2-1 学院生活の始まり
第二章、開幕です
あっという間に四の月は到来し、ブルームの木の薄桃色した花びらが舞う中で入学式が行われた。
式典には王族の臨席もありなかなか緊張感のある式典となった。どうやら今年中等部に第一王子が入学するらしく、護衛の騎士隊やら付き人らをぞろぞろと引き連れていた。本人も銀髪青眼の美少年であることから目立つことこの上ない。
どうでもいいけど邪魔くさいな。まさかあいつら授業中もついてくるわけじゃないよな?
王弟閣下、つまり王子の叔父さんが来賓として挨拶をしていたが話が長すぎて何を言ってるかよくわからなかった。ごめん後半寝てた。
まあこのおっさんが話が長かった分、学院長のダン〇ルドア先生が短く切り上げてくれたので式次第としては予定時間内に終われたようだ。
今日は式典のみで授業などは明日からなのでシュアンとミシェルを見つけて三人で街に繰り出すことにした。
ファリア神国の国都ミナス・ティリスには四つの学府がある。国営の学院が二つ。国立魔法学院と国立騎士学院。私学のリト・ウル研究院と正教会が運営するエゼルリム神学院だ。
国都の中は学生で溢れかえっている。準備期間のうちにあちこちうろついたお陰で道に迷うことも少なくなったが、これだけ人が多くなると息苦しくて仕方ない。
はぐれないように三人で手を繋いで歩いた。ミシェルが年長で一番背が高いので、本来ならば引率者として堂々として欲しいのだが何故か年下に手を引かれてニヨニヨしている。残念眼鏡の残念感は通常デバフのようだ。
「あそこの屋台で飯食おーぜ。俺もう腹減ったよ」
昼時で混んではいるが、その中でも比較的早く購入出来そうな屋台を指さし、急いで並ぶ。
考えてみたら他国とは言え王女を庶民と一緒に並ばせるってどうなんだろうと思ったが、シュアン自身が目を輝かせているからまぁいいか。
ミシェルは前にも屋台で遭遇したように、実は公爵令嬢でありながらこういう庶民的な場所が好きで良く忍んで彷徨いて居たらしい。良くこれまで攫われずに済んだなと思う。
周りからチラチラと視線を集めて居たが気にしない事にして屋台のホットドッグにしか見えないパンにソーセージと野菜を挟んだ物を買って広場のベンチへ向かう。
大体屋台はこういった広場周辺に並ぶので食べる場所に困るという事は無い。たまに混んでて座るベンチが見つからない事もあるが、今日は運が良かった。目敏く空いたばかりの所をシュアンが見付けて確保してくれた。
「見るからに美味そうじゃの。イシュタニアでも似たような物はあったが、パンがこんなにふっくらしておらんのじゃ」
「ほんと美味しそうですねー」
ホットドッグを手渡すと顔を綻ばせながらシュアンとミシェルが受け取る。
こうして見ると、二人ともかなり美少女だ。さっきから周りの学生らしき男の子からキツイ視線を向けられるのはやっかみなのかもしれない。
シュアンはこの四年の間に幼女から美少女にクラスチェンジしていた。周囲の目を引く美貌に加え、わずか十歳にして人の上に立つ者の貫禄を醸し出している。隣の眼鏡っ子に爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。
それでもミシェルとて公爵令嬢。密かにファンも居るらしく、モテモテなんだと。本人談なので信憑性は薄い。
ホットドッグを大きく口を開けて頬張る。
パンのふわふわと野菜のシャキシャキ感に加え、ソーセージの皮が音を立てて弾けた瞬間肉汁が溢れた。
酸味の効いたトマトソースが絶妙にマッチして最高に美味い。考えてみたらこの世界に来て食事で物足りなさを感じた事がない。
欲を言えばスパイスがもう少し欲しいと思うくらいで、大抵はしっかり手を掛けた美味しい物を味わえる。
異世界レシピで飲食業界を席巻なんて都合の良い事は出来ないようだ。
まあ俺自身、料理は男の一人暮らしが嗜む程度の粗末な物しか作れないので土台無理な話なんだけどさ。
広場で少し駄弁ったあと、商業街を冷やかしたり、街の外に出ようとして門番に足止めを食らった挙句、公爵家の家人が慌てて来て追い返されたりと、一日楽しんだ後それぞれ寮に帰って早めに就寝した。
明日からいよいよ学院生活が始まる。
面倒くさい事にならない様、極力目立たない様に気をつけよう。
と思ってた時期が俺にもありました。
どうしてこうなった。
「なんだ貴様は!平民の分際で俺を愚弄する気か?」
こちらを睨みつけながら小馬鹿にして来るのは同じクラスになったゴートという少年だ。どう考えても愚弄しているのはこの小僧なんだが周りの誰も注意しようとしない。
何故なら彼の後ろに控えて居るのはこの国の王子殿下に他ならず、彼が止めなければこの場の誰も口を出し辛いようだった。
所謂取り巻きと呼ばれる連中の中でゴートは一番身分が低く、何事も自分が一番に動かなければならないという使命感でもあるのだろう。
とはいえここは学院で、今は魔法実技の授業中だ。先生は何してるんだ。チラっと視線を向けると、逸らしやがった!
「この状況で他所見とはいい度胸だな平民。このファリア神国の最高学府に何で貴様みたいなゴミ虫が紛れ込んだのか分からないが、さっきの言葉は虫の囀りと言えど見過ごせん。しっかり取り消した上で然るべき謝罪をしてもらうぞ!」
授業で使う学院支給の杖をこちらに向けながらゴート少年が叫ぶ。
しかし取り消せと言われても。
「別に愚弄しているつもりは無いよ。ただ魔力制御が甘い段階で無理に高度な魔法は使わない方がいいと言っただけ。ねぇ先生?」
わざと声を大きくして先生へと問いかける。あ、このくそ教師舌打ちしやがった。
「ユリアン君の言う事は一理ありますね。魔法は扱いが難しい。扱い辛い魔法を上手く発動させるには魔力制御の緻密さを求められる。ゴート君の火の魔法適性は素晴らしいが、ファイアランスを扱うにはもう少し魔力制御の精度を上げてからトライした方が良いでしょう」
事なかれ教師が汗を拭いながら正論を述べる。横目で様子を伺う先に居るのは王子殿下だ。
「しかしファイアランスの実演を望まれているのは殿下ですよ?将来の王太子の命令を拒むのですか?先生は」
うぐ、と変な音を立てて先生が黙る。
「まあいい。別にそこまでして見たい訳じゃない。ゴートが得意と言うから見せてみろと言っただけだ。やめた方が良いなら先生の指示に従おう」
表情を変えずに美王子が言うと、ゴートは大袈裟に膝を付いて従う。そのままの姿勢でこっちを睨みつけて来た。
せんせーい、どうにかして下さいよ。てかしろよ。学院の指導方針どうしたよ?学問の元に皆平等なんだろ?
「殿下が仰られるから今回は引くが平民。それ程偉そうな口を利くんだ、貴様はさぞ上手く魔法を制御するんだろうな?見てみたいもんだ」
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべてこっちを見る。モブ臭がくさ過ぎて息出来なくなるから止めて!
先生を見ると小さく頷いてやがる。編入試験の時見た顔だから俺の実力は分かってるのだろうが、マジでやっていいの?俺知らんけど。
「私も気になるな、そなたの実力がいかなるものか。シュアン殿下が認めた才と聞く。凡庸であるはずもない」
アラン君、シュアンと知り合いだったのか。それもそうだな。シュアンはこの四年間、王家庇護のもとに生活していたのだから。
急に名前を出されて少し離れた所で別の女子グループと野次馬していたシュアンが反応した。
「ユリアンはそなたらが束になってもかなうまいよ。下手に絡むと怪我をするぞ」
止めて火に油を注ぐの。
テンプレです。テンプレ好きなんですごめんなさい。
さてさてこれからどうなるのか。
いつも読んで頂きありがとうございます。
少しずつですがブクマも増えて嬉しいかぎりです。
これからもよろしくお願いします。





