第七話 『』と真実
前回から直で繋ぎました(間がいたことは覚えてない)
テンションがおそらく右肩上がりのクライニスを横目に、俺も遅れて戦闘態勢に移る。
「これは大義ある殺し!誅殺じゃああああ!!」
仮想なんだから殺しではないだろ⋯
そう猛然と狂気を孕んだ疾走で荼枳尼天に向かうクライニス。それを刀を拾い追う。戦闘狂とは違い、こちらには仮想と言えどまだ抵抗は残っているのだ。しかも脇腹も抉られているんだ。考慮していただきたい。
その瞬間、ぼきぃっと魔杭が割れる音がする。それは荼枳尼天の行動が自由になったことを示す。そちらへ目をやると見るからに怪しげな枯花がパキパキと音を立てて咲き盛る。
”侵蝕”とやらで無理やり突破してきやがった!流石に二番煎じは効果はないか⋯
「明らかに毒属性じゃねえか⋯」
「GaVaaAaaaru!!!」
遂に怒りの頂点に達したようで、向かってくる影を力任せに振り抜いた拳で迎撃する。
それを器用に黒刀の刀身で受け止める。そのまま撃ち落とされるものかと予想し矢印を構えていたが、一向に地面に叩きつけられる気配はない。
「ハハッ!“衝撃”はどこにいったかなぁ!──返してやるよ」
謎の推進力に背を押されたクライニスは素早く荼枳尼天の懐に潜り込む。
『【還吭】』
閃光と衝撃。黒刀の向けられた切っ先に強大な衝撃波が発生する。荼枳尼天はその波をまともに喰らい、大きく後方へ仰け反る。俺はなにが起きたのかと眼を開き凝視する。
「戦闘中に溜めた衝撃全ブッパだ⋯⋯!!せいぜい自分の行動を反省するんだな!」
「衝撃⋯!」
クライニスの能力は『吸収』、衝撃を吸収してそれを放出したのか!
「Guuu⋯」
荼枳尼天は不快そうにうめきながら黒い物質を撒き散らす。黒い影が少し削れるがすぐに靄が覆い隠す。
「クソッタレ、延々といたちごっこじゃねぇか⋯」
そう悪態をつくクライニスが不意にこちらへと目線を向ける。
「お前⋯どうしたんだ?模擬戦の時は元気だったじゃねーか」
「脇腹抉られてる痛みで激しく動けないんだよ⋯」
「なるほど、だったら」
そういい近づき、頭に手を置かれる。なにかが脳に入り込んでくるが、不快感はない、妙な感覚。
「いったくない⋯!どうしたんだ?」
「俺の支配能力でお前の”痛み”だけを吸い取った」
これはありがたい⋯!さっきまでの痛みが嘘みたいだ
「サンキュー、クライニス」
「気にすんな、けどお前が回復したところであいつはどうにもなんねえぞ。──さてどうするか」
どうにかならないのかと思考を巡らせたところでいい案は浮かんでこない。クソ、一緒に脳から悪い部分も吸ってくれればよかったのに⋯
「しゃあねぇ⋯」
先程までより一段とギラついた目で荼枳尼天を見るクライニス。
「斬りまくって粉微塵だ⋯!」
そういい刀を背後、腰に添え、姿勢を低く沈める。模擬試合で見せたクライニスの我流の構え。
「話が簡単になってきた⋯!」
こちらも鏡雲を鞘へ納め、居合の構えをとる。同時に支配魔力を溜める動作を無意識にまで落とし込む。
刹那、黒白の剣閃が荼枳尼天へと襲い掛かる。両者の狙いは合致し対象的な残光が剣線になって残る。クライニスは右腕を、俺は左腕を中程から切り飛ばした。またも同時に、再生はさせまいと斬りかかる剣が空に閃く。が、荼枳尼天も動き出す。身体ごと振り回し強引に隙を作り、再生させた腕で狙うのは──
「俺かよ!?」
夜一だった。直感で弱いものから選んだのだろうか。だとしてもこの場面で二分一外すか⋯!ここで牙を剥くか運の女神!
「ぐあっ⋯!」
向かってくる漆黒の拳を避けきれず、先程抉られた脇腹と逆の肉を抉られる。無理矢理に再生の暇を与えぬよう限界まで接近していた弊害か⋯!!だが!
「ただでは倒れねぇよ!」
付け焼き刃とは言え能力は掴んできたんだ。
突如夜一の視界に荼枳尼天の黒体に無数の矢印が突き刺さる様が映る。極限まで接近していたのはもう一つ理由がある。それは照準をより精密に合わせるためである。そうまでして発動した夜一、決死の特攻。
「せいぜい吹き飛べ⋯!F◯ck you!!」
苦し紛れながらも中指を立てる。それを合図に無数の矢印が荼枳尼天の体内を蹂躙する。
「Gu!?OooooooOoaaaaaa!!!!」
この時の夜一はまだ気づいていないが、この攻撃は現状況での最善策とも言える突撃であった。
荼枳尼天の身体は侵蝕で無生物から喰らった物質を元にし、それに有生物から奪った生命を吹き込み、再生する。なので体のパーツの地面の土のように一つ一つはバラバラになっており、融合することもなくただ圧縮しただけの体なのである。その荼枳尼天の体の一部一部を無理矢理動かすことで他よりくっついていない仮初の肉体は通常より離れやすく、まるでチャーハンのようにパラパラなのである。その結果、体は矢印に従い四散した。それをまた再生するも同じく吹き飛ばされ無に帰す。
「ははは、ざまぁ見ろ!!おえっ⋯」
「おい夜一!大丈夫か!?無茶しやがって⋯」
吐血する俺を心配してくれたのかクライニスが駆け寄る。クライニスの掌に触れ、再度痛みが引いていく。まだ痛みの残火が微かに残っているが、おかげで思考が晴れた。
「A⋯au⋯gigigi!」
「げ、まだ生きてやがる」
生命力Gかよ⋯だが、明らかに再生しきれてねぇなぁ!
隠す気のないニヤけ顔を晒しながらボロボロの黒巨躯へと襲い掛かる二人。斬る蹴る削るのまさに修羅の如き形相で相手の姿形輪郭ごと刻んでいく。すると隠された人間でいう心臓部から仮面が露出し少しずつクガラの本体がでてくる。
「お前!ほんと戻ってこいよ!クガラァ!!」
そう叫びながらも身体ごと振り回し、手を伸ばしクガラを掴もうと───
「Gugyuaaaava!!!!!」
突然荼枳尼天が咆哮をあげ、体中から黒い棘鞭を放った。鞭のようにしなり、接触の瞬間には金属の如き硬度で叩きつける、どこまでも黒い、魔鞭。
「がっ⋯!」
「クライニスさん!!」
その中の二本が無慈悲にもクライニスの腕と胴を打ち裂く。
「まだだ⋯夜一!」
急な呼びかけに体を震わせる。
「お前だ⋯!元凶がやるんだ!」
その言葉に反射的に飛び出し黒棘の中を半ば奇跡の如き『動き』で駆け抜ける。
「ほんとぉっ!すいませんしたぁぁあぁ!」
飛び出した腕を力強く握り、身体をねじり、荼枳尼天の体内から引きずり出す。
「大丈夫か!」
「あー大丈夫だ、そのまま寝かしとけ」
引きずり出したクガラに声を荒げる俺に対し、落ち着いた口調で仮空を見上げるクライニス。
「a⋯⋯」
力ない声は黒い残滓の残る虚空に残響し、消えた。
「荼枳尼天が、消えていく⋯」
「あぁ⋯宿主を失ったこいつはもう顕現していられない。たとえ仮想世界でも、な」
少し物惜しげに黒い遺物の残穢を一片握りつぶす。
「強かったのに」
「あ、そっちね⋯」
どこまでも戦闘狂思考である。死ぬことは考えないのかこの人
「とりあえず、戦果報告と行こうか!きか──」
『ゴラァァァッ!クライニスこの野郎、勝手にログインしたな!なん──』
『ニコ落ち着けって!ほら、解決してるじゃないか!ちょっ、力強⋯おいドローンはずるいだろ!』
その会話を聞き、ニコニコしながら硬直するクライニス。その後、引きつった顔がこちらへ向けられる。
「俺、このままここに移住してスローライフおくっていいか??」
「現実じゃ死ぬと思うけど⋯」
突然、目を潤わせ脱兎のごとく──実際今脱兎である──駆け寄ってくる。
「ニコさん怖いんだよぉお!わかるか!?あの辛さ!アーーーー(hihiA)行キタクナイヨォ!!」
すると、クライニスの身体が白い淡く輝く粒子となり、足から崩れ去っていく。
「あっ強制ログアウト⋯」
察したクライニスは十字を切り、どこからか数珠を取り出し阿弥陀経を唱え始める。
「I'll be back⋯あ無理かも⋯⋯嫌ダァァァァァ!!」
残響を残しながら消えていくクライニス。どんまいすぎるというか、まぁ助けてもらったのは事実だし、口添え位はくてやるか。
「迅さん、俺も戻して下さい」
『任せろ『クライニス!戻ってきたな、なんてことしてくれたんだおま─』落ち着けうるせぇ!』
「まぁ俺が一番まともだな」
そう安堵しながら現実へと帰還していく。
こうして長いようで短い仮想世界での戦闘体験は終了したのであった───
ん?今何人目だ?あ二人目⋯⋯
この修羅の世界にこんな早く適応できる夜一はまともじゃないと思う(筆者談)
あと見返してたら5話の最後のデータが一個昔のになってから修正しやした。めっちゃ意味ワカランかんじになってましたねごめんなさい。




