赤い夢
「ここは……」
大きなビルが立ち並んでいるが、あちこち倒壊しており、竜のように炎をうねらせている。その景色はそう、一言で表すなら"地獄"そのものだった。
「え、なんなんだよこれ」
唐突な景色に戸惑っていると、何故か母の声が飛んできた。
「もう朝だよ、早く起きな」
ハッと目が覚める。悪い夢を見ていたようだ。
時計の針は7時32分を示している。
いつも同じ時間に起きる。何も変わらない日々。
「ハァ……」
無意識にため息がこぼれる。
何もなく虚しいはずのようで、山ほどやらないといけないことがあるんだ。受験生ってそういうもんだよな。
こんな日々がただただ流れていくことに、違和感など感じることはもうなくなった。何も考えずに、操られるかのように机を眺める。
朝食を済ませたら、学校に行く。
「行ってきまーす」
途中でクラスメイトの前田とばったり会った。前田は僕の数少ない友達の一人で、特に親しい友達だ。すかさず前田は僕に話しかけてきた。
「おい、すぐる〜明日中間だぜ?俺マジ高校に出す成績足りんかもしれん」
俺は笑ってこう返す。
「っていいながら勉強しないのはいつものことだろ?」
「だってさー、あはは……」
返事が適当だ。気まずそうな苦笑いをして場をごまかしている。図星か。
「ほんとにさあ、テストとか数字とかで人の人生決めるの良くないと思うんだよな」
「言われてみればたしかに嫌だけどさ、仕方ねえよ流石に」
「でもこの先何が起きるかわかんないぜ?もしかして俺がこの国変えちゃってたりとかして」
「フッ、それはないだろ」
しかしテストがあるのも事実。受験生としてとても重要な、将来を決めるテストだ。僕もそれなりに頑張って勉強をしている、つもりだ。
受験シーズンが始まって行動が制限されてきて、自由はあまりない。もともとやりたいことがあったわけでもないが。
ただ思う。いつも同じことを繰り返してるだけの何ら変わらない生活は、あまりにも窮屈で退屈だ。
学校もそう。ただのテストのための知識を詰め込んで、うろ覚えのものでテストを受けて人生が決まる。基本は毎日寝て起きて食べてまた寝るを繰り返すだけ。そこに何も刺激はない。
「あー今日もつまんなかったなあ」
学校も終わり、家に帰る。どれだけ楽しかろうがつまらなかろうが、今日も明日も夜は訪れる。必ず。
「ごちそうさま」
だが母のご飯はうまい。唯一の楽しみと言えるかもしれないな。
食事を済ませたら風呂に入って、ちょっとひと休みしてからもう寝る。
(今日も終わりか)
ベッドに寝転んで天井を見つめていたのは10時14分のことだった。
今日も特に変わったことはなかった。明日もその先も何ら変わらぬ日々を送って、いつかふっと僕の人生はつまんなかったなで終わるんだろうな。
そんな事を考えているうちに、僕は眠りについた。
――――――
(ん……)
珍しく自分で目が覚めた。母の声は少しも聞こえなかった。あれ、今日って休みだったっけ。それとも遅刻か?もしかして、そろそろ呆れたか。
たしかに今日は学校のはずなんだが……
違う。いつもと何かが違う。体を起こしてあたりを見回すと、よく見るとそこは家じゃなかった。
(はぁ?)
おかしい。おかしいぞ。見慣れない器具や機械が部屋に堂々と置かれており、その上の時計を見ると、自分が寝た時刻のはずの10時14分を示していた。
(さすがにな、流石にこれは夢だよな?)
時計の近くのカレンダーにも目をやる。
" 2091/9/11,Tue "
「え?なんなんだよ、どうなってんだよ……」
こんなものを見て驚かない人はいないだろう。
明らかに西暦の数字がおかしかったのだから。




