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第105話 踊り食い

 神の力を封じられてしまったアクシスと私。


 私の力もアクシスから譲り受けたものとスマコである神成ウラシスから授かったものだ。だから私もアクシスと同じように力を発動することが出来なかった。


 当然そんな状態では、とても今のAIマネシスに勝てる訳もない。私は瞬時にもの凄い力で首を掴まれる。それでも必死に蹴りやパンチなどを繰り出しながら抵抗してみるが、一撃腹部に拳を軽く入れられただけで、身体が動かなくなってしまった。


《まずい! このままでは桜夜ちゃんが……》


「あぁあ! くそッ! このッ! アンブちゃんを離しなさい! 殺すなら私を!」


 アクシスは必死にAIマネシスに向けて拳や蹴りを行っているが、私と同じように神の力がないアクシスには全くどうすることに出来なかった。


「それは出来ませんねぇアクシス。そこでじっくりと己の無力さを痛感しながらこの人間が私に食べられるところを見ているといいですよ」


「やめて……お願いだから、やめて!」


「その顔とてもいいですねぇアクシス。それではまずどこから食べましょうか。足か腕か……可愛いお顔や体のパーツは最後まで取っておくとして、はやり身体の中の臓器から頂くとしましょう。」


「やめてぇぇぇぇ!」


 アクシスの絶叫の後、今にも身体を貫こうとしているAIマネシスの鋭い爪を見ながら、覚悟を決めた私は、痛みに耐えられるように歯を食いしばっていた。


 AIマネシスの鋭い爪先が私の身体に触れようとしたその瞬間、目を瞑っていたにも関わらず眩い光に包まれたかと思ったら、ふわりと私の身体を包み込む柔らかくて心地よい感触と心が安らぐ良い匂いに包まれた。私を助けたそれが、乙羽だということはすぐに分かった。


「今度は私が……守れて良かったよ。」


 乙羽はそう言うと私の頭を優しく撫でて、眩しい太陽のような優しい笑顔を私に向けた。それは私が以前、線路の踏切で乙羽を助けた時に言った言葉だった。あの時は逆に今後は私が乙羽に助けられたのだ。


「乙……羽」


【久しぶりだねぇ、ウ~ラ~シ~ス!】


 何処からともなく声が聞こえたかと思ったら、乙羽のスマートウォッチから見知らぬ美少女が現れた。それに応えるようにウラシスことスマコも私のスマートウォッチから現れる。


《げっ……ツキシス……》


【げって何よ! もっと喜んでほしいんだけどなぁ~ウラシス~! 今すぐそのキャワいい姿を抱きしめられないのが残念だけど、今はあれをどうにかしないといけないものね。】


 乙羽が放ったものであろう光により、AIマネシスが発生させていた漆黒の霧は消え失せていった。その光に包まれたことで、私もアクシスも本来の力を取り戻していた。


「ツキシス……良かった。助かったわ。」


【アクシス、1人で大変だったでしょう。後でゆっくりお話し聞かせてね。】


「うん!」


 AIマネシスは怒りにより禍々しいオーラを全体に滲ませながらこちらを睨んでいた。私達は力を発動して身構える。すると、遅れてマヌケが合流した。

遅れて来たマヌケは、乙羽に「早過ぎだよぉ」と言っていたが、事情は分かっていたようだ。


――しかしさっきのあの黒い霧はヤバいね。力を奪うなんて反則だよぉ。


《そうね。でもツキシスの力を開放している乙羽ちゃんの力ならあの邪悪な力を無力化できるわ。だからもうあの霧は大丈夫だと思う》


――そか!


「そういうことで、みんな行くわよ!」


 アクシスの合図で私達は一斉に動き出した。


「暗遁、闇分身の術からの雷遁、雷光石火の術」


「具現せよ、ガルガドス。アルティメットモード!」


「聖なる光の刃に消え失せなさい、光神聖剣」


 神成モード状態で白い稲妻を纏った10人の私は、一斉にAIマネシスに向けて攻撃を仕掛けている。それを漆黒の闇から具現化させた無数の黒い腕によって防がれてしまう。


 それを可愛い巫女装束になった乙羽の光る剣によって、無数にあった黒い腕が次々に斬られて消滅していく。


「氷遁、氷監獄の術」


 私は地面に手を付いて魔力を送り込みAIマネシスや漆黒の黒い腕を一瞬で凍らせた。その隙に乙羽が全ての黒い腕を斬り落としたので、AIマネシスの姿が見えたのでマヌケがそこへ砲撃を行う。


「無限キャノン」


「ダークネスキャノン」


 しかし、AIマネシスも自身の掌から邪悪なエネルギー弾を放ってそれを相殺する。それにより、大きな爆発と共に辺り一面に大量の煙と衝撃波が広がって、周りの視界が見えなくなっていた。


 その一瞬の隙を伺っていたアクシスが空間転移でAIマネシスの背後へと回り込んでいた。


「我、神邪アクシスが最終奥義、ダークレクイエム!」


 アクシスが両掌を三角の形へ交差させると、AIマネシスが立っている地面に紫の光が現れる。AIマネシスは瞬時に危険を察知して飛び上がろうとしたが、それよりも先に私が氷遁、氷監獄の術で下半身を凍らせ、それを阻止した。


「んなッ?! おのれ!」


「これで終わりよAIマネシス。永久の安息地へと向かいなさい。」


 やがて紫の光はAIマネシス身体を蝕むようにその存在を消滅させながら飲み込んでしまおうとしている。


 その光景に誰もが勝利を確認していたその時――。


巨大な2本の黒い槍がアクシスの両手を貫き、その勢いで後ろへ飛ばされてしまう。それと同時にAIマネシスにかけていた技も解除されてしまった。


「きゃぁあああ?!」


吹き飛ばされるアクシスを待ち受けるかのように十字型に作られた石像が現れて、両手を貫いている漆黒の槍がその石造に突き刺さり、アクシスは磔にされてしまった。


 更にもう一本の槍で両足までを貫かれてしまい、貫かれたその全ての箇所からは大量の血液が流れ出し、全く身動きが取れなくなってしまった。


「うあぁぁ゛?!」


『アクシス! いけません……あれは』


《そん……な》


【まさか?!】


 一同に神々の3人が反応する。ウラシスことスマコから話を聞いていた私とマヌケは、あの黒い槍と十字の石造が、スマコやツキシスやモリシスを磔にして殺したものであると瞬時に察知した。


それがどれだけ危険なものであるかもそうだが、これを投げてアクシスを磔にした者がスマコやツキシスやモリシスといった神々ですらも簡単に殺してしまう程の力を持っており、今まさにその者が現れてしまったという最悪の事態に陥ったことを証明する。


 その者は空からゆっくりとこちらに向けて降りて来ている。その姿は背中に10枚の光る翼を生やしその周りを光る輪が囲っており、真っ白の身体に神々しい装束を身に付けていた。


「久しぶりですね。神邪アクシス。」


「ぐッ……し、神聖……」


「そう。私はあなた達の知る神聖であり、神聖ではない者です。」


『や、やめて……もう……やめて』


「マネシス、あなたには感謝していますよ。よくこの地球と生命体である人間を作ってくれました。あなたのおかげでモリシスもツキシスもウラシスも殺すことが……」


『やめてぇぇええ!』


《落ち着きなさい、マネシス! 誰もあなたを恨んでないわ。》


【その通りよ。全ての元凶は神聖……あなたではないですか!】


 しかし、私達はその神聖の邪悪なオーラに身体の芯から震え出し、全く動くことが出来なくなってしまっていた。

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