覇道②:第一部 エピローグ
レイチェルとアイリスを連れて、我が家に向かう。
家の中庭では、アリサとリリィ、それにリムノーレが居た。
現在進行形でリリィのトレーニング中だ。
「おかえりーって、ちょいちょいちょい!」
こちらに気づいた瞬間、アリサの顔色が変わった。
「どうしてレイチェルさんとアイリスさんが一緒なの!?」
駆け寄ってくるアリサ。
「なんだ、知ってるのか?」
「当たり前でしょ! 女の冒険者なら誰もが憧れる最強の女性PTだよ!」
「へぇ、レイチェル達って本当に有名人なんだ?」
俺の言葉に、「まぁね」と笑顔で頷くレイチェル。
「でも、私達と同じくらいアリサだって有名だよ。何か二つ名があったよね?」
「たしか〈ゴッドアロー〉だったと思います」
「そう、それそれ」
アリサが「嘘ぉ!」と間抜けな声で叫ぶ。
「私のこと、ご存知なんですか!?」
「もちろん。といっても名前だけなんだけどね。私達は王都で活動することが少ないから」
「光栄です! あの、記念に握手してください!」
アリサがレイチェルとアイリスに握手を申し込む。
「別にいいけど」
「私達でよければ……!」
2人は快諾し、アリサに右手を差し出す。
アリサは両手で包み込むようにして、その手を握った。
「変なアリサ」
「全くだ。いつもとは別人である」
リリィとリムノーレが呆れ気味に見ている。
「って、どうしてここに王女様がいるの!?」
「それに喋るスライムも。ジークさんの仲間って、意外な方ばかりですね」
レイチェルとアイリスが驚いている。
「今は学校に行っているから留守だが、仲間はもう2人居るぜ。ミイナって狐の獣人と、ローナって狼の獣人だ」
「その2人の名前は存じ上げませんね……どういった方ですか?」
「違法奴隷業者の親玉が性奴隷にしていた奴等さ。洗脳を解いたのだが、記憶がなかったからウチで一緒に暮らしている。どっちも6歳かそこらの幼女だぞ」
「それは……」
アイリスが言葉を失う。
「そういえば、しばらく前から違法奴隷の話がパタッと消えたね。フリックのギルドが動いていたのは知ってたけど」
レイチェルが「合ってるよね?」とアイリスに尋ねる。
アイリスは「私もそう記憶しています」と頷いた。
「〈白銀の紺碧〉なら解散してるぞ。で、俺が違法奴隷業者の調査を引き継いだから、サクッと潰しておいたんだ」
「サクッとって……。簡単に言うなぁー!」
「本当に……ジークさんは流石ですね」
右に左にとゆらゆらする話を、アリサがまとめる。
「それで、レイチェルさんとアイリスさんはどうしてここに!? もしかして、今後はウチで一緒に生活するのですか!? だったら感激なんですが!」
「いや、2人は顔見せに来ただけだよ」
「顔見せ?」
「実はこの2人とギルドを立ち上げてな。この後、リムノーレ以外の4人にもギルドに入ってもらう予定だ。で、せっかく同じギルドなんだから、顔くらいは知っておかないとなってことで今に至る」
「なんでオラは除け者なんだ!」
「除け者じゃなくて、お前はスライムだからな」
「でも、人間に擬態化することだってできるぞ! それに、ジークが連れてきたお嬢ちゃん達よりも遥かに強い!」
レイチェルとアイリスがピクピクッと反応する。
「私達より強いだって?」
「これでも腕には覚えがあるのですが」
「なんだったら腕試しするかい? 同時にかかってきてもいいぞ」
「言うじゃないの」
レイチェルが剣を抜く。
アイリスも杖を構えた。
このままだと本当に戦いが始まってしまう。
「そこまでにしろ。今は戯れる時間じゃない」
俺は間に割って入った。
「でも、スライムにあんなこと言われるとさぁ!」
「奴はただのスライムじゃない。それに、奴の言い分は間違っていない」
「「!?」」
「リムノーレはこの中だと俺の次に強い。その強さは、大魔王オンボールにこそ敵わないものの、五十魔将程度なら単独で皆殺しにできるほどだ」
「ほ、本当ですか!?」
「嘘など言うものか。機会があれば腕試しをするといい。だが、今はその時ではない」
俺は大きなため息を吐く。
そうやって少し間を空けてから、改めて言った。
「そんなわけで、今後はギルド〈覇道〉として活動する。といっても、他のギルドみたいな規則はない。基本的にはこれまでと同じだ」
「レイチェルさんとアイリスさんと同じギルドに入れるなんて……!」
「そんなに尊敬されるほどの実力じゃないよ、私達」
「そうですよ。大魔王の討伐では何もできなかったですし」
「そんなことありませんよ! いやぁ、嬉しいなぁ! ジーク、ナイス!」
アリサは誰よりも嬉しそうだ。
「この後はミイナとローナが帰ってくるまで自由行動だ。で、2人が帰ってきたらギルド管理協会に行こう」
「その後は!? その後はどうするの!? レイチェルさん達は家に泊まる!? 泊まるよね!? 部屋なら腐る程ありますよ! 泊まりましょう!」
大興奮のアリサ。
レイチェルとアイリスは苦笑いで頷いた。
「なら一泊だけお世話になろうかな」
「ですね。アリサさん、よろしくお願いします」
アリサが「ひゃっふうううう!」とその場でジャンプする。
これほど喜ぶ姿を見たのは初めてだ。
「どうせなら一泊と言わず、二泊三泊といかがですか!?」
「そうしたいの山々だけど、実は他にも案件を抱えているのよね。だから、明日の朝にはこの街を発つつもりなの」
「ギルドの立ち上げを提案しておいてなんですが、皆様に合流するのはしばらく先のことになりそうです」
アイリスが「申し訳ございません」と俺に向かって頭を下げる。
「気にしないでいいさ。俺達のギルドでは別行動が認められている。落ち着いて暇な時にでも、此処へ来てくれればいい。どうやらアリサは、2人に会うと人格が変わってしまうようだからな」
その場に居る皆が盛大に笑う。
そして、ミイナとローナが帰宅すると、ギルド管理協会に向かった。
滞りなく手続きを終えて、アリサ達がギルドメンバーになるのであった。
◇
翌朝。
朝食が済ましてすぐ、レイチェル達は家を発つと言い出した。
俺とアリサは玄関まで行き、彼女達を見送る。
「アリサ、ありがとうね、泊めてくれて」
「ありがとうございます、アリサさん。すごく居心地の良い家でした」
「またいつでも遊びに来て下さい! というか、よければ私も連れていって下さい!」
「おいおい、アリサが抜けたら誰がリリィに弓を教えるんだよ」
「それはジーク、貴方が担当すればいいの! 私はレイチェルさん達と一緒に行きたい行きたい行きたぁい!」
「気持ちは嬉しいけど、合流するまではアイリスと2人で頑張るわ」
「ギルドとは無関係の案件ですからね」
「うぅぅぅ!」
「そう悲しまないの。ピンチになったら救援要請するから」
レイチェルがアリサを抱きしめて頭を撫でる。
アリサは「絶対ですよ」と唇を尖らせた。拗ねている。
「ジーク、本当にありがとうね。大魔王の件やギルド設立の件など、感謝の気持ちでいっぱいよ」
「いいさ。俺もたくさん楽しませてもらったから」
視線をアイリスに向けて「だよな」とニヤり。
アイリスは顔を真っ赤にして、「知りません」と頬を膨らませる。
「まさかあのアイリスが……ねぇ!」
ニヤニヤしながらアイリスの肩を小突くレイチェル。
その反応を見ていて、アリサが「あー!」と叫ぶ。
「も、もしかして! アイリスさん! ジークと!?」
「えっと、それは、その……」
「まぁな。最高級の宿屋で骨の髄まで味わわせてもらったよ」
「ちょっとジークさん……! なんで言うんですかぁ……!」
真っ赤に染まったアイリスの顔から湯気が立ち上がる。
レイチェルが「ぎゃははははは」と腹を抱えて笑った。
「私だけでなくアイリスさんまで! ジークの変態!」
「「えっ」」
アリサの言葉に驚くレイチェルとアイリス。
「すると、アリサさんも、ジークさんと……?」
「当然だ。俺達は一緒に寝ているからな」
「言わんでいい!」と突っ込むアリサ。
「う、羨ましい……!」
「やれやれ、手を出されていないのは私だけかぁ」
レイチェルが上目遣いで俺を見る。
「私はお眼鏡に適わないのかな? ジーク」
「そんなことないさ。なんなら今から」
「「駄目ぇー!」」
アリサとアイリスが同時に叫んだ。
その様を見て、俺とレイチェルがゲラゲラと笑う。
ひとしきり笑った後、レイチェルが話を締めにかかる。
「おっとっと、楽しくてついお喋りしちゃった」
「馬車を待たせるのもなんですし、そろそろ出発しないとですね」
「だねー! それじゃ、ジーク、アリサ、またね!」
「短い間ですがお世話になりました。行ってきます」
「はい! 行ってらっしゃいです! 頑張って下さい!」
「またな」
レイチェルとアイリスは家を出て、すぐ傍に待機していた馬車に乗り込む。
客車の窓を開けると、2人は俺達に手を振ってきた。
それに俺達も応える。
「それでは出発します!」
馬車がゆっくりと進み出す。
視界から2人が離れていき、そして、消えた。
「さて、今日は何をしようかな」
「リリィの教育当番はリムノーレだし、私も暇をしているよ」
「じゃあ、久しぶりにデートでもするか」
「本当に!? やったー!」
アリサは自分の両腕を、俺の右腕に絡めてくる。
「アイリスさんのことは尊敬しているけど、ジークは渡さないよ!」
「俺は誰の物でもないけどな」
「いつか私の物にしてみせるから!」
「ふっ、頑張ってくれ」
俺達は家を出て、人通りの多い商店街に向かうのだった。
これにて第一部終了です!
続きは人気があれば書こうと思います!
「ここまでお疲れ様!」
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執筆の意欲があがります!




