遡る国家
僕は恐る恐るモニターを見た。
その画質というのは今とはまるで考えられないほど鮮明で、すごくきれいに見えた。
しかし、写っていたのは見慣れた景色。その景色を見た僕は言った。
「ここって東京じゃないか。しかも僕が住んでいる時代とあまり変わりないような......」
すると、銀髪の女性が言ってきた。
「そうよ、その時代は君の住んでる時代の20年後の時よ」
その答えに僕はボソッと返す。
「20年の時が経っての変化はこんなもんなのか」
「そうなの。この時代の日本は経済、環境共に廃れてしまい、発展が遅れてしまったの......」
それに対し、同情するように女性が哀しい表情で言ってきた。その答えに僕は何を返せばいいのか分からず、「そうなんですね」とだけ言った。
そして、またモニターに目を移す。
映像が流れていくうちにある瞬間から街の風景がガラッと変わった。その風景は今じゃありえないほどの高さの高層ビルが数棟立ち並び、人々が多く行き交う大都市だった。僕の時代では田舎だったところでも、大都市になっている地域が数多くあるようだった。そして、人々を見てみると、皆綺麗な衣服を着て、人口も増えたかのように見えた。
それはまるで社会の歴史の教科書で見たバブル時代の写真を実際に見ているかのようだった。これを見た僕は「こんなに一気に成長するんだ」と感心の声を上げてしまった。それもそうだ。まるでといっていいほどに変わらなかった日本がまるで世界が変わってしまったかのように発展していたからだ。
僕が咄嗟にでた発言にまた銀髪の女性が反応する。
「驚くのも無理はないわね、あなたの時代からおよそ50年後、日本は世界のトップに君臨するほどの経済成長を遂げたの。それはまさに二度目のバブル景気といっても過言ではなかった。少子高齢化も改善され、過疎問題もまさに解決と言っていい程に様々な地域に人々が移り住み、その生活は裕福そのものだった」
女性は哀しい表情から一変、何か懐かしんでいるような表情を浮かばせた。
「ちょっと待ってください。今”だった”って言ってましたけど、その景気ってもしかして今は......」
僕が続きを話そうとすると、さっきまで黙っていた隣にいる紺髪の女の子が被せるように言ってきた。
「アイツのせいだよ......全部アイツのせいでこうなったんだ」
と、怒りの表情を見せる。銀髪の人は女の子を落ち着かせようと背中を擦る。すると銀髪の女性が「続きを見て」のジェスチャーをしていたので、僕は再びモニターに目をやる。
日本の経済成長が見られた後、世界各国の映像が流れ出した。その映像に僕は目を疑った。そこには街は焼かれ、人々は震え、何者かとそれ同士が戦っている戦争の映像だ。
ソレはまさに地獄。これもまた歴史の授業でやった日本が経験したアノ戦争のようだった。
「何なんだよこれ......こんなロボットみたことないぞ」
僕は映像に写っていた”何者”かをロボットだと推測した。そして日本だと思われる映像が流れてきた。そこには、裕福な人ばかりいた成長期とは裏腹にやせ細った国民の姿があった。その光景はまさにバブル時代の崩壊を実際に見ているかのようだった。
「なんでこんな......」
僕は呆気にとられたかのように言った。
すると、銀髪の女性が決心したかのような表情をして僕に話しかける。
「それは現実よ、確かに日本には未来への栄光が見え始め、順風満帆な国だった。”アイツ”が来るでは......」
このときの僕はアイツの恐ろしさと人間の臆病さには気づけていなかった。




