大魔王軍の襲来⑦
宿屋の部屋に戻ってきたら、後はシャワーを浴びて寝るだけだ。
俺達が泊まるのは、〈カサンドラ〉の中で最も高い宿屋。
そしてその中でも最高級のスイートルームだ。
宿屋は4階建てで、4階はフロア全体が俺達の部屋になっている。
当然ながら浴室も広かった。
この世界では珍しい浴槽が備え付けてある。
部屋の数も5つと多く、3人で過ごしても狭くない。
そんな部屋を俺とアイリスの2人で使うのだから、広すぎるくらいだ。
「流石はSSS級冒険者、立派な部屋を確保したものだ。普通、部屋にバーエリアなんてないぞ」
風呂上がりの俺は、バスローブに着替えてバーカウンターでくつろぐ。
極上の酒が並んでおり、その全てが飲み放題である。
だが、俺は酒を飲まない為、オマケ程度にあったイチゴミルクを嗜む。
ワイングラスに注がれると、イチゴミルクもカクテルにしか見えなかった。
「あっ、ジークさん」
アイリスがやってくる。
彼女は俺と違って寝間着を着ていた。
「ちょっと、バスローブじゃないですか……!」
俺の姿を見て顔を赤くするアイリス。
「照れることはないだろ。一緒に飲むか?」
「わ、私、お酒はあまり強くなくて……」
「心配ない、イチゴミルクだ」
「えっ」
「イチゴミルクだ」
「本当ですか……?」
「飲んでみろ」
「分かりました」
俺は目の前に並んである空のグラスを一つとり、イチゴミルクを注ぐ。
アイリスは俺の隣に腰を下ろし、それをチビチビと舐めるように飲んだ。
「本当……! イチゴミルクですね」
「だろ? 俺は酒を飲まないからな」
しばらく無言でイチゴミルクを味わう俺達。
「レイチェルが大変な状況の時に、くつろいでいて大丈夫なのでしょうか」
「明日中にオンボールを倒すから問題ないさ」
「でも、デビルズタウンまでは結構な距離ですよ。今は馬車も出ていませんし、徒歩で向かうには時間が……」
「走れば大丈夫だろう」
「私、足が遅いので不安です。一応、総合支援を名乗っているだけあって支援魔法や支援スキルは使えるので、馬と同等の速度で移動することはできますが……」
「馬と同じ速度とは大したものだな。それなら問題ないさ」
「ですが……」
「あんまり考え込まないほうがいいぜ。寝不足になったら笑えないぞ。俺は優しくないから、ついてこれなかったらおいていくぜ?」
「たしかに寝不足になったら駄目ですね」
アイリスが「あはは」と笑う。
「ジークさんって、本当に優しいですね。優しくないなんて言っていますけど、ジークさんより優しい人を見たことがありませんよ、私」
「そうか?」
「だって、今も私のことを気遣ってくれるじゃないですか」
「仲間だからな。よく分からないが、仲間は気遣うものだろう」
「ありがとうございます」
アイリスが俺の反対側へ顔を向けて、小さなあくびをする。
「そろそろ寝るか」
「そうですね」
アイリスが自分の部屋に向かう。
だから俺も自分の部屋に――とはならなかった。
「なぁアイリス」
「はい」
「一緒の部屋で寝るか?」
「――!」
「1人だと不安で眠れないんじゃないか?」
「……なんでもお見通しですね、ジークさんは」
「真の強者だからな」
必死に隠しているが、アイリスは震えていた。
寝ている時に魔物から襲われたらどうしよう、と不安だったのだ。
今の状況なら、大抵の人間が同じような不安を抱くだろう。
「一緒に寝てもらえると……助かります……」
「いいぜ、俺の部屋に行こう」
「はい」
俺はアイリスの肩に腕を回し、自分の部屋に向かった。
「流石は最高級スイート、ベッドも半端ないな」
部屋にはキングサイズのベッドがあった。
大の大人が2人どころか、3人で並んで寝ても問題ない大きさだ。
「これなら同じベッドでも離れて眠ることができますね」
アイリスが向かって左側のベッドサイドに向かう。
俺は右側のベッドサイドに向かい、そこからベッドに入った。
「俺とくっついて寝るのは嫌か?」
「そ、そんなことありません! ただ、ジークさんの睡眠を妨げてしまわないかと不安で……」
「問題ないさ。せっかく同じベッドなんだし、くっついて寝ようぜ」
「い、いいんですか?」
「アイリスが嫌じゃないならな」
「は、はい」
アイリスはベッドに入ると、ゆっくりこちらに近づいてくる。
身体と身体が触れあう距離まで接近したところで、アイリスが気づいた。
「あれ、ジークさん、服は……? バスローブを着ていたはずですが」
「脱いだよ」
「えっ、いつの間に」
「ベッドに入ってすぐ。今はベッドサイドに転がってるぜ」
「すると……今って、もしかして……?」
「ああ、全裸だよ。俺は全裸じゃないと眠れないんでな」
「えええええ……!」
アイリスの顔が真っ赤になる。
「わ、私、男の人と同じベッドで寝るのだけでも初めてなのに、それが全裸の人とだなんて、そんな、そんな」
「気にすることないさ」
「き、気にしますよ。恥ずかしくてますます眠れないですよ」
「ふむ……」
たしかにこのままだと、アイリスは眠れそうにない。
「ならもっと恥ずかしくして、俺の全裸程度じゃ何も感じなくさせてやろう」
「それって――ひゃうっ! わ、私の寝間着が」
「そんな物はもうない」
俺はアイリスの寝間着を別の次元に転移させた。
それによって、今のアイリスは下着だけを着用した半裸状態となる。
「下着は宿屋の物じゃないからな。消すと悪いと思って残しておいた」
「そ、そんな問題じゃないですよ、今、私、こんな、裸と変わらないですよ」
混乱して言葉にまとまりがないアイリス。
「大丈夫、これから本当の裸にしてやるからさ」
「えっ」
俺はアイリスの下着に手を掛ける。
脱がそうとしたところ、アイリスが手首を掴んで止めてきた。
「ちょ、ちょっと、ジ、ジークさん」
「もしかして、嫌だったかな?」
「い、いえ、その、私、作法を、知らない、ものですから」
「大丈夫、変なことをするわけじゃないから」
「既に変なことをしていますよ……」
アイリスが俺の手首から手を離す。
だから俺は、ゆっくりと彼女の下着を脱がし始めた。
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