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ハリオットとの間に男の子の双子が生まれ、長男をコロンビア、次男をケンブリッジと名付けました。親子4人で楽しく暮らしていると、ハリオットの実家から連絡が来て、ルドルフ第二王子が隣国の王女と結婚して、ルモウルフ国王になる事が決まった事を教えられました。公爵の傀儡のサイデッカー元王太子とお花畑のナタリエ元王太子妃では、ルモウルフ国が成り立たない。とアイトバルト陛下が決断したそうです。
ルドルフ第二王子は一緒に討伐の旅を過ごす内に、ひたむきな聖女ジュンを愛すようになったが、聖女ジュンが闘病の末に儚くなった為、傷心を押し殺して外交に励んでいた。そんなルドルフ第二王子を癒してくれた隣国のエミリア王女と結婚する事になった。と言うのが、この結婚のストーリーだそうです。
『勝手に召喚した上に勝手に殺すのがルモウルフ国の王家の遣り方なんですね!』と、創造神アモルフィア様に愚痴を言うと、王家の作ったストーリーを知った創造神アモルフィア様も考える事があったようです。
王太子になったルドルフ第二王子の結婚披露宴で降臨し、祝福?した後で王家が『聖女アヤカ』にした数々のやらかしを暴露した上で、『『聖女アヤカ』は私の加護で保護したから、今は人知れず、幸せに暮らしている。』と私の名前と生存を告げたそうです。フルネームでないと真名とは認められないので、アヤカだけなら知られても大丈夫との事でした。…でも、帝都で私、アヤカと名乗っているのですけど?
神の加護を放棄した国。現在のルモウルフ国の別名です。エミリア王太子妃は、神の祝福を受けてしまったので離縁が出来ず、屈辱を感じながら暮らしているそうです。実家の隣国の方がルモウルフ国より大国なのを頼んで、属国にしてしまい、ルモウルフの名前を消す方向で動いているみたいです。
ハリオットの実家の公爵家ですが、外交を担当している事もあって、帝国にも顔が効くそうです。早々にルモウ国に見切りをつけていたそうで、現在、帝国で貴族籍を取得する為に動いているそうです。ルモウルフ国でも由緒ある家柄が評価されているので、侯爵家の籍は余裕で取得出来るみたいです。…ルモウルフ国の貴族籍は親戚で分け合って繋ぐそうで、公爵家自体はハリオットのお兄さん夫婦が継ぐから問題無いそうです。
『万が一、国が潰れても家が続いていく為の保険が私達だよ。』と笑うハリオットのお父さんが素敵です。
私達家族は平民のまま、帝都のお店を安定して経営しています。双子は可愛いし、やんちゃですが、丈夫に育っています。アモルフィア様の加護のお陰か、既に聖魔法の片鱗が見えてますが、聖騎士を目指すかどうかは本人に任せます。
ハリオットは時折り神殿に呼ばれて、臨時の聖騎士を勤めています。私もアモルフィア様に呼ばれた時は、長いベールですっぽりと顔を隠して、浄化を施して土地を清浄にしています。…聖女はアモルフィア様に隠されているだけで、心穏やかに生活していますから、時折り、表に出て来る事もあります。と言うスタンスですね。但し、権力者の意向には沿わないので、何処の神殿でも私と連絡は付きませんけど。(笑)
私は、採取に出掛けたダンジョンとか、街の外で魔獣に襲われていたりして、危なさそうな処に出くわした時など、結界に隠れて、陰からこっそりとエリアヒールを掛けて助けたりはしますが、表立っての活動はしません。見返りを求めての行為は自分に跳ねかえって来た時が怖いので、飽くまでもこっそり。
なので、『帝国のダンジョンや付近の土地には、アモルフィア様の加護が強いらしい。』と噂が広まっています。隣国のルモウルフとは逆ですね。(笑) アモルフィア様も気の向くままで良いよ。と認めてくれているので、気軽にしています。…間に合わなかったり、出くわさなくて救えない事の方が多いので、時折り聞こえる不満は無視しています。
でも、アイトバルト陛下はそう思わなかったようで、『聖女は私が召喚したからこの地にいるのだ。それなのに、私に敬意を払わないとは何事だ!』と、まだ吠えているそうです。ルドルフ王太子も同様で、『何故、私の元に戻らないのだ。』と周囲に捜索を依頼し続けているとか。ホント、バカジャナイ?と思いました。
5歳になったコロンビアはハリオットの聖騎士姿を見て憧れを抱いたらしく、剣を振り回して遊ぶようになりました。ケンブリッジは剣には興味が無く、私の魔法や錬金に興味を持っています。この国知識はハリオットが教えていますので、私が教えられるのは計算などですね。魔法はサイドライト様から教えられた基本なら出来ますか。
2歳になるミリアンナを抱っこしながら、店に立っていると、ダンジョンから戻って来た冒険者が、薬草の買い取りと、ポーションの購入に来ました。最近では、子育てに忙しいのもあって、薬草の買い取りを始めた
のですが、ポーションの割引きを付けたのが良かったらしく、意外に鮮度の良い薬草が集まります。『ポーションの出来は鮮度にも吊られるのよね〜』と買い取りながら呟いたのも良かったのかな?
ミリアンナがニコニコしながら薬草を見ていると、ケンブリッジも寄って来て、薬草の分別を手伝い始めます。私は鑑定があるので間違えませんが、小さい頃から見て覚えるのは大切な事です。葉っぱのギザギザの一つをとっても、似た毒草があるのです。今でこそ手を出しませんが、ケンブリッジが止めるより早く、ミリアンナが薬草を口にしてしまい、大騒ぎになった事がありました。苦いだけで済みましたが、アレが毒草だったら。と思うと冷や汗が止まりませんでした。
双子が学校に通い始め、ミリアンナがお母様に連れられてお屋敷で留守番?が出来るようになったので、私も冒険者活動を再開しました。ハリオットと二人で行動するので、お父さん大好きなミリアンナは恨めしそうです。でも、『学校に通うまでの2年間で、貴族としての最低限の淑女教育をしたい。』と願われては、私も拒めません。私が召喚されずに、ハリオットが貴族令嬢と結婚していれば当然の事だったのです。私の事を大切にして、貴族を強いなかった両親の気持ちを思うと、感謝の想いしか浮かびません。
帝国の教育を受けて、コロンビアは聖騎士になりました。ハリオットの両親の籍を受け継ぐので、侯爵令息です。ハリオットは私の為に貴族籍を捨てたので、戻らない。と主張した結果、孫のコロンビアに白羽の矢が立ちました。
同じくケンブリッジも。と思ったら、ケンブリッジは『店を継ぐから爵位は必要ない。』と辞退しました。優秀な成績の為、『学者として学校に残って欲しい。』と嘆願され、取り敢えず、二足の草鞋状態です。私達が続けられなくなってからでも遅くは無い。と説得しました。
ミリアンナは学校で何人もの貴族から求婚されているのですが、ハリオットの両親の眼鏡に適う者がまだのようです。お店でも看板娘として大人気なので、末が楽しみ?私よりもお母様を手本としている様なので、貴族に嫁いでも大丈夫でしょうとは思っています。
アモルフィア様が護って下さっているので、旧ルモウルフ国の王家からの横槍などは有りません。属国となってしまった今では、エミリア王妃の力が強すぎて、何も出来ないだけでしょう。
召喚された数年は最悪の積み重ねでしたが、今は心穏やかに暮らしています。日本の事を思うと寂しいですが、アモルフィア様から聞いた話では、私の存在自体が消えているそうですから…日本の両親の幸せは日本の神様に託すしか有りませんし、私を覚えていない両親なら、私が居なくても寂しく無いでしょう。
私はポートレート帝国の帝都の片隅で幸せに暮らして天寿を全うしました。
心穏やかに過ごした方が幸せ。という定義で書いてみました。
理不尽な虐めなんて遭わない事がbestですが、出遭ってしまったら逃げたら良いよ。と思いませんか?