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大魔王軍の襲来②

「クリアラス殿、それはどうしてじゃ? ワシの知る限り、ジーク殿よりも腕の立つ者はこの国におりますまい。手放しでお喜びいただけるならばまだしも、反対されるのは理解できませんな」


 国王が不快感を露わにする。


「それは過大評価ではございませんか?」


「「なんだと?」」」


 俺と国王の言葉が被った。


「この国には、我がラーカム公国をはじめとする多くの国々に名を轟かせた英雄が多くおられます。そう、優れた者であれば、私の耳にもその名が入っているはずなのです。特にジーク殿のような若者であれば尚更です」


 そう言うと、クリアラスは護衛のライトに顔を向ける。


「ライト、ジーク殿をご存知ですか?」


「いや、知らないな、こんな奴」


 クリアラスは「この通りです」と国王を見る。


「たしかにお話を伺った限りですと、この頃はめざましい功績を挙げている様子。しかし、SSS級冒険者ですら手こずる大魔王の軍勢に送り込むのは危険です。私は、彼のような若者を無駄死にさせたくありません。ですので反対です」


 俺よりも9999億9999万9990歳は年下の女から若者扱いだ。

 見た目が18歳のままだと、しばしばこのような舐めた扱いを受けてしまう。


「他国の人間に国を救ってもらおうと言うのに人を選ぶとは、なかなかふざけた公主様だな」


「ジ、ジーク殿、よさぬか」


 国王が慌てて止めに入る。

 それでも俺は止まらない。


「あんたの国がどうなろうと知ったことじゃないが、オンボールとは戦わせてもらう。悪いが、あんたが駄目と言おうが俺は行くぜ」


「若さ故の慢心ですね……」


 クリアラスはため息をつくと、呆れ顔で続けた。


「では、私の護衛であるライトと戦って実力を証明してください」


「ライトって、そこのガキか?」


「たしかにライトは15歳と貴方より若いでしょう。しかし、あまねく神々に鍛えられし彼の実力は本物です。冒険者ではないのでランクはありませんが、単独でSSS級のPTと互角以上の戦いを繰り広げられるでしょう」


「神々に育てられた……?」


「俺は〈天界〉の出身でね」


 ライトが口を開く。


「なるほど、この世界では天界に神々が住んでいるわけか」


 神や魔王の居場所は、世界によって異なる。

 この世界の神は、おそらく隔絶された空間にいるのだろう。

 天界やら天上界やら天国やらと呼ばれる場所は、基本的に常人だと行けない。


 とはいえ、俺のセリフを理解できる者はこの場にいないわけで。

 当然ながら、全員の頭上に疑問符が浮かび上がった。


「ライトは11体の五十魔将を倒しています。私が今も生きているのはこの子のおかげです。そしてこのライトでさえ、オンボールには届かないのです。もしも貴方がオンボールと戦いたいのであれば、まずはこの子を相手に実力を証明してください」


「やるだけ無駄だと思うぜ。だってこのジークって男、全然強くなさそうだもん。それにさ、神々に育てられた俺より強い人間なんていないよ。俺に実力を証明するなら、せめてパーティーで挑まないとね」


 ライトが馬鹿にしたように言う。


「やれやれ、俺を前にしてよくもそんなセリフを吐けるな……」


 俺はこの上なく呆れた表情で言う。


「神に育てられたことを誇るようなザコじゃ俺の相手にならないことは確実だが、それであんたが満足するって言うならやってやるよ。その代わり、国王がわざわざ気を利かせたのになめたことを言ったんだ。ただでは助けてやらねぇ。もしも俺がライトに勝って実力を証明できたら、それなりの見返りをもらうからな」


「神々に育てられた俺に勝つだと? 馬鹿もやすみやすみに言えよジーク」


「お前には話していない。黙ってろクソガキ」


 俺が睨むと、ライトは「ぐっ」と息を呑んだ。


「いいでしょう。ライトが1対1の対決で負けることなどありえませんから」


「なら俺が勝った時には、ラーカム公国はこの国に従属を約束してもらう


「属国ですって!?」


「そうだ。俺はライトを軽やかに蹴散らした後、公国の領地に入ってオンボールを倒す。その後、あんたは王国軍と共に公国に入るだろう。しばらくは王国の庇護を受けながら国力の回復に努めるはずだ。その際、王国の属国になってもらうってわけだ。もしも国王が重税を決めれば、あんたの国は従わなくてはならない。もしも国王があんたに脱げと言えば、あんたは脱がなければならない。そういう関係になるってことだ」


「ジーク殿、それは……!」


 国王が割って入る。

 だが、売り言葉に買い言葉で、クリアラスは承諾した。


「決まりです。ではライト、ジーク殿の実力を測ってさしあげなさい」


「チッ、かったりぃなぁ」


 ライトは気怠げに肩を回し、骨をポキポキ鳴らす。

 そして、どこからともなく深い青色の剣を召喚した。


「ほら、いつでもかかってきな、ジーク」


 ライトが俺の左、数メートルの所に経つ。

 もともとそこに居た官吏連中は、慌てて散開して場所を空けた。


「本当に俺から攻めていいのか?」


「こちらが実力を測定してやるのだから当然だろ」


「そうかい。だったら遠慮なく行くぜ」


 俺は瞬時にライトの実力を測定する。

 測定方法は普通に目視するだけであり、特別なことは行わない。

 ザコはスキルや魔法に頼るが、俺の場合はそのままだ。

 というか、俺は魔法もスキルも使えない。


(うーん、難しいな……)


 ライトの力があまりにも小さすぎて、正確に測定できなかった。

 おそらく10フリックあるかどうかだ。

 この世界の中だと敵なしかもしれないが、俺にとっては五十歩百歩のザコ。


(0.000000000001%の力で攻撃してみるか)


 俺は真っ直ぐに突っ込み、ライトに殴り掛かる。


「「えっ」」


 だが、拳がライトの顔面を捉える直前、俺は固まった。

 ライトのみならず、俺まで驚いてしまう。


「どうした? なぜ反応しない?」


 ライトの鼻先で拳を止めて尋ねる俺。


 そう、ライトは無反応だったのだ。

 防ぐことも、避けることも、あえて受けることもなかった。

 それはまるで、俺の攻撃に気づいていないかのような反応だった。


「い、いつの間に……!」


 ライトが愕然としている。


「もしかしてお前、今の攻撃、見えていなかったのか……?」


 唖然とする俺。

 ライトは無言で、クリアラスは顎が外れている。

 国王も目を飛び出しそうな勢いで驚いていた。


「ジーク、お前、転移スキルの使い手か!」


 ライトが吠える。


「いや、たしかに転移能力は使えるけど……」


 今のはただ真っ直ぐに移動しただけだ。

 常人の目では捉えきれない速度で歩いて近づいた。

 そして、常人の目では捉えきれない速度で拳を振るった。


 国王や公主のような常人が驚くのは当然だろう。

 常人だから。


 しかし、ライトは神々に育てられた男だ。

 それなのにこの程度の動きも捉えきれないなんて……。


「な、なかなかやるじゃねぇか! これほどの使い手がいたとはなぁ!」


 引きつった笑みを浮かべながら叫ぶライト。


「今度は俺の番だぁ! ――我が剣に宿れ! 神々に育てられし者だけが使える神のスキル! 〈ゴッドブレスソード〉!」


 ライトの剣が青白く光る。


「今、この剣には神の息吹が込められた! もはやただの剣にあらず! 神の力の片鱗が付与された人外の武器! その威力、とくと味わえ!」


 ライトが剣を振りかざす。

 あまりに遅い動きなのでサクッと避けられそうだ。

 しかし、今は真剣勝負ではなく、実力を示す為の場である。


「なるほど、神の力の片鱗が付与された人外の武器かぁ」


 パキンッ。


「な、なにぃいいいいいいい!?」


 ライトの剣は俺の左肩に当たると、あっさり粉々になった。

 家の近所にある服屋で買った俺の衣類には、傷一つついていない。

 なんなら糸にほつれが生じることすらなかった。

 俺の身体から自然とこぼれるオーラが、クソザコソードを防いだのだ。


「そ、そんな……! 神々に育てられたこの俺が……!」


 目の前で崩れ落ちるライト。


「ありえません……! 神々に育てられたライトが……!」


 クリアラスも椅子から滑り落ちた。

 もはや俺の勝利は誰の目にも明らかだ。

 勝利宣言をして終わろう。


「あのさぁ、神々に育てられたってことをやたらと強調しているけどさ、その時点で勝敗が決しているようなもんなんだよね」


「「!?」」


「所詮は神々よりも“下”の存在なんだよ、神々に育てられた奴ってのは」


「な……なに……!」


「一方、俺は数多の世界で神々をねじ伏せてきた。俺は神々よりも遥かに“上”の存在なんだ。神々に育てられたことをドヤ顔で語るお前と、神を蹴散らしたことを欠片も誇らない俺。どちらが真の強者なのかは明らかだろう」


「な、なにを言って……」


「俺の言葉の意味が分からないのも、お前がザコであることを証明している」


 俺はライトの額を軽く指で押した。

 ライトは凄まじい勢いで後方に吹き飛び、壁にめり込んで気を失った。


 愕然とする一同。

 そんな中、俺はクリアラスを見て微笑んだ。


「これが俺の実力だよ、公主様」

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