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プロローグ

 最強になろう。

 そう決意したのは18歳の頃。


 きっかけはポーションの調合に失敗したこと。

 その時に生まれた謎のガスを吸い込み、俺は不老不死になった。


 もともと武芸に縁のなかった俺だが、鍛えることで順調に強くなった。

 千年以上の時を経て、その世界で最強の存在である魔王を倒すに至る。


 魔王を倒したのだから、俺が最強に違いない――とはならなかった。

 その頃には既に、別の世界へ転移する術を習得しかけていたからだ。


「他の世界にはもっと強い奴がいる」


 俺はそう信じて疑わなかった。

 だから、魔王の討伐後もストイックに鍛え続けた。

 そして、別の世界に転移する術を身に着けた。


 そこからは単純だ。

 別の世界へ転移しては、その世界で最強の存在を倒す。

 ただひたすらにそれを繰り返すことで、自分の能力を高めた。


 数十、数百、数万、数十万、数百万……。

 無限にある世界を、俺は何億年とかけて巡ってきた。


 ある時は空気の存在しない世界で過ごし、

 またある時には携帯電話や飛行機が存在する世界で過ごした。

 魔王、神様、核爆弾……あらゆる最強に打ち勝ってきた。


 時は経ち、約5000億年ほど世界を転々としていて気づく。

 もしかして俺より強い存在はいないのではないか、と。


 だが、5000億年も同じ生活をしていると、なかなか信じられない。

 自分の気づきを確信に変える為、俺は追加で約5000億年を過ごした。


 修行を始めてからおよそ1兆年が経過した時、確信する。

 俺より強い存在はいないのだ、と。


 自分が最強であることを確信した瞬間、強さに対する興味が失せた。

 燃え尽きた、とでも言うべきなのだろうか。


 とはいえ、俺は不老不死。

 不死身の存在なので、死のうと思っても死ねない。


 だから俺は、目的を改めることにした。

 強さを追求するのではなく、好き勝手に生きようと。


 今まで数千万の世界を巡ったのに、まともに世界を堪能していなかった。

 これからは、時間をかけて心ゆくまで楽しもう。


 そうして俺は、再び新たな世界へ転移するのだった――。


 ◇


 転移先はどこかの草原だった。

 前方約100メートルの所に、立派な城郭都市が見える。

 開かれた門の向こうには、中世ヨーロッパ風の建物が並んでいた。


 ヨーロッパとは、地球という世界にある州の一つだ。

 地球のことはよく覚えていた。

 科学と呼ばれる謎の技術が発達した世界だから。


 俺は城郭都市に近づき、堂々と門を通り抜けようとする。

 門の左右に立っている衛兵は何も言ってこない。

 彼らの言語が知りたかった俺は、わざと衛兵の前で棒立ちする。


「どうした? 迷子になるような歳でもないだろ?」


 衛兵が話しかけてくる。

 1兆歳知覚年上の俺に対してタメ口だ。

 見た目は18歳――黒目黒髪の青年――のままだからだろう。

 別に気にはならなかった。


「なるほど、やはり日本語か」


 どうやらこの世界の公用語は日本語のようだ。

 日本語というのは、地球にある日本という国で使われている言語。

 地球では日本でしか使われていないが、他の世界では使用率1位の言語だ。


 実は、世界で使われる言語の数はそれほど多くない。

 数千万の世界に転移したが、言語はおよそ200種類しかなかった。

 大半の国が日本語または英語を使っている。

 世界が違えど言語は同じ、というのはなんとも不思議なものだ。


「日本語?」と衛兵は首を傾げた。


「気にしないでくれ、邪魔して悪かった」


 衛兵に会釈して街に入る。

 外から想像していた通り、街の中は西欧風だ。

 石畳の上に、地震とは無縁の石造りの建物が並んでいる。


「うお、文字まで日本語かよ」


 看板の文字も日本語で構成されていた。

 ひらがな、カタカナ、漢字と、完全なる日本語だ。


 これは珍しい。

 言語の種類は少なくても、文字の種類は多岐にわたるからだ。

 言語と文字の両方が日本語の確率は、経験上だと0.001%しかない。


 適当に街を歩いていると、武装している人間を多く見かけた。

 剣、槍、弓……人によって得物は様々だ。

 兵士のように格好を統一しているわけではない。


 加えて、街の外からは魔物の気配が感じる。

 少し神経を集中させて半径数百キロを調べてみた。

 そこら中に色々な魔物が棲息していると分かった。


「なるほど、この世界では魔物退治を専門とする仕事があるわけか」


 これまで巡ってきた世界にも、魔物退治業は存在していた。

 ハンターやら冒険者やら、呼び名は違うけれど、報酬が良い点は共通している。


「普通の人と同じく、働いて生活費を稼がせてもらうか」


 不老不死になって以来、お金を稼ぐ生活とは無縁だった。

 金が必要な時は、自分の能力でサクッと生み出していたからだ。


 新たな人生を送ることにしたので、今回は素直に働こう。

 そう思って、俺は近くにいた槍使いに声を掛けてみた。


 ◇


 槍使いから得た情報で、やはり魔物退治業があると分かった。

 この世界では〈冒険者〉と呼ぶそうだ。

 冒険者は、〈冒険者協会〉と呼ばれる施設で依頼(クエスト)を引き受ける。

 同じような世界を何度も見たので、その辺の勝手はすぐに分かった。


「これで完了かな? 冒険者登録」


「はい、完了でございます、ジーク様」


 そんなわけで、俺ことジークは冒険者になった。

 といっても、冒険者協会で書類にサインしただけだ。


「――説明は以上となります。何か質問はございませんか?」


「いや、特に」


 受付嬢から冒険者の説明を受ける。

 この世界の冒険者にも、等級が存在していると分かった。

 等級は下から順にF、E、D、C、B、A、S、SS、SSS級。

 どこの世界の冒険者もランク分けされているものだ。


「本日はクエストを受けていきますか?」


 可愛らしい受付嬢が尋ねてきた。

 メイド服のような制服がよく似合っている。


「ああ、受けていくよ」


 クエストの受注制限は世界によって異なる。

 自分と同等のランクしか受けられない世界もあれば、制限のない世界もある。

 この世界には制限がないので、SSS級のクエストを受けることも可能だ。

 ただし、クエストに失敗すると違約金(ペナルティ)が発生するので要注意。


「ご希望のクエストはございますか?」


「報酬が一番良いもので頼む」


「えっ」


「難易度は問わない。SSS級でもいい。とにかく報酬が一番良いクエストだ」


 どうせ働くなら、たくさん稼げる仕事がいい。

 だから俺は、もっとも報酬の良いクエストを要求した。

 至極当たり前のことだと思ったが、受付嬢は困惑している。

頑張って更新していきます!


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