやばいやばい!

これはマジだ、ネタじゃない!!

モモが動いてる、俺を探してるどうしようどうしよう


48:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/15 0:27:57 ID:ERi8I0HW8N

兄大丈夫か?


49:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/15 0:20:15 ID:Z3vScE8GUG

さすがにネタだろ?


40:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/15 0:24:06 ID:LYy6ZCDKEx

笑えねぇ冗談やめろよ


41:兄 2020/2/15 0:27:57 ID:FpoTCaKsJz

あ


42:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/15 0:33:51 ID:uPayOJfPBc

ん?


43:兄 2020/2/15 0:39:16  ID:FpoTCaKsJz

かくれんぼしよう

モモがおにね


44:兄 2020/2/15 0:43:18  ID:FpoTCaKsJz

りくくんどこかな

どこにいるの


45:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/15 0:48:22 ID:tL8X30aDic

お前悪ふざけもいい加減にしろよ


46:兄 2020/2/15 0:53:07  ID:FpoTCaKsJz

モモのじゃましないで











 世間がバレンタインだなんだと浮足立つそんな季節。後数日でバレンタイン本番が迫った日曜日、私は『Fate』にやってきている。去年のこっくりさん騒動の後から、私はこうして度々この店でキョウさんとお茶会をさせてもらっている。キョウさん曰く、一度怪異に魅入られた者は怪異を惹きつけやすいから、定期的に浄化する必要があるんだって。この美味しいハーブティーも浄化効果があるものだって聞いた。


「最近変わった事はない?」


「皆バレンタインに誰にチョコをあげるって話でもちきりで、オカルト的な話は何も……」


「バレンタイン……もうそんな季節なんだね」


「歌舞伎町はあまりそういうイベントは関係ないの?」


「そうねぇ……キャバクラとかだとバレンタインにかこつけてキャンペーンをするだろうし、ホストクラブもここぞとばかりに貢がせるだろうし……。歌舞伎町がというより、私が店に引きこもってるから頓着しないって感じかな」


 キョウさんはさらりと綺麗な顔に似合わない際どいことを言い放つ。


「キョウさん、自分で言うのもなんだけど、幼気な女子中学生にあまりそう言うこと言わない方がいいんじゃない?」


「はは、確かにそうだね。今のは聞かなかったことにしてちょうだい?」


「はーい、私は何も聞いてないでーす」


「ふふ、いい子だね。そういえばヒナちゃんは、誰かにチョコをあげたりするの?」


 そう言ってキョウさんは微笑まし気に私を見つめる。頬が熱くなるのを自覚するけど、ごまかす様にハーブティーに口をつけた。あなたに本命チョコを渡す予定です、なんて言えるわけがないよね。


「一応例年通り、お兄ちゃんに渡す予定だよ」


「あら素晴らしい兄妹愛じゃない」


「そんなんじゃないよ。渡さないとお兄ちゃん拗ねるんだもん」


「ふふ、そうなの?」


 何が面白いのか、キョウさんはくすくすと笑い声を上げる。

毎年毎年チョコが貰えないだのなんだのって言ってるけど、それはお兄ちゃんがオカルト研究部とかに入って怪しい事ばっかりしてるからだと思うんだよね。あ……そういえばお兄ちゃんがこの間言ってたことがあったような。


「ねぇキョウさん。ひとりかくれんぼって知ってる?」


 そう、私が口にした瞬間、キョウさんの纏う空気ががらりと変わった。さっきまでの優しくて暖かいまなざしは消え、鋭く射貫くような視線で私を突き刺す。ああ、これは関わってはいけないものだと本能的に察した。


「やるつもり?」


「う、ううん。お兄ちゃんが最近電話でその話をしてるのが聞こえて……」


「アレには関わってはダメよ、いいね?」


「こっくりさんでもう懲りたよ。……でも」


「でも?」


「お兄ちゃんは私の言うことなんて聞かないと思う。お兄ちゃん、たまに周り見えなくなるから……」


「やれやれ……好奇心は猫を殺すというけれど……。前に渡したアメジスト、今持っている?」


「うん、持ってるよ」


 困ったものだと溜息を吐き出したキョウさんに、いつも持ち歩いているアメジストを差し出した。キョウさんはアメジストが乗った私の掌に顔を寄せる。びくりと身体を跳ねさせる私を咎めるように、グッと手を引かれた。内心パニックを起こす私なんて構わず、キョウさんは何かを囁いた後アメジストに口付ける。


「これでよし……この石は怪異から身を隠してくれる、お守りみたいなものね。でも、何かあったら私に連絡して」


「ひゃ……はい」


「今日はもう暗くなるからお帰り」


 そっとキョウさんに背中を押され、私は『Fate』を後にした。






 陽菜とのお茶会から数日たった夜。閉店後の『Fate』でキョウはハーブティーを飲んでゆっくりとしていた。

この店はキョウにとってパワースポットとなるように建てられているため、毎晩こうして力を蓄えている。

ぼうっと吊るされたドライハーブを見て、そろそろ新しいものを仕入れないと、と考えを巡らせるキョウの耳に、ぴょこんと間抜けな電子音がスマホから聞こえた。

キョウは手元に置かれたスマホに視線を落とす。画面上のポップアップには、『キョウさん、お願い助けて!』とだけ書かれている。可愛らしいひよこのイラストのアイコンは陽菜からだと告げた。


「……自分や妹の命より、好奇心を優先するなんて……」


愚かにもほどがある。


 苛立ちを隠す事もせずキョウは乱雑な仕草で立ち上がって、髪を掻き混ぜた。











「お兄ちゃん、私先に寝るね。あんまり夜更かししたらだめだよ?」


「はいはい。お前は母さんかっての」


「いくらパパとママが旅行でいないからって自堕落に過ごしたらいけないんだぁ」


「自堕落とか難しい言葉どこで覚えてくるのやら……兄ちゃんはやる事やったら寝るから」


「わかった。おやすみ陸お兄ちゃん」


「腹出して寝るなよ~」


「寝ないよ!」


 けらけらと笑うお兄ちゃんをリビングに残して、私は布団に入った。暖かな布団にくるまると、一瞬で眠りに落ちる……。





ぽと……ぴちゃ……


 急に目が覚めた。寝起きでぼんやりとする脳に、絶えず物音が聞こえる。その音はまるで水を吸った重い布を床に落としているみたい。一定間隔で聞こえる音は家の中を歩き回ってる様子だ。お兄ちゃんが驚かそうとしてるのかな。まったく……。

そう思おうとしてるのに、背中の産毛が逆立ってぞわぞわとする感覚がする。枕元に置いたアメジストを手に、ベッドを降りて自室のドアをゆっくりと開いた。

開けたドアの隙間からむわっと澱んだ空気が流れこむ。冬の冷え切った空気のはずなのに、じっとりと熱をはらんでいる気がする上に、なんとも言えない異臭が溶け込んでいる。生々しい表現になってしまうけど、夏場に放置した生理用品のような臭い。


「……お兄ちゃん、まさか……」


 ぎゅっとアメジストを握りしめ、真っ暗な廊下を壁に手をついてゆっくりと進む。リビングから明かりが漏れてるのが見えた。テレビの音も聞こえる。リビングを覗くとつけっぱなしのテレビとお兄ちゃんのタブレットが床に落ちていた。でも、お兄ちゃんの姿が見えない。不安な気持ちを抑え込んで、タブレットを覗き込む。そこには『ひとりかくれんぼ』を始めた時からリアルタイムで書き込みをしている形跡があった。これ実況ってやつだよね……。本当何やってるのお兄ちゃん……。きょろきょろとリビングの中を見るけどお兄ちゃんの姿はやっぱり見つからない。リビングの奥にある客間に続く引き戸がうっすらと開いてるのが見えた。おかしいな、あそこいつもは閉まってるはずなのに。

そっと足音を忍ばせて客間に向かう。引き戸を開いた先にはお客様用のベッドが置かれているだけで、異常はない。ほっとしたのも束の間、視界の端に映るクローゼットに違和感を覚えた。恐る恐るそちらに目線を移すと開いたドアの隙間から腕が投げ出されていた。


「ひっ……」


 叫びそうになるの口を左手で抑えて、クローゼットのドアを静かに開ける。ドアの先にはクローゼットの中で倒れるお兄ちゃんの姿があった。一瞬死んでるのかと思ったけど、胸が上下してて気絶してるとだけだとわかる。ほっと胸を撫で下ろすけど、なんでこんなところに?まるで隠れてるみたいに……。ううん、隠れてるんだ。「ひとりかくれんぼ」の怪異から。じゃあこのままここで隠れててもらった方がいいよね。私も、隠れよう。隠れてから、キョウさんに助けを求めないと……。

こっそり怪異に見つからないように廊下に出る。


ぴしゃ……


 暗がりの先から、水気を帯びた物音が聞こえた。廊下に置かれた本棚に身を隠して、そっと先を伺う。どんどん近づく物音と気配に息を殺すけど、目線を外すことができない。ぬっと暗闇から姿を見せたのは二足歩行をするウサギのぬいぐるみだった。ピンクの布で出来た体は滴る程の水に濡れて可愛らしいはずの顔は禍々しく、ぽってりとしたお腹には切り裂かれた跡を真っ赤な糸で縫われている。まるでホラー漫画からそのまま出てきたような姿に、身体が震えてしまう。これが、怪異。ぬいぐるみは隠れている人を探すように暗がりの先に消えていった。


怖い怖い怖い。


叫びだしそうになるのを飲み込んで、がちがちと鳴る歯を食いしばって、駆けだしたいのを抑えてなんとか自室に戻る。お兄ちゃんの様にクローゼットに身を隠して、掌に食い込む位強く強くアメジスト握りしめた。お願い、助けて。助けてよキョウさん!震える指先で、何とかメッセージをキョウさんに送った。






 どれくらいの間クローゼットの中で息を潜めていただろう。何度も何度もクローゼットの前をウサギが通っていく特徴的な水音が聞こえて、そのたびに死を覚悟した。極度の緊張状態が続いて、もう意識がぼんやりして……。


……ペタ……ペタ……


 聞きなれない物音に一気に意識が戻る。この物音はなに?なんでまっすぐこのクローゼットに向かってくるの?徐々に近づいてくる物音と気配から逃げるように私はクローゼットの奥へ奥へと身を隠す。それでも、気配は止まることなくクローゼットにたどり着き、取っ手に手を掛けた……。ゆっくりと開かれるドアに、たまらず私は強く目を閉じ頭をかばう。


「ヒナちゃん……大丈夫?なんともない?」


 優しい声が降り注ぎ、暖かな手が私の頭を撫でた。その声は、私が今一番待ち望んでいたもので。呆然と顔を上げた視界には、あの優しい魔女さんがホッとした顔を浮かべていた。


「っ……」


「しぃー……声を出したらダメよ。あいつに気付かれてちゃう」


 名前を呼ぼうとする私の唇に、キョウさんの人差し指が当てられる。コクコクと頷く私の頭を撫でて、キョウさんはコップを差し出した。飲めということなんだろうけど、透明な液体はどう見ても水にしか見えない。なんでこのタイミングで水を飲まそうとしてるんだろう?


「これは塩水でね。ひとりかくれんぼの時はこれを口に含んで家の中を移動しないといけないの。後、この怪異を終わらせるのに必要なものでもあるのよ」


 キョウさんは説明しながら飲むように促してくる。コップの中の塩水を口に含んだ。飲み込まないように気を付けないと。私が塩水を口に含んだのを確認したキョウさんは、細くて骨ばった手を差し出す。手を繋げって事、だよね?そっと右手をキョウさんの左手に重ねた。ぎゅっと暖かな熱に包まれて、ようやく肩から力が抜ける。

キョウさんに手を引かれて、廊下を進む。リビングにあのぬいぐるみがいるのを感じるってキョウさんは言ってる。隣接した客間にはお兄ちゃんがいる……見つかってないといいけど……。廊下からそっとリビングを伺う。テレビの光源に照らされていた光景に、口に含んだ塩水を飲み込みそうになった。いつの間に移動したのか、お兄ちゃんはリビングのラグの上に四肢を投げ出していて、そのそばにはあの禍々しいウサギのぬいぐるみが包丁を片手に立っていた。ウサギはゆっくりと包丁を振り上げ、お兄ちゃんに狙いを定める。


お願い、やめて!!


 飛び出そうとする私の手をキョウさんは強く掴んだ。痛いぐらいに掴まれた手の感触に我に返る。呆然とキョウさんを見上げると、何時もの様に優しく微笑んだままぱちんとウィンクされて、繋いでいた手を離される。ふわりとハーブの香りを残して、キョウさんはリビングに躍り出た。

侵入者にウサギは振り向こうとするけれど、その横っ面にキョウさんはいつの間にか手に持ったパワーストーンのネックレスを叩き込む。暗闇の中テレビに照らされて、キラキラと輝く乳白色の石が月みたいで綺麗で、見惚れてしまう。

そんな私を現実に戻したのは、ウサギが発した絶叫だった。キョウさんに殴られたウサギは床に数回バウンドして、べちゃりと水音を響かせ壁に激突する。痛みなんて感じていないのか、ウサギはすぐに立ち上がりまたお兄ちゃんに向かっていく。けれど、キョウさんは容赦せず長いネックレスをウサギの体に巻き付けて拘束した。


「ヒナちゃん今よ!怪異を終わらせましょう!」


 そうは言ってもどうやって!?


「このウサギの名前はわかる?名前を呼んで負けだと宣言するの。本当は君のお兄さんがすべきなんだけれど……今は血縁者の貴女じゃないとできない」


 ウサギの名前……さっき、タブレットで実況しているのを見た時に『モモ』って名前があったけどそれ、だよね。ウサギはピンク色だし。

真っ直ぐにキョウさんを見つめて一つ頷いた。キョウさんは全て汲み取ってくれて、にこりと綺麗な笑顔で私を見る。


「ゆっくりこっちに来て。そう、いい子。怖いと思うけれど、私がいるから大丈夫。このコップに入った塩水を掛けて、その後口に含んだ塩水も吹きかけるの」


 指示を出された通りに塩水を順にかけていく。じゅっと何かが焼ける音と共に、生臭い匂いがぬいぐるみから発せられ、また叫び声が聞こえる。怯える私に、キョウさんは繰り返し大丈夫だと呪文の様に唱える。不思議なことに、キョウさんにそう言われると本当に大丈夫な気がしてくるんだ。


「最後に『ウサギの名前の負け』と言った後に『私の勝ち』と三回唱えて」


「モモの負け。私の勝ち、私の勝ち、私の勝ち……!!」


 うぞうぞと蠢いていたウサギはこの世の物とは思えない断末魔を上げて、電池が切れたみたいに動かなくなる。その瞬間、家を満たしていた澱んだ空気がパッと消えた。ああ、終わったんだ……。


「うん、無事にひとりかくれんぼの儀式は終わったようだね。もう、これで大丈夫だよ」


 そう言っていつも通り笑うキョウさんは、両手を広げる。まるで、おいでと言うように頷くキョウさんの薄い胸に飛び込んだ。我慢していた涙が後から後から流れ落ちてくる。えぐえぐと泣きじゃくる私を抱きしめて、キョウさんは優しく頭を撫でてくれる。


「怖かった、怖かったよぉ……」


「うんうん、よく頑張ったね。えらいわ」


 優しく優しく私を包み込むキョウさんは魔女って言うかマリア様みたい。キョウさんは私が落ち着くまでずっと抱きしめてくれた。




「落ち着いたかしら?」


「うん……ありがとうキョウさん」


「いいえ。私が来るまで良く持ちこたえてくれたね」


「えへへ……」


 頬を包まれ、熱を帯びた目元にそっと触れられる。ふと、気付いたら窓に背を向けるキョウさん越しに、カーテンの向こうがうっすらと明るくなっていることに気付いた。


「もう、朝なんだ……」


「長い夜だったね」


「……あ、キョウさんちょっと待って!」


 日付がかわっていることに気付いて、私はあわてて冷蔵庫から小さな箱を取り出した。そして、それをキョウさんに手渡す。珍しくキョウさんはきょとんとした表情を浮かべていた。うん、そういう表情はとてもかわいい。じゃなくて!


「一日遅れたけど、バレンタインだったから……キョウさんこのブランドのものが好きって前言ってたよね?」


 ぱちぱちと瞬きした後、キョウさんはフッと口角を上げて箱を開けた。そしてチョコを一粒摘まんで口元に運ぶ。もぐもぐと咀嚼して、キョウさんはくしゃりと破顔する。


「とても美味しいよ。ありがとう」


 初めて出会ったあの日の様に、キョウさんは私の手の甲にキスを落とした。顔に一気に熱が集まる。色々な感情が渦巻いて上手く言葉に出来ない私の耳に、お兄ちゃんの声が聞こえた。ばっと床に転がるお兄ちゃんを見ると、意識を取り戻したのかぼんやりと天井を見つめている。


「お兄ちゃんも大丈夫みたい。ありがとうキョウさん……キョウさん?」


 さっきまで目の前にいたはずのキョウさんの姿がどこにもない。きょろきょろと辺りを見てもあの細い体は見当たらず……夢でも見ていたのかなと思ってしまう。でも、さっきまでキョウさんが立っていたところには、チョコの箱についていたリボンが落ちていた……。












57:兄 2020/2/15 10:59:28 ID:FpoTCaKsJz

お騒がせしました……


58:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/15 11:03:04 ID:1VaQhXwyuA

お、無事だったか


59:兄 2020/2/15 11:06:33  ID:FpoTCaKsJz

なんか途中で気絶してたらしくて、妹に起こされたわ


60:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/15 11:12:08 ID:rb69WRyKqp

あの書き込みは何だったんだ?


61:兄 2020/2/15 11:15:56  ID:FpoTCaKsJz

それが心当たりないんだよな……


62:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/15 11:20:45 ID:xdybkbEtDB

自演か?って思ったけどそうでもなさそうだったしな


63:ほんまにあった怖い名無し 2020/2/15 11:24:55 ID:9TLCQtliad

妹は無事か?


64:兄 2020/2/15 11:29:49  ID:FpoTCaKsJz

無事というかなんも気づいてなさそうだった


65:kyo 2020/2/15 11:33:18 ID:N4CboOEoYp

これに懲りたらもうこんなことしないように

次はどうなっても知らないから




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